呪々

ウィキペディアから、無料の百科事典
『呪々』
スージー・アンド・ザ・バンシーズ の スタジオ・アルバム
リリース
録音 1981年5月[1]
サリー州レザーヘッド
Surrey Sound
ジャンル ポスト・パンク
ゴシック・ロック
時間
レーベル ポリドール
プロデュース ナイジェル・グレイ
スージー・アンド・ザ・バンシーズ
スージー・アンド・ザ・バンシーズ アルバム 年表
カレイドスコープ
(1980年)
呪々
(1981年)
キス・イン・ザ・ドリームハウス (1982年)
テンプレートを表示

『呪々』(Juju)は、イギリスのロックバンド、スージー・アンド・ザ・バンシーズによる4枚目のスタジオ・アルバムである。ナイジェル・グレイとバンドの共同プロデュースの下、1981年6月19日にポリドール・レコードから発売された[2]。本作からは、「呪縛」と「アラビアン・ナイト」の2曲がシングルカットされた。

本作はイギリスにおいて商業的成功を収めた。 本作は発売当時から批評家から高い評価を受け、特にジョン・マッギオークの型破りなギター・プレイとスージー・スーのヴォーカル・パフォーマンスが絶賛された。 現在でも高く評価され続け、ポスト・パンクの金字塔的作品と見なされている。

背景

1980年の前作『カレイドスコープ』ではややエレクトロに寄っていたスージー・アンド・ザ・バンシーズは、ギタリストのジョン・マッギオークが正式に加入したことにより、『呪々』でギターを中心としたサウンドに回帰した。また、本作ではドラマーのバッジ―による複雑なパーカッションも際立っている。ベーシストのスティーブン・セヴェリンによれば、「『呪々』は私たちが初めてダークな要素を描いたコンセプト・アルバムを作った作品だった。事前に計画されたものではなかったが、私たちは曲を書いているうちに全曲に共通したテーマを見出した。アルバム全体がまるで一つの物語のようだった」という[3]。

本作は、共同プロデューサーのナイジェル・グレイが所有するSurrey Sound studioで録音された。そこでマッギオークは、Gizmotronというあまり使われていないギターエフェクト装置を「イントゥ・ザ・ライト」で実験的に使用した。ギターのブリッジにGizmotronを取り付け、キー付きホイールで押弦することで、クラシックにおけるストリングスのようなギターサウンドを実現した[4]。「アラビアン・ナイト」は元々スージーがVox製ティアドロップ・ギターで作曲したワルツの曲を、マッギオークがアレンジしたものである[4]。「罪深き心」では、マッギオークがE-Bowを用いてギターを演奏している[5]。

ジャケットには、バンドがホーニマン博物館で発見したアフリカの石像の写真が使用されている[3]。

音楽性

オールミュージックでは、『呪々』はポスト・パンクアルバムであるとだけ記載されている。ガーディアン紙は本作を「アート・ロック」と評し、また本作からの2枚のシングルを「ポップ界の驚異」と称賛している[6]。 しかし、本作は一部の批評家からゴシック・ロックとも評されることもある[7]が、バンド側はそのカテゴライズを否定している[3]。BBC Radio 4は本作を「巨大な影響力を持つダーク・ウェイヴ(英語版)」と評した[8]。

リリース

『呪々』は全英アルバムチャートで7位に達し、17週間チャートインし続けた[9]。

アビー・ロード・スタジオにて、マイルズ・ショーウェルの手によりオリジナル・¼インチテープからリマスターされハーフ・スピードでカッティングされた180グラムのLPレコードが、2018年8月に再発売された[10]。

評価

専門評論家によるレビュー
レビュー・スコア
出典評価
オールミュージック4/5stars[11]
Sounds4.5/5stars[12]

サウンズ誌は本作を称賛し、スージーの歌声を「豊かでダークな滑らかさを伴って新たな充実感のあるメロディを獲得した」と評した。ライターのBetty Pageは、本作でのバンドの演奏に対し「このバンドの演奏は驚くほどまとまっており、ギタリストのマッギオーク、ドラマーのバッジ―、ベーシストのセヴェリンの独創的な才能が一つの脳のように完璧にスージーと融合している」と記した。また、彼女はマッギオークについて「アコースティックギターを不吉に演奏することができる唯一の人間」と絶賛した[12]。NME誌は本作を「エンターテイメントの頂点」と評し、「4作目のアルバムである『呪々』はこのバンドで2番目に良い作品かもしれない」と結論付けた。批評家のポール・モーリーはスージーについて「比類なき落ち着きをもって歓喜していた」 と記した。彼はすべての曲名を挙げ、「A面のハイライトは「呪縛」「イントゥ・ザ・ライト」「アラビアン・ナイト」「ハロウィーン」「モニター」。『悲鳴』以来最も一貫性があるA面だ。B面のハイライトは「ナイト・シフト」「罪深き心」「ヘッド・カット」「ヴードゥー・ドリー」。『呪々』は『悲鳴』以来の統一感があり輝かしく完成されたバンシーズの作品だ」と結論付けた[13]。

オールミュージックは、「『呪々』の冒頭からのインパクトは、スージー・アンド・ザ・バンシーズの他のディスコグラフィーでも類を見ないだろう。最高のシングル曲、容赦ないパワーと活気に満ちたダイナミクスゆえに『呪々』はポストパンクの古典となった」と記した。2004年版のローリング・ストーン・アルバムガイドは本作と前作の『カレイドスコープ』に5点中3点をつけ、「バンシーズの攻撃性は洗練され、渦巻くようなインパクトを失うことなくサウンドが多様化している」と紹介した[14]。ディスクガイド「MusicHound」上でDoug Pullenは5点中3点をつけ、本作について「スージー・スーの苦悩に満ちた歌詞と巧みで印象的なグルーヴが組み合わされたダークで官能的なレコード」と述べた[15]。音楽評論家のGarry Mulhollandは著書「Fear of Music」(2006年)で本作を「パンク/ディスコ以降の最高のアルバム261選」に選出した[16]。

2007年、ガーディアン紙は『呪々』を「死ぬまでに聴くべきアルバム1000枚」に本作を選出し、「陰鬱なサスペンスの永遠の巨匠であるバンシーズは、トレードマークである孤高のアート・ロックを『呪々』で最もハードかつダークに磨き上げた」と記した[6]。本作は「死ぬ前に聴くべき1001枚のアルバム」でも取り上げられた[17]。

影響

1995年、メロディ・メイカー誌の記者・Cathi Unsworthは『呪々』について「最も影響力のあるイギリスのアルバム」と述べた[18]。

マッギオークのギタープレイは特に批評家やミュージシャンから称賛されている。2006年にはモジョ誌による「史上最高のギタリスト100人」で、「呪縛」でのプレイにより89位に選出されている[19]。ザ・スミスのジョニー・マーは2008年2月のBBC Radio 2にて「呪縛」におけるマッギオークのプレイを絶賛した。マーは「巧妙で、すごくいいこだわりが感じられるけど、とてもロックンロールらしくない」と評した[4]。Uncut誌上で、マーは本作とマガジンの『リアル・ライフ』でのマッギオークのギタープレイを称え、彼を10番目に好きなギタリストとして挙げた[20]。ザ・スミスのヴォーカリストのモリッシーは、アメリカのラジオ局KROQ-FMの1997年のインタビューで、「呪縛」についてこう語っている。「またしても素晴らしいシングル曲だ。イギリスではヒットしたが、アメリカではそうは思えないけどね。でも彼らは70年代後半から80年代初頭にかけての偉大なバンドの一つだ。スージー・アンド・ザ・バンシーズは素晴らしいよ。」[21]モリッシーは後に『呪々』をスージー・アンド・ザ・バンシーズの傑作だと述べた[22]。ザ・キュアーのロバート・スミスは「ヘッド・カット」におけるマッギオークの演奏を自身の5本の指に入るお気に入りのギター・トラックとし、「これはある意味非常に荒々しいファンクで、巧妙かつ不規則なコードを特徴としている。特に決まった形はないが、興味深い進行もある。」と語った[23]。

レディオヘッドのトム・ヨーク、エド・オブライエン、コリン・グリーンウッドが本作をお気に入りとして挙げている。オブライエンはチャート順位を聞いた後「呪縛」をテープレコーダーに録音したことを回想し、「素晴らしい音楽の時代だった」と語った[24]。レッド・ホット・チリ・ペッパーズのジョン・フルシアンテは、アルバム『バイ・ザ・ウェイ』の影響元として本作を挙げ、「ジョン・マッギオークは憧れのギタリストだ。それぞれの曲に新鮮なアイディアを入れている。彼が演奏したマガジンのアルバムとスージー・アンド・ザ・バンシーズの『呪々』は普段から聴いてるよ」と述べた[25]。スマッシング・パンプキンズのビリー・コーガンは、BBCのラジオで好きな音楽として本作の収録曲「アラビアン・ナイト」を挙げ、「スージー・アンド・ザ・バンシーズは、今日のオルタナティヴ・ロックまで続く確かなリズムと感覚を解き放つことができた」とコメントした[26]。ジーザス・リザードのギタリスト、デュアン・デニソン(英語版)はマッギオークを自身の好きなギタリストとして挙げ、特に『呪々』での演奏について「ムードがありながらアグレッシブでもある。彼には本当に刺激を受けた」と語った[27]。

ジーザス&メリーチェインのギタリストであるウィリアム・リードは、彼のお気に入りの曲を集めたプレイリストに「呪縛」を入れている[28]。スウェードのヴォーカリスト、ブレット・アンダーソンは彼の影響元として『呪々』を挙げている[29]。

収録曲

特記無き限り、全作詞はスージー・スー、全作曲はスージー・アンド・ザ・バンシーズ (スージー、スティーブン・セヴェリン、バッジ―、ジョン・マッギオーク)によるもの。

A面
#タイトル作詞作曲・編曲時間
1.「呪縛」(Spellbound)スティーブン・セヴェリン 
2.「イントゥ・ザ・ライト」(Into the Light)  
3.「アラビアン・ナイト」(Arabian Knights)  
4.「ハロウィーン」(Halloween)スティーブン・セヴェリン 
5.「モニター」(Monitor)  
B面
#タイトル作詞作曲・編曲時間
1.「ナイト・シフト」(Night Shift)  
2.「罪深き心」(Sin in My Heart)  
3.「ヘッド・カット」(Head Cut)  
4.「ヴードゥー・ドリー」(Voodoo Dolly)  
2006年リマスター版CDボーナス・トラック
#タイトル作詞作曲・編曲時間
10.「呪縛 (12インチ・ミックス)」(Spellbound (12" extended mix))スティーブン・セヴェリン 
11.「アラビアン・ナイト (12インチ・ヴォコーダー・ミックス)」(Arabian Knights (12" vocoder mix))  
12.「ファイアワークス (12インチ・ナイジェル・グレイ・ミックス)」(Fireworks (Nigel Gray unreleased version))スティーブン・セヴェリン 

クレジット

スージー・アンド・ザ・バンシーズ

プロダクション

  • ナイジェル・グレイ – プロデューサー
  • ロブ・オコナー – ジャケット・デザイン
  • ジョー・ライアンズ – ジャケット写真

チャート成績

Certifications

参考文献

  • Sullivan-Burke, Rory (April 2022). The Light Pours Out of Me: The Authorised Biography of John McGeoch. Omnibus Press. ISBN 978-1913172664 

脚注

  1. ↑ Billy Chainsaw. "Phase One". The Siouxsie and the Banshees File [Official magazine]. 1983.
  2. ↑ Siouxsie and the Banshees Juju Tour Programme, Siouxsie and the Banshees' Official Press, (1981), "Juju Release Date 19th June 1981"
  3. 1 2 3 Paytress 2003, p. 106.
  4. 1 2 3 Mitchell (2008年2月). “Spellbound: The Story of John McGeoch”. BBC Radio 2. 2021年12月21日時点のオリジナルよりアーカイブ。2011年11月3日閲覧。
  5. ↑ Sullivan-Burke, Rory (April 2022). The Light Pours Out of Me: The Authorised Biography of John McGeoch. Omnibus Press. p. 108. ISBN 978-1913172664
  6. 1 2 Petridis (2007年11月21日). “Artists Beginning with S”. The Guardian. 2026年9月15日閲覧。
  7. ↑ Blackmore, Neil (2003). Buckley, Peter. ed. The Rough Guide to Rock. Rough Guides. pp. 941–942. ISBN 1843531054

    Reynolds, Simon (2005). Rip It Up and Start Again: Postpunk 1978–1984. Faber and Faber. ISBN 0571252273
  8. ↑ “Spellbound: Siouxsie And The Banshees”. BBC Radio 4 (2012年). 2026年9月15日閲覧。
  9. ↑ “Siouxsie & the Banshees [uk charts]”. Official Charts Company. 2013年4月29日閲覧。
  10. ↑ “Juju 2018 black vinyl Siouxsie and the Banshees - UK - Europe”. Roughtrade Uk and Europe. 2026年9月15日閲覧。
  11. ↑ DiGravina, Tim. “Juju – Siouxsie and the Banshees”. AllMusic. 2026年9月15日閲覧。
  12. 1 2 Page, Betty (1981年6月27日). “Siouxsie & The Banshees: Juju ****1/2”. Rock's Backpages. 2026年9月15日閲覧。 (Paid subscription required要購読契約)
  13. ↑ Morley, Paul (27 June 1981). “Juju [album review]”. NME.
  14. ↑ Coleman, Mark; Randall, Mac (2004). “Siouxsie and the Banshees”. In Brackett, Nathan; with Hoard, Christian. The New Rolling Stone Album Guide. New York: Simon & Schuster. pp. 740–41. ISBN 978-0-7432-0169-8
  15. ↑ Graff, Gary; Durchholz, eds (1999). MusicHound Rock: The Essential Album Guide. Farmington Hills, MI: Visible Ink Press. p. 1022. ISBN 1-57859-061-2
  16. ↑ Mulholland, Garry (2006). Fear of Music: The 261 Greatest Albums Since Punk and Disco. Orion. ISBN 978-0-7528-6831-8
  17. ↑ Dimery, Robert (2005). 1001 Albums You Must Hear Before You Die. Cassell Illustrated
  18. ↑ Unsworth, Cathi (14 January 1995). “Baby, Come Back”. Melody Maker.
  19. ↑ “Mojo – 100 Greatest Guitarists of All Time”, Mojo, (June 1996)
  20. ↑ Marr, Johnny (November 2004). “Top Ten Guitarists”. Uncut.
  21. ↑ “Morrissey – KROQ Interview, 7-6-97 (pt. 4/4)”. morrissey-solo.com. 2013年3月11日閲覧。
  22. ↑ Deevoy, Adrian (October 2005). “Men of the Year”. GQ.
  23. ↑ Sinclair, David (May 1984). “The Best Guitar Breaks In The World [Our six favourite guitarists choose their 30-odd favourite guitar tracks]”. One Two Testing. "[Robert Smith:] 1 Jimi Hendrix "Purple Haze" Jimi Hendrix Experience (1967), 2 Hugh Cornwell "Hanging Around" The Stranglers (1977), 3 John McGeoch "Headcut" Siouxsie And The Banshees (1981), 4 Joe Strummer/Mick Jones "White Riot" The Clash (1977), 5 Lou Reed "White Light/White Heat" Velvet Underground (1967). "Headcut": "This is really harsh funk in a weird way – clever choppy chords. There's no real form to it as such, but some interesting sequences.""
  24. ↑ Scaroni (2011年9月2日). “You've got to find a voice”. Al tuntún. 2016年5月10日閲覧。
  25. ↑ Borjesson, Tore S (23 March 2003). “Red Hots verkliga frontman”. Aftonbladet. 2016年7月3日時点のオリジナルよりアーカイブ. 2026年9月18日閲覧.
  26. ↑ “Billy Corgan plays X tracks while hosting SiriusXM Lithium station”. crestfallen.com (2011年10月28日). 2013年8月31日時点のオリジナルよりアーカイブ。2026年9月18日閲覧。
  27. ↑ “The People You Dig. The Records They Love. Duane Denison, Musician, The Jesus Lizard”. Fidelityhigh.com. 2017年9月3日時点のオリジナルよりアーカイブ。2026年9月18日閲覧。
  28. ↑ “William Reid Spotify Playlist April 2021”. Spotify. 2026年9月18日閲覧。
  29. ↑ “The Best Thing I've Heard All Year - The Stars Pick Their fave racks of 2010 – Brett Anderson”. Mojo (2010年11月24日). 2011年3月16日時点のオリジナルよりアーカイブ。2026年9月18日閲覧。 “As reference points, I've been listening to lots of my old records, like... Siouxsie & The Banshees' Ju Ju”

引用文献

  • Paytress, Mark (2003). Siouxsie & the Banshees – The Authorised Biography. Sanctuary Publishing Limited. ISBN 1-86074-375-7