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(612533) 2002 XV93

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
(612533) 2002 XV93
ハッブル宇宙望遠鏡が2005年に撮影した(612533) 2002 XV93
ハッブル宇宙望遠鏡が2005年に撮影した(612533) 2002 XV93
仮符号・別名 2002 XV93
小惑星番号 612533
見かけの等級 (mv) 21.1[1]
分類 太陽系外縁天体(TNO)
冥王星族[2]
発見
初観測日 1990年10月16日[3]
発見日 2002年12月10日[4]
発見者 パロマー天文台[4]
軌道要素と性質
元期:TDB 2461000.5(2025年11月21.0日)[3]
軌道長半径 (a) 39.576 au[3]
近日点距離 (q) 34.588 au[3]
遠日点距離 (Q) 44.565 au[3]
離心率 (e) 0.126[3]
公転周期 (P) 90938.962 日[3]
(248.977 年[3])
軌道傾斜角 (i) 13.268°[3]
近日点引数 (ω) 161.763°[3]
昇交点黄経 (Ω) 19.170°[3]
平均近点角 (M) 298.059°[3]
次回近日点通過 ≈ 2070年3月20日[5]
天文学上の意義
惑星・準惑星・大型衛星以外の太陽系内天体としては史上初めて大気が検出された天体[6]
物理的性質
直径 470+44
−30
km[7]
549.2+21.7
−23.0
km[8]
スペクトル分類 H2O型(ボウル型)[9]
絶対等級 (H) 5.42 ± 0.46[8]
4.73 ± 0.02[10]
アルベド(反射能) 0.040+0.020
−0.015
[8]
表面温度 40 - 50 K[7]
(-233 - -223 ℃)
色指数 (B-V) 0.72 ± 0.02[8]
色指数 (V-R) 0.37 ± 0.02[8]
大気圧 100 - 200 nbar[7]
(0.01 - 0.02 Pa)
■Template (■ノート ■解説) ■Project

(612533) 2002 XV93とは、海王星軌道の外側の軌道を公転しているエッジワース・カイパーベルト内に位置する太陽系外縁天体 (TNO) の一つである[3]。海王星との2:3の軌道共鳴により、冥王星族に分類される[2]。掩蔽観測から表面に大気が存在していることが知られている[6][7]。

発見と名称

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2002年12月10日にアメリカ合衆国のパロマー天文台による観測から新天体として正式に発見されたが[4]、正式に発見が公表されたのは2003年1月5日に小惑星センターより発行された小惑星電子回報 (MPEC) であり[11]、その後の観測記録の精査から1990年から1992年にかけても同じくパロマー天文台によって3回観測されていたことが分かっている[4][12]。発見から約20年後の2022年3月28日に小惑星センターにより発行された小惑星回報「M.P.C. 139896」にて、正式に小惑星番号612,533番が付与された[13]。小惑星番号が付与されたことで、規則上は固有名の命名も可能となったが、2026年5月時点では小惑星番号と仮符号における名称のみが与えられており、公式に命名された固有名は無い[4]。

国際天文学連合 (IAU) の小天体の命名に関するワーキンググループ (WGSBN) による固有名の命名ガイドラインでは、冥王星族に分類される太陽系外縁天体については神話上の冥界に因んだ名称を命名する指針が示されている[14]。後述の 2002 XV93 における大気の研究を行った国立天文台の有松亘はロイター通信でのインタビューにおいて 2002 XV93 の名称について「チーム内では通常は単に XV93 と呼んでいたが、便利ではあるものの正直言ってあまり魅力的ではなかった。個人的には沖縄県の石垣島天文台で働いているので、いつか沖縄の神話にちなんだ名前、例えば沖縄の伝統における創造神である阿摩美久などと名付けられればとても嬉しい。」と述べている[15]。2002 XV93 のパロマー天文台における発見に関わったマイケル・ブラウンは、有松らによる大気の発見があるまで 2002 XV93 には目立った特徴が無かったため、特に固有名が命名されるようなことは無かったと述べている[16]。

軌道

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(612533) 2002 XV93 の軌道(白線)を表した図

2002 XV93 は、海王星が太陽の周りを3回公転する間に自身も2回公転するという軌道共鳴の関係にある冥王星族に分類される太陽系外縁天体である[2][7]。太陽からの軌道長半径は約 39.6 au(約59億2000万 km)で、約249年の公転周期で軌道を公転している。軌道離心率は約 0.126 で、最も太陽へ接近する近日点では太陽から約 34.6 au(約51億7000万 km)まで近づき、逆に太陽から最も離れる遠日点では太陽から約 44.6 au(約66億7000万 km)まで遠ざかる[3]。次に 2002 XV93 が近日点に到達するのは2070年3月20日頃と計算されている[5]。

しかし、巨大惑星による摂動の影響を受けることで、太陽系外縁天体のように小規模な天体はその軌道要素は長い時間スケールでは変化し続けることが知られており[17][18]、2002 XV93 の場合、1000万年の間に軌道長半径は 39.1 - 39.9 au の間で変動しているとみられている[19]。

物理的特性

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大きさ

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2002 XV93 と冥王星、そして同規模の大きさを持つが非球形の形状で大気を持たない小惑星である (4) ベスタの大きさを比較した画像。

2024年に行われた掩蔽観測の結果によると、形状が球形になっていると仮定した際の 2002 XV93 の直径は 470+44
−30
km と推定された[7]。これは月の約7分の1、冥王星の約5分の1に相当する[20]。2002 XV93 の質量、密度、形状については分かっていないが、他の同規模の太陽系外縁天体から推測することができる[7]。2026年に公表された研究では、密度をそれぞれ冥王星の衛星であるカロンと直径が約 400 km[21] 余りと推定されている太陽系外縁天体 (38628) フヤと同等の 1.0 - 1.5 g/cm3 と仮定した。直径が数百 km クラスと比較的小さいため、この研究では 2002 XV93 の形状は球形にはなっていないと予想している[7]。

マイケル・ブラウンや Noemi Pinilla-Alonso などの一部の天文学者は、2012年に公表されていた、さらに大きな直径推定値に基づき、2002 XV93 は理論的には球形になり得るとして、準惑星に分類できる可能性があると示唆していた[22][23]。マイケル・ブラウンは、推定される直径が 200 km 以上の太陽系外縁天体について、準惑星への分類可能性の度合いを5段階で示しているが、2002 XV93 については3段階目のおそらく (likely) 準惑星に分類できる天体と評価していた[24]。この古い推定値ではハーシェル宇宙望遠鏡とスピッツァー宇宙望遠鏡による中赤外線から遠赤外線観測での熱放射測定に基づき大きさが推定されており、この時は 2002 XV93 の直径は549.2+21.7
−23.0
kmと測定されていた[8]。

表面と組成

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ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡によって観測された、水の氷を豊富に含む3つの冥王星族の太陽系外縁天体の近赤外線スペクトル。一番下の線が 2002 XV93 のスペクトルである。これら3つの天体全てに水と二酸化炭素の氷が存在することが分かっている。

2002 XV93の可視光光度と赤外線熱放射による測定結果から、その表面の色合いは暗く、幾何アルベドは 0.040+0.020
−0.015
と非常に低いことが示唆されている[7][8]。しかし、この値は2012年に求められた絶対等級 (H) 5.42 ± 0.46等級と先述の熱放射から導出された直径推定値 549.2+21.7
−23.0
km を用いて算出されたものである[8]。その後の測定では、絶対等級 (H) は4.73等級とそれまでよりも明るいとされ[3][10]、直径が 470+44
−30
km とより小さいことが判明したことで、2002 XV93のアルベドは以前よりも高いことが示唆される。しかし、2026年5月現在、2002 XV93 の絶対等級 (H) の新しい測定値を用いてアルベドや直径を再計算した査読済みの研究はない[7]。

2022年にジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡 (JWST) による近赤外線での分光観測により、2002 XV93 の表面は非晶質相と結晶相の両方の水の氷に富んでいることが明らかになった[25]。2002 XV93 の表面における水の氷の豊富さは、近赤外線スペクトルにおいて1.5、2.0、3.0、4.5 μm の波長域に吸収帯が存在すること、および、3.1 μm の波長域に水の氷の結晶に起因する反射ピークが存在することによって示された[25]。エッジワース・カイパーベルトでは、水の氷の結晶は宇宙線の照射によって非晶質相の水の氷に変化するが、これら両者の相は平衡状態にある、すなわち双方の量は一定に保たれていると考えられている[25]。

2002 XV93 は、2004 EW95 や (455502) 2003 UZ413(英語版) 等を含む他の冥王星族の太陽系外縁天体と同様に水の氷に富む表面組成を有している[25]。これらの太陽系外縁天体の近赤外線スペクトルには、約 3.0 μm の波長域において顕著なボウル状の水の氷の吸収帯を示すため、Prominent water 型またはボウル型と呼ばれる分類に属する[9][25]。水に加えて、ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡による観測では 2002 XV93 の表面に凍った二酸化炭素も検出されていたが[25]、エッジワース・カイパーベルトにおける低温の環境下では気体の形態で存在できる超揮発性物質であるメタンや窒素、一酸化炭素などが存在している兆候は見られなかった[7]。2002 XV93 の表面にこうした超揮発性物質がないことは、それらのほとんどがすでに蒸発して宇宙空間へ散逸したことを示唆している[7]。

大気

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2026年5月、国立天文台の有松亘とアマチュア天文家らによる研究チームが 2002 XV93 の表面に薄い大気が存在していることが確認されたと発表し、その研究結果が科学雑誌ネイチャーアストロノミーに掲載された[7]。

有松らの研究チームは 2002 XV93 の軌道要素とガイア計画の第3版データリリースを用いて、2002 XV93 が2024年1月10日にぎょしゃ座にある15.8等級の恒星 Gaia DR3 940732910252854272 を日食のように覆い隠す掩蔽を発生させ、それが日本を含む東アジアで観測される可能性があることを独自に予報し、観測を行った[6][7]。このとき、2002 XV93 は太陽から約57億 km 離れた場所に位置していた[20]。なお、同様の予報は欧州研究評議会(英語版)の Lucky Star プロジェクトによる計算でも発表されていた[7][26]。この観測は長野県の木曽観測所、京都大学、福島県(アマチュア天文家による観測[27])、そして岡山県の京都大学岡山天文台の4ヵ所で実施されることになった。その結果、当日の天候が悪かった京都大学岡山天文台を除く3ヵ所において掩蔽の観測に成功し、特に木曽観測所と京都大学で完全な観測データが得られた[7]。

2024年1月10日に発生した (612533) 2002 XV93 の掩蔽観測の結果[7]
観測地点木曽観測所京都大学福島県京都大学岡山天文台
所在地 長野県上松町京都府京都市福島県田村郡岡山県浅口市
カメラレンズ口径 1.05 m
(トモエゴゼン)
0.20 m
(SoCoSoCo PONCOTS)
0.25 m3.78 m
観測データの取得 成功 (Positive)成功 (Positive)不完全 (Negative)観測実施せず(悪天候)
掩蔽継続時間 16.53 ± 0.08 秒18.0 ± 0.9 秒--
弦(英語版)の長さ 458 ± 22 km422 ± 2 km--
2024年1月10日の 2002 XV93 による掩蔽で観測された恒星の光度曲線。大気が存在しないならば白点線で描かれた急激な光度の変化が生じるが、木曽観測所(緑色)での観測で得られた光度曲線を見ると緩やかに減光と増光を起こしているのが分かる。不完全なデータとなった福島県(桃色)では掩蔽はほぼ発生せず、2002 XV93 の大気部分のみを通過したと考えられる。

大気が存在しない天体の場合、この掩蔽の発生時と終了時に恒星の光度は一瞬で変化するが[6][20]、実際の掩蔽観測で得られた光度曲線では発生時と終了時に恒星が約1.5秒かけて緩やかに変化する様子が解析から明らかになった。この観測結果は大気圧が 100 - 200 nbar の大気が 2002 XV93 に存在していれば説明可能であることが判明した[7]。太陽系内において惑星や冥王星などの準惑星、そしてタイタンなどの大型の衛星を除く天体において大気が検出されるのはこれが初めてであり、また、冥王星以外の太陽系外縁天体としても初めて、そして最も太陽から遠く離れた太陽系内天体で大気が発見された事例となった[6][7]。この大気圧は地球の約500万分の1から1000万分の1、冥王星の大気の約50分の1から約100分の1に相当する非常に薄い大気ではあるが、木星の衛星であるエウロパの大気と比較すると100倍から200倍[28]、月の大気(3×10−15 bar[29])と比較すると約3300万倍から約6600万倍の大気圧となる。この緩やかな恒星の光度の変化が起きる他の要因としては環や、塵で出来た殻状の構造が周囲に存在していることが挙げられているが、その可能性は低いと考えられている[7][30]。2002 XV93 の半径が 235 km と推定されているのに対して、恒星の緩やかな光度の変化を起こしていると思われる大気成分による屈折は 2002 XV93 の中心から 230 - 270 km の範囲内で発生していることが観測されている[7]。2002 XV93 で気体の状態で存在できると想定される超揮発性物質であるメタンや窒素、一酸化炭素のいずれかが主成分であったとしても、2002 XV93 の光度曲線データを説明できると研究では述べられている[7][31]。具体的に何の物質が大気に含まれているかは分かっていないが、冥王星の大気と同様に上層大気でメタンガスの加熱による熱逆転が起きている可能性が研究では示唆されている[7]。

2002 XV93 は表面の重力が地球上での 1% 程度しかなく[20]、これほど重力が小さいと短期間で宇宙空間へ大気成分が拡散されてしまうため、表面に大気が存在するとはそれまでは考えられていなかった[6][7]。観測で詳しく確かめられたという報告も無く、研究論文内でこの発見は全球的な高密度の大気は大型の天体にのみ形成されるという従来の考え方を改める必要があることを意味すると評されている[6][7]。先述のジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡による観測では超揮発性物質が存在する兆候はみられなかったので、表面から昇華して気体となり大気を形成している可能性は低いとみられている[7]。そのため、この大気は表面に大気成分を供給する氷の火山のような物質の放出が生じているものによるか、最近発生した彗星などによる天体衝突の影響で一時的に存在している可能性が示されている[6][7][31][32]。今後はジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡による観測から大気成分やその起源の解明を目指す方針が示されている[6][33]。

出典

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関連項目

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外部リンク

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