(768325) Geyagugv

ウィキペディアから、無料の百科事典
(和名未詳)
768325 Geyagugv
2015年1月17日にダークエネルギーサーベイ(DES)が撮影したGeyagugvの発見時の画像
2015年1月17日にダークエネルギーサーベイ(DES)が撮影したGeyagugvの発見時の画像
仮符号・別名 2015 BP519[1]
Caju(愛称)[注釈 1][2]
小惑星番号 768325[1]
分類 太陽系外縁天体(TNO)[1]
ESDO[3]
極端な太陽系外縁天体(ETNO)[4]
発見
発見日 2015年1月17日[4]
発見者 ダークエネルギーサーベイ(DES)[4]
発見場所 セロ・トロロ汎米天文台[4]
軌道要素と性質
元期:2026年6月9日(JD 2461200.5)[1]
軌道長半径 (a) 486.199 au[1]
近日点距離 (q) 35.295 au[1]
遠日点距離 (Q) 937.103 au[1]
離心率 (e) 0.9274[1]
公転周期 (P) 3,915,797 日(10720.868 年)[1]
軌道傾斜角 (i) 54.082°[1]
近点引数 (ω) 347.760°[1]
昇交点黄経 (Ω) 135.314°[1]
平均近点角 (M) 358.917°[1]
次回近日点通過 2058年8月31日頃[5] ± 1か月
衛星の数 0
物理的性質
平均直径 524 km(推定)[6]
516 km(推定)[3]
400–700 km(推定)[7]
719+309
−208
 km
(想定アルベドから)[8]
スペクトル分類 g–r = 0.79±0.17[7]
r–i = 0.19±0.12
r–z = 0.42±0.15
i–z = 0.23±0.15
g–r =0.653±0.588[8]
g–i = 0.581±0.622
g–z = 0.608±0.846
絶対等級 (H) 4.32[4][1]
アルベド(反射能) 0.08(推定)[6]
0.124(推定)[3]
0.07 - 0.21(推定)[7]
0.057(推定)[9][8]
■Template (■ノート ■解説) ■Project

(768325) Geyagugv[注釈 2](仮符号: 2015 BP519)とは、太陽系外縁部に位置する散乱円盤天体であり、非常に軌道離心率が大きく、かつ軌道傾斜角も大きい軌道を持つ「極端な太陽系外縁天体」である[7]。GeyagugvはESDO(Extreme Scattered Disc Objects)に分類され[3]、仮説上の第9惑星(プラネット・ナイン)の存在を予測する根拠となった一連の極端な天体群に含まれる。また、それらの天体群の中で、最も大きな軌道傾斜角を持つ天体でもある[注釈 1]。

Geyagugvの正確な直径は不明であるが、400 - 700 kmの範囲内にあると推定されている[7][8]。

歴史

発見と観測

セロ・トロロ汎米天文台に設置されている口径4mのビクター・M・ブランコ望遠鏡(ダークエネルギーカメラ(DECam)を搭載)

Geyagugvは、2015年1月17日にチリのセロ・トロロ汎米天文台(W84)に設置されているダークエネルギーサーベイ(DES)の天文学者らによって発見された[10][4]。Geyagugvの観測弧(英語版)は、2014年11月27日に行われたプレカバリー(過去の観測データの再発見)にまで遡る。この観測は、チリのセロ・トロロ汎米天文台に設置されているビクター・M・ブランコ望遠鏡に搭載された観測装置であるDECamを用いて、DESの天文学者らによって実施されたものである[4]。この発見については、2018年にDESの天文学者らが発表した論文の中で報告されている[7]。

名称

「Geyagugv」という名称は、チェロキー族の伝承に登場する形而上学的な存在である「Geyagugv(ᎨᏯᎫᎬ)」にちなんで命名された[11]。Geyagugvは、祈りの際に癒やしや幸福をもたらすよう呼びかけられる存在である。命名の由来に関する記述によれば、Geyagugvは「galvnati(ᎦᎸᎾᏘ [ɡalə̃ːnatʰi])」と呼ばれる最上層、すなわち天空の領域に住まうとされており、チェロキー族の人々と創造主との間を取り持つ数多くの使者の一人である[11]。Geyagugvは、大部分の時間において太陽系の最外縁部に位置しているが、周期的に惑星の存在する内側の領域へとやって来る。この名称は、2026年10月19日に国際天文学連合(IAU)のWGSBN(Working Group for Small Body Nomenclature)によって公表された。

Geyagugvは、命名される前は仮符号である「2015 BP519」や、内部的な愛称である「Caju」と呼称されていた。「Caju」[注釈 3]という愛称は、2018年にダークエネルギーサーベイ(DES)のチームがこの天体の発見を発表した際に付けられたものである[注釈 1]。

軌道と分類

軌道特性

Geyagugvは、35.2 - 821 au離れた距離で太陽の周囲を公転しており、公転周期は8,856年(3,234,488日)、軌道長半径は428 auである。Geyagugvの軌道は0.92という極めて高い軌道離心率を持ち、黄道に対して54度の傾斜角を有している[1]。そのため、既知の極端な太陽系外縁天体(ETNO)の中でも特異な存在である可能性が高い[1][12]。GeyagugvはESDO(Extreme Scattered Disc Objects)に分類されている[3]。

プラネット・ナイン仮説

Geyagugvは、かつて仮説上の第9惑星(プラネット・ナイン)の存在を予測する根拠となった極端な太陽系外縁天体に分類される天体である[注釈 1]:13。この分類には、近日点距離が30 auを超え、かつ軌道長半径が250 auを超える天体が10個以上存在しており、その中でもGeyagugvは最も軌道傾斜角が大きい。その後、de la Fuente Marcos(2018)による査読前の研究において、Geyagugvの現在の軌道の向きは、他の極端な太陽系外縁天体に見られるような軌道のまとまりを生み出しているメカニズムのみでは説明が困難であることが指摘された。これは、Geyagugvの軌道角の集中が、プラネット・ナインの影響によるものとは考えにくいことを示唆している[12]。しかし、現在の軌道の向きがどうであれ、その高い軌道傾斜角は、BatyginとMorbedelli(2017)がプラネット・ナインによって生み出されると予測した「大きな軌道長半径と高い軌道傾斜角を持つ天体」という分類には合致しているように見受けられる。

物理的特性

大きさとアルベド

Geyagugvの発見に関する論文では、アルベドを0.07 - 0.21と仮定した場合、その直径は400 - 700 kmであると推定されている[7]。一方、マイケル・ブラウン及びJohnston's Archiveによると、アルベドをそれぞれ0.08及び0.124と仮定した場合、Geyagugvの直径は524 km、あるいは516 kmとされる[6][3]。2025年のより新しい研究では、幾何アルベドの中央値を用いた推定により、直径は719+309
−208
 km
と算出されており、これは従来の想定よりも大きな値である[8]。この研究で用いられたアルベドは、Müllerらによる論文に基づく0.057という値である[9][8]。

スペクトルと表面

Geyagugvの色指数は、g-r 0.79±0.17、r-i 0.19±0.12、r-z 0.42±0.15、i-z 0.23±0.15である[7]。Geyagugvの色は、中程度に赤い[7]。2025年に行われたより新しい研究によると、その色指数はg-r 0.653±0.588、g-i 0.581±0.622、g-z of 0.608±0.846となっている[8]。

今後の観測予定

2018年の時点では、測光観測からGeyagugvの自転光度曲線は得られていない。そのため、自転周期、自転軸の向き、形状は不明である[1]。また、高解像度望遠鏡による撮像も行われていないため、衛星の有無も確認されていない[13]。2026年にはハッブル宇宙望遠鏡による撮像が予定されており、これにより、ある程度の大きさを持つ衛星が存在するかどうかが判明する予定である[13]。

脚注

注釈

  1. 1 2 3 4 5 「Caju」という愛称は、ミシガン大学のJuliette Becker、Fred Adams、Tali Khain、Stephanie Hamilton、David Gerdesらによるダウンロード可能なパワーポイントプレゼンテーション「Evaluating the Dynamical Stability of Outer Solar System Objects in the Presence of Planet Nine」の中で言及されている。
  2. ↑ 文字「v」は鼻母音である。チェロキー語の正書法を参照。
  3. ↑ 発見者らは、この名称が使われた理由やその意味について説明していない[2][注釈 1]。この愛称は、カシューナッツを指すポルトガル語の「caju」に由来している可能性がある。

出典

  1. 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 “JPL Small-Body Database Browser: (2015 BP519)”. ジェット推進研究所. 2018年5月10日閲覧。
  2. 1 2 Anderson, Paul Scott (2018年5月27日). “Does Planet Nine exist? Astronomers point to new evidence”. EarthSky. 2026年10月19日閲覧。
  3. 1 2 3 4 5 6 “List of Known Trans-Neptunian Objects”. Johnston's Archive (2018年10月7日). 2018年10月23日閲覧。
  4. 1 2 3 4 5 6 7 “2015 BP519”. Minor Planet Center. 2018年5月10日閲覧。
  5. ↑ Observer Location: @sun (Perihelion occurs when deldot changes from negative to positive. Uncertainty in time of perihelion is 3-sigma.)
  6. 1 2 3 Brown, Michael E.. “How many dwarf planets are there in the outer solar system?”. カリフォルニア工科大学. 2018年10月23日閲覧。
  7. 1 2 3 4 5 6 7 8 9 Becker, J. C.; Khain, T.; Hamilton, S. J.; Adams, F. C.; Gerdes, D. W.; Zullo, L. et al. (August 2018). “Discovery and Dynamical Analysis of an Extreme Trans-Neptunian Object with a High Orbital Inclination”. The Astronomical Journal 156 (2): 17. arXiv:1805.05355. Bibcode:2018AJ....156...81B. doi:10.3847/1538-3881/aad042.
  8. 1 2 3 4 5 6 7 Ferreira, Feliphe S.; Camargo, Julio I. B.; Boufleur, Rodrigo; Banda-Huarca, M. V.; Pieres, Adriano; Peixoto, Viviane F.; Assafin, Marcelo; Bernardinelli, P. H. et al. (2025-04-23). “Year six photometric measurements of known Trans-Neptunian Objects and Centaurs by the Dark Energy Survey”. Monthly Notices of the Royal Astronomical Society 540 (1): 460. arXiv:2504.16927. Bibcode:2025MNRAS.540..460F. doi:10.1093/mnras/staf650.
  9. 1 2 Müller, Thomas; Lellouch, Emmanuel; Fornasier, Sonia (2020). “Trans-Neptunian objects and Centaurs at thermal wavelengths”. The Trans-Neptunian Solar System. Elsevier. pp. 153–181. arXiv:1905.07158. doi:10.1016/b978-0-12-816490-7.00007-2. ISBN 978-0-12-816490-7
  10. ↑ “List Of Centaurs and Scattered-Disk Objects”. Minor Planet Center. 2018年2月9日閲覧。
  11. 1 2 “WGSBN Bulletin 6, #17”. WGSBN Bulletin (International Astronomical Union) 6 (17): 11. (2026-10-19) 2026年10月19日閲覧。.
  12. 1 2 de la Fuente Marcos, Carlos; de la Fuente Marcos, Raúl (September 2018). “A Fruit of a Different Kind: 2015 BP519 as an Outlier Among the Extreme Trans-neptunian Objects”. Research Notes of the American Astronomical Society 2 (3): 167. arXiv:1809.02571. Bibcode:2018RNAAS...2c.167D. doi:10.3847/2515-5172/aadfec.
  13. 1 2 Proudfoot, Benjamin (August 2025). “A Search For The Moons of Mid-Sized TNOs”. Mikulski Archive for Space Telescopes (Space Telescope Science Institute): HST Proposal 18010. Cycle 33 2025年8月17日閲覧。.

関連項目

外部リンク