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1.1.1-プロペラン

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
(1,1,1-プロペランから転送)
[1.1.1]プロペラン
[1.1.1]Propellane
物質名
識別情報
3D model (JSmol)
ChemSpider
性質
C5H6
モル質量 66.103 g·mol−1
融点 −10 °C (263 K)[1]
特記無き場合、データは標準状態 (25 °C [77 °F], 100 kPa) におけるものである。
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[1.1.1]プロペラン ([1.1.1]propellane、IUPAC命名法では Tricyclo[1.1.1.01,3]pentane ) は 、有機化合物であり、最も単純なプロペランである。化学式C5H6またはC2(=CH2)3の炭化水素である。3つの三員環が1つのC-C結合を共有する分子構造を持つ。

[1.1.1]プロペランは、非常に歪みが大きい分子である。2つの中央炭素原子の結合は、逆四面体型であり、中央の結合の長さは160 pmである。結合の強さには議論があり、59-65 kcal/molから強度は全くないという説まである。ビラジカル状態のエネルギーは、80 kcal/mol高いと計算されている。この化合物は非常に不安定で、114℃になると、5分の半減期で自発的に3-メチレンシクロブテンに異性化する。歪みエネルギーは、102 kcal/molと推定されている。

この分子中の結合の種類は電荷シフト結合の観点から説明されてきた[2]。

性質

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この化合物の液体は極めて不安定で、0℃以上の温度で自発的に重合してスタファンに変化してしまう[3]が、液体窒素中では固体として保存できる[4]。また、融点は報告されている[1]。

エーテルを溶媒とした希薄溶液は冷蔵庫で数日間保存できるが、自発的な重合により約1週間後には溶液中の量が著しく減少する[4]。

気体状態では110℃で数分間安定であり、求電子剤が存在しない場合は、さらに高い温度でも安定である可能性があるという兆候がある[4]。 114℃になると、5分の半減期で自発的に3-メチレンシクロブテンに異性化する[5]。

合成

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[1.1.1]プロペランは、1982年にケネス・ワイバーグとフレデリック・ウォーカーによって、以下のスキームで初めて合成された[6]。

Scheme 1. Synthesis of [1.1.1]propellane

まず、ビシクロ[1.1.1]ペンタンの1,3-ジカルボン酸 1がハンスディーカー反応により対応するジブロミド 2に変換され、次に、n-ブチルリチウムとのカップリング反応が生じる。最終生成物 3は、-30℃でカラムクロマトグラフィーによって単離される。

しかし、ずっと単純な合成方法も発表されている[7]。その方法では、まず3-クロロ-2-(クロロメチル)プロペン 6のアルケン結合にジブロモカルベンが付加し、その後、メチルリチウムによって脱プロトン化され、求核置換反応が生じる 7[8]。単離はされず、-196℃の溶液中に留まる。

反応

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酢酸付加

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[1.1.1]プロペランは自発的に酢酸と反応し、メチレンシクロブタンエステルを生じる(上記の4)。

重合

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中央のC-C結合が解離し、隣のモノマー単位と結合することにより、[1.1.1]プロペランは重合し、いわゆるスタファンを形成する[3]

ギ酸メチルや過酸化ベンゾイルによってラジカル重合が始まり、様々なオリゴマーが生成する。n-ブチルリチウムとのアニオン重合では、完全重合生成物が得られる。ポリマーのX線回折により、繋がったC-C結合の結合長は、わずか148 pmであることが示された。

架橋した[3.3.1]プロペランとみなすこともできる1,3-デヒドロアダマンタンも同様に重合する。

大学入試問題としての出題

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2026年の東京大学の入学試験に、化学の問題の題材として出題された[9]。「物理的・化学的性質に応じて分類する。大気圧下において沸点が100℃ より低いものをすべて選び、記号で答えよ。」という出題があり、[1.1.1]プロペランが選択肢として含まれていた。なお、この出題に関して東京大学は、出題の意図は示しているが、解答例は示していない[10]。実際、[1.1.1]プロペランは純物質(液体)としては0℃以上で自発的に重合する[4]。

出典

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  1. 1 2 Seiler, Paul (1990). “The Crystal Structure of [1.1.1] Propellane at 138 K”. Helvetica Chimica Acta 73 (6): 1574–1585. doi:10.1002/hlca.19900730603.
  2. ↑ Wu, Wei; Gu, Junjing; Song, Jinshuai; Shaik, Sason; Hiberty, Philippe C. (2009). “The Inverted Bond in [1.1.1]Propellane is a Charge-Shift Bond”. Angew. Chem. Int. Ed. 48: 1407–1410. doi:10.1002/anie.200804965.
  3. 1 2 Piotr Kaszynski and Josef Michl (1988), [n]Staffanes: a molecular-size "Tinkertoy" construction set for nanotechnology. Preparation of end-functionalized telomers and a polymer of [1.1.1]propellane J. Am. Chem. Soc.; volume 110 issus 15, pp. 5225 - 5226; doi:10.1021/ja00223a070
  4. 1 2 3 4 Levin, Michael D.; Kaszynski, Piotr; Michl, Josef (2000-01-01). “Bicyclo[1.1.1pentanes, [ n ]Staffanes, [1.1.1]Propellanes, and Tricyclo[2.1.0.0 2,5 ]pentanes”] (英語). Chemical Reviews 100 (1): 169–234. doi:10.1021/cr990094z. ISSN 0009-2665.
  5. ↑ Michl, J.; Radziszewski, G. J.; Downing, J. W.; Wiberg, K. B.; Walker, F. H.; Miller, R. D.; Kovacic, Peter; Jawdosiuk, Mikolaj et al. (1983-01-01). “Highly strained single and double bonds” (英語). Pure and Applied Chemistry 55 (2): 315–321. doi:10.1351/pac198855020315. ISSN 1365-3075.
  6. ↑ K. B. Wiberg, F H. Walker (1982), [1.1.1]Propellane. J. Am. Chem. Soc. volume 104 issue 19, pp. 5239-5240; doi:10.1021/ja00383a046
  7. ↑ J. Belzner, U. Bunz, A. D. Schluter, G. Szeimies et al. "Concerning the synthesis of [1.1.1]Propellane" Chem. Ber. volume 122, pp.397-398
  8. ↑ (1998) Organic Syntheses, Coll. Vol. 10, p. 658 (2004); Vol. 75, p.98 Online article.
  9. ↑ 令和8(2026)年度第2次学力試験問題 - 東京大学。2026年6月7日閲覧。
  10. ↑ 令和8(2026)年度解答等の公表 - 東京大学。2026年6月7日閲覧。

関連項目

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