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パラジクロロベンゼン

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
パラジクロロベンゼン
パラジクロロベンゼンの構造式
パラジクロロベンゼンの構造式
パラジクロロベンゼンの球棒モデル
パラジクロロベンゼンの球棒モデル
ジクロロメタンから紙上で結晶化したパラジクロロベンゼン
物質名
識別情報
3D model (JSmol)
バイルシュタイン 1680023
ChEBI
ChEMBL
ChemSpider
ECHA InfoCard 100.003.092 ウィキデータを編集
EC番号
  • 203-400-5
Gmelin参照 49722
KEGG
RTECS number
  • CZ4550000
UNII
国連/北米番号 3077
性質
C6H4Cl2
モル質量 147.00 g·mol−1
外観 白色または透明の結晶[1]
匂い 防虫剤のような[1]
密度 1.25 g/cm3, 固体
融点 53.5 °C (128.3 °F; 326.6 K)
沸点 174 °C (345 °F; 447 K)
10.5 mg/100 mL (20 °C)
蒸気圧 1.3 mmHg (20 °C)[1]
磁化率 −82.93·10−6 cm3/mol
危険性
労働安全衛生 (OHS/OSH):
主な危険性
発がん性物質の疑い
GHS表示:
急性毒性(低毒性)経口・吸飲による有害性水生環境への有害性
Warning
H302, H315, H317, H319, H332, H335, H351, H410
P201, P202, P261, P264, P270, P271, P272, P273, P280, P281, P301+P312, P302+P352, P304+P312, P304+P340, P305+P351+P338, P308+P313, P312, P321, P330, P332+P313, P333+P313, P337+P313, P362, P363, P391, P403+P233, P405, P501
NFPA 704(ファイア・ダイアモンド)
NFPA 704 four-colored diamondHealth 2: Intense or continued but not chronic exposure could cause temporary incapacitation or possible residual injury. E.g. chloroformFlammability 2: Must be moderately heated or exposed to relatively high ambient temperature before ignition can occur. Flash point between 38 and 93 °C (100 and 200 °F). E.g. diesel fuelInstability 0: Normally stable, even under fire exposure conditions, and is not reactive with water. E.g. liquid nitrogenSpecial hazards (white): no code
2
2
0
引火点 66 °C (151 °F; 339 K)
爆発限界 2.5%-?[1]
致死量または濃度 (LD, LC)
500 mg/kg (ラット, 経口)
2950 mg/kg (マウス, 経口)
2512 mg/kg (ラット, 経口)
2830 mg/kg (ウサギ, 経口)[2]
LDLo (最小致死量)
857 mg/kg (ヒト, 経口)
4000 mg/kg (ラット, 経口)
2800 mg/kg (モルモット, 経口)[2]
NIOSH(米国の健康曝露限度):
TWA 75 ppm (450 mg/m3)[1]
Ca[1]
Ca [150 ppm][1]
関連する物質
関連物質 1,2-ジクロロベンゼン
1,3-ジクロロベンゼン
特記無き場合、データは標準状態 (25 °C [77 °F], 100 kPa) におけるものである。
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パラジクロロベンゼン[3](パラジクロルベンゼン、para-dichlorobenzene、1,4-ジクロロベンゼン)は分子式 C6H4Cl2、分子量 147 のベンゼンの二塩化物である。パラ-DCB、p-DCBとも呼ばれる。CAS登録番号は106-46-7。

物性

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融点53℃、沸点174℃。常温で、昇華により強い臭気を発する白色の固体である。空気中では固体から気体へゆっくりと昇華する。臭いが強いが故に、空気中に極微量あるだけでも嗅ぎ分けることができる。主な用途は防虫剤およびトイレの消臭ブロックである。

生産

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p -DCBは、塩化第二鉄を触媒としてベンゼンを塩素化することによって生成される。

C6H6 + 2 Cl2 → C6H4Cl2 + 2 HCl

主な不純物は1,2異性体である。この化合物は、比較的高い融点53.5 ℃を利用して分別結晶化により精製することができる。異性体のジクロロベンゼンとクロロベンゼンは室温よりかなり低い温度で融解する。[4]

利用

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消毒剤、消臭剤、殺虫剤

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パラジクロロベンゼンボールは、小便器消毒剤として販売されている。

衣服を食い荒らす虫、カビなどを忌避するための防虫剤や、トイレ、ゴミの容器などの消臭剤として用いられる。[5]防虫剤として、ナフタレンの可燃性が高いため、従来から使われているナフタレンの代替品として使用されている(ただし、両方の化学物質のNFPA 704等級は同じである)。日本語圏ではパラゾールやネオパラエース、英語圏では Paramoth、Para crystals、Paracide などの商品名で知られている。これらの用途におけるその有用性は、 p -DCBの水への溶解度が低く、揮発性が比較的高いこと、つまり室温付近で容易に昇華することに起因する。[4]

教育

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日本の中学校では、かつて理科(第1分野)の融点の実験に用いられることがあったが、生徒の健康状態への影響に配慮し、パルミチン酸などに変更された。

他の化学物質の前駆体

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ニトロ化により、市販の染料や顔料の前駆体である1,4-ジクロロニトロベンゼンが得られる。 [6] p-DCBの塩素部位は、ヒドロキシルアミン基や硫化物基で置換することができる。 また、非常に僅かではあるが、スーパーエンジニアリングプラスチックの一種であるポリフェニレンスルフィドの原料としての用途もある。[7]

ポリフェニレンスルフィドの合成

耳垢溶解剤として

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2%パラジクロロベンゼンは、耳垢栓塞の治療のための耳垢溶解剤として使用される。[8]

娯楽的乱用

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p-DCBの娯楽的乱用が報告されており、通常は小便器用芳香剤の使用によるものである。[9]一般的には吸入される。乱用による死亡例も記録されている。

健康被害と対策

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当該物質の輸送コンテナ。複数の危険物ラベルが貼られており、その物質が環境に及ぼす危険性が明記されている。

p-DCBは水に溶けにくく、土壌微生物によって容易に分解されない。多くの炭化水素と同様に、p-DCBは[[[親油性]]であり、人や動物が摂取すると脂肪組織に蓄積される。

米国保健福祉省(DHHS)と国際がん研究機関(IARC)は、p-DCBは発がん性物質であると合理的に予測できると判断した。[10]これは動物実験で示されているが、本格的なヒト試験は実施されていない。[11]

防虫剤などのパラジクロロベンゼン製剤は、通常の使用の範囲ではヒトへの健康被害の根拠は示されていない。しかし、非常に高濃度の p-DCB の使用は、目眩、頭痛、肝臓障害を起こす。一部の症例では、含有製品を数ヶ月から数年にわたり使用していた。

p-DCB が生命に異常をきたすという根拠はまだ無い。母乳中のジクロロベンゼンを検出したという研究はあるが、p体については特に測定されていない。

家庭の防虫剤、トイレの消臭剤の誤飲など、子供は大人よりもこの物質にさらされるリスクが高い。子供に対する同物質の影響についての詳細は乏しいが、恐らく大人と同様だと思われる。p-DCB を含む製品を皮膚に接触させたりしないように注意する。防虫剤、トイレの消臭剤等は幼児の手の届かない所に保存する。家庭用の化学製品は専用の容器に保存する。特に子供が飲食物と誤解しやすい容器(ペットボトルなど)には保存すべきではない。万一、誤食があった場合は、直ちに病院に行くこと。p-DCB の誤飲・誤食の応急処置には牛乳を飲ませてはいけない。p-DCB は脂溶性のため乳脂肪分に取り込まれ、これが体内に吸収され易くなってしまうので危険である。

パラジクロロベンゼンへの曝露を測定する試験として最も一般的な方法は、p-PCB の分解生成物である2,5-ジクロロフェノールの尿や血液中の濃度を測定するものである。尿中に2,5-ジクロロフェノールが存在すると、1日ないし2日以内に p-DCB に曝露されたことがわかる。p-DCB の血液中の濃度の測定はそれほど一般的ではない。

アメリカの環境省 (EPA) は飲料水中の p-DCB の最大許容量を 75 μg/L としている。

p-DCB は EPA に登録された殺虫剤なので、製造者が p-DCB を殺虫剤として使用する際は、EPA にその旨を通知しなければならない。

アメリカの労働安全衛生庁 (OSHA) は、1日8時間、週40時間労働での空気中の最大許容量を 75 ppm としている。

p-DCBを含む防虫剤や一部の芳香剤の発がん性作用のメカニズムが線虫で特定されている。[12]

パラジクロロベンゼンは発がん性があるため、欧州連合では芳香剤として(2005年から)、防虫剤として(2008年から)使用することが禁止されている。

日本でのカップ麺における検出騒ぎ

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2008年10月に、日本でカップ麺からパラジクロロベンゼンが検出され、食べた人が健康被害を訴えた騒ぎがあり、調査の結果、防虫剤のそばにカップ麺を一定期間置いた場合、パラジクロロベンゼンが包装や容器を通じてカップ麺に移ることが確認された。その後、カップ麺の容器材質の改良や、保管方法の注意喚起をカップ麺と防虫剤に記載している[13]。

生分解

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Rhodococcus phenolicusは、ジクロロベンゼンを唯一の炭素源として分解できる細菌種である。 [14]

異性体について

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o-ジクロロベンゼンの構造式
m-ジクロロベンゼンの構造式
o-ジクロロベンゼン(1,2-ジクロロベンゼン)
融点-17℃、沸点180 - 183℃の無色から黄色の液体で、独特の臭気を有する。CAS登録番号は95-50-1。殺虫剤、溶媒に用いられる。
m-ジクロロベンゼン(1,3-ジクロロベンゼン)
融点-24.8℃、沸点173℃の無色の液体。CAS登録番号は541-73-1。農薬・医薬の中間体として用いられている。

注釈

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  1. 1 2 3 4 5 6 7 NIOSH Pocket Guide to Chemical Hazards 0190
  2. 1 2 “p-Dichlorobenzene”. National Institute for Occupational Safety and Health (NIOSH) (2014年12月4日). 2015年3月19日時点のオリジナルよりアーカイブ。2015年3月6日閲覧。
  3. ↑ 分子組成および結合状態を表す構成単語から、「パラ・ジクロロ・ベンゼン」と読むのが正しい。「パラジ・クロロ・ベンゼン」は誤り[要出典]。
  4. 1 2 Rossberg, M.; Lendle, W.; Pfleiderer, G.; Tögel, A.; Dreher, E. L.; Langer, E.; Rassaerts, H.; Kleinschmidt, P.; Strack, H.; Cook, R.; Beck, U.; Lipper, K.-A.; Torkelson, T.R.; Löser, E.; Beutel, K.K.; Mann, T. (2006). “Chlorinated Hydrocarbons”. Ullmann's Encyclopedia of Industrial Chemistry. Weinheima: Wiley-VCH. doi:10.1002/14356007.a06_233.pub2. ISBN 978-3-527-30673-2.
  5. ↑ “National Pesticide Information Center – Mothballs Case Profile”. 2010年6月22日時点のオリジナルよりアーカイブ。2009年8月10日閲覧。
  6. ↑ K. Hunger. W. Herbst "Pigments, Organic" in Ullmann's Encyclopedia of Industrial Chemistry, Wiley-VCH, Weinheim, 2012. doi:10.1002/14356007.a20_371
  7. ↑ Fahey, D. R.; Ash, C. E. (1991). “Mechanism of poly(p-phenylene sulfide) growth from p-dichlorobenzene and sodium sulfide”. Macromolecules 24 (15): 4242. Bibcode:1991MaMol..24.4242F. doi:10.1021/ma00015a003.
  8. ↑ Nair, P.; Golhar, S.; Baisakhiya, N.; Deshmukh, P. T. (2009). “A comparative study of ceruminolytic agents”. Indian Journal of Otolaryngology and Head and Neck Surgery 61 (3): 185–192. doi:10.1007/s12070-009-0063-z. PMC 3449978. PMID 23120632.
  9. ↑ “Looking for Light: Paradichlorobenzene Toxicity in a 30 Year-Old Woman Following Long Term Ingestion of Mothballs (1955)”. Neurology 94. (2020-04-14). doi:10.1212/WNL.94.15_supplement.1955 2026年3月20日閲覧。.
  10. ↑ Preamble to the IARC Monographs Archived 9 August 2016 at the Wayback Machine. definition of "Group 2B: Possibly carcinogenic to humans", the International Agency for Research on Cancer classification of this chemical
  11. ↑ “ToxFAQs for Dichlorobenzenes”. Toxic Substances Portal. Agency for Toxic Substances and Disease Registry. 2020年11月26日時点のオリジナルよりアーカイブ。2013年5月24日閲覧。
  12. ↑ Kokel, David (14 May 2006). “The nongenotoxic carcinogens naphthalene and para-dichlorobenzene suppress apoptosis in Caenorhabditis elegans”. Nature Chemical Biology 2 (6): 338–345. doi:10.1038/nchembio791. PMID 16699520.
  13. ↑ “【どうなった?ニュースその後】カップめんの『移り香』問題 容器改良・表示で注意喚起”. 東京新聞 (2009年3月31日). 2016年10月28日時点のオリジナルよりアーカイブ。2016年8月12日閲覧。
  14. ↑ Rehfuss, M.; Urban, J. (2005). “Rhodococcus phenolicus sp. nov., a novel bioprocessor isolated actinomycete with the ability to degrade chlorobenzene, dichlorobenzene and phenol as sole carbon sources”. Systematic and Applied Microbiology 28 (8): 695–701. Bibcode:2005SyApM..28..695R. doi:10.1016/j.syapm.2005.05.011. PMID 16261859.

関連項目

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外部リンク

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