沖縄戦記録フィルム1フィート運動の会
| 略称 | 1フィート運動の会 |
|---|---|
| 設立 | 1983年12月 |
| 解散 | 2013年3月15日 |
| 種類 | 市民団体 |
| 目的 | 沖縄戦記録映像の収集・保存・公開、沖縄戦の記憶継承 |
| 関連組織 | 沖縄県公文書館、琉球朝日放送 |
沖縄戦記録フィルム1フィート運動の会(おきなわせんきろくフィルムいちフィートうんどうのかい)は、沖縄戦の実写記録フィルムを収集し、上映活動や映像作品の制作を通じて沖縄戦の記憶継承に取り組んだ日本の市民団体。正式名称は子どもたちにフィルムを通して沖縄戦を伝える会で、1フィート運動の会とも呼ばれた[1]。
1983年12月に発足し、米国国立公文書館などに所蔵されていた沖縄戦の記録フィルムを市民の寄付により収集した[1]。同会は、収集した映像を用いた上映会、学校教育での活用、自主映画制作、関係機関への映像提供などを行った[2]。2013年3月15日に解散した[3]。
概要
[編集]同会は、沖縄戦の記録映像を後世に伝えることを目的として、米国国立公文書館などに残されていた沖縄戦関係の16ミリフィルムを収集した市民運動である[1]。名称の「1フィート」は、市民からのカンパにより、フィルムを1フィート単位で買い集めたことに由来する[4]。
活動は、フィルムの収集だけでなく、上映会の開催、沖縄戦体験者の証言と映像を組み合わせた記録作品の制作、学校教育や平和学習への活用にも及んだ[2]。沖縄県公文書館は、同会が収集した映像を「県民の共有財産」と位置づけ、2015年から公開している[2]。
沿革
[編集]発足
[編集]1983年12月、沖縄戦の実写フィルムを通して子どもたちに沖縄戦を伝えることを目的として発足した[1]。立命館大学の研究では、同会は1983年に沖縄県で結成された「子どもたちにフィルムを通して沖縄戦を伝える会」による運動として説明されている[5]。
同会の活動の背景には、米国に沖縄戦の写真・映像資料が保存されていることが知られるようになったことがあった。沖縄戦研究や戦争体験の継承に関わる研究者・教育者・ジャーナリストらが運動に関わった[6]。
フィルム収集と上映活動
[編集]同会は、市民からの寄付をもとに、米国国立公文書館などが所蔵していた沖縄戦の記録フィルムを収集した[1]。琉球新報は、同会が約11万フィートのフィルムを買い取ったと報じている[4]。
収集した映像は、上映会や学校教育の場で活用され、沖縄戦の実相を伝える資料として用いられた[2]。また、映像作品の制作や、関係機関への映像提供も行った[2]。
映像作品の制作
[編集]1986年には『沖縄戦・未来への証言』が制作された。同資料は那覇市歴史博物館に所蔵されており、企画者として「子どもたちにフィルムを通して沖縄戦を伝える会」が記録されている[7]。
1995年には、戦後50年にあわせて『1フィート映像でつづるドキュメント沖縄戦』を制作した。同作は57分の記録映画で、10・10空襲、慶良間諸島、読谷上陸、伊江島、南部戦線、収容所生活などを扱った[8]。沖縄県公文書館の資料では、同作は12年間で集めた7万6千フィート、約35時間の映像から構成された総集編とされる[8]。
山形国際ドキュメンタリー映画祭でも同作は紹介され、ディレクターに柴田昌平、調査・考証に山内榮、語りに草柳隆三、歌・三味線に照喜名朝一、監修に牧港篤三・福地曠昭・宮城悦二郎、プロデューサーに仲松昌次が記録されている[9]。
受賞
[編集]2004年、同会は第38回吉川英治文化賞を受賞した。講談社の受賞者一覧では、沖縄戦の記録フィルムを米国から買い取り、上映会を通して平和運動を実践したことが功績として説明されている[10]。
解散
[編集]2012年、同会は2013年3月に活動を終了する予定であることを明らかにした。活動終了の理由として、沖縄戦に関する市民団体の成長、沖縄県平和祈念資料館や沖縄県公文書館の整備、結成30周年の節目などが挙げられた[4]。
2013年3月15日、同会は那覇市内で解散総会を開き、30年の活動に幕を下ろした[3]。
収集映像の保存・公開
[編集]解散後、同会が収集した映像は沖縄県公文書館で保存・公開されることになった[2]。沖縄県公文書館は、琉球朝日放送がデジタル化した同会収集映像を、全34枚、約31時間の資料として公開している[2]。琉球新報は、2015年3月から沖縄県公文書館で約200タイトル、31時間分の沖縄戦記録映像が公開されたと報じている[11]。
主な作品
[編集]関連番組
[編集]NHK教育テレビジョンの『ETV特集』では、1995年6月26日・27日に「沖縄・戦世の記録 1フィート映像の証言」が放送された。同番組は、同会制作の『ドキュメント沖縄戦』を手がかりにした2夜連続の番組であった[14]。
琉球朝日放送のQAB NEWS Headlineでも、同会の活動や解散、中村文子の事務局長退任などが報じられている[15][16][17]。
関係人物
[編集]- 仲宗根政善 - 発足時の代表とされる[5]。
- 牧港篤三 - 代表経験者。『1フィート映像でつづるドキュメント沖縄戦』監修[9]。
- 福地曠昭 - 代表経験者。解散時の代表[3]。『1フィート映像でつづるドキュメント沖縄戦』監修[9]。
- 中村文子 - 長年、同会の事務局長を務めた人物[15]。
- 宮城悦二郎 - 『1フィート映像でつづるドキュメント沖縄戦』監修[9]。
- 柴田昌平 - 『1フィート映像でつづるドキュメント沖縄戦』ディレクター[9]。
- 山内榮 - 『1フィート映像でつづるドキュメント沖縄戦』調査・考証[9]。
- 草柳隆三 - 『1フィート映像でつづるドキュメント沖縄戦』語り[9]。
- 照喜名朝一 - 『1フィート映像でつづるドキュメント沖縄戦』歌・三味線[9]。
- 仲松昌次 - 『1フィート映像でつづるドキュメント沖縄戦』プロデューサー[9]。
評価・研究
[編集]同会の活動は、沖縄戦の実写映像を市民の寄付により収集・公開し、上映会や教育活動を通じて沖縄戦の記憶継承に寄与した市民運動として位置づけられている[6][5]。水島久光は、同会の活動が沖縄戦の視覚的イメージ形成に関わったことを論じている[6]。大月功雄は、同会による1フィート運動を、上映活動や自主映画制作を含む経験史として検討している[5]。
また、若林千代は、同会が米軍撮影フッテージを再編集して制作した映像を、沖縄戦表象の文脈で論じている[18]。
関連資料
[編集]同会の活動を記録した資料として、『1フィート運動 10周年記念誌』や『未来への道標 : 沖縄戦1フィート運動の30年』がある。『1フィート運動 10周年記念誌』には、活動報告、会則、歴代役職員、新聞記事で見る1フィート運動の10年などが収録されている[19]。『未来への道標 : 沖縄戦1フィート運動の30年』は、同会の30年記念誌として2013年に刊行された[20]。
脚注
[編集]- 1 2 3 4 5 “【映像上映会】1フィート映像でつづるドキュメント沖縄戦”. 沖縄県公文書館. 2026年6月28日閲覧。
- 1 2 3 4 5 6 7 “1フィート運動の会収集映像の公開について”. 沖縄県公文書館. 2026年6月28日閲覧。
- 1 2 3 “沖縄戦記録・1フィート運動の会 30年の活動に幕”. 琉球新報 (2013年3月16日). 2026年6月28日閲覧。
- 1 2 3 “1フィート運動の会、来年3月に活動終了”. 琉球新報 (2012年12月8日). 2026年6月28日閲覧。
- 1 2 3 4 大月功雄. “沖縄戦 1フィート運動の経験史”. 立命館大学学術成果リポジトリ. 2026年6月28日閲覧。
- 1 2 3 水島久光. “沖縄戦記録フィルム1フィート運動における映像資料の意味”. 東海大学. 2026年6月28日閲覧。
- 1 2 “沖縄戦・未来への証言”. 那覇市歴史博物館. 2026年6月28日閲覧。
- 1 2 3 “1フィート映像でつづる ドキュメント沖縄戦”. 沖縄県公文書館. 2026年6月28日閲覧。
- 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 “1フィート映像でつづるドキュメント沖縄戦”. 山形国際ドキュメンタリー映画祭. 2026年6月28日閲覧。
- ↑ “吉川英治文化賞 受賞者一覧”. 講談社. 2026年6月28日閲覧。
- ↑ “沖縄戦映像200タイトル公開 県公文書館”. 琉球新報 (2015年3月25日). 2026年6月28日閲覧。
- ↑ “沖縄戦 未来への証言 普及版”. 沖縄県公文書館. 2026年6月28日閲覧。
- ↑ “沖縄戦の証言 : 1フィートの映像と戦争体験者の証言でつづる”. CiNii Books. 2026年6月28日閲覧。
- ↑ “ETV特集 沖縄・戦世の記録 1フィート映像の証言”. 放送ライブラリー. 2026年6月28日閲覧。
- 1 2 “1フィート運動の会 中村事務局長 退任”. QAB NEWS Headline (2006年12月9日). 2026年6月28日閲覧。
- ↑ “6.23慰霊の日特集 1フィート運動の会”. QAB NEWS Headline (2009年6月23日). 2026年6月28日閲覧。
- ↑ “1フィート運動の会 30年の活動に幕”. QAB NEWS Headline (2013年3月16日). 2026年6月28日閲覧。
- ↑ 若林千代. “硝煙弾雨の向こう側”. 沖縄大学リポジトリ. 2026年6月28日閲覧。
- ↑ “1フィート運動 10周年記念誌”. 沖縄県公文書館. 2026年6月28日閲覧。
- ↑ “未来への道標 : 沖縄戦1フィート運動の30年”. CiNii Books. 2026年6月28日閲覧。
参考文献
[編集]- 10周年記念誌編集委員会編『1フィート運動 10周年記念誌』沖縄戦記録フィルム1フィート運動の会、1993年。
- 30年記念誌編集委員会編『未来への道標 : 沖縄戦1フィート運動の30年』沖縄戦記録フィルム1フィート運動の会、2013年。
- 大月奈都子「沖縄戦 1フィート運動の経験史」。
- 水島久光「沖縄戦記録フィルム1フィート運動における映像資料の意味」。
- 若林千代「硝煙弾雨の向こう側」。