25式地対艦誘導弾
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重装輪車両に搭載された誘導弾システムの発射機 | |
| 種類 | 地対艦ミサイル |
|---|---|
| 製造国 |
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| 製造 | 三菱重工業 |
| 性能諸元 | |
| 射程 | 1000 km以上 |
| 推進方式 | 固体燃料ロケットモーター(ブースター)+ターボファンエンジン(巡航用) |
| 飛翔速度 | N/A |
25式地対艦誘導弾(にいごうしきちたいかんゆうどうだん)とは、陸上自衛隊が装備する地対艦ミサイル(対艦誘導弾)。12式地対艦誘導弾をベースに開発された事実上の巡航ミサイル(GLCM・ASCM)であり、いわゆる反撃能力としても活用される。別称は25SSM[1]。
概要
[編集]開発当初は12式地対艦誘導弾能力向上型(ひとにいしきちたいかんゆうどうだんのうりょくこうじょうがた)と称され、12式地対艦誘導弾をベースにステルス性向上や大幅な射程延長などの要素を盛り込んだ大幅な改良型である。陸の車輛・海の艦艇・空の航空機の各プラットフォームからの運用を可能とするマルチプラットフォーム化の設計思想で開発され、このうちの地上発射型が25式地対艦誘導弾と呼ばれる。
開発に至る経緯
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日本は、2018年(平成30年)12月18日に閣議決定された防衛計画の大綱(30大綱)および31中期防でスタンド・オフ・ミサイルの導入を決定、まずは外国製のミサイル(JSM・JASSM・LRASM)の整備を進めつつ国内での研究開発も推進する方針とした[3]。しかしJSMは外国製機材の不足、またJASSMとLRASMについては搭載母機として予定されていたF-15Jの改修経費等の高騰のために、いずれも導入は計画通りに進んでいない状態であった[3]。
これらの外国製スタンド・オフ・ミサイルの導入遅延のほか、イージス・アショアの配備中止といった問題に対処するため、2020年(令和2年)12月18日の閣議で「新たなミサイル防衛システムの整備等及びスタンド・オフ防衛能力の強化」が決定されたが[4]、このなかに、多様なプラットフォームからの運用を前提とした12式地対艦誘導弾能力向上型の開発が盛り込まれた[3]。2020年(令和2年)度の事前の事業評価では地上発射型の開発計画が盛り込まれ、開発期間は2021年(令和3年)度から2025年(令和7年)度、総事業費は約394億円の計画であった[5]。
2021年(令和3年)度の事前の事業評価では、地上発射型に加えて艦上・空中発射型も盛り込まれており、開発期間は地上発射型が2021年(令和3年)度から2025年(令和7年)度、艦上発射型が2022年(令和4年)度から2026年(令和8年)度、空中発射型が2022年(令和4年)度から2028年(令和10年)度で、総事業費は約999億円の計画とされた[6]。主契約者は三菱重工業[7]。
設計
[編集]開発にあたってはASM-3、12式地対艦誘導弾(改)の開発成果や、島嶼防衛用新対艦誘導弾の要素技術の研究成果を活用するとした[5]。達成すべき目標として、長射程化のための大型の展開主翼とジェットエンジンの作動領域拡大、RCS低減のための弾体形状のエッジ処理、人工衛星経由の対地上装置間データリンク搭載などが列挙されていた[5]。
特に弾体形状と主翼の設計変更によって外見上の印象は一変し、80式空対艦誘導弾から12式地対艦誘導弾、23式空対艦誘導弾に至るまで踏襲されてきた円筒形の胴体とは大きく異なる外観となった[3]。また射程も、既存の国産対艦ミサイルが200 km程度なのに対して、本ミサイルではまずはJASSM-ERやLRASMと同等の900 km程度、最終的にはトマホークに匹敵する1,500 kmを目指すとされている[3][8]。この長射程を実現するため、従来用いられてきたターボジェットエンジンよりも燃料効率に優れたターボファンエンジンの採用が見込まれている[3]。
- 2024年に航空装備研究所新島支所で行われた発射試験
開発決定後の経過
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2022年(令和4年)8月3日、日本政府が2026年度以降の量産・配備予定を2023年(令和5年)度以降に前倒しする方針を固めたと報じられた[9]。量産・配備時期を前倒しするため開発完了を待たずに試作品段階で配備する予定である。
2022年(令和4年)8月21日、政府が当初の予定を2年早めて2024年(令和6年)度にも地発型の配備を開始する方針であり、長射程巡航ミサイルを1,000発以上保有することを検討していると報じられた[2]。
2022年(令和4年)11月3日、政府が12式地対艦誘導弾能力向上型の潜水艦発射型の開発を検討していると報じられた[10]。
2022年(令和4年)12月16日に閣議決定された防衛力整備計画に、12式地対艦誘導弾能力向上型(地上発射型・艦艇発射型・航空機発射型)の開発・試作を実施・継続することや、発射プラットフォームの更なる多様化やスタンド・オフ・ミサイルの運用能力向上を目的として、潜水艦に搭載可能な垂直ミサイル発射システム(VLS)、輸送機搭載システム等を開発・整備することが明記された。また、陸上自衛隊は12式地対艦誘導弾能力向上型を装備した地対艦ミサイル部隊を保持すること、海上自衛隊は護衛艦(DDG・DD・FFM)等に12式地対艦誘導弾能力向上型等のスタンド・オフ・ミサイルを搭載するほか、水中優勢獲得のための能力強化として、潜水艦(SS)に垂直ミサイル発射システム(VLS)を搭載し、スタンド・オフ・ミサイルを搭載可能とする垂直発射型ミサイル搭載潜水艦の取得を目指し開発すること、航空自衛隊はスタンド・オフ防衛能力の強化の観点から、F-2に12式地対艦誘導弾能力向上型の搭載能力等を付与するため、計2個飛行隊分の能力向上事業を推進することが明記された[11]。
2023年(令和5年)4月11日、防衛省は12式地対艦誘導弾能力向上型(地発型)の量産、12式地対艦誘導弾能力向上型(地発型・艦発型・空発型)の継続開発、潜水艦発射型誘導弾の開発の三菱重工業との契約が成立したことを発表した[12][13]。
2024年(令和6年)度予算にて、スタンド・オフ・ミサイルの早期配備として、12式地対艦誘導弾能力向上型(地発型)を、更に1年前倒しにして2025年(令和7年)度より配備する旨が発表され、その取得費が盛り込まれた[14]。また空発型を搭載するためのF-2能力向上改修(8機分)の費用も盛り込まれた[14]。
2024年(令和6年)7月12日に公開された令和六年度版の『防衛白書』にて、地上試験に供された本ミサイルの試作品が公開された[15]。
2024年(令和6年)12月6日、防衛省は12式地対艦誘導弾能力向上型(地発型・艦発型)発射試験について航空装備研究所新島支所において最初の発射試験を行い、飛しょう等が予定どおり実施されたと発表した[16]。発射試験は、令和6年(2024年)10月から11月にかけて計5回実施された[17][18]。
2025年(令和7年)度予算にて、本ミサイルの地発型の地上装置等2セットと艦発型の取得費、また空発型を搭載するためのF-2能力向上改修(8機分)の費用が盛り込まれた[19]。
2025年(令和7年)7月28日の熊本日日新聞の報道によれば、同年度末に第5地対艦ミサイル連隊、2026年(令和8年)度以降第8地対艦ミサイル連隊、将来的には第7地対艦ミサイル連隊への配備を検討しているという[20]。
2025年(令和7年)8月29日の防衛省の発表では、2025年(令和7年)度・2026年(令和8年)度に第5地対艦ミサイル連隊、2027年(令和9年)度に特科教導隊にそれぞれ地発型の配備が予定されている[21]。また、2027年(令和9年)度に「てるづき」に艦発型を、第7航空団(百里基地)のF-2に空発型を、それぞれ装備の改修を行った上で運用を予定している[21]。
2025年(令和7年)12月19日、防衛省は12式地対艦誘導弾能力向上型(地発型)について、アメリカ合衆国カリフォルニア州において発射試験を行い、予定した飛しょうを確認するなど、開発の完了に目途を得られたと発表した[22]。発射試験は、2025年(令和7年)10月から11月にかけて計7回実施した[22]。
2026年(令和8年)3月6日、防衛大臣小泉進次郎が3月末に熊本県の健軍駐屯地に配備をすると発表[23]。
2026年(令和8年)3月31日、地発型の研究開発が完了し部隊使用承認が下りた。「25式地対艦誘導弾」と名称が発表され、健軍駐屯地の第5地対艦ミサイル連隊に配備された[24]。
配備部隊・機関
[編集]- 第2特科団
- 第5地対艦ミサイル連隊(健軍駐屯地)
派生
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12式地対艦誘導弾能力向上型 (空発型)
[編集]空発型は、航空自衛隊が装備する、空対艦ミサイル(対艦誘導弾)となる。
先述の通り、2027年(令和9年)度から第7航空団(百里基地)にF-2戦闘機能力向上型を20機、順次現行のF-2戦闘機と置き換える形で配備し[25]、運用を予定している。
2026年7月30日、飛行開発実験団(岐阜基地)所属のF-2B戦闘機(63-8101)に、このミサイルと思われる大型ミサイル2発を懸吊して飛行している姿が確認された。25式地対艦誘導弾に準じた六角形の形状、エアインテークと折畳まれた主翼が確認されているが、地上発射型に備えられている加速のためのブースターは装着されていない[26]。
12式地対艦誘導弾能力向上型 (艦発型)
[編集]艦発型は、海上自衛隊が装備する、艦対艦ミサイル(対艦誘導弾)となる。
先述の通り、2027年(令和9年)度に水上艦隊第3水上戦群第9水上戦隊(横須賀)所属のあきづき型護衛艦2番艦「てるづき」(DD-116)を改修の上で運用を予定している。
目標観測弾
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脚注
[編集]出典
[編集]- ↑ Japan Ministry of Defense/JGSDF [@Japan_GSDF] (2026年3月31日). “In response to the increasingly severe...”. X(旧Twitter)より2026年4月5日閲覧.
- 1 2 「【独自】長射程巡航ミサイル、1000発以上の保有検討…「反撃能力」の中核に」『読売新聞』2022年8月21日。2022年11月26日閲覧。
- 1 2 3 4 5 6 小野 2023.
- ↑ 『新たなミサイル防衛システムの整備等及びスタンド・オフ防衛能力の強化について』防衛省、2020年12月18日。2022年11月26日閲覧。
- 1 2 3 “令和2年度 政策評価書(事前の事業評価)”. 防衛省 (2020年). 2022年11月26日閲覧。
- ↑ 『令和3年度 政策評価書(事前の事業評価)』防衛省、2021年。2022年11月26日閲覧。
- ↑ 『令和3年度 月別契約情報/随意契約(基準以上)(Excelファイル)』防衛省。オリジナルの2021年10月8日時点におけるアーカイブ。2022年11月26日閲覧。
- ↑ 「《独自》「国産トマホーク」開発へ 射程2千キロの新型対艦弾 12式は1500キロに延伸」『産経新聞』2020年12月29日。2022年11月26日閲覧。
- ↑ 「長射程地対艦 ミサイル配備前倒しへ 対中で防衛力強化」『毎日新聞』2022年8月3日。2022年11月26日閲覧。
- ↑ 松山尚幹「長射程ミサイルの「潜水艦発射型」開発を検討 敵基地攻撃の手段に」『朝日新聞』2022年11月3日。2022年11月26日閲覧。
- ↑ 『防衛力整備計画について』防衛省。2023年1月16日閲覧。
- ↑ “国産巡航ミサイル、潜水艦発射型も開発に着手…今年度から”. 読売新聞. 2023年4月11日. 2023年4月16日閲覧.
- ↑ “スタンド・オフ防衛能力に関する事業の進捗状況について”. 防衛省 (2023年4月11日). 2023年4月16日閲覧。
- 1 2 防衛省 (2024年). “防衛力抜本的強化の 進捗と予算”. 防衛省. 2024年3月31日閲覧。
- ↑ JSF「12式地対艦誘導弾能力向上型の試作ミサイルが初公開」『Yahoo!ニュース』2024年7月12日。
- ↑ “スタンド・オフ防衛能力に関する事業の進捗状況について”. 防衛省 (2024年12月6日). 2026年2月2日閲覧。
- ↑ “反撃能力用の国産ミサイル、発射試験を初実施 防衛省”. 日本経済新聞. 2024年12月6日. 2024年12月8日閲覧.
- ↑ “国産長射程ミサイルの発射成功 スタンド・オフ防衛力整備へ―装備庁”. 時事通信. 2024年12月6日. 2024年12月8日閲覧.
- ↑ 防衛省 (2025年). “防衛力抜本的強化の進捗と予算-令和7年度予算の概要”. p. 14. 2025年4月5日閲覧。
- ↑ 「【独自】長射程ミサイル、熊本に配備 25年度末、反撃能力保有へ」『熊本日日新聞』2025年7月28日。2025年7月29日閲覧。
- 1 2 “【お知らせ】国産スタンド・オフ・ミサイルの早期整備等について”. www.mod.go.jp. 2025年8月29日閲覧。
- 1 2 “スタンド・オフ防衛能力に関する事業の進捗状況について”. 防衛省 (2025年12月19日). 2026年2月2日閲覧。
- ↑ 令和8年3月6日(金)小泉防衛大臣閣議後会見防衛省。2026年3月15日閲覧。
- ↑ 『12式地対艦誘導弾能力向上型(地発型)及び島嶼防衛用高速滑空弾の研究開発の完了に伴う名称決定等について』(プレスリリース)陸上幕僚監部、2026年3月31日。2026年3月31日閲覧。
- ↑ “スタンド・オフ・ミサイルについて(航空自衛隊百里基地におけるF-2能力向上型の配備)Q&A”. 北関東防衛局 (2026年8月). 2026年9月8日閲覧。
- ↑ “航空自衛隊、謎の未確認大型ミサイルを搭載しテスト飛行。「25式地対艦誘導弾」空中発射型が初めて姿を見せた!”. Motor Fan|自動車情報のモーターファン. 2026年9月7日閲覧。
参考文献
[編集]- 小野正春「国産初の航空機搭載型スタンドオフ・ミサイル12式地対艦誘導弾能力向上型の性能を探る」『航空ファン』第72巻、第7号、文林堂、60-63頁、2023年7月。CRID 1520578141057192320。