二重窓

二重窓(にじゅうまど)は、2つのサッシ枠を用いて、それぞれ独立した形で外壁に取り付けた窓のこと[1]。外気側のサッシ(外窓)と室内側のサッシである内窓(うちまど)から成り[2]、内窓は改修時に既存の窓の室内側へ後付けされる例が多い[3]。1つのサッシに複数枚のガラスを一体に組んだ複層ガラスとは区別される。
構造と種類
[編集]外気側と室内側にサッシを設けたもので、室内側の内窓には樹脂製内窓や木製内窓がある[2]。外気側と室内側のそれぞれに単板ガラスを使用する場合と複層ガラスを使用する場合がある[2]。構成としては木製二重窓(シングルガラス)、アルミサッシと木製内窓(シングルガラス)、アルミサッシと樹脂内窓(ペアガラス)などがある[4]。樹脂サッシ工業会の村上敦亮ら(2021年)は、外窓は躯体に直接施工され新築時の採用が多いのに対し、内窓は内装の一部として窓の額縁に施工され改修時の採用が多く、水密性能・耐風圧性能・防火性能などの建築上の要求事項に差があるとしている[3]。
歴史
[編集]吉田修・斉藤雅也(2024年)によると、北海道では1953年に北海道防寒住宅建設促進法が制定されて以来、住宅の断熱・気密化が進められ、ドラフトや隙間風、結露などの問題があった開口部については窓を二重にして断熱性を補ってきた[4]。2000年以降、低放射複層ガラスと樹脂サッシに代表される高断熱・高気密の窓が普及すると、道内の低層の新築木造住宅で二重窓を採用する必然性はなくなった一方、多層階の集合住宅では耐風・防火などの理由により、外窓「単板ガラス+アルミサッシ」と内窓「複層ガラスまたは低放射複層ガラス+樹脂サッシ」の二重窓が引き続き一般的である[4]。
性能
[編集]断熱・結露
[編集]単板ガラスの窓ガラスに比べて、樹脂内窓とアルミ外窓を組み合わせた二重窓の場合には約71%断熱性が向上したとする報告がある[5]。北海道で窓が二重化されてきた理由の1つに開口部の結露がある[4]。廣谷純子ら(2019年)は、千葉県内のビジネスホテルの客室に複層ガラスの内窓を設置した後の冬季に調査し、内窓のある客室の熱損失係数は0.8W/(m²·K)(内窓のない客室は1.4W/(m²·K))、暖房機器の使用時間は20%短く、窓の室内側の表面温度は常に露点温度を上回ったと報告している[6]。
遮音
[編集]中高音域の音に対しては高い遮音性能が得られるようになるが、低音域の音に対しては中空構造に特有の共鳴現象を生じることがあり、一部の周波数では遮音性能が低下することがある[1]。遮音性能のT等級では、一重のサッシは通常T-1またはT-2等級、二重窓は通常T-3またはT-4等級であり、250Hz以上の中・高音域では概ね5〜10dB程度の遮音効果が得られる一方、125Hz以下の低音域では遮音効果がほとんど得られない傾向にある[1]。サッシの遮音性能を高めると、外壁や換気口など他の部位から透過する音の影響が相対的に表れやすくなる[1]。
防犯
[編集]防犯性の向上のために導入されることがある[7]。
夏季の利用
[編集]吉田・斉藤(2024年)は、夏季の日中は内窓の室内側のカーテン類で日射を遮るためその表面温度が40℃以上になり、窓を開けない場合には外窓と内窓の間(窓間)が60℃前後になることを先行研究を引いて指摘し、北海道の夏季の朝晩の外気温が20℃台前半であることから、通風や夜間換気、内窓の外側で日射を遮って外窓を開放するといった「住みこなし」が有効と考えられるとしている[4]。
健康との関連
[編集]森郁惠ら(2014年)は、山形市周辺の高齢者が居住する古い木造住宅8戸で内窓の後付け前後を調査し、改修後に高齢者の1日の歩数が有意に増加したと報告している[8]。
窓に限らない住宅の断熱改修一般については、世界保健機関(WHO)が2018年の「住宅と健康ガイドライン」で、温帯または寒冷な気候の国では寒冷季の安全な室内温度として18℃を提案し(強い勧告)、既存住宅への断熱の後付け改修を勧告している(条件付き勧告)[9]。日本では、断熱改修の前後で冬季の家庭血圧を測定したスマートウェルネス住宅(SWH)調査(断熱改修群942世帯1,578人)で、改修後に朝の室温が1.4℃上がり、朝の収縮期血圧が3.1mmHg(95%信頼区間1.5〜4.6)低下したと報告されている[10]。また消費者庁は2018年の注意喚起で、全国の入浴中の急死者数の推計(年間約19,000人・病死等を含む)を紹介し、暖かい部屋から温度の低い脱衣所や浴室に入ると血圧が上がるとして、入浴前に暖めて温度差をなくすよう呼びかけている[11](ヒートショック現象も参照)。
日本における普及状況
[編集]「先進的窓リノベ事業」は、既存住宅の熱損失が大きい窓の断熱性能を高めることを目的として2023年に始まった国の補助事業で、初年度は戸建住宅を経済産業省(予算900億円)、集合住宅を環境省(同100億円)が担当し、住宅1戸あたりの補助上限は200万円とされた[12]。2026年の「先進的窓リノベ2026事業」(環境省)は非住宅建築物も対象に加え、補助対象工事に内窓設置を含めている[13]。
脚注
[編集]- 1 2 3 4 Q&A 公益社団法人 日本騒音制御工学会 2026年2月20日閲覧。
- 1 2 3 III.省エネリフォーム編 p.83 一般社団法人 住宅リフォーム推進協議会 2026年2月20日閲覧。
- 1 2 村上敦亮、高田和規「樹脂サッシのデザインを決めるもの」『成形加工』第33巻第12号、2021年、429-433頁、doi:10.4325/seikeikakou.33.429。
- 1 2 3 4 5 吉田 修; 斉藤 雅也 (2024). “北海道の既存集合住宅における改修二重窓の夏季の開閉行動と住みこなし”. 日本建築学会技術報告集 30 (74): 275-280. doi:10.3130/aijt.30.275.
- ↑ カーボンニュートラル建築実現のために p.7 公益社団法人 塩ビ工業・環境協会 2026年2月20日閲覧。
- ↑ 廣谷純子、小室大輔、山田信博「ビジネスホテル客室への内窓導入後の熱環境と宿泊客の暖房使用実態」『日本建築学会環境系論文集』第84巻第766号、2019年、1077-1084頁、doi:10.3130/aije.84.1077。
- ↑ 賃貸マンションの窓の断熱改修のすすめ p.4 一般社団法人 建築開口部協会 2026年2月20日閲覧。
- ↑ 森郁惠、都築和代、安岡絢子「窓の断熱改修が住宅の温熱環境と高齢者の生活および健康に及ぼす影響に関する研究」『日本建築学会環境系論文集』第79巻第706号、2014年、1061-1069頁、doi:10.3130/aije.79.1061。
- ↑ World Health Organization (2018) (英語). WHO Housing and health guidelines. World Health Organization. pp. 33-35. ISBN 978-92-4-155037-6
- ↑ Umishio W; Ikaga T; Kario K (2020). “Intervention study of the effect of insulation retrofitting on home blood pressure in winter: a nationwide Smart Wellness Housing survey” (英語). Journal of Hypertension 38 (12): 2510-2518. doi:10.1097/HJH.0000000000002535. PMID 32555002.
- ↑ “冬季に多発する入浴中の事故に御注意ください! -11月26日は「いい風呂」の日-” (PDF). 消費者庁 (2018年11月21日). 2026年9月9日閲覧。
- ↑ “事業概要”. 先進的窓リノベ事業(環境省・経済産業省). 2024年2月21日時点のオリジナルよりアーカイブ。2026年9月9日閲覧。
- ↑ “事業概要”. 先進的窓リノベ2026事業(環境省). 2026年9月9日閲覧。