20-20-20 ルール
20-20-20 ルール(英:20-20-20 rule)とは、コンピュータービジョン症候群(CVS)の症状として挙げられる、視力低下、調節不全、眼精疲労、ドライアイ、スマホ内斜視などを対策するために、日本人間工学会や米国眼科学会が推奨している予防法の一つ[1][2][3]。「デジタルデバイスを見続けてから、20分ごとに20秒間、20フィート(約6メートル)以上離れたところを見続けて休止する」という方法を用いる[1][2][4][5]。また類似している予防法として、「30-30-20 ルール」が存在する[6]。

来歴
[編集]1990年代後半にアメリカ合衆国のカルフォルニア州の検眼医であるジェフリー・アンシェル(Jeffrey Anshel)によって、コンピュータ作業をする患者のために初めて提唱された[7][8]。その後、数多くの医療関係者や患者らが、この予防法を称賛し、コンピュータビジョン症候群や近視などの、眼球に関する症状の治療法として適用しようと試みた。また、新型コロナウイルス(COVID-19)の流行による外出制限によって、人々がコンピュータ作業を余儀なくされたことから、現代で20-20-20 ルールは多くの人に関心を引き起こした[7]。
手順
[編集]20-20-20 ルールの手順は以下の通りである。
- 20分ごとに(Every 20 minutes)電子機器の画面から目を離す。
- 20フィート(約6メートル)離れた場所にある物体(窓の外の景色など)を見る。
- 20秒間その状態を維持し、遠くに焦点を合わせたままにする。この手順を繰り返す。
特定の物を至近距離で見るのは眼球の負担になるため、短時間でも遠くの場所を眺めることによって、眼球周囲の筋肉をリラックスさせることができる[9]。
検証
[編集]20-20-20 ルールが実際に効果があるかを検証したデータが存在する。まず当方法に沿ったタイミングで休憩リマインダーを送信するソフトウェアを導入させたノートパソコンを用意する。搭載されているwebカメラを利用し、被験者の瞬きや視線などを評価する。リマインダーを使用する以前、使用してから2週間後、使用を中止させてから1週間後の計3回のタイミングを評価の対象とした。測定方法として、自覚症状であるデジタル眼精疲労やドライアイの症状は、コンピュータビジョン症候群質問票(CVS-Q)や眼表面疾患指数(OSDI)、ドライアイ症状評価質問票(SANDE)を用い、ドライアイの兆候は涙の量や目の充血、瞬きの回数、不完全な瞬き、涙の油分層、角膜や結膜の傷などを測定する。結果として、コンピュータ作業時間と休憩時間は減少したものの、1日あたりの休憩回数が有意に増加した。眼球の機能として、ピントを合わせる機能(調節機能)の向上したが、視力や涙の量などには影響が見られなかった。そして、コンピュータビジョン症候群の症状であるデジタル眼精疲労やドライアイの不快感の減少が確認されたが、当検証方法を中止した1週間後には元の状態へ戻ってしまった。まとめると、20-20-20 ルールは、継続することによってデジタル眼精疲労やドライアイの症状に対して有効な戦略ではあるが、目の機能やドライアイの物理的兆候を大幅に改善するまでは至らないことが分かった[4]。
ペルーの看護学生796名を対象とした実験でも、20-20-20 ルールを実行することによるデジタル眼精疲労への予防を証明した。なお、研究を開始する前に、20-20-20 ルールを認知していた被験者はわずか13.1%であり、もともと健康的な生活週間であったがために、データ上は20-20-20 ルールのお陰で目が疲れていないように見えているだけなのではないかという選択バイアス、偽陽性が指摘されている[7][10]。
インドでの調査研究では、参加者の8.8%(432人)が20-20-20 ルールを実行していた。結果として、実行していた人としていない人では大きな差は出なかったが、ルールを実行していた方は灼熱感や頭痛の症状が低いことが明らかに分かった[11]。
脚注
[編集]出典
[編集]- 1 2 藤田, 博紀; 佐野, 研二 (2022). “iCLO(アイクロ)~ニューノーマル時代の新しい目の休め方~”. 人間工学 58 (5): 213–222. doi:10.5100/jje.58.213.
- 1 2 公益社団法人 日本眼科学会『ギガっこデジたん!活用マニュアル 改訂第1.2版』(2022年1月12日)
- ↑ “スマホなどによる疲れ目・眼精疲労を防ぐ!デジタルデバイスとの付き合い方”. 第一三共ヘルスケア (2026年1月9日). 2026年5月14日閲覧。
- 1 2 Talens-Estarelles, Cristian; Cerviño, Alejandro; García-Lázaro, Santiago; Fogelton, Andrej; Sheppard, Amy; Wolffsohn, James S. (2023-04). “The effects of breaks on digital eye strain, dry eye and binocular vision: Testing the 20-20-20 rule”. Contact Lens & Anterior Eye: The Journal of the British Contact Lens Association 46 (2): 101744. doi:10.1016/j.clae.2022.101744. ISSN 1476-5411. PMID 35963776.
- ↑ “「視力回復トレーニング」に意味はあるのか?”. gigazine.net. GIGAZINE (2024年6月4日). 2026年5月13日閲覧。
- ↑ “近視のメカニズムと子どもの視力を守るための習慣、海外における近視予防の事例(筑波大学 医学医療系眼科 准教授 平岡 孝浩先生)”. 子どもの健全な成長のための外あそびを推進する会 (2023年8月16日). 2026年5月14日閲覧。
- 1 2 3 Andrew D. Pucker. “Myth-Busting the 20/20/20 Rule - Modern Optometry”. modernod.com. 2026年5月14日閲覧。
- ↑ “運転中、信号が2つに見える…スマホゲームをやめられない大学生を襲った異変 「スマホ斜視」が急増している【眼科医が解説】”. ライブドアニュース (2026年2月21日). 2026年5月14日閲覧。
- ↑ “Smartphones, youth eye problems scrutinized in Japan” (英語). NHK WORLDJAPAN (2024年11月15日). 2026年5月14日閲覧。
- ↑ Huyhua-Gutierrez, Sonia Celedonia; Zeladita-Huaman, Jhon Alex; Díaz-Manchay, Rosa Jeuna; Dominguez-Palacios, Albila Beatriz; Zegarra-Chapoñan, Roberto; Rivas-Souza, María Angélica; Tejada-Muñoz, Sonia (2023-03-13). “Digital Eye Strain among Peruvian Nursing Students: Prevalence and Associated Factors”. International Journal of Environmental Research and Public Health 20 (6): 5067. doi:10.3390/ijerph20065067. ISSN 1660-4601. PMC 10048894. PMID 36981976.
- ↑ Datta, Sourav; Sehgal, Shivalika; Bhattacharya, Bidisha; Satgunam, Prem Nandhini (2023-05). “The 20/20/20 rule: Practicing pattern and associations with asthenopic symptoms”. Indian Journal of Ophthalmology 71 (5): 2071–2075. doi:10.4103/ijo.IJO_2056_22. ISSN 1998-3689. PMC 10391416. PMID 37203083.
関連文献
[編集]- 松岡俊行『スマホアイ』アスコム、ISBN 978-4-7762-1333-8