LSPM J0207+3331
| LSPM J0207+3331 | ||
|---|---|---|
従来のモデルによる、二重のリングを持つという説に基づいた想像図 | ||
| 星座 | さんかく座 | |
| 見かけの等級 (mv) | 17.86 ± 0.02(gバンド)[1] 17.49 ± 0.02(rバンド)[1] 17.34 ± 0.02(iバンド)[1] 16.60±0.12(Jバンド)[1] 16.33±0.23(Hバンド)[1] 15.93±0.27(Kバンド)[1] | |
| 位置 元期:J2000.0 | ||
| 赤経 (RA, α) | 02h 07m 33.8061s[2] | |
| 赤緯 (Dec, δ) | +33° 31′ 29.542″[2] | |
| 固有運動 (μ) | 赤経: 169.843(151)ミリ秒/年[2] 赤緯: −25.850(202)ミリ秒/年[2] | |
| 年周視差 (π) | 22.4986 ± 0.1563ミリ秒[2] (誤差0.7%) | |
| 距離 | 145 ± 1 光年[注 1] (44.4 ± 0.3 パーセク[注 1]) | |
| 物理的性質 | ||
| 半径 | 0.0118±0.0004太陽半径[3] | |
| 質量 | 0.656±0.029太陽質量[3] | |
| 表面重力 | 8.11±0.03cgs(log g)[3] | |
| スペクトル分類 | DZA[3] | |
| 表面温度 | 5910±98K[3] | |
| 年齢 | 30.8±3.2億年[3] | |
| 他のカタログでの名称 | ||
| 2MASS J02073383+3331296[1] | ||
| ■Template (■ノート ■解説) ■Project | ||
LSPM J0207+3331は地球から145光年離れた、星周円盤を有する年老いた低温な白色矮星である。 2018年にオンライン上のシチズン・サイエンスのウェブポータル、ズーニバースの市民科学プロジェクトのバックヤード・ワールドに参加していた市民ボランティアによって発見され、2019年に出版された論文で報告された[4][5]。 この白色矮星には、巨大な中心核を持つ惑星分化が十分に起こった大質量の岩石天体がバラバラになって降着を起こしている[3]。 2021年の時点では円盤を有する白色矮星としては最も年老いた、低温な天体として知られていたが、その後さらに2000K以上低温で年齢も少なくとも2倍以上重ねている白色矮星WD 2317+1830に円盤の存在が検出されている[6][7]。
この白色矮星の半径は太陽半径の0.011倍しかなく、これは地球の半径と比べても約1.2倍程度の大きさしか持たない。しかし白色矮星は非常に高密度な天体であるため、LSPM J0207の質量は太陽質量の約0.69倍に達する。ケック望遠鏡で分光観測された際に得られた近赤外線のスペクトルでは水素のパッシェンベータ線が検出されたことから、LSPM J0207の大気は主に水素で構成され、スペクトル分類ではDA型に属すると決定できる[8]。 可視光スペクトルからは、この白色矮星の大気中から13種類の重元素が検出され、これは円盤から白色矮星の大気中にのみこまれていった、降着した物質に由来する。水素大気を有する白色矮星の大気中に見つかった元素数としては既知の中で最大である[3]。
この白色矮星は今から約31億年前に、太陽質量の1.86±0.44倍の質量を持つ恒星が、その15.4+19.2
−5.6億年の寿命を終えた後に形成された[3]。
デブリ円盤
[編集]この白色矮星は、年齢が30億年と決して若くないにもかかわらず、星周円盤を有している。スペクトル中に見られた赤外超過は、当初は2本の別々の円盤(リング)を持つと解釈されていた[8]。しかし後になって、このスペクトル特徴は白色矮星の半径の36倍から54.1倍の範囲に広がる、総量が5.4 × 1019 gのケイ酸塩のダストが単一の円盤(リング)を構成していることによるものだと判明した[3]。これは、恒星の重力で破壊された小惑星の破片で構成されたデブリ円盤ではないかと考えられている[8]。白色矮星の対流層に含まれる重元素の存在量は1.22 × 1022 gとされており、これが破壊された元の天体の質量の下限に相当する。ここから、元天体は少なくとも225kmより大きかったと推定されている[3]。
2024年に報告された研究では、ジャバランブレ天体物理学観測所で行われたJ-PLUSサーベイの観測結果を用いて、この白色矮星がカルシウムの吸収スペクトルを持つ確率が89.7%と予測された[9]。 その後2025年にリック天文台、マゼラン・バーデ望遠鏡、ケック I望遠鏡を用いた分光観測が報告され、13種の重元素が見つかったとされた。 さらにメチリジンラジカル(CH)の分子が欠如していたことから、炭素の揮発性物質が枯渇していることが示唆される。スペクトルから判明した組成は地球に似ており、親鉄元素も豊富に存在した。そのため研究者は、白色矮星が飲み込んだ天体は、全体質量の55%に相当する大きな核を持つ、巨大な分化した岩石天体であると解釈している[3]。
また、この白色矮星はストロンチウムが検出された5番目の白色矮星で、この元素は低温な白色矮星で検出されるものである。表層のストロンチウムが白色矮星内部に沈み込む時間は3万5000年ほどと比較的短いため、現在も白色矮星表面に降着が起こっており、ストロンチウムなどの物質が表面に供給されていることを示す。 他にカルシウムH+K線をコアから放出する2例目の白色矮星でもあり、これは白色矮星の上層大気に由来すると考えられている。研究者は、このことが追加の物理プロセスの存在を示唆しており、さらなる観測が必要だと考えられている[3]。
一方で、モデル予測からは古い白色矮星が小惑星を破壊し飲み込む確率は低いことが分かってる。LSPM J0207+3331の発見を論文報告したDebesらが、発見報告から7年前の2012年に報告した10億年規模のシミュレーションでは、形成後2億年が経過した白色矮星では10億年のシミュレーション全体で1個ずつしか小惑星が破壊されなかった[10]。そのため形成後30億年がすぎたLSPM J0207+3331が円盤を持つことは、白色矮星周辺のダストの説明について新たな疑問を投げかけている[8]。
2本のリングを持つモデル
[編集]初期の解釈では、円盤は2本のリングで構成されているとされていた。
このうち内側の円盤は光学的に厚く、内径は0.047 R☉、外径は0.21 R☉である。一方で外側の円盤は光学的に薄く、ロッシュ限界付近である0.94 R☉の位置にあり、その総質量は小さな小惑星や彗星に相当する。このことから外側の円盤は比較的最近に、小天体が白色矮星からの潮汐破壊を受けてその破片によって構成されていると示唆された。このモデルが確認できれば、2種類のリングを持つダストの豊富な白色矮星としては初めての発見例となる[8]。 他に、円盤が2つに分かれて隙間を持つことは、円盤の内側を太陽系外惑星が公転しており隙間を開けている可能性、円盤の外側を公転する太陽系外惑星が軌道共鳴の効果で隙間を生んでいる可能性がある[11]。内側の円盤の内縁が、ちょうど鉄カンラン石や鉄が昇華する温度にあたることから内側の円盤はこれらの物質で構成されていると考えられた。一方で内側の円盤が苦土カンラン石で構成されている可能性も捨てきれないとされた[11]。
しかし、より新しい解析ではWISEのデータ中に見られる波長11.6 μmの放射がケイ酸塩由来の放射だと解釈され、2本のリングではなく単一の円盤をもつとされている。これを確認し、母天体について鉱物学的に研究するにはジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡での分光確認が必要とされている[3]。
関連項目
[編集]惑星残骸を持つ古くて低温な白色矮星の例
- ヴァン・マーネン星 (6,130 K)
- WD J2356−209 (4,040 K)
- WD 2317+1830 (4,557 K)
- WD J2147–4035 (3,050 K)
複数の小惑星などで汚染された白色矮星の例
- WD 1337+705 - 鉄が豊富な天体と氷が豊富な天体に汚染されている。
脚注
[編集]注釈
[編集]出典
[編集]- 1 2 3 4 5 6 7 “LSPM J0207+3331 -- White Dwarf”. 2026年1月19日閲覧。
- 1 2 3 4 5 Vallenari, A. et al. (2022). “Gaia Data Release 3. Summary of the content and survey properties”. Astronomy & Astrophysics. arXiv:2208.00211. doi:10.1051/0004-6361/202243940 Gaia DR3 record for this source at VizieR.
- 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 Érika Le Bourdais; Dufour, Patrick; Melis, Carl; Klein, Beth L.; Rogers, Laura K.; Bédard, Antoine; Debes, John; Messier, Ashley; Weinberger, Alycia J.; Xu, Siyi (2025). “Tracing Planetary Accretion in a 3 Gyr-old Hydrogen-Rich White Dwarf: The Extremely Polluted Atmosphere of LSPM J0207+3331”. arXiv:2510.08676 [astro-ph.SR].
- ↑ “Volunteer Discovers Record-Setting White Dwarf Star”. NASA.gov (2019年2月22日). 2019年2月22日閲覧。
- ↑ “Citizen Scientists Invited to Join Quest for New Worlds”. アメリカ国立光学天文台. 2019年2月22日閲覧。
- ↑ Hollands, Mark A.; Tremblay, Pier-Emmanuel; Gänsicke, Boris T.; Koester, Detlev; Gentile-Fusillo, Nicola Pietro (2021-05-01). “Alkali metals in white dwarf atmospheres as tracers of ancient planetary crusts”. Nature Astronomy 5 (5): 451–459. arXiv:2101.01225. Bibcode:2021NatAs...5..451H. doi:10.1038/s41550-020-01296-7. ISSN 2397-3366.
- ↑ Bergeron, P.; Kilic, Mukremin; Blouin, Simon; Bédard, A.; Leggett, S. K.; Brown, Warren R. (2022-07-01). “On the Nature of Ultracool White Dwarfs: Not so Cool after All”. アストロフィジカルジャーナル 934 (1): 36. arXiv:2206.03174. Bibcode:2022ApJ...934...36B. doi:10.3847/1538-4357/ac76c7. ISSN 0004-637X.
- 1 2 3 4 5 Debes, John H.; Thevenot, Melina; Kuchner, Marc; Burgasser, Adam; Schneider, Adam; Meisner, Aaron; Gagne, Jonathan; Faherty, Jaqueline K. et al. (2019). “A 3 Gyr White Dwarf with Warm Dust Discovered via the Backyard Worlds: Planet 9 Citizen Science Project”. アストロフィジカルジャーナル 872 (2): L25. arXiv:1902.07073. Bibcode:2019ApJ...872L..25D. doi:10.3847/2041-8213/ab0426.
- ↑ López-Sanjuan, C.; Tremblay, P.-E.; O'Brien, M. W.; Spinoso, D.; Ederoclite, A.; Vázquez Ramió, H.; Cenarro, A. J.; Marín-Franch, A. et al. (2024-11). “J-PLUS: The fraction of calcium white dwarfs along the cooling sequence” (英語). アストロノミー・アンド・アストロフィジックス 691: A211. arXiv:2406.16055. Bibcode:2024A&A...691A.211L. doi:10.1051/0004-6361/202451226. ISSN 0004-6361.
- ↑ Debes, John H.; Walsh, Kevin J.; Stark, Christopher (2012-03-01). “The Link between Planetary Systems, Dusty White Dwarfs, and Metal-polluted White Dwarfs”. アストロフィジカルジャーナル 747 (2): 148. arXiv:1201.0756. Bibcode:2012ApJ...747..148D. doi:10.1088/0004-637X/747/2/148. ISSN 0004-637X.
- 1 2 Steckloff, Jordan K.; Debes, John; Steele, Amy; Johnson, Brandon; Adams, Elisabeth R.; Jacobson, Seth A.; Springmann, Alessondra (2021-04-28). “How Sublimation Delays the Onset of Dusty Debris Disk Formation around White Dwarf Stars”. The Astrophysical Journal Letters 913 (2): L31. arXiv:2104.14035. Bibcode:2021ApJ...913L..31S. doi:10.3847/2041-8213/abfd39. PMC 8740607. PMID 35003618.