JVC HR-3300

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JVC HR-3300U VIDSTAR…アメリカ向けに開発されたHR-3300。これは日本向けバージョンと違いはほぼないが、日本版の製品では本体左上の黒いプレートに「Victor」とのみ書かれていたが、 このアメリカ向け製品では「VIDSTAR」というブランドロゴもついている。

JVC HR-3300は世界初のVHS規格のビデオテープレコーダーである。JVCはこの製品を1976年9月9日に発表した。[1][2] そして、同年10月31日にはVictor HR-3300が日本で発売され、 1977年にはアメリカでHR-3300U、イギリスではHR-3300EKが発売された。

2008年にHR-3300は、重要科学技術資料として国立科学博物館に登録された。[3] また、この製品はアメリカの週刊経済雑誌ビジネスウィークの「The 85 Most Disruptive Ideas in Our History」という2014年のコラムに掲載された。

歴史

これ以前のビデオレコーダー

世界初の録画可能な動画記録システムは、1963年に発売されたイギリス/テルカン社製の1⁄4インチの オープンリールのものであったが、これは商業として成功したものではなかった。いっぽう、 ソニーが発売したCV-2000は市販の1⁄2インチテープを使用できるようになっていたが、使用者はヘリカルスキャン用磁気ヘッドに手動でテープを通す必要があった。この製品は、テープを節約するために、この装置で記録する際、録画用テープの面積は、ほとんどを映像フィールドに割き、画質を落とすことで録画時間も延長していた。また、これの類似商品がアンペックスやRCAからその年のうちに発売された。1960年代後半にはビデオテープレコーダーの数が非常に多くなっていったため、それらを統一しようとして作成された7インチリール向けの1⁄2インチテープ統一規格「統一I型」が主流になっていった。

1971年にソニーはプロのユーザー向けに Uマチック方式の、 それまでのオープンリール式より圧倒的に使いやすいカセット入りテープを販売開始した。また、翌年には フィリップスが家庭用として初のビデオ「カセット」レコーダー(VCR)を販売した。しかしそれ以降には急激にVCRの機種が増え続け、かつカセットごとに独自規格を使っていたため互換性がなく不便であった。それを統合し、使いやすくしようと考えたのがソニーと日本ビクターであり、ソニーが開発したのがベータマックス、ビクターが開発したのがVHSであった。そして、初のVHS用VCRがこのHR-3300である。またそのころ、1974年には 三洋電機からVコード、1975年にはソニーからベータマックス、パナソニック(当時は松下電器・ブランドはナショナル)からVX方式が発売されていた。

VHSの開発

1971年、JVCのエンジニアたちは、白石勇磨と髙野鎮雄を中心に新たなビデオカセット統一規格を制作しようと立ち上がった。彼らはフォーマットの基準や制作目的などを設定していった。[4] 彼らはそのフォーマット規格の名称を「VHS」にすると決定した。それは、元々は「Vertical Helical Scan(垂直なヘリカルスキャン)」を略した名称とされていたが、その後「Video Home System」(家庭用動画システム)のバクロニムになった。[5][6]そして、それらの完成形がHR-3300である。

実は、これ以前にもJVCはVCRを業務用に提供していた。しかし、ほとんどが不良品であり、故障およびクレームにより返品される数は2台に1台という悲惨な状態であった。そして、家庭用にVCRを作り直そうとするも、その頃にはJVCのみならず世の中全体でビデオテープの不振が続いていたため映像部門はリストラされてしまった。しかし髙野鎮雄たちは諦めず、本部に見つかったら追い出される恐れまである中ごく少数の人数で極秘に家庭用規格制作部門を作り、何回もの試行を重ねついにVHSが完成する。テスト回数は1万5千回を超え、凄まじい労力がテープの中には詰まっていた。そして、これの少し前に発売されていたベータマックスは映像の質も高く、VHSより小型だという明らかなメリットがあった一方、標準記録時間がVHSの半分、また価格がVHSより高いという明らかなデメリットがあった。そのため、それまで会社の隅に追いやられていたVHS開発者たちが作った規格が、それまで先行していた会社ソニーに勝ったのであった。[5][7]

販売や見た目

初代HR-3300は1976年に日本で発売された。 それにはVHF用とUHF用に2つ、大型の回転ツマミ(家具調ブラウン管の「ガチャガチャ」のようなもの)がついており、それで録画するチャンネルを決めた。この製品には、RF出力だけでなく、当時としては非常に珍しいコンポジット方式のRCA端子まで搭載されていた(コンポジット信号が普及しだしたのは1990年ごろ) 。また、これには時間表示用に7セグメントディスプレイが搭載されており、これで時間を設定して自動で録画してくれる機能もあった。また、オーディオ用カセットテーププレーヤーについているような回転式アナログカウンターもついていた。

翌年にはアメリカ・イギリスでの販売が決定していたが、構造がかなり当時でも独特なものであったため、それに関しても有名になった。

フォーマット間の競争

1974年の12月には、ソニーがベータマックスと呼ばれるビデオフォーマットをVHSに先駆けて発表した。また、松下とJVCに版権を得る選択肢を与え、両者ともソニーの技術に驚きはしたがそれぞれがテープ規格を開発中であったがために両社に拒否されてしまった。

HR-3300は1976年発売で、他社と比べると比較的遅くに出たVCRであったが、成功した。なぜなら、このフォーマット・この装置では2時間の連続録画ができ、そのため映画の録画がカセット1本で丸ごとできたためである。 JVCはVHSフォーマットをオープン標準にし、1977年には新たに日本の4社がVHSを発売開始した。

構造

JVC HR-3300U(アメリカ版)の中身

このVCRは、初のVHS用VCRでありながら、ほとんどが入手しやすい部品で作られ、修理がしやすくなっている。この修理しやすさも、初期の目的案に則ったものであった。

規格 VHS(標準)
記録方式 回転式の2ヘッド式ヘリカルスキャン
映像出力方式 NTSC(カラー)
テープ太さ 12.7mm(0.5インチ)
テープ走行速度 33.35 mm/s (1.31 ips)
最長記録可能時間 T-120カセットの場合、2時間
電源 交流120V、60Hz
消費電力 28W(自動加熱機の作動中は35W)
映像
入力 0.5~2.0(Vp-p)、75Ωアンバランス
出力 1.0(Vp-p)、75Ωアンバランス
信号-雑音比 42dB以上
水平解像度(走査線) カラーモードだと220本以上
音声
入力 マイク:-67dB~
  10kΩアンバランス
  ライン入力:-20dB
  50kΩアンバランス
出力レベル 0dB、高インピーダンス
出力インピーダンス 1kΩアンバランス
信号-雑音比 40dB以上
応答周波数 50Hz~10000Hz
寸法 45.3 cm(W) x 14.7 cm(H) x 33.7 cm (D)
重量 13.5 kg (30 lbs)

脚注・注釈

  1. ↑ “Always Helpful! Full of Information on Recording Media "Made in Japan After All"”. Nipponsei.jp. 2011年1月11日時点のオリジナルよりアーカイブ。2011年7月11日閲覧。
  2. ↑ “JVC HR-3300”. Totalrewind.org. 2011年7月11日閲覧。
  3. ↑ “VHS方式家庭用ビデオ(HR-3300)” [VHS Video Home System (HR-3300)]. kahaku.go.jp. 2012年10月8日閲覧。
  4. ↑ Pollack, Andrew (1992年1月20日). “Shizuo Takano, 68, an Engineer Who Developed VHS Recorders”. The New York Times. 2011年7月11日閲覧.
  5. 1 2 “VHS STORY - Home Taping Comes of Age”. Rickmaybury.com (1976年9月7日). 2011年7月19日時点のオリジナルよりアーカイブ。2011年7月11日閲覧。
  6. ↑ “30周年のビクターVHSビデオが「IEEEマイルストーン」に”. ITmedia NEWS. 2026年7月9日閲覧。
  7. ↑ NHK プロジェクトX 2000年4月年放送「窓際族が世界規格を作った VHS・執念の逆転劇」アンコール版として2024年に視聴