SI文書中の非SI単位

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SI文書中の非SI単位

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

SI文書中の非SI単位(エスアイぶんしょちゅうのひエスアイたんい)とは、国際単位系国際文書の第4章「非SI単位(Non-SI Units)」に掲げられている23個の非SI単位である。これらの非SI単位は、過去のSI併用単位とは異なり、国際単位系(SI)の中で何ら特別な地位を占めてはいない。

概要

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SI文書はその第1版(1970年)から第9版のVer.3.02(2025年)に至るまで、「SI併用単位」(SI単位と併用できる非SI単位」(Non-SI units accepted for use with the SI Units)というものを認めていた。しかし第9版のVer.4.01(2026年6月)においてはこのSI併用単位の概念を廃止し、単に23個の非SI単位を列挙することに改めた。

経緯

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SIが成立した1960年と最初のSI文書が発行された1970年ごろにおいては、科学技術分野においても多数の非SI単位が頻繁に使用されており、SI文書中にもこれらの非SI単位を記述せざるを得ない事情があった[1]。

2019年のSI文書第9版においても、それまでのSI文書に比べて少数の非SI単位(15個)が記載され、「SI単位と併用できる非SI単位」(Non-SI units accepted for use with the SI Units)略称「SI併用単位」とされた。このことが、逆にこれらの非SI単位がいわば「準SI単位」(quasi-SI units)[2]と見なされ、SIが成立した1960年以降、今に至るもよく使われている実態がある。

国際度量衡委員会(CIPM])は、上記の状況は以下の理由により好ましくないと判断し、SI文書の第4章を全面的に書き換えて、SI併用単位の概念そのものを廃止することに決定した。

  • 非SI単位のリストが小さすぎて、国際的に認められている非SI単位が漏れている。
  • 「SIと併用することが認められている」(accepted for use with the SI Units)の意味がSIの制定から65年が経過した現在では不明確である。
  • その結果、これらの非SI単位の使用規則(例えば、SI接頭語の付加の可否、SI単位との併用の可否)に混乱が生じている[3]。
  • また、「SI併用単位」(SIとの併用が認められている)という表現が、時に誤ってSIの構成要素であると解釈され、その結果、SIがそれらのSI併用単位に対して責任を負っているかのように見なされてしまうという問題も起こった。

以上のことから、次の4つの案が検討された[4]。

案1)SIとの併用が認められる非SI単位のセットを縮小するが、完全な使用規則を設ける。

案2)SIとの併用が認められる非SI単位のセットを縮小し、完全な使用規則を設ける一方で、SIとの特別な関連性がなく使用規則もない非SI単位のリストを設ける。

案3)SIとの特別な関連性がなく使用規則もない非SI単位のリストを拡充する。

案4)非SI単位のリストを設けない。第4章を削除する。

議論の結果、第9版のVer.4.01(2026年6月)においては第3案が採用され、SI文書の第4章が次の点で大幅に改訂された[5]。

  • 第4章のタイトルを「SI単位と併用できる非SI単位(Non-SI units that are accepted for use with the SI)」から単に「非SI単位(Non-SI units)」へ変更する。
  • 「SIとの併用が容認される」という地位を撤廃する。非SI単位がSIの中で特別な地位を占めていないことを明確にする。
  • 何等の使用規則を設けない。
  • 非SI単位のリストを15個から23個に拡充する。
  • 非SI単位のSI単位への換算係数が重要であることを強調する。

一覧

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以下はSI文書の第4章に記載のある、全部で23個の非SI単位である[6]。これらの非SI単位のSI単位との併用をCIPMが認めているわけではないことに注意。SIが正式に制定(1960年)されて以来初めて、非SI単位が国際単位系(SI)の中で特別な地位を占めていないことが明確にされた[7]。また何等の使用規則(例えば、SI接頭語の付加の可否)も定められていない。

この23個の非SI単位の1998年以降の出自は以下の通りである。

  • 2個(ガル、バール)のうち、ガルは、2019年のSI文書第9版Ver.2.01-Ver.3.02の第4章表8「SI併用単位」の欄外注に、バール(記号 var)は第9版Ver.3.02の2.3.4 組立単位の欄外注に、記述があった非SI単位である。
  • 1個(アールは、第7版(1998年)のSI文書の表8「暫定的にSIと併用できる非SI単位」に記載されていた非SI単位である。
SI文書に記載のある非SI単位(SI文書第9版Ver.4.01(2026年6月)による)
単位の分類量単位の名称単位記号SI単位による値(参考)計量法上の位置づけ
古くからある時間および角度の単位 時間 分min1 min = 60 s法定
時h1 h = 60 min = 3600 s法定
日d1 d = 24 h = 86400 s非法定[注 1]
平面角および位相角 度°1° = (π/180) rad法定
分′1′ = (1/60)° = (π/10800) rad法定
秒″1″ = (1/60)′ = (π/648000) rad法定
SI単位の10進倍数および10進分数の歴史的な名称 面積 アールare1 a = 1 dm2 = 102 m2特殊
ヘクタールha1 ha = 1 hm2 = 104 m2特殊
バーンb1 b = 100 fm2 = 10-28m2非法定
体積 リットルl, L[8]1 l = 1 L = 1 dm3 = 103 cm3 = 10−3 m3法定
質量 トンt1 t = 103 kg法定
長さ オングストロームÅ1 Å = 0.1 nm = 10-10 m特殊
加速度ガルGal1 Gal = 1 cm s−2 = 10−2 m s−2 特殊
圧力バール[注 2]bar1 bar = 0.1 MPa = 105 Pa法定
SI単位の10進倍数または10進分数ではない、国際的に認められた単位 質量ダルトンDa1 Da = 1.66053906892(52)×10−27 kg[注 3]非法定
長さ 天文単位au1 au = 149597870700 m非法定
海里なし(注)1 海里 = 1852 m特殊
速さノットなし(注)1 海里/時 = (1852/3600) m/s特殊
エネルギー 電子ボルトeV1 eV = 1.602176634×10−19 J非法定
専門的な技術分野で使用される単位 比の対数 ネーパNp非法定
ベルB非法定
デシベルdB法定
無効電力バール[注 4]var1 var = 1 VA = 1 W法定

(注)海里とノットの単位記号は示されていない。これはいずれも国際的に合意された記号がないためである。

(注)最後の欄の「計量法上の位置づけ」は、SI国際文書には記載がなく、参考として付加したものである。 「(参考)計量法上の位置づけ」欄の意味:法定:法定計量単位、 特殊:特殊の計量に用いる法定計量単位、 非法定:非法定計量単位

脚注

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注

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  1. ↑ 計量法上は「日」は計量単位ではなく暦の単位である。
  2. ↑ 無効電力の単位「バール(var)」は異なる。
  3. ↑ CODATA2022の数値。
  4. ↑ 圧力の単位「バール(bar)」は異なる。

出典

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  1. ↑ Non-SI units in the SI and their use with SI prefixes(Abstract) Richard J C Brown, 2023-08-22, en:Metrologia
  2. ↑ Brown, R J C (2023) Non-SI units in the SI and their use with SI prefixes. Metrologia, 60 (5). 053001, Abstract, 'It is observed that these non-SI units acquire quasi-SI status because of their listing in the SI Brochure.', NPL
  3. ↑ Recent updates to the SI Brochure concerning non-SI units and informative marginal notes Richard J C Brown and Michael Stock, 2026-08-19, Metrologia, Volume 63, Number 4, p.2 
  4. ↑ Recent updates to the SI Brochure concerning non-SI units and informative marginal notes Richard J C Brown and Michael Stock, 2026-08-19, Metrologia, Volume 63, Number 4, p.3 
  5. ↑ The International System of Units - 9th edition (2019) Published in May 2019 - Revised in June 2026, BIPM
  6. ↑ International System of Units, 9th Edition(2019)Ver.4.01(June 2026),BIPM, 4 Non-SI Units (pp.140-141)
  7. ↑ Updated SI Brochure clarifies the status of non-SI units, Clarifying the role of non-SI units, 2026-06-04, BIPM
  8. ↑ リットル#記号のゆれ