Studies in the Sierra

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Studies in the Sierra
著者 ジョン・ミューア
イラスト ジョン・ミューア(スケッチ)
発行日 1874年 - 1875年(『オーバーランド・マンスリー』連載)
1950年(Sierra Club版単行本)
発行元 シエラクラブ(1950年版)
ジャンル 地質学、自然誌
国 アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国
言語 英語
公式サイト John Muir Exhibit(全文)
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『Studies in the Sierra』(参考試訳:「シエラ山脈の研究」)は、ジョン・ミューアがシエラネバダ山脈の地形の成因を論じた全7章の地質学的論考である。1874年から1875年にかけて雑誌『オーバーランド・マンスリー』に連載され[1]、のちに『シエラクラブ会報』に再録され、1950年にSierra Clubから単行本として刊行された[1]。

ミューアはこの論考で、ヨセミテ渓谷をはじめとするシエラの渓谷や山々は、隆起や陥没といった激変によってではなく、氷河期の氷床と氷河の侵食によって彫り出されたと主張した[2] [3]。

概要

本書は、シエラネバダ山脈西斜面(北緯36度30分から39度付近)を主な対象に、地形の成因を、岩石の内部構造、氷河による削剥、氷河期後の侵食、土壌の形成という順に検討する[3]。

結論は、山々の個性は岩石に潜んでいた構造と氷河の作用の組み合わせから生まれたというものである。ミューアは、シエラの山と谷のすべてについて、その発達は氷床と、のちに分かれた個々の氷河に負うものであり、そこに「築き上げること」はなく「あらゆるものを削り崩し、解体すること」があっただけだと述べている[3]。

ミューアは、ヨセミテ渓谷を谷底の陥没によってできた「例外的な創造」とみる見解を退けた[2]。また、同じ型の「ヨセミテ」が、複数の氷河谷が合流する場所にシエラ各地で見られることを示し、ヨセミテは特殊な存在ではないと論じた[2]。

成立と刊行

連載

本書は全7回の連載「Studies in the Sierra」として、『オーバーランド・マンスリー』(サンフランシスコ)の第12巻(393–403頁、489–500頁)、第13巻(67–79頁、174–184頁、393–401頁、530–540頁)、第14巻(67–73頁)に1874年から1875年にかけて掲載された[1]。第6回「Formation of Soils」は第13巻第6号(1874年12月)530–540頁に掲載されている[4]。

ミューアは本文中で、これらの観察を「シエラでの5年間の観察」に基づくものとし[2]、1872年3月のローンパイン(インヨー)地震のあとに現地を調査したこと、1872年と1873年の夏に各地の氷河を訪れたことを記している[5]。

再録と単行本化

連載は1915年から1921年にかけて『シエラクラブ会報』第9巻から第11巻に再録された[1]。たとえば第1回「Mountain Sculpture」は第9巻第4号(1915年)225–239頁[6]、第7回「Mountain Building」は第11巻第2号(1921年)181–193頁に再録されている[7]。

1950年、Sierra Clubはウィリアム・E・コルビーの序文、ジョン・P・ブワルダの前書きを付け、ミューア自身のスケッチを収めた単行本として刊行した[1]。献辞でSierra Clubは、ミューアの地質学への貢献の総体は今なお明確でないとしつつも、公共に奉仕した保全の先駆者としての彼の地位は揺るがないと記している[1]。

構成と内容

本書は全7章で構成される。 以下で各章の要約し、また印象的な一節を引用する。

章題の英文と印象的な一節の英文は原著からの引用である。章題につけた和文と印象的な一節の和文は試訳である。

第1章 Mountain Sculpture(山岳の彫刻)

氷河作用によってシエラネバダ山脈の山頂、峰、峡谷、湖盆が形成された過程を論じる。山脈はもともと比較的単純な起伏をもつ地形だったが、長い氷河時代を通じて氷河が岩盤を削り、運搬し、現在見られる複雑で壮大な山岳景観を生み出した。 花崗岩にもともと備わっていた劈開面(割れやすい面)に沿って削り出された。氷河は岩を磨り減らすだけでなく砕いて運び去る。ドームや断崖、尖塔など多様な岩の形は、岩石内部の構造の違いで説明される。地質学的な形成過程を「山の彫刻」として描く[8]。

印象的な一節
"In the beginning of the long glacial winter, the lofty Sierra seems to have consisted of one vast undulated wave, in which a thousand separate mountains, with their domes and spires, their innumerable cañons and lake basins, lay concealed."
(試訳:長い氷河時代の冬の始まりには、シエラの高峰は一つの巨大な波状の起伏から成っていたように思われる。その中には、無数の山々が、ドームや尖塔、数えきれない峡谷や湖盆とともに、まだ姿を隠していた。)

第2章 Origin of Yosemite Valleys(ヨセミテ渓谷の起源)

ヨセミテ渓谷の成因について、氷河による侵食説を詳しく展開する。ヨセミテ渓谷を谷底の陥没でできた「例外的な創造」とする説を、観察事実にもとづいて退ける。ヨセミテは5つの氷河が合流して削った谷であり、同じ型の「ヨセミテ」はシエラ各地にあって、いずれも複数の氷河谷の合流点に位置する。ハーフドームやエル・キャピタンも、氷河が尾根の端を割った結果として説明される[2]。

印象的な一節
"The greatest obstacle in the way of reading the history of Yosemite valleys is not its complexity or obscurity, but simply the magnitude of the characters in which it is written."
(試訳:ヨセミテ渓谷の歴史を読み解くうえで最大の障害は、その複雑さや不明瞭さではない。ただ、そこに刻まれた文字があまりにも巨大だということなのだ。)

第3章 Ancient Glaciers and Their Pathways(古代の氷河とその通り道)

ヨセミテに注いだ5つの氷河(ヨセミテ・クリーク、ホフマン、テナヤ、サウス・ライエル、イリルエット)を一本ずつ描き、それぞれの規模と性格、消滅の経過を語る。谷の曲がり方や幅の変化は支流氷河の合流と対応しており、水流では説明できないことを示す。ナイアガラ峡谷との比較では、同じ長さで比べるとヨセミテの侵食量は約100倍に及ぶと述べる[9]。

印象的な一節
"The Illilouette basin is one grand garden embellished with rocks."
(試訳:イリルエット盆地は、岩で飾られた一つの壮大な庭園である。)
"Though the gigantic glaciers of the Sierra are dead, their history is indelibly recorded in characters of rock, mountain, cañon, and forest."
(試訳:シエラの巨大な氷河はすでに消滅したが、その歴史は岩石や山々、峡谷や森林に、消えることのない文字として刻み込まれている。)

第4章 Glacial Denudation(氷河による削剥)

氷河が岩を削る仕組みを論じる。氷河の痕跡として、磨かれた岩肌、モレーン、地形全体の3つを挙げる。氷河の侵食には、岩を磨いて泥にする方法と、割ってブロックにする方法の二通りがあるという。かつて山脈を覆っていたスレート(粘板岩)の分布から、西斜面中部での削剥量は平均で1マイルを超えると見積もる[5]。

印象的な一節
"Glacial denudation is one of the noblest and simplest manifestations of sun-power."
(試訳:氷河による削剥は、太陽エネルギーが示す、最も崇高で単純な現象の一つである。)
"we may read Nature's writings on the stone pages of the mountains"
(試訳:私たちは、山々の石のページに記された自然の文章を読むことができる。)

第5章 Post-Glacial Denudation(氷河期後の削剥)

氷河が後退した後、山岳地形がどの程度変化したかを検討する。雪崩、山崩れ、河川、雨、風などが侵食を続けているものの、その作用は氷河期の大規模な侵食に比べればごくわずかだと論じる。現在の山岳景観には、氷河がつくった地形がほぼそのまま残されているという見解を示す。[10]。

印象的な一節
"Plants, animals, and landscapes were wiped from its flanks like drawings from a blackboard"
(試訳:植物も動物も風景も、黒板の絵のように山腹から拭い去られた。)
"When Nature lifted the ice sheet from the mountains she may well be said not to have turned a new leaf, but to have made a new one of the old."
(試訳:自然が山々から氷床を取り除いたとき、それは新しいページをめくったというより、古いページから新しいページをつくり出したと言うべきだろう。)

第6章 Formation of Soils(土壌の形成)

シエラの森林を支える土壌の成り立ちを論じる。主な土壌の生産者は氷河であり、西斜面に帯状に広がる森林帯の土壌は、氷床が後退するときに堆積した末端モレーンだという。このほか、雪崩、地震による岩石雪崩、水流、風、湿地や草原も土壌を形成し、選別している。氷床が一度に溶けていたなら、シエラの森林は成立しなかっただろうとする[11]。

印象的な一節
"Nature has plowed the Sierra flanks more than a mile deep through lava, slate, and granite, thus giving rise to a most lavish abundance of fruitful soils."
(試訳:自然は溶岩、粘板岩、花崗岩を貫き、シエラの山腹を一マイル以上の深さにわたって耕してきた。それによって、実り豊かな土壌が惜しみなく生み出されたのである。)

第7章 Mountain-Building(山岳の形成)

結論にあたる章。尖塔から主峰に至るまでシエラの山々は、周囲の岩石が氷河によって取り去られて残った「残余」であると論じる。ライエル山、リッター山、ホイットニー山などを例に挙げ、氷河が日陰側に深く食い込む傾向も指摘する。ミューアは、造山とはすなわち氷河による「削り崩し」の結果であるとの見方を示し、山は隆起によってできたという見方を退ける[3]。

印象的な一節
"Granite crystallizes into landscapes; snow crystallizes above them to bring their beauty to the light."
(試訳:花崗岩は景観へと結晶し、その上に積もる雪は、氷河となってその美しさを光のもとへと浮かび上がらせる。)
"In all these sublime chapters of Sierra history there has been no upbuilding, but a gradual dismantling, and of this, all its elevations and depressions are the records and monuments."
(試訳:シエラの崇高な歴史を記すこれらの章において、起こったのは建設ではなく、緩やかな解体であった。そして山々の高まりも谷の窪みも、その歴史を記録する記念碑なのである。)

本書の特徴

前節からわかるように、本書の特徴は「科学的な地質学研究とネイチャーライティングが一体化している」点にある。

自然を読む
岩石・峡谷・山頂などを観察し、地球の歴史が刻まれた書物として捉える。
氷河を造形者として描く
氷河を単なる侵食作用ではなく、山岳景観を彫刻する巨大な自然の力として描く。
自然の統一性
氷河・河川・雪・土壌・森林を相互に関連する一つの自然体系として理解する。
科学と美的感覚の融合
地質学的な観察を、比喩や詩的表現によって壮大な自然史の物語へと昇華する。

評価

1950年版を刊行したSierra Clubは、献辞の中で、ミューアの地質学への貢献の総体は今もなお明確ではないと述べつつも、「偉大な公共の奉仕者」「保全の先駆者」としての彼の地位は不動であるとしている[1]。

関連項目

脚注

  1. 1 2 3 4 5 6 7 John Muir. “Studies in the Sierra by John Muir” (英語). The John Muir Exhibit. Sierra Club. 2026年10月31日閲覧。
  2. 1 2 3 4 5 John Muir. “II Mountain Sculpture: Origin of Yosemite Valleys” (英語). The John Muir Exhibit. Sierra Club. 2026年10月31日閲覧。
  3. 1 2 3 4 John Muir. “VII Mountain-Building” (英語). The John Muir Exhibit. Sierra Club. 2026年10月31日閲覧。
  4. ↑ John Muir. “Studies in the Sierra. No. VI. - Formation of Soils.” (英語). John Muir: A Reading Bibliography by Kimes, 1986. University of the Pacific Scholarly Commons. 2026年10月31日閲覧。
  5. 1 2 John Muir. “IV Glacial Denudation” (英語). The John Muir Exhibit. Sierra Club. 2026年10月31日閲覧。
  6. ↑ John Muir. “Studies in the Sierra. No. 1-Mountain Sculpture.” (英語). John Muir: A Reading Bibliography by Kimes, 1986. University of the Pacific Scholarly Commons. 2026年10月31日閲覧。
  7. ↑ John Muir. “Studies in the Sierra. No. VII. - Mountain Building.” (英語). John Muir: A Reading Bibliography by Kimes, 1986. University of the Pacific Scholarly Commons. 2026年10月31日閲覧。
  8. ↑ John Muir. “I Mountain Sculpture” (英語). The John Muir Exhibit. Sierra Club. 2026年10月31日閲覧。
  9. ↑ John Muir. “III Ancient Glaciers and Their Pathways” (英語). The John Muir Exhibit. Sierra Club. 2026年10月31日閲覧。
  10. ↑ John Muir. “V Post-Glacial Denudation” (英語). The John Muir Exhibit. Sierra Club. 2026年10月31日閲覧。
  11. ↑ John Muir. “VI Formation of Soils” (英語). The John Muir Exhibit. Sierra Club. 2026年10月31日閲覧。

外部リンク