再処理

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再処理(さいしょり、英語:Nuclear reprocessing)とは、原子炉の使用済み核燃料からウラン、プルトニウムを分離し、取り出す化学的なプロセスである[1][2]。PUREX法により行われる[1]。核燃料サイクルの重要なプロセスの一つである[1]。

再処理によって取り出されたウランやプルトニウムは、再び核燃料に加工されるほか、核兵器の材料にもなる[3][4]。

概要

使用済み核燃料にはウラン235、ウラン238に加え、様々な核分裂生成物や中性子捕獲により生成されるプルトニウムなどの超ウラン元素が含まれる[5][6][7][8]。そのうちプルトニウム239は核兵器の材料として利用できることから、使用済み核燃料から不純物を分離する再処理が考案された。当初再処理は核兵器の製造のためにのみ行われていたが[3]、原子力発電の普及にともない、プルトニウム239を含む核燃料であるMOX燃料製造のためにも行われるようになった[1]。

現在主流のPUREX法は使用済み核燃料を、再処理ウラン、プルトニウム、高レベル廃液の三つに分離する[1][9][10]。

  • 再処理ウラン(回収ウラン)

再処理ウランは天然ウランよりも多くのウラン235を含む[10]とともに、ウラン236という同位体を含むという特徴がある[11]。再処理ウランは再び濃縮することで核燃料として利用できるが、ウラン236は核分裂を妨げる中性子吸収材としてふるまうため、ウラン235の濃縮度を通常よりも上げる必要がある[12]。再処理ウランは高い放射能を持ち濃縮が比較的困難であるため、再利用は一般的ではない[13]。

  • プルトニウム

プルトニウム239、プルトニウム240、プルトニウム241など様々なプルトニウムの同位体が含まれる。プルトニウム240は核分裂を起こしにくく、将来核燃料の再処理を繰り返し行う際には障害となる可能性がある[14]。

  • 高レベル廃液

高レベル廃液には核分裂生成物のほか、マイナーアクチノイドという超ウラン核種が含まれる[1]。廃液はガラスで固めたガラス固化体に加工され、最終的には高レベル放射性廃棄物として地層処分される。

廃液には発熱量が多い核種、半減期が非常に長い核種など特性が異なる核種が混在していることから、分離し核種ごとに適切な処分を行う研究が行われている[15]。

原子力発電における再処理

原子力発電における使用済み核燃料の再処理は、使用済み核燃料を直接廃棄する方法に比べて高コストだが[16]、燃料となるウランの使用量と高レベル放射性廃棄物の量を減らすことができるという利点がある[17][18]。放射性廃棄物の発生は1/2以下になり、ウラン資源を1~2割節約できるとされる[19]。主にフランスで行われているほか、日本、ロシア、中国でも行われている。アメリカやスウェーデンは使用済み核燃料をそのまま地層処分するワンススルー方式を採用している。

再処理は現在主に熱中性子炉用のMOX燃料を製造するために行なわれている[20]。MOX燃料とは二酸化プルトニウムと二酸化ウランが混合された燃料であり、[21]ほとんどがフランスで製造されている[20][注釈 1]。

プルトニウムを4~9%含むMOX燃料は適切な設計を行うことで一般的な軽水炉での利用が可能であり、これはプルサーマル利用と呼ばれ[22]、ロシア、フランス、日本等で行われている[注釈 2]。プルサーマル利用によって生じる使用済みMOX燃料を再び再処理することは可能[23]だが、現在商業的には行われていない。フランスは使用済みMOX燃料を後述の閉じた核燃料サイクル実現まで保管する政策をとっている[24]。

原子力発電に伴う再処理であっても、核兵器の材料であるプルトニウム239を生じることから、核拡散防止の観点からIAEAによる厳しい査察が行われる。商業的に再処理を行っている国は、中国、フランス、インド、日本、ロシア、イギリスのみであり、そのうち核兵器を所有していないのは日本のみである[25]。

核燃料サイクルと再処理

前節で説明したような軽水炉等によるプルサーマル利用は、核燃料中に核分裂を妨げる核種が蓄積することから、再処理を何度も繰り返し行うことは不可能である[24]。これは部分的に閉じた核燃料サイクルである[26]。

一方原子力発電における再処理の最終的な目的は、高速増殖炉の燃料を製造し[25]、閉じた核燃料サイクルを実現することだとされてきた[26]。高速増殖炉は高速中性子を利用する原子炉の一種であり[27]、自然界のウランの99.3%を占めるが核分裂連鎖反応を起こさないウラン238を核燃料に適したプルトニウム239に変換できる特徴をもち、ウランを約100倍節約できるとされた[25]。また高速増殖炉は熱中性子炉では核分裂を起こしにくい核種を燃料として消費できる[24]。そのため繰り返し再処理することが可能で[24]、放射性廃棄物の有害性を低減しつつ閉じた核燃料サイクルを形成することができる。

原子力発電の黎明期にはウランは希少な資源であり、大規模な原子力発電の利用には高速増殖炉が必要であると考えられていた[28][25]。そのためアメリカをはじめとする多数の国が高速増殖炉の研究開発を行った[28]。しかし、当時想定されていたよりもウランはありふれた資源であり[注釈 3]、高速増殖炉の技術的難易度は高かったため、高速増殖炉の魅力は失われっていった[28]。再処理による核拡散リスクを懸念した米国をはじめとして、イギリス、ドイツは高速増殖炉の計画を放棄した[28]。

ロシア、フランス、中国、インド、日本は高速増殖炉の開発を続けており、ロシア、中国、インドは高速増殖炉の原型炉、実証炉を稼働中である。ただし使用済みMOX燃料の再処理は商業的にまだ行われていない状態にある。

核兵器製造における再処理

プルトニウムを用いた核兵器製造においては、再処理によって取り出されるプルトニウムに占めるプルトニウム239の濃度をできる限り高くすることが望ましい[29]。プルトニウム240は高い放射能を持ち、意図しない核分裂を起こしやすいためである[29]。

プルトニウム240はプルトニウム239が中性子を捕獲することによって核燃料中で蓄積されていくため、核兵器製造を目的とした原子炉は核燃料を商用炉に比べて短時間で交換し、プルトニウム240の割合を低く保つ運用を行う[注釈 4][29]。プルトニウム240の濃度が高いプルトニウムは原子炉級プルトニウム、濃度が低いプルトニウムは兵器級プルトニウムと呼ばれ区別される[29]。

ただし、技術的難易度は上がるものの原子炉級プルトニウムでも核兵器の製造は可能である[30][31]。

関連項目

脚注

注釈

  1. ↑ 六ケ所村でMOX燃料工場が稼働予定である
  2. ↑ ロシアのプルサーマル利用は核兵器用に製造したプルトニウムの消費が主な目的である。
  3. ↑ OECDは2014年時点で、ウランは150年分の資源量があるとした。
  4. ↑ つまり低い燃焼度で運転される。

出典

  1. 1 2 3 4 5 6 “核燃料サイクル工学概論”. 日本原子力研究開発機構. 2026年5月23日閲覧。
  2. ↑ “再処理プロセス・化学ハンドブック 第3版”. 2026年5月23日閲覧。
  3. 1 2 “再処理技術の誕生から現在に至るまでの解析および考察”. 2026年5月24日閲覧。
  4. ↑ “核廃棄物はリサイクルできる——ただし「経済的利益はない」”. MIT Technology Review. 2026年5月23日閲覧。
  5. ↑ “再処理廃棄物の特性”. JAEA. 2026年5月24日閲覧。
  6. ↑ “原子力発電で使い終わった燃料はどうなるの?”. 東北電力. 2026年5月23日閲覧。
  7. ↑ “原子炉の物理第 8 章 核燃料の燃焼”. 2026年5月24日閲覧。
  8. ↑ “使用済み燃料の処理・処分の観点からの核燃料サイクルにおける高速炉の意義と高速炉使用済み燃料再処理の技術動向と課題”. 2026年5月24日閲覧。
  9. ↑ “回収ウランの利用”. JAEA. 2025年5月24日閲覧。
  10. 1 2 “回収ウラン”. JAEA. 2026年5月25日閲覧。
  11. ↑ “Advanced Fuel CycleCost Basis – 2017Edition”. U.S. Department of Energy. p. D1-27. 2026年5月24日閲覧。
  12. ↑ “Advanced Fuel CycleCost Basis – 2017Edition”. U.S. Department of Energy. p. D1-23. 2026年5月24日閲覧。
  13. ↑ “A Review of the Nuclear Fuel Cycle Strategies and the Spent Nuclear Fuel Management Technologies”. 2026年5月25日閲覧。
  14. ↑ “原子力白書 2-2 原子力のエネルギー利用を進めていくための取組”. 2026年5月24日閲覧。
  15. ↑ “群分離・核変換技術について”. 2026年5月24日閲覧。
  16. ↑ “再処理の経済性”. JAEA. 2026年5月24日閲覧。
  17. ↑ “核燃料サイクルの意義”. 資源エネルギー庁. 2026年5月24日閲覧。
  18. ↑ “A Review of the Nuclear Fuel Cycle Strategies and the Spent Nuclear Fuel Management Technologies”. 2026年5月25日閲覧。
  19. ↑ “再処理事業の概要”. 日本原燃. 2026年5月24日閲覧。
  20. 1 2 “Processing of Used Nuclear Fuel”. 2026年5月25日閲覧。
  21. ↑ “MOX燃料”. JAEA. 2026年5月25日閲覧。
  22. ↑ “MOX燃料加工事業の概要”. 日本原燃. 2026年5月25日閲覧。
  23. ↑ “資源エネルギー庁がお答えします!~核燃料サイクルについてよくある3つの質問”. 資源エネルギー庁. 2026年5月25日閲覧。
  24. 1 2 3 4 “Mixed Oxide (MOX) Fuel”. 2026年5月25日閲覧。
  25. 1 2 3 4 “Plutonium Separation in Nuclear Power Programs”. International Panel on Fissile Materials. 2026年5月25日閲覧。
  26. 1 2 “The Future of the Nuclear Fuel Cycle”. 2025年5月26日閲覧。
  27. ↑ “高速増殖炉”. 電気事業連合会. 2026年5月25日閲覧。
  28. 1 2 3 4 “It's Time to Give Up on Breeder Reactors”. 2026年5月25日閲覧。
  29. 1 2 3 4 “Nuclear fuel cycle Plutonium”. World Nuclear Association. 2025年5月24日閲覧。
  30. ↑ “原子炉級プルトニウムは核兵器に使えないか”. 2026年5月24日閲覧。
  31. ↑ “使用済み核燃料から核爆弾できる?製造可能、米は実験成功”. 2026年5月24日閲覧。