南館正夫

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東京・柳島自転車商一家殺人事件(とうきょう・やなぎしまじてんしゃしょういっかさつじんじけん)は、1915年(大正4年)3月30日に発生した強盗殺人事件。警察は事件とは無関係な人物を取り調べたことで冤罪事件を生じさせた未解決事件。[1]

事件の概要

東京市本所区(現東京都墨田区)柳島元町の自転車商Y(当時34歳)と妻M(同28歳)、長女(同4歳)、次女(同2歳)の一家4名が惨殺され、金品が奪われた。被害者らは玄能のようなものでめった打ちにされ、現場は血の海になっていた。同家には家族の他に住み込みの従業員が2名いたが、被害には遭わず、また熟睡していたため事件には気付かなかった。[2]

冤罪

同年4月10日、上野署は2名に嫌疑をかけ取り調べたが無関係だった[3]。その後、警察はYと取引のあった行商の男性H(当時26歳)を事件日の夜に帰宅していなかった点と、被害者と取引があり金策を頼んでいた点で疑いをかけられ長期にわたり朝から晩まで代わる代わる刑事に問い詰められ、鉄拳まで飛んでくるためにとうとう犯行を自白した[4]。Hは同年4月22日に逮捕され、1915年10月15日に東京地裁はHに死刑を言い渡した。[5] ところが、控訴審において、担当したK検事が送付された記録を読むと、明確な物的証拠は一つもなかった事を不審に思い、Hを取調室に呼んだが泣くだけで話が進まず、Hを連れて現場に向かった。記録では被害者宅の塀を乗り越えたとするが、Hは生まれつき足が悪かったためこの塀を越えるのは何度か検証を重ねた上で無理なことが決定付けられ、凶器を捨てたとする川底を艀4隻と潜水夫12人で半月探したが見つからなかった[6]。また事件前日の3月29日にHが露天で凶器とされた薪割りを買ったとする自供も露天商のその日は雨で露天を開いていないし帳簿にも記載がないとの証言があり、[7]翌年6月24日、東京控訴院はHに無罪を言い渡した。こうして捜査は振り出しに戻った。[8] この事で世間からの批判の声が強まり、Hの取り調べを担当した刑事は退職し坊主になり懺悔で全国を遍路し、当時の署長も埼玉に転任後に病死。他の刑事4人も退職し、柳島事件の捜査陣は大改革したが、すっかり気力も失った[9]。

真犯人とする男Mを検挙

事件から5年後の1920年7月24日に、畑から窃盗したナスを売っていた男・M(逮捕時20歳)を板橋署が逮捕した[10]。その後、Mは「柳島四人殺しはおれがやったことだ。許してくれ。白状するから[11]」とうなされながら転げ回っていたため、署長は地下室で取り調べを行い、柳島事件について追求したところ「申しわけありません、犯人は確かに私です」と罪を認めた。署長が柳島事件は5年前であり、君は当時15歳であり、そのような事が出来るのか?と質問したところ「いえ私です。あれ以来、もう生きていても生きた心地がしません。どうか私を死刑にしてください」と発言した[12]。その後、事件の翌月の1915年4月に栃木県で15歳くらいの少女を強姦して刺殺し[13]、1916年7月に東京で同じく15歳くらいの少女を強姦して絞殺し[13]、1920年6月29日頃、王子町にて17、8歳の少女を絞殺し、口に砂を詰め、所持品を奪い、荒川に投げ込んだことも自供した[13]。しかし板橋署に検挙されたMは釈放され柳島事件はその17年後も未解決とする文献や他にも未解決とする文献もある、清水正二郎著の「明治・大正・昭和呪われた女性犯罪」を始めとする複数の文献ではMの死刑が確定し、22歳で執行されたと記載されているが、Mが死刑確定した可能性は極めて低い。[14][15]

脚注

  1. ↑ 読売新聞1916年6月26日
  2. ↑ 読売新聞1915年3月31日
  3. ↑ 読売新聞1915年4月11日
  4. ↑ 捜査戦線秘録P202
  5. ↑ 東京地方検察庁沿革誌P74〜75
  6. ↑ 捜査戦線秘録P202〜204
  7. ↑ 読売新聞1916年6月2日
  8. ↑ 読売新聞1916年6月25日
  9. ↑ 捜査戦線秘録P205〜206
  10. ↑ 読売新聞 大正9年9月11日 朝刊 5頁「柳島五人殺真犯人と認定された 当時十五の南館正夫」
  11. ↑ 清水正二郎『明治・大正・昭和呪われた女性犯罪』1965年、NDLJP:3033280/109
  12. ↑ 清水正二郎『明治・大正・昭和呪われた女性犯罪』1965年、NDLJP:3033280/118
  13. 1 2 3 読売新聞 大正9年8月20日 朝刊 5頁「柳島四人殺し嫌疑者 更に大犯罪を自白す 東京及び茨城埼玉の両縣で年若き三婦人を絞殺 残忍を極めし手段」
  14. ↑ 捜査戦線秘録P200〜206
  15. ↑ 家庭と警察P103〜105

関連項目

参考文献

  • 事件・犯罪研究会、村野薫 編 『明治・大正・昭和・平成 事件・犯罪大事典』 東京法経学院出版、2002年。 ISBN 4-8089-4003-5