経営行動
『経営行動』(けいえいこうどう、英: Administrative Behavior)は、ハーバート・A・サイモン(Herbert A. Simon, 1916–2001)が著した書籍である(原題 Administrative Behavior: a Study of Decision-Making Processes in Administrative Organization)。同書は「意思決定は管理の核心であり、管理理論の語彙は人間の選択の論理と心理学から導き出されなければならない」と主張し、管理組織を「科学的分析の基礎を提供するような方法で」記述しようと試みている[1]:xiii-xiv[2]:xlv-xlvi[3]:xlvii-xlviii[4]:xi。初版は1947年、第2版は1957年、第3版は1976年、第4版は1997年に刊行された。2001年のサイモンの訃報記事で要約されているように、同書は「最大限の利益をもたらす意思決定を行うことのできる全知の『経済人』という観念を退け、代わりに『満足化する——満足のいく行動方針を探す』『経営人』という考え方を据えた」[5]。『経営行動』は、カーネギー学派として知られる経済学の潮流の基礎を築いた。
同書は政治学や経済学といった社会科学の諸分野にまたがる[6]。サイモンは、『The Sciences of the Artificial』(1969年)などの後年の著作で、同書のいくつかの考えに立ち返った[6][7]。スウェーデン王立科学アカデミーは、1978年のノーベル経済学賞をサイモンに授与するにあたり、同書を「画期的」と評した[8][9]。1990年のPublic Administration Review誌の記事は、同書を「半世紀(1940年–1990年)における行政学の書」と称した[10]。また、アメリカ経営学会のフェローを対象とした投票では、20世紀に最も影響力のあった経営書の第5位に選ばれた[11]。
背景
本書は、サイモンがシカゴ大学に提出した政治学の博士論文に基づいており、彼は1937年にその構想を始めた[12]:53。当時、同大学の政治学部の学部長はチャールズ・エドワード・メリアム(Charles Edward Merriam)であった[12]:55–63。
1936年以降、サイモンは国際シティ・マネージャー協会(International City Managers Association, ICMA)で、はじめは半日勤務の研究助手として、のちに常勤の職員として働いた[12]:69–92[13]:76–77,84–87,96–97。ICMAでのさまざまな活動の中で、彼は所長のクラレンス・リドリー(Clarence Ridley)から管理について、また科学的な共同研究について学び、1938年にはリドリーとともに最初の著書を出版した[12]:64,72[14]。サイモンはリドリーを自身の思考に大きな影響を与えた人物として挙げているが、ICMA在籍中に実際に博士論文に取り組んだわけではなかった[12]:64–65,69–72,74。
サイモンは1939年から1942年まで、カリフォルニア大学バークレー校の行政研究所(Bureau of Public Administration)に職を得た[12]:78–85。彼がシカゴ大学の博士論文を完成させたのはバークレーにおいてであり、その論文はレナード・D・ホワイト(Leonard D. White)、C・ハーマン・プリチェット(C. Herman Pritchett)、クラレンス・リドリー、チャーナー・マーキス・ペリー(Charner Marquis Perry)からなる委員会によって承認された[12]:84。サイモンは1942年に博士号を取得した[12]:84–85。
影響
博士論文と本書の執筆にあたって、サイモンはチェスター・I・バーナード(Chester I. Barnard)の『経営者の役割』(1938年)から影響を受けた。1991年の自伝で、サイモンはバーナードの著書について、「当時の他の管理論の文献よりも全面的に優れており、マネジメントを意思決定の観点から捉えるという私の好みとも完全に合致していた」と記している[12]:73。サイモンが「細心の注意を払って」読んだこの本は、彼に自身の経験を省みさせ、管理上の意思決定に焦点を当てる動機を与えた[12]:73–74,86–87。1988年のインタビューでは、サイモンの次のような発言が引用されている[7]。
もちろん私はバーナードの上に真正面から積み上げたのであり、常に彼に深く恩義を感じてきた。科学とは累積的な営みなのだ……本書の中にはバーナードへの言及が14か所ある……貢献と誘因の均衡、権限、受容圏という概念はすべてバーナードに由来する……『経営行動』の主要な新しさだと今の私が見なすのは、組織への一体化という概念の展開……意思決定前提の処理という観点からの意思決定過程の記述、そして限定合理性の諸概念である……残りの大部分は高度に「バーナード的」であり、それらの「新しい」考えでさえ、組織に関するバーナードの見方とまったく矛盾しない。
ミッチェル(Mitchell)とスコット(Scott)は、権限、組織均衡、意思決定に関するバーナードとサイモンの概念の類似性を指摘している[15]:349–352[16]:9。たとえば、バーナードの「無関心圏」(部下が権限を疑問なく受け入れること)は、サイモンの「受容圏」となった[15]:350[17]:266。さらにミッチェルとスコットは、サイモンとバーナードがともに、大規模な組織は個人の行動を統制し、その意見を操作すると考えていたと結論づけた[15]:357–364。
サイモンに影響を与えた哲学者には、ウィリアム・ジェームズ(William James)、ジョン・デューイ(John Dewey)、A・J・エイヤー(A. J. Ayer)、ルドルフ・カルナップ(Rudolf Carnap)がいる[1]:45–46,80,82,88,90,93,96,101,186,195,199[7][12]:53–54,58–59[13]:99–101[18]。行動主義心理学者のエドワード・C・トールマン(Edward C. Tolman)と社会学者のタルコット・パーソンズ(Talcott Parsons)の考えも、サイモンの研究に寄与した[12]:86,114,190–191[13]:101–105。サイモンは自身の哲学的立場を論理実証主義と特徴づけていた[1]:45[10]:253。
版
予備版(1945年)
1945年、イリノイ工科大学に在籍していたサイモンは、本書の予備版(博士論文に近いもの)の謄写版刷りの写しを、自分の研究に関心を持ちそうだと考えた約200人に送付した[7][13]:130–131。予備版の受け取り手の一人がバーナードであった。サイモンはバーナードと個人的な面識はなかったが、バーナードは計25ページに及ぶ詳細なコメントをサイモンに送り、その結果、本書は全面的に改訂された[13]:131–133。その後サイモンは、バーナードに本書の序文の執筆を依頼した[12]:88。
初版(1947年)
初版は、16ページの前付(たとえばチェスター・バーナードによる序文、はしがき、謝辞)と、259ページの本文(すなわち第1章–第11章)および後付(付録と索引)から成っていた[1]。
刊行された初版は、予備版と多くの点で異なっていた。その相違点には次のものが含まれる[7][12]:86[13]:133–134。
- 数学的な付録と、組織におけるネズミと人間の比較が削除された
- 章が並べ替えられ、「管理理論のいくつかの問題」が第2章に繰り上げられた
- 論理実証主義に関する議論の一部が削除された
- 組織内のコミュニケーションに関する議論が増えた
- 「政治的」とみなされうる素材(たとえばニューディールの経済政策を支持しているように見える箇所)が取り除かれた
序文でバーナードは、サイモンの結論が経営者としての「[自らの]経験と調和する」と述べ、「最終的には一般的な組織の原理を述べることが可能になるかもしれない」との期待を表明している[1]:ix-xii[2]:xli-xliv[3]:xliiii-xlvi。謝辞においてサイモンは、『経営者の役割』について、「本書の予備版に対して彼が行った極めて綿密な批判的検討」について、そして序文について、バーナードに感謝した[1]:xv-xvi[2]:xlvii-xlviii[3]:xlix-l[4]:xiii。
第2版(1957年)
第2版には新たな序論が加えられ、その結果、本書は48ページの前付と259ページの本文および後付を含むことになった[2]。序論は、本書の構成を要約し、実務家が本書の教訓をどのように応用しうるかを示唆し、合理的行動と満足化の概念を論じ、本書の個々の章について論評し、最近の参考文献を示した[2]:ix-xxxix[7][19]。
第3版(1976年)
第3版は50ページの前付と364ページの本文および後付から成り、元の第1章–第11章と付録を第1部に収めた[3]:1–253。その「第2部」は、サイモンが執筆した論文に基づく6つの新しい章(第12章から第17章)から成っていた[3]:ix-x, xiii-xiv, 255–356[18]:256[19]。
- 第12章:「組織目標の概念について」(On the Concept of Organizational Goal)(257–278ページ)、初出は1964年[20]
- 第13章:「情報処理技術の将来」(The Future of Information-Processing Technology)(279–287ページ)、初出は1968年[21]
- 第14章:「組織設計への情報技術の応用」(Applying Information Technology to Organization Design)(288–308ページ)、初出は1973年[22]
- 第15章:「選択的知覚:経営者の一体化(デウィット・C・ディアボーンとの共著)」(Selective Perception: the Identifications of Executives (with DeWitt C. Dearborn))(309–314ページ)、初出は1958年[23]
- 第16章:「組織の誕生」(The Birth of an Organization)(315–324ページ)、初出は1953年[24]
- 第17章:「ビジネススクール:組織設計における一問題」(The Business School: a Problem in Organizational Design)(335–356ページ)、初出は1967年[25]
第4版(1997年)
第4版は15ページの前付と368ページの本文および後付から成り、副題の最後の語が「Organization」から「Organizations」に変更された[4]。第4版には、初版から第3版まで収録されていたバーナードの序文がなかった[19]。第3版の長い序論と第2部に代えて、第4版では序論が短くなり、元の本文の各章のあとにサイモンによる解説が続く形となった[18]:256[19]。
概要
第1章–第11章と付録(「管理の科学とは何か」)の253ページ分の本文とページ付けは、初版、第2版、第3版で同一であった。第4版でも第1章–第11章と付録の本文は同一であったが、ページ付けは異なっていた。
第1章 意思決定と管理組織
この章は、Public Administration Reviewに掲載された同名の1944年の論文に基づいている[26]。サイモンは、「価値判断」(「最終目標の選択へと導く」もの)と「事実判断」(「そうした目標の実施にかかわる」もの)を区別しており[1]:4–5[4]:4、この論点は第3章でより詳しく探究される。意思決定における個人と集団の関係も探究されており、たとえば個人に対する影響には、権限、組織への忠誠、能率、助言と情報、訓練が含まれる[1]:11–16[4]:9–13。
第2章 管理理論のいくつかの問題
Public Administration Reviewに掲載された1946年の論文「管理の格言」(The Proverbs of Administration)[27]に基づく第2章は、冒頭近くの次の一節で知られている[1]:20–21[4]:29[28]:279。
現在の管理の原理の致命的な欠陥は、格言と同じように、それらが対になって現れることである。ほとんどすべての原理について、それと同じくらいもっともらしく受け入れられる、矛盾する原理を見いだすことができる。対をなす二つの原理はまったく正反対の組織上の勧告を導くにもかかわらず、どちらを適用するのが適切かを示すものは理論の中に何もない。この批判を立証するためには、主要な原理のいくつかを簡単に検討する必要がある。
- 管理の能率は、集団内での課業の専門化によって高められる
- 管理の能率は、集団の成員を確定した権限の階層に配置することによって高められる
- 管理の能率は、階層のどの地点においても統制の範囲を少数に限定することによって高められる
- 管理の能率は、作業者をグループ化することによって高められる
これらの原理は、ルーサー・ギューリック(Luther Gulick)とリンダル・アーウィック(Lyndall Urwick)が編集した1937年の書籍『Papers on the Science of Administration』に見られるものであった[13]:97[29]。曖昧さや経験的証拠の欠如といった4つの原理の欠点を指摘したうえで、サイモンは、管理組織においては「全体的な能率が指導的な基準でなければならない」と述べ、その能率をいかに向上させるかを決定するために科学的方法が適用されなければならないとしている[1]:36,42–44[4]:43,48–49。
第3章 意思決定における事実と価値
第3章は「選択の論理の基礎的な側面を明確にしている」[30]:504。この章の第1節は、第1章における「事実」対「価値」の説明を詳述している。章の第2節「政策と管理」は、政府の立法部門と行政部門が事実と価値をどのように適用するかを論じている[1]:52–59[4]:61–67。
第4章 管理行動における合理性
手段と目的の考え方が意思決定にどのように関係するかを考察したのち[30]:504、サイモンは「客観的に」「主観的に」「意識的に」「意図的に」「組織的に」「個人的に」合理的な決定を区別している[1]:76–77[4]:85。
第5章 管理上の決定の心理
この章の第1部「合理性の限界」において、サイモンは次のように書いている[1]:81[4]:93–94。
実際の行動は、少なくとも三つの点で客観的合理性に及ばない……。
- (1) 合理性は、それぞれの選択に続いて生じる結果についての完全な知識と予測を必要とする。実際には、結果についての知識は常に断片的である。
- (2) これらの結果は将来に属するので、それらに価値を付与する際には、経験された感覚の欠如を想像力で補わなければならない。しかし価値は不完全にしか予測できない。
- (3) 合理性は、可能なすべての代替的行動の中からの選択を必要とする。実際の行動においては、これら可能な代替案のうちごくわずかしか思い浮かばない。
この章の残りの部分は「個人における目的的行動」と「行動の統合」を扱っている。
第6章 組織の均衡
第4版の「第6章への解説」でサイモンが要約しているように、この章の中心的な考えは、「組織の存続と成功は、組織の課業を遂行するために必要な貢献を確保するのに十分な誘因を成員に提供できるかどうかにかかっている」というものである[4]:164。
第7章 権限の役割
第7章から第10章は、組織が個人の意思決定に影響を及ぼす4つの方法、すなわち権限、コミュニケーション、能率の基準、そして忠誠心と組織への一体化を扱っている。
第7章でサイモンは、権限の性質と、それが組織においてどのように用いられるか、すなわち責任の強制、意思決定に関する専門知識の獲得、活動の調整を論じている。部下が複数の上司を持つ場合に権限の衝突を避けるための4つの方法が述べられている。
第8章 コミュニケーション
サイモンはコミュニケーションを「意思決定の前提が組織のある成員から他の成員へ伝達されるあらゆる過程」と定義している[1]:154[4]:208。コミュニケーションは公式のものにも非公式のものにもなりうるし、組織に「記憶」を与えるために記録として保管する必要がある場合もあり、時には訓練を通じて達成される。第4版の「第8章への解説」は、1947年には存在しなかったコンピュータ化されたコミュニケーションを論じている[4]:223–249。
第9章 能率の基準
この章は、それ以前の章で簡単に触れられていた概念を発展させている[1]:14,122[4]:12,149–150。営利組織において「能率の基準」とは、個人が、収入を最大化し費用を最小化して「組織に最大の純(貨幣的)収益をもたらす」代替案を選択するということを述べたものである[1]:172–173[4]:250–251。より一般的には(すなわち非営利組織を含めると)、この基準は「所与の資源の投入に対して最大の成果を生み出す代替案の選択」をもたらす[1]:179[4]:256。章の残りの部分でサイモンは、能率の基準に対する批判に反論し、能率を達成するための方法(たとえば「機能化」によるものや、公的予算編成過程によるもの)を概説している。
第10章 忠誠心と組織への一体化
ハロルド・ラスウェル(Harold Lasswell)の概念に倣って、サイモンは「人は、意思決定を行うにあたり、いくつかの選択肢をその特定の集団にとっての結果という観点から評価するとき、その集団に自己を一体化している」と主張している[1]:205[4]:284。こうした組織への一体化は、組織の能率や適切性(「その目標が達成された度合い」)の点から見て最適ではない決定と結びつくことがある[1]:212[4]:290。
第11章 組織の解剖
サイモンは組織の意思決定過程を記述し、次のように書いている[1]:240–241[4]:322[18]:263。
管理の理論が必要とされるのは、人間の合理性には実際的な限界が存在し、しかもそれらの限界は静的なものではなく、個人の決定が行われる組織環境に依存しているという事実による。管理の任務とは、個人がその決定において(組織の目標に照らして判断して)実行可能な限り合理性に近づくように、この環境を設計することである。
付録:管理の科学とは何か
すべての版に共通する本書の最終部分において、サイモンは管理の科学の「理論的」(記述的)側面と「実践的」側面(すなわち目標のより良い達成へと導く側面)を論じている。
批判
- ロバート・A・ダール(Robert A. Dahl)は1947年に、組織間の文化的差異のために組織の科学は不可能であると書いた[17]:263。同様に、第2版に対する1957年の書評は、組織の意思決定の重要な側面について「統制された条件の下で」科学的研究を行うことがそもそも可能なのかを疑問視した[28]。サイモンはこの1957年の書評に対し、「知識が進歩するにつれて……管理の実践は、基礎にある根本的なメカニズムについての科学的に検証された知識に大きく依拠するようになるだろう」と応じた[31]。
- 本書は、1952年にAmerican Political Science Review誌上で発表された、いわゆる「サイモン=ワルドー論争」において中心的な役割を果たした[7][13]:134–135[32][33]。サイモンとドワイト・ワルドー(Dwight Waldo)は「装飾過多な文体」を用いて論文を応酬し、その中でサイモンは「ワルドーを論理的厳密さの欠如で非難し」、ワルドーは『経営行動』におけるサイモンの論理実証主義への依拠を理由に「サイモンを哲学的近視眼であると非難した」[32]:445–446。
- 1962年、ハーバート・ストーリング(Herbert Storing)は『Essays on the Scientific Study of Politics』という書籍を編集した。そこに収められた論考の一つであるストーリング自身の論考は、『経営行動』を批判するものであった[34]。サイモンは自伝の中で、ストーリングの本に収められた論考は「テクストを共感なしに、そしてそれを理解しようとする真の試みなしに読むという実践のあまりにひどい例であったため、[私は]それらに応答しようという衝動をまったく感じなかった」と記している[12]:63,270[19]。ある分析は、ストーリングとサイモンの思考様式(「二分法的」対「総合的」)、抽象度、そして「組織の『善さ』の想定」における違いを指摘している[35]。
- サイモンは、自らが批判する組織の原理に代わる説得力のあるものを何も提示していない[17]:267。
- 第2版から第4版におけるサイモンの序論と解説は、初版の内容を、その意味を拡大するか、あるいはそれと矛盾する形で解釈している[18]:256–257。たとえば、サイモンは1947年のテクストに「満足化する人間」を見いだしたが、他の著者たちは「最大化する人間」を見いだした[17]:267。
- 事実と価値、政策と管理の区別は、不要であるとして批判されてきた[7]:290–293[18]:256。
- 本書は組織における感情と習慣の役割を軽視している[30]:506。
- サイモンは、警察の汚職のような不道徳な行動が組織内でいかにして生じうるかを分析しなかった[33]。
- 1990年のある論考は、ギューリックはサイモンが論じた問題の大半をすでに認識していたという点で、第2章(「管理理論のいくつかの問題」)はギューリックの業績を公正に批判していないと主張している[36]。
後世への影響
サイモンは、初版に対する書評は「概して好意的だったが、評者たちは熱狂(exhilerated〔ママ〕)してはいなかった」と感じており[7]、また本書は当初「何のセンセーションも巻き起こさなかった」と感じていた[12]:88[19]。それでも本書は、次のような革新によって注目されるようになった。
- 管理に対する科学的アプローチ[15]:356–357。
- 習慣と行為を強調したジョン・デューイとは対照的に、組織的行為の基礎として組織の意思決定に焦点を当てたこと[16]:9[30]:505。
- 後に「限定合理性」と呼ばれることになるものの最初の記述[7][12]:86,87[15]:353[37]:743–744。ある論文は、この用語が最初に現れたのはサイモンの1957年の著書『Models of Man』であると結論づけている[38]。『経営行動』の初版では、サイモンは「合理性への限界」あるいは「合理性の限界」という言い回しを用いていた[1]:39–41,80,241[38]:36,38,40。
- サイモンが1956年の論文で満足化と呼んだものの最初の記述[39]:129,136[40]。第2版と第3版の序論、および第4版の「第5章への解説」では、次のように述べられている[2]:xxiv[3]:xxviii[4]:118[33]。
管理理論の中心的な関心は、人間の社会的行動の合理的側面と非合理的側面との境界にある。管理理論はとりわけ、意図され、かつ限定された合理性の理論――最大化するだけの知恵を持たないがゆえに満足化する人間の行動の理論――である。
- 第2版から第4版ではその後の箇所で、「満足化する」(to satisfice)は「満足のいく、あるいは『十分に良い』行動方針を探すこと」と定義されている[2]:xxv[3]:xxix[4]:119。この語は『経営行動』の初版では用いられていないが、第3版の索引は、関連する箇所が初版の38–41ページ、80–81ページ、240–244ページにあることを示している[3]:363。
サイモンはその後、共著書を含む後年の書籍でも『経営行動』の概念に立ち返ることになる。そうした書籍には、『Public Administration』(ドナルド・W・スミスバーグ(Donald W. Smithburg)、ヴィクター・A・トンプソン(Victor A. Thompson)との共著、1950年)、『Organizations』(ジェームズ・G・マーチ(James G. March)との共著、1958年)、『The Sciences of the Artificial』(1969年)が含まれる[4]:157,229[6][7][30]:505[42][43][44]。他の著者による書籍のうち、『経営行動』が影響を与えたものには次のものがある。
- ハーバート・カウフマン(Herbert Kaufman)による『The Forest Ranger, a Study in Administrative Behavior』(1960年)[45][46]:422。
- リチャード・サイアート(Richard Cyert)とジェームズ・G・マーチによる『企業の行動理論』(1963年)[30][47]:279。サイモン(1947年)、マーチとサイモン(1958年)、サイアートとマーチ(1963年)は、合わせて、カーネギーメロン大学を拠点とする組織の意思決定と経済学の「カーネギー学派」の「基礎的著作」とみなされている[30][48]。
- グレアム・T・アリソン(Graham T. Allison)による『Essence of Decision: Explaining the Cuban Missile Crisis』(1971年)、とりわけ同危機についての「組織過程モデル」による説明[10]:253[33][49]。
1978年、スネ・カールソン(Sune Carlson)は、サイモンへのノーベル経済学賞の授賞式での演説で次のように述べた[8]。
……企業の構造と意思決定の研究は、経済科学における重要な課題となった。……1947年に初めて刊行され、ほぼ12の言語に翻訳されている画期的な著書『経営行動』において、またその後の多くの著作において、サイモンは企業を、物理的・人的・社会的な構成要素からなる適応的システムとして描いている。それらの構成要素は、相互コミュニケーションのネットワークと、協働し共通の目標に向かって働こうとする成員の意欲とによって結びつけられている。……
それでも、経済学者のアルバート・安藤(Albert Ando)とウィリアム・ボーモル(William Baumol)は、サイモンが受賞すべきだとノーベル賞委員会に論じる際に「『経営行動』にはほとんど言及しなかった」と報じられている[19]:138。
1955年から1988年までの間に、本書は12の言語、すなわち中国語、オランダ語、フィンランド語、フランス語、ドイツ語、イタリア語、日本語、韓国語、ポーランド語、ポルトガル語、スペイン語、スウェーデン語に翻訳された[10]。本書の刊行40周年を記念して、1988年から1989年にかけてPublic Administration Quarterlyに本書に関する12本の論文が掲載された[17][50][51][52]。
1990年、シャーウッド(Sherwood)はPublic Administration Reviewにおいて、非公式な諮問パネルの成員20人のうち19人が、1940年から1990年までに刊行された学術的な行政学の書籍のうち「最も影響力のある5、6冊」の一つに『経営行動』を選び、それによって本書が「半世紀における行政学の書」となったと報告した[10]:249。本書は候補に挙げられた書籍の中で「圧倒的な首位」にあり、「他のどの書籍の2倍の推薦」を受けた[10]:251,254。英語で15万部以上が販売されていたにもかかわらず、シャーウッドは、行政学修士課程の最近の修了生を対象とした小規模な調査において、サイモンが第2章で信用を失わせようとした管理の格言が広く信じられていることを見いだした[10]:252,254。
本書の第4版は1997年に刊行され、その序論では本書の「50歳の誕生日」に言及していた[4]:vii。本書は2001年のサイモンの訃報記事でも引用された[5][53]。
2009年までに、本書はGoogle Scholar上で7,746件の引用を受けていた[54]。本書を引用した論文のうち、最も多く引用された論文は、組織学習、経済社会学、取引費用経済学、組織の意思決定に関するものであった[54]。『経営行動』は、2001年から2011年の間に、少なくとも三つの「最良の」あるいは「最も影響力のある」経営書・ビジネス書のリストに登場した[11][55][56]。2012年時点で、本書の第4版はなお刊行中である[57]。
脚注
- 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 Simon, Herbert A. (1947). Administrative Behavior: a Study of Decision-Making Processes in Administrative Organization (1st ed.). New York: Macmillan. OCLC 356505
- 1 2 3 4 5 6 7 Simon, Herbert A. (1957). Administrative Behavior: a Study of Decision-Making Processes in Administrative Organization (2nd ed.). New York: Macmillan. OCLC 964597
- 1 2 3 4 5 6 7 8 Simon, Herbert A. (1976). Administrative Behavior: a Study of Decision-Making Processes in Administrative Organization (3rd ed.). New York: Free Press. ISBN 978-0-02-928971-6
- 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 Simon, Herbert A. (1997). Administrative Behavior: a Study of Decision-Making Processes in Administrative Organizations (4th ed.). New York: Free Press. ISBN 978-0-684-83582-2
- 1 2 Lewis, Paul (10 February 2001). “Herbert A. Simon Dies at 84; Won a Nobel for Economics”. New York Times. p. 13.
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- 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 Golembiewski, Robert T. (1988). “Nobel Laureate Simon 'Looks Back': a Low-Frequency Mode”. Public Administration Quarterly 12 (3): 275–300. JSTOR 40861423. オリジナルの2022-01-21時点におけるアーカイブ。 2012年5月19日閲覧。.
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外部リンク
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