現代スコットランド語
| 現代スコットランド語 現代スコッツ語 | ||||
|---|---|---|---|---|
| Modren Scots | ||||
| 発音 | IPA: ['modrən skots/skɔts] | |||
| 話される国 |
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| 地域 |
アルスター | |||
| 話者数 |
約11万人 約150万人(第二言語) | |||
| 言語系統 | ||||
| 初期形式 | ||||
| 表記体系 | ラテン文字 | |||
| 公的地位 | ||||
| 公用語 |
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| 少数言語として 承認 |
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| 言語コード | ||||
| ISO 639-2 |
sco | |||
| ISO 639-3 |
sco | |||
| Glottolog |
scot1243[1] | |||
| Linguasphere |
52-ABA-aa (varieties: 52-ABA-aaa to -aav) | |||
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同調査による。北アイルランドにて、3歳以上の回答者のうちアルスター・スコットランド語を話せると答えた人の割合。 | ||||
| 消滅危険度評価 | ||||
| Vulnerable (Moseley 2010) | ||||
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現代スコットランド語(げんだいスコットランドご、英: Modern Scots、蘇: Modren Scots)は1700年以降、スコットランドのローランド地方並びにアルスターで話されているスコットランド語のことである。アルスターで話されるスコットランド語は特にアルスター・スコットランド語と呼ばれる。
概要
[編集]
現代スコットランド語は第二次世界大戦以降、英語の浸透による言語喪失の過程にあり、英語マスメディアの普及や人口移動により話者の間でスコットランド英語への急激な言語交替が起きている。また、現代スコットランド語の喪失は、スコットランド語と英語が同様にアングロ語群であり中英語から発生した非常に近縁な言語であること、スコットランドにて英語とスコットランド語の間で言語接触が起きていたことも影響している。スコットランド語は英語との長い接触の過程で英語化と呼ばれる大規模な言語変化を起こした。この英語化は中期スコットランド語期に強く見られる。平民階級に於ける英語化は、英語と語源を同じくする単語の綴字を英語と同様のものにするという、口語にはあまり影響のないものであった[3]。しかし、スコットランド王ジェームズ6世による王冠連合成立を機に始まった貴族階級に於ける英語化は、英語話者の貴族の話し方を模倣するという口語に大きな影響を与えるものであった。結果として後者はスコットランド英語の起源となる。これがスコットランド語と英語を言語収束させ、現代スコットランド語とスコットランド英語の方言連続体を形成させてしまった。現代スコットランド語とスコットランド英語の境界が曖昧なために、現代スコットランド語がスコットランド英語に包括されたり、現代スコットランド語がスコットランド英語の言語変種と見做されたりすることがある。尚、現在、ローランド地方に於ける現代スコットランド語は言語消滅の段階にあり、その名残はスコットランド英語の俗語としてのみ残っている[4]。
音韻論
[編集]母音
[編集]| 前舌 | 中舌 | 後舌 | |||
|---|---|---|---|---|---|
| 非円唇 | 円唇 | 非円唇 | 非円唇 | 円唇 | |
| 狭 | [i] | ― | ― | ― | [u] |
| 広めの狭 | [ɪ] | ― | ― | ― | ― |
| 半狭 | [e] | [ø] | ― | ― | [o] |
| 中央 | ― | ― | [ə] | ― | ― |
| 半広 | [ɛ] | [œ] | ― | [ʌ] | [ɔ] |
| 広 | [a] | ― | ― | [ɑ] | ― |
子音
[編集]| 唇音 | 歯茎音 | 後部歯茎音 | 歯茎硬口蓋音 | 軟口蓋音 | 声門音 | ||||
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 平音 | 平音 | 側面 | 平音 | 平音 | 平音 | 唇音 | |||
| 鼻音 | [m] | [n] | ― | ― | ― | [ŋ] | ― | ― | |
| 破裂音 | 無声音 | [p] | [t][#²'' 1][#²'' 2] | ― | ― | ― | [k] | ― | [ʔ] |
| 有声音 | [b] | [d][#²'' 2] | ― | ― | ― | [ɡ] | ― | ― | |
| 破擦音 | 無声音 | ― | ― | ― | [t͡ʃ] | ― | ― | ― | ― |
| 有声音 | ― | ― | ― | [d͡ʒ] | ― | ― | ― | ― | |
| 摩擦音 | 無声音 | [f] | [s] | [θ][#²'' 3] | [ʃ] | [ç][#²'' 4] | [x][#²'' 5] | ― | [h] |
| 有声音 | [v] | [z] | [ð][#²'' 6] | [ʒ] | ― | ― | ― | ― | |
| 接近音 | 無声音 | ― | ― | ― | ― | ― | ― | [ʍ][#²'' 7] | ― |
| 有声音 | ― | [ɹ] | [l][#²'' 8] | ― | [j] | [ɫ] | [w][#²'' 9] | ― | |
| ふるえ音 | ― | [r] | ― | ― | ― | ― | ― | ― | |
- ↑ 発音[t]は母音間または語末では[ʔ]になることがある。
- 1 2 発音[t]及び[d]について、アルスター・スコットランド語では歯音を伴って発音されることがある。
- ↑ 語頭の[θ]は、スコットランド中央方言では[h]になることがある。
- ↑ 発音[ç]は一般に前舌母音、特に[i]と[ɪ]の後に続く[x]の異音である。
- ↑ 語中の[xt]はスコットランド北部方言では[ð]になることがある。
- ↑ 母音間の[ð]は、ドーリス方言では[d]になることがある。
- ↑ 発音[ʍ]について、古くは[xʍ]と発音された。スコットランド北部方言では[f]と発音されることがある。
- ↑ 発音[l]は多くの方言に於いて[ɫ]と発音される。
- ↑ 語中のwrは[wr]と発音される他、 [r]と発音されることもある。スコットランド北部方言では[vr]と発音されることがある。
正書法
[編集]綴字法
[編集]| 文字 | 名称 | 発音 | 詳細 |
|---|---|---|---|
| A a | aw | [ɑ], [a] | 基本の発音。 |
| [e] | 単語「a-子音-e」の母音aはこの発音になる[#²' 1]。 | ||
| [ə] | 無強勢の発音。 | ||
| B b | bay | [b] | ― |
| C c | say | [k], [s] | ― |
| D d | day | [d] | ― |
| ― | 語尾nd, ldでは基本的に発音されない。 | ||
| E e | ay | [ɛ] | 基本の発音。 |
| [i] | 単語「e-子音-e」の母音eはこの発音になる。 | ||
| [ə] | 無強勢の発音。 | ||
| F f | eff | [f] | ― |
| G g | gay | [ɡ], [d͡ʒ] | ― |
| H h | aitch, itch | [h] | ― |
| I i | ey, ee | [ɪ] | 基本の発音。 |
| [əi], [aɪ] | 単語「i-子音-e」の母音iはこの発音になる。 | ||
| [ə] | 無強勢の発音。 | ||
| J j | jye | [d͡ʒ] | ― |
| K k | kye, kay | [k] | ― |
| L l | ell | [l] | 基本の発音。 |
| [ɫ] | 多くの方言でこの発音が基本の発音となる[#²' 2]。 | ||
| M m | em | [m] | ― |
| N n | en | [n] | ― |
| O o | oa | [ɔ] | 基本の発音。 |
| [o] | 一部方言では、この発音はoaと綴られることがある。 | ||
| [ə] | 無強勢の発音。 | ||
| P p | pay | [p] | ― |
| Q q | quee | [k] | ― |
| R r | err | [r], [ɹ] | ― |
| S s | ess | [s], [z] | ― |
| T t | tay | [t] | 基本の発音。 |
| [ʕ] | 母音間または語尾のtの発音。 | ||
| ― | 語中のcht, st、語尾enの前に置かれたt、語尾ct, ptでは基本的にtは発音されない。 | ||
| U u | ou | [ʌ] | 基本の発音。 |
| [ø] | 単語「u-子音-e」の母音u、鼻音の前のuはこの発音である。また、u単体でもこの発音になることがある。 | ||
| [u] | 単語「u-子音-e」の一部の母音uはこの発音になる。 | ||
| [ə] | 無強勢の発音。 | ||
| V v | vowe | [v] | ― |
| W w | dooble-ou, oulou | [w] | ― |
| X x | ex | [k͡s] | ― |
| Y y | wye | [əi], [aɪ] | ― |
| Z z | (i)zed | [z] | 基本の発音。 |
| [jɪ], [ŋ] | 中期スコットランド語で用いたアルファベットȜ ȝに対応する。 |
- ↑ スコットランド北部方言では語中のaneの母音aの発音が[i]に、そして、発音[w]や[l](暗いL)の後に続くaの発音が[əi]になることがある。
- ↑ 尚、スコットランド諸島方言、スコットランド南部方言、及びゲール語の影響を受けた一部の方言では、前舌母音、歯音、唇音の後、語頭のlが[l](明るいL)となる。スコットランド南西中央部方言およびロスシャー方言に関しては全てのlが[l](明るいL)となる。
2022年現在において、現代スコットランド語は綴字法が一つに定まっていない。そのため同一の単語を表す綴字が数種類存在する[5]。ただし、それらの綴字は単語の発音を基盤に形作られており、現代スコットランド語話者は綴字から単語及び発音を判断できる。また、綴字は英語の綴字法の影響も受けており、英語と語源を同じくする単語で、且つ英語との差異が発音の微々たるものである単語などでは、英語の綴字がそのまま現代スコットランド語で使用されることも多い。
その他正書法
[編集]句読法、大文字化、わかち書きといった正書法の使用方法は英語と近しい。句読法について、約物の種類及びその使用方法は欧米のそれと同様である。ただし、現代スコットランド語は音素的な正書法であるため、縮約としてのアポストロフィーの使用そしてその省略が目立つ。
文法
[編集]文例
[編集]| 現代スコットランド語 | 英語 |
|---|---|
| Hullo thare. | Hello there. |
| Whatlyke fettil the-day? | How are you today? |
| Whit's yer will? | What did you say? |
| It's been dunky's since a last saw ye! | Long time no see! |
| Whit dae thay cry ye? | What's your name? |
| Think anesel nae sheep's shank. | Consider oneself of no small beer. |
| A wadna say but the micht be a shour o snaw the-morn. | It looks like snow tomorrow. |
| E, want tae write it doon fur iz. | Please write it down. |
| Rab haes been gey peel-an-aet sen he quat his wark. | Rob has been rather poorly since he gave up his employment. |
| Things is different awthegither, bi what they war lyke afore the War. | Things are quite different now compared with what they were like before the War. |
| A dout A’m fair cummin doun wi the cauld. | I am afraid I have a severe cold. |
脚注
[編集]- ↑ Hammarström, Harald; Forkel, Robert; Haspelmath, Martin et al., eds (2016). “Scots”. Glottolog 2.7. Jena: Max Planck Institute for the Science of Human History
- ↑ 尚、シェトランド諸島ではスコットランド語に由来するシェットランド語が話される。ただ、シェットランド語は2025年10月15日に国際SILによって正式に言語認定され、ISO 639-3が与えられたため、2011年当時はスコットランド諸島方言に含まれるシェットランド方言という区分である。
- ↑ 17世紀には中期スコットランド語固有の綴字の殆どが英語の綴字と同様のものに取って代わられた。今日使われている現代スコットランド語の綴字は18世紀以降、中期スコットランド語期の綴字を参考にしつつ、口語の発音と英語の綴字を元に作られたものである。
- ↑ 英語、特にスコットランド英語にはスコットランド語から借用された単語が多くある。bairn, weeといった単語が一例である。
- ↑ 例えば、英語の副詞alrightに対応する現代スコットランド語の単語はawricht, awright, alricht, aaricht, awreet などと綴られる。この中で特に用いられるのはawricht である。
参考文献
[編集]- Robert McColl Millar (2018), Modern Scots: An Analytical Survey, Edinburgh University Press
- "A Brief History of Scots in Corbett, John; McClure, Derrick; Stuart-Smith, Jane (Editors)(2003) The Edinburgh Companion to Scots. Edinburgh, Edinburgh University Press.
- Macafee C. "Studying Scots Vocabulary in Corbett, John; McClure, Derrick; Stuart-Smith, Jane (Editors)(2003) The Edinburgh Companion to Scots. Edinburgh, Edinburgh University Press.
- Mairi Robinson (editor-in-chief), The Concise Scots Dictionary, Aberdeen University Press, 1985
- Johnston, Paul (1997). "Regional Variation". In Jones, Charles (ed.). The Edinburgh History of the Scots Language. Edinburgh: Edinburgh University Press.
- Jones, Charles (1997). The Edinburgh History of the Scots Language. Edinburgh: Edinburgh University Press.
- "Grant, William (1931) 'Phonetic Description of Scottish Language and Dialects' in the Scottish National Dictionary vol. I, ix-xli"
- Aitken A.J. 'How to Pronounce Older Scots' in 'Bards and Makars'. Glasgow University Press 1977
- Grant, William; Dixon, James Main (1921) Manual of Modern Scots. Cambridge, University Press.
- Tulloch, Graham (1980) The Language of Walter Scott. A Study of his Scottish and Period Language, London: Deutsch.
- Eagle, Andy (2014) Aw Ae Wey – Written Scots in Scotland and Ulster.
- Scots Orthography. Wir Ain Leed. www.scots-online.org.
- Dictionaries of the Scots Language. dsl.ac.uk.
- 横田 由美 (2016) 『スコッツ語とは何か ―現代の視点からその複雑性を理解する―』東京家政大学 国立情報学研究所(NII)
- David Purves (2002) 'A Scots Grammar: Scots Grammar and Usage'. Saltire Society.
- Numbers in Scots. www.omniglot.com.

