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2024年エチオピアとソマリランドのMoU署名

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
エチオピアとソマリランドのMoU署名
エチオピア首相(左)とソマリランド大統領(右)のMoUサイン後の交換
署名 2024年1月1日
締約国 アビィ・アハメド (エチオピア)
ムセ・ビヒ・アブディ (ソマリランド)
当事国 エチオピアの旗 エチオピア
ソマリランドの旗 ソマリランド
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2024年1月1日、エチオピアとソマリランドのMoU署名が行われ、ソマリランドの海岸線20キロメートルをエチオピアが海軍基地を建設するために50年間貸与する、という了解覚書 (MoU) が取り交わされた。これは直後から国際的な批判を受け、ソマリア政府もまた批判した。ソマリア政府は、アフリカ連合ソマリア駐留軍が2025年1月から改組される機会に、駐留軍の主力の一つであるエチオピア軍を参加させないとまで主張した。12月11日にトルコの仲介で、エチオピアがMoUを事実上撤回してソマリアとの争いをやめることに合意するアンカラ宣言が出された。これにより、エチオピア軍が引き続きソマリアに駐留することが決定した。この一連の動きによって、エチオピアを巡る複雑な国際関係が明らかになった。

経緯

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MoU締結

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2024年1月1日、エチオピア首相アビィ・アハメドとソマリランド大統領 ムセ・ビヒ・アブディは、ソマリランドの海岸線20キロメートルをエチオピアが海軍基地を建設するために50年間貸与する、という了解覚書 (MoU) を取り交わした[1]。これに関してソマリランド外務省は「この歴史的な合意はエチオピア海軍の海上アクセスを保証するものであり、この返礼としてソマリランド共和国が正式承認される。我が国にとって重要な外交上の節目となる」と発表した[2]。ただしエチオピア政府はソマリランド承認については明確にしていない[1]。そのほか、ソマリランド政府は国営エチオピア航空の株式も取得すると発表した[3]。

候補地

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関係地図。20キロメートルを貸与することになっている(参考: ルガヤとブルハーの距離が約60キロメートル)。ルガヤが有力な候補地と言われている。ゼイラとルガヤはアウダル地域、ブルハーとベルベラはサヘル地域にある。

MoUの詳細は明らかにされていないため、この「海岸線」も具体的にどこを指すのか明らかではなく、各種の推測が行われている。ルガヤ(英語版)が有力候補と言われている。

ソマリアのヘリテージ政策研究所(英語版)の3月発表の文書には、「エチオピア政府高官はルガヤ(英語版)だと述べているが、ソマリランド政府高官やメディアはゼイラ、ベルベラ、ブルハー(英語版)、ルガヤなど様々な場所を挙げている」と書かれている[4]。

ソマリランド西部出身の元大統領ダヒル・リヤレ・カヒンは4月の演説の中で、「ルガヤ港プロジェクトの最初の100万ドルは私が権限を持っている。この港は軍用ではなく商用になるだろう」と語っている[5]。

ソマリアのマスコミ、ホーン・オブザーバーは6月21日の記事の中で、ソマリランドのMoU検討委員会の委員がゼイラ、ベルベラ、ルガヤなどを訪問していることから、「ここが候補地と言われている」と書いている[6]。

各国の反応

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当事国と、アラブ首長国連邦を除いて、周辺各国や国際機関のほとんどがこのMoUに反対した。以下、時系列順に述べる。

国・組織日付反応
ソマリアの旗 ソマリア 1月2日「法的効力が無い」としてこの発表を拒否した。そして駐ソマリアエチオピア大使を呼びつけてこの件を問いただした[7]。
アル・シャバブ 1月2日ソマリア政府と対立するこのイスラーム武装勢力は、「この合意は無効であり報復する」との声明を発表した[8]。
アラブ連盟の旗 アラブ連盟 1月3日エチオピアに対して「善隣関係のルールと原則を遵守し、近隣諸国の主権を尊重し、内政に干渉しない」よう求めた[9]。
東アフリカ政府間開発機構 (IGAD) 1月3日この発表に対して「深い懸念」を表明した[10]。
エリトリアの旗 エリトリア 1月初めソマリア外相の話ではあるが「エリトリア政府はソマリアの主権を認めている」と説明された[9]。
アフリカ連合の旗 アフリカ連合 1月3日エチオピアとソマリアに対し、交渉を通じて紛争を解決するよう求めた[9]。
欧州連合の旗 欧州連合 1月初めこの合意を否定した[11]。
イスラム協力機構の旗 イスラム協力機構 1月4日ソマリア政府の権利を認めるコメントを発表[9]。
トルコの旗 トルコ 1月4日この件に関してソマリアの主権を認める旨を改めて表明しながらも、ソマリアとソマリランドの間の直接交渉を求めた[9]。
ジブチの旗 ジブチ 1月9日ソマリランドとエチオピアの連携を警戒する隣国ジブチは、「ソマリアの統一、領土保全、主権という揺るぎない原則を改めて表明する」としてソマリア政府側を支持[12]。
中華人民共和国の旗 中華人民共和国 1月11日ソマリアとの関係が深い中国は、エチオピアに対し、ソマリアの領土保全を尊重することを求めた[13]。
アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国 1月16日この合意が不安定化を招き、国際的なテロ対策の取り組みを妨げる恐れがあるとして懸念を表明した[14]。
エジプトの旗 エジプト 1月21日大エチオピア・ルネサンスダムの建設を巡ってエチオピアと対立気味にあるエジプトは、エチオピアに対し、他国の領土を支配しようとする試みを止めるように求めた[15]。
アラブ首長国連邦の旗 アラブ首長国連邦 -この問題に関して1月の時点ではコメントしなかった[16]。アラブ首長国連邦は、エチオピアとソマリランドの両国と友好関係にあり、このMoUに好意的だと分析されている[17]。

ソマリランド国内の反応

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抗議活動が発生した主な場所と氏族分布。特に最有力候補のルガヤと、ルガヤと同じくガダブルシ(英語版)氏族が住むボラマでの反対が強かった。

ソマリランドの世論は概ねこのMoUに賛成したが、候補地として挙げられているルガヤ(英語版)の住民を中心として、反対する動きも強かった。

ソマリランドの首都ハルゲイサでは調印の翌日1月2日からデモが発生し、治安部隊の統制によって1月8日には交通がほぼ麻痺した[18]。

1月7日、アウダル地域出身でイッサ氏族のソマリランド国防大臣アブディカニ・モハムド・アテイェ(英語版)は、エチオピアとのMoUへの不満を理由に辞任した[19]。

1月7日にボラマで発生した抗議運動

同じく1月7日、ルガヤでは若者が武器を手に取っての抗議が行われた[20]。ボラマでは、MoU成立の祝賀行事が一転して反対運動となった。ブラオでも反対運動が起きた[19]。

1月14日、商務大臣のモハメド・ハッサン・サージンも、このMoUはソマリランドの一部をエチオピアが併合するに等しいとして批判した[18]。

また、ソマリランド野党は、このMoU締結がソマリランド大統領の任期切れ後に行われたことから(ただし長老院は任期延長を承認している)、大統領にはこのような決定を下す権限がなく、ソマリランドの主権を危険にさらしているとして批判した[21]。

その後の動き

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ソマリア南部を中心に活動するイスラーム武装勢力のアル・シャバブは、ソマリ人のエチオピアに対する敵対心を利用して資金と兵力を集めた[22]。

2月、トルコとソマリアは防衛・経済協力枠組み協定に署名した。トルコのエチオピアに対抗する動きとも分析されている[22]。

4月4日、ソマリア政府はエチオピア大使を国外追放し、領事館2館の閉鎖を命じた[23]。

7月1日、エチオピア外相とソマリア外相がトルコの仲介で会談し、具体的な合意はなかったものの、9月2日に改めて会談することが決められた[24]。エチオピアとソマリアの会談は8月にも行われたが、具体的な進展が期待された9月の会談は実現しなかった[25]。

8月14日、ソマリアとエジプトが安全保障協定に署名した。これはテロに対抗するエジプトの動きとも見られているが、エチオピアのダム建設に反対しているエジプトのエチオピアに対する牽制とも見られている[22]。

8月22日、ソマリア首相は、アフリカ連合軍によるソマリア駐留ミッションATMISが2025年1月からAUSSOMに改組される件に関して「エチオピアがソマリランドとの覚書を撤回しない場合、AUSSOMに参加させない」と表明した。エチオピアはこの時点でATMISの主力の一つだった[26]。

10月31日、中国は「ソマリランドはソマリアの一部だ」として改めてこの覚書の無効を主張した[27]。

アンカラ宣言とその後

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12月11日、エチオピアとソマリアは、トルコの仲介で、エチオピアがソマリランドに港を建設する計画をめぐる激しい争いを終わらせることで合意した。これは「アンカラ宣言」と呼ばれる。 この合意により、両国はソマリアの主権下でエチオピアが海にアクセスできるよう、相互に利益のある商業協定を結ぶよう努めることとされた。ただしエチオピアがソマリランドと締結した協定を破棄したかどうかは明らかにされなかった[1]。

12月14日に就任したソマリランド外務大臣(英語版)のアブディラフマン・ダヒル・アダンは、MoUについて「まだ詳しくは見ていないが、前大統領がMoUにはソマリランドの承認が含まれていると語っていたのに対し、エチオピアの主張は『承認を検討する』に留まっており、矛盾がある。我々はあらゆる可能な手段を通じて承認を求めるが、その過程で我々の主権や国民の将来を危険にさらすつもりはない」として、このMoUには元々問題があった、との意見を表明した[28]。

アメリカ合衆国は、バイデン大統領とトランプ大統領とで対ソマリア政策が大きく異なっている。バイデン大統領はソマリアに軍を駐留させるなどソマリア政府に好意的であったが、トランプ大統領は前任中にもソマリアからの米軍の撤退を命じている(実現はしなかった)。2025年1月20日にトランプ大統領が再任しており、トランプ大統領はソマリランドに米軍の基地を建設し、ソマリランドを承認する可能性もあると言われている[29]。

中国政府は、ソマリランド政府が台湾政府と親交が深いためにソマリランドの政策に批判的である。しかしソマリランド政府が台湾政府と手を切れば、ソマリランドに経済的な援助をする意図があると言われている。2024年12月12日に就任したソマリランド大統領アブディラフマン・モハメド・アブドゥラヒは台湾よりも中国との外交関係を重視していると言われている[29]。

2025年1月11日、エジプトは、紅海に接していない国からの紅海へのいかなる軍事・海軍の駐留も受け入れないと宣言した[30]。

参考文献

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  1. 1 2 3 Yibeltal, Kalkidan (2024年12月12日). “Ethiopia and Somalia agree to end bitter Somaliland port feud”. BBC News. 2024年12月18日閲覧。
  2. ↑ “Ethiopia signs agreement with Somaliland paving way to sea access”. BBC News (イギリス英語). 2024年1月1日. 2024年1月2日時点のオリジナルよりアーカイブ. 2024年1月3日閲覧.
  3. ↑ “Why a Port Deal Has the Horn of Africa on Edge”. The New York Times (2024年1月3日). 2024年8月17日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年1月3日閲覧。
  4. ↑ “Ethiopia's MoU with Somaliland - A Threat to Somalia's Sovereignty and Regional Stability”. Heritage Institute. 2025年2月22日閲覧。
  5. ↑ “Ethiopia Shifts Stance on Maritime MOU, Abandons Naval Base Plan in Lughaya for Merchant Port Use”. Puntland Post. 2024年4月18日. 2025年2月22日閲覧.
  6. ↑ “Ethiopia-Somaliland MOU to enter implementation stage despite Somalia's outcry – Source”. Horn Obserber. 2024年6月21日. 2025年2月22日閲覧.
  7. ↑ “Somalia rejects port deal between Ethiopia and Somaliland”. Reuters (2024年1月3日). 2025年2月19日閲覧。
  8. ↑ “Salafi-Jihadi Movement Update Special Edition: Ethiopia-Somaliland Port Deal Alters Horn of Africa Counterterrorism and Red Sea Geopolitics”. ISW. 2024年1月4日. 2025年2月21日閲覧.
  9. 1 2 3 4 5 “Ethiopia-Somaliland deal receives wide condemnations, including from Egypt, Turkey”. AL-MONITOR. 2024年1月4日. 2025年2月21日閲覧.
  10. ↑ France24. 2024年1月3日 https://www.france24.com/en/live-news/20240103-ethiopia-defends-somaliland-deal-as-somalis-protest. 2025年2月20日閲覧. {{cite news}}: |title=は必須です。 (説明)
  11. ↑ “Egypt stands firm with Somalia in face-off against Ethiopia” (英語). Africanews (2024年1月3日). 2024年8月17日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年1月3日閲覧。
  12. ↑ “Djibouti sides with Somalia in tensions over Ethiopia-Somaliland MoU”. Somali Guardian. 2024年1月10日. 2025年2月21日閲覧.
  13. ↑ “China Supports Somalia's 'Integrity' After Ethiopia-Somaliland Accord”. BARRON'S. 2024年1月11日. 2025年2月21日閲覧.
  14. ↑ “White House concerned over Ethiopia-Somaliland agreement”. Courthouse News Service. 2024年1月16日. 2025年2月21日閲覧.
  15. ↑ “Egypt’s leader el-Sissi slams Ethiopia-Somaliland coastline deal and vows support for Somalia”. AP news. 2024年1月22日. 2025年2月21日閲覧.
  16. ↑ “On the Edge: the Ethiopia-Somaliland MoU”. ISPI. 2024年1月30日. 2025年2月22日閲覧.
  17. ↑ “Ambiguous Ethiopia port deal fuels uncertainty over Somaliland statehood”. AlJazeera. 2024年1月4日. 2025年2月21日閲覧.
  18. 1 2 “Somaliland’s unraveling hastened by Ethiopia port lease deal”. Hiiraan Online. 2024年1月14日. 2025年2月22日閲覧.
  19. 1 2 “Protests and resignation roil Somaliland over Ethiopia Red Sea deal”. Horn Obserber. 2024年1月8日. 2025年2月22日閲覧.
  20. ↑ “Daawo: Kacdoon hubeysan oo ka billowday Lughaya kadib damaca Ethiopia” [エチオピアの侵略を受けてルガヤで武装蜂起が始まる]. Caasimada. 2024年1月7日. 2025年2月22日閲覧.
  21. ↑ “What the Ethiopia-Somaliland deal means for Washington’s strategy in the Red Sea”. アトランティック・カウンシル. 2024年2月22日. 2025年2月22日閲覧.
  22. 1 2 3 “Nine months later: The regional implications of the Ethiopia-Somaliland MOU”. アトランティック・カウンシル. 2024年10月2日. 2025年2月22日閲覧.
  23. ↑ “Somalia expels Ethiopian ambassador amid row over Somaliland port deal”. BBC. 2024年4月5日. 2025年2月23日閲覧.
  24. ↑ “Somalia, Ethiopia sign MoU to resolve diplomatic dispute under Turkiye’s mediation”. Middle East Monitor. 2024年7月3日. 2025年2月19日閲覧.
  25. ↑ “Rising Somalia-Ethiopia tensions threaten Horn of Africa”. France24. 2024年9月26日. 2025年2月23日閲覧.
  26. ↑ “Somalia: Ethiopian troops cannot be in AUSSOM, unless Somaliland deal nixed”. VOA. 2024年8月23日. 2025年2月19日閲覧.
  27. ↑ ul Khaliq, Riyaz (2024年1月11日). “China backs Somalia in row with Ethiopia about port deal”. 2024年8月17日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年1月31日閲覧。
  28. ↑ “Somaliland’s new FM says he has yet to see controversial MoU with Ethiopia”. Somali Guardian. 2025年1月5日. 2025年2月23日閲覧.
  29. 1 2 “Uncertainties Across the Horn of Africa: How the Ethiopia-Somaliland MoU is Reshaping the Region”. Vivekananda International Foundation. 2025年1月24日. 2025年2月23日閲覧.
  30. ↑ “Somalia, Ethiopia to restore diplomatic ties amid AU mission agreement”. VOA. 2025年1月12日. 2025年2月23日閲覧.
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