ぬい活

ぬい活(ぬいかつ)とは、お気に入りのぬいぐるみを主体として行われる諸活動の総称[1]。「ぬいぐるみ活動」の略称[2][3][4]。
活動と用語


主にぬいぐるみを外出先に同行させたり[5]、写真撮影(ぬい撮り[1])を行ったり、衣服(ぬい服[3])の着せ替えを楽しんだり[6]、自身に身に付ける行為などを指す[7]。「推し活」の一種[8][9]、ファッション[10]または癒やし目的として行われる[11]。
英語では「nuikatsu(nui-katsu)」と表記される[12][13][14]。
Z世代を中心に[4][15]、アニメやアイドルのファンが、自身の推しを模したぬいぐるみ(推しぬい)を持ち歩くスタイルが主流となっている。ただしかならずしも「推し」に限定せず、単にお気に入りの動物のぬいぐるみなどの場合もある[10]。ぬいぐるみをどこかへ連れて行くなかで、癒やしを感じたり活力となることや、ぬいぐるみを所持することで「一人ではない安心感」を得ているという傾向がみられる[15]。
主な用語
- ぬい
- 「ぬいぐるみ」の略称[3][16][17]。ぬい活においてはこの呼称が用いられることがある。もともとは一部の推し活で2017年ごろから使用されていた[15]。インターネットスラングや若者言葉として赤ん坊や小動物などに対して用いられる「ちいこいのち(小こい命)」と呼ばれる場合もある[18]。
- ぬい撮り(ぬいどり)
- ぬいぐるみを撮影すること。撮影対象がぬいぐるみ単体の場合と自身を含む場合の両方を指す[16][19]。撮影した写真を公開するインターネット内のコミュニティの参加者が1000人を超えた事例もあり、2014年7月25日にNHKの情報番組『あさイチ』が取り上げ話題となった[19]。SNS上では「#ぬい撮り」というハッシュタグをつけて写真が投稿される[20]。フォトスタジオにて成人式の前撮りなどでぬいぐるみと共に撮影するケースも見られる[21]。
- ぬい服(ぬいふく)
- ぬいぐるみの衣服や小物。ポンチョや帽子など様々なタイプがある[20]。
歴史
前史
ライター・犬山秋彦は、ぬいぐるみを持ち歩く流行が日本で生まれたのは1990年代前後のことであり、この時期にファッションアイテムや雑貨などにテディベアの意匠をあしらうブームがあったこと、またUFOキャッチャーが人気を博したこと、当時誕生して間もない「SDキャラ」のぬいぐるみが、その景品として採用されたことなどをその契機としている[26]。

1990年代には、女子高校生がスクールバッグに大量のぬいぐるみをつける文化があった[10]。2024年には、アメリカ人アーティストのエスター・キムがデザインしたエスターバニーなどのキャラクターコンテンツが多数流行したことから、ぬいぐるみをバッグにつけることを楽しむ若者が増加した[15]。これらの事象はY2Kや平成ギャルのファッションのリバイバルといえる[10]。「モンチッチ」を製造・販売する株式会社セキグチは、2025年の『時事通信』による取材において「昭和レトロに魅力を感じる若者にも人気が拡大している」と述べている[27]。

クレーンゲームにおけるプライズ(景品)もぬいぐるみブームの牽引役の一つといえる。セガが1985年に商標登録した「UFOキャッチャー」は、当時の社長・中山隼雄がアメリカのクレーンゲームの景品にぬいぐるみがあったのを見て、七福神のようにそろえたくなる、チャレンジ心が湧く「遊び心の自動販売機に」と小形武徳専務に提案したことで企画がスタートしている。その後、子どもに絶大な人気を誇るアンパンマンのぬいぐるみを景品に採用したり、筐体自体を屋外に設置するなどの工夫をこらし、女性客やファミリー層の心をつかんで瞬く間に世に広がった[28]。
2020年代の流行
犬山秋彦は2021年の『ユリイカ』にて「近頃ふたたび、魚のウロコのように大量のぬいぐるみを装着した姿を街で見かけるようになった」と述べた。また、かばんに好きなキャラクターのぬいぐるみをつけること、あるいは「ぬい撮り」のような慣習には「仲間探し」の意味合いも大きいのではないかとしている[26]。SHIBUYA109 lab.は2023年後半ごろより、同ビル内にてぬいぐるみをバッグにつけて楽しむ若者が徐々に増えたと報告した[15]。ぬいぐるみ研究者の金子花菜は「世界中がステイホームになったのをきっかけに、寂しさを紛らわせるため、何らかの事情でペットを飼育することが難しい層がぬいぐるみを可愛がり始めた」としている[4]。SNS上のユーザーが投稿するぬいぐるみに対してファンになる場合もある[4]。

香港のデザイナー・龍家昇がデザインしたぬいぐるみのブランド、またそのキャラクターである「ラブブ」の例では、2024年ごろから話題となり、大韓民国のガールズグループ・BLACKPINKのメンバーであるリサがお気に入りキャラクターとしてSNSで紹介したことが人気の発端とされている。世界的に流行したラブブの日本における躍進は、『Impress Watch』の鈴木朋子によれば、ぬい活ブームが後押ししたと分析している[10]。
社会的影響
日本玩具協会の調査によれば、ぬいぐるみの市場規模は2024年に約450億円に達し[29]、2025年には624億円を突破したという[30]。タイトーが実施した「推しのグッズの中で特に好きな物は何か」という調査で、1位に「ぬいぐるみ」が挙がった[4]。2025年の新語・流行語大賞に「ぬい活」がノミネートされた[3]。
青土社の文芸雑誌『ユリイカ』2021年1月号にて、「ぬいぐるみの世界」と題して特集し、ぬい撮りなどについて解説や論考がなされた[31]。また、世界文化社はぬい活をテーマにしたムックシリーズ『nui nui nui! 大人だってぬいぐるみが好き』を2025年1月より刊行。初編は3刷重版を記録[32]。同書を基に2026年4月4日から4月19日にかけ、渋谷のhmv museumで展覧会も開催された[33]。
商業展開
「ぬい活」という文化の浸透に伴って様々なサービスが誕生した。2022年8月に開園した「フラッフィ学園祭ぬいぐるみ保育園」では、入園式・身体測定・歯科検診・クラブ活動・他家のぬいぐるみとの交流・連絡帳やLINEを通したぬいぐるみの様子の報告など、実際の保育園で園児が対象となる行為をぬいぐるみに置き換えている[34][35][36]。社会科見学では、ぬいぐるみが自分の足で移動できないため、日本交通協力のもとで行われた[4]。
東横インでは「推し活応援プラン」を設定し、ホテルの部屋内にぬいぐるみ用の小さなベッドやガウンが付属する[37][38][39]。新横浜プリンスホテルは、2026年6月20日から2027年3月31日の期間限定でぬい活を楽しめる宿泊プラン「ときめく推し空間~「ぬい」ドレスアップステイ~」の販売開始を発表した[40]。
旅行代理店「ウナギトラベル」では、ウナギを模したぬいぐるみをガイド役(ウナギガイド)に見立て、顧客から預かったぬいぐるみを引率するサービスを展開。ぬいぐるみの性格や思い出、参加動機などを事前に顧客からアンケートをとり、ぬいぐるみ各々の個性や好みに合わせツアー中のストーリーを組み立てる[41]。ぬいぐるみが持ち主の代わりにサービスを受ける別例として、名古屋市博物館や彦根城博物館などの博物館施設にて、ぬいぐるみが展示物を見るというものがある[42][43]。
福岡県の神社・鳥飼八幡宮では推しぬいとの参拝を楽しむ「ぬい参り」が行われた[44]。
そのほか、ぬいぐるみにタトゥー(刺繡)を入れるサービスや、ぬいぐるみ専用のクリーニング店、連れて行ったぬいぐるみ用の小型の食事が提供されるカフェなどが存在する[45][46][47]。
ソニーグループは2026年4月28日から7月3日まで、NiziUのメンバーをモチーフとしたぬいぐるみと共にミニゲームを体験できる「NIZOO GARDEN〜Weniと不思議なこんぺいとう〜」を開催[48]。
ANYCOLOR株式会社が運営するVTuber/バーチャルライバーグループ・にじさんじでは、所属ライバーを模したぬいぐるみ「にじぱぺっと」や所属ライバーに似せた動物のぬいぐるみ「にじたうん」などを販売。そのほか、衣服やぬいぐるみを収納できるポーチも別売りで展開している[49][50][51]。キャラクターや人物をぬいぐるみ化する企業はほかにも多数みられ、一例としてホロライブプロダクションによる「hololive friends with u」[52]、BANDAI SPIRITSの「ちびぐるみ」[53]、株式会社バンダイナムコヌイの「chibiぬい」などが挙げられる[54]。
セガ フェイブはぬい活層に訴求すべく、キャラクターのぬいぐるみと自立用の小型アクリルスタンドがセットになった「アクぬい」シリーズを発売。10〜30代の女性を中心に人気を博している[27]。
2026年6月17日、iOS向けアプリケーション「ぬい日和」がサービスを開始した。ユーザーが所持するぬいぐるみを「うちの子」として登録し日々の様子を記録・投稿できる。他者のぬいぐるみをなでる機能も備えている[55]。7月29日までに約4万人が利用している。
反応
俳優の大和田伸也は旅行で訪れたペルーのマチュ・ピチュで青年がぬいぐるみを持って撮影する場面を見かけたことをきっかけに興味を持ち始めた。『ライオン・キング』『ポケットモンスター』『鉄腕アトム』のキャラクターのぬいぐるみを中心にぬい撮りを楽しんでいると明かした[56]。
女優の柴咲コウは映画『兄を持ち運べるサイズに』の初日舞台あいさつにて、大切に持ち歩いているものを尋ねられ「ぬいぐるみ」を挙げている。共に暮らすネコとほとんど旅行に行けないことから、似たぬいぐるみを持ち歩くなど「推し活」「ぬい活」をしていると語った[57]。
駐英国特命全権大使の鈴木浩は『くまのパディントン』に登場するクマのぬいぐるみとの写真をSNSに投稿している。作中におけるパディントンの好物・マーマレードのサンドイッチと、スコットランドの炭酸飲料・アイアンブルーを手にポーズをとる姿や、パディントンとパントに乗船する写真がイギリスで話題となった[58][59]。
そのほか、古賀りなや江口ともみなどもぬい活を行っていると公言している[60][61]。
2025年12月15日リリースのゴールデンボンバー『女々しくて 2025流行語ver.』の配信シングルにおけるジャケットには、「ぬい活」にちなみ自身のぬいぐるみを手に持つ鬼龍院翔の画像が使用されている[62]。
評価
問題点として「ぬい活」を行う際のマナー違反が度々指摘される。例として「レストランで提供された料理の皿にぬいぐるみを乗せる」「電車の座席にぬいぐるみを座らせ幅をとる」「飲食店のテーブルにぬいぐるみを並べて撮影する」など[63][64][65]。東京ディズニーランドでは、複数のレジャーシートを敷いた上に確認できるだけでも40〜50体のぬいぐるみを置き場所取りをしていたグループがSNSで話題となり、「景観と合わない」「不快だけど禁止はやりすぎ」などと物議をかもした。
ぬい活を行うことで身体的効果が期待できるとされる。SHIBUYA109 lab.では、ぬい活により外出動機を生み出して、結果的に身体的活動量や社会交流が促される例が報告された[15]。
女性思想家であるあおちゃんぺは、「ぬいぐるみは心を満たす効果があると思う。海外でペットロスの方が自分のペットの写真を業者に送ると、そのペットにそっくりなぬいぐるみが送られてくることがあり、それで心の穴を埋める方もいる」と私見を述べた[4]。
東北福祉大学臨床心理学科の三谷聖也教授は、「現代社会を生き抜く一つの知恵であり、ぬいぐるみを大切にしていることは自分を大切にすることの表れ。そういった人たちを温かい目で見守ってほしい」とコメントしている[66]。
ぬい活をテーマにした作品
脚注
出典
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参考文献
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- LaLa Begin『nui nui nui! 大人だってぬいぐるみが好き!』世界文化社、2025年、ISBN 978-4-418-24147-7
関連項目
外部リンク
- 共同通信ニュース用語解説『ぬい活』 - コトバンク
- 【ぬい活】市場規模は約450億円 年々拡大し過去最高に、保育園やクリニックまで登場【Nスタ解説】|TBS NEWS DIG - YouTube
- 【ぬい活】大好きなぬいぐるみと一緒にお出かけ!保育園まで登場?自分勝手な撮影に批判も…自由とマナーの区分とは?|アベプラ - YouTube