みんなで大家さん
みんなで大家さん(みんなでおおやさん)は、日本の個人投資家向けの投資商品の一つ。複数の不動産に分散投資を行い公開市場で取引される REITとは異なり、特定の不動産への投資を行うもの。
概要
商品は、持株会社である共生バンクおよびグループ企業が不動産特定共同事業法に基づいて運用する。グループ企業にはファンドの運用を行う「都市綜研インベストファンド」と、商品を販売する「みんなで大家さん販売」などが存在。2024年時点の投資家数は約3万8000人に達した[1]。
広告・プロモーション
「みんなで大家さん」の主要な投資対象であった「成田開発プロジェクト(共生日本ゲートウェイ成田)」を巡っては、著名人を起用した大々的なプロモーションが行われていた。
2021年6月、運営元である共生バンクグループの代表(栁瀨公孝)が同プロジェクトの構想を解説した書籍『成田空港の隣に世界一の街を造る男』を出版した際、ジャーナリストの田原総一朗が同書の帯に「これは史上最大の日本改造計画だ!!」との推薦コメントを寄せた[2][3]。
運営会社側はこの田原のコメントを公式ウェブサイトやPR活動で大々的に引用し、「田原総一朗氏絶賛」としてプロモーションに活用した[2]。ただし、田原が評価したのはあくまで書籍内で語られた成田の都市開発プロジェクトとしての構想であり、不動産投資商品としての「みんなで大家さん」そのものの安全性や利回りを直接的に推奨・保証したものではない。
なお、同プロジェクトの用地を巡っては、不動産鑑定評価額が周辺の固定資産税標準宅地価格と比べて100倍以上の差があるなど、値付けの不透明さが監督当局や専門家から指摘されていた[4]。その後、2026年9月には、出資者から2000億円超を集めていた同事業に対して大阪府と東京都事業許可取り消しの行政処分が下され、事業は終了することとなった[5]。
報道等において、同プロジェクトの不当な土地鑑定評価について指摘を行った専門家として、不動産鑑定士の「田原拓治」が登場することがあるが[4]、前述のジャーナリスト「田原総一朗」とは同姓の別人である。
沿革
- 1998年
- 8月 資本金3,000万円で設立
- 本店所在地を大阪府大阪市中央区本町4丁目5番16号に置く
- 1999年
- 12月 長瀬マクドナルド店舗証券化事業
- 2000年
- 10月キャピトルシリーズ不動産投資事業開始(キャピトル新町)
- 2001年
- 4月 東京事務所(現東京本社)を東京都千代田区平河町1丁目6番地15号に置く
- 6月 キャピトル心斎橋収益マンション証券化事業
- 12月 資本金1億2,750万円に増資
- 2002年
- 2月 大阪本社を大阪市中央区北浜1丁目1番30号に移転する
- 2003年
- 12月 東京支店(現東京本社)を東京都千代田区麹町1丁目7番地に移転する
- 2004年
- 2月 都市綜研不動産基金シリーズ不動産証券化事業
- 9月 1株を10株にする株式分割の実施
- 2005年
- 6月 新株予約権付社債の行使により資本金2億2,750万円に増資
- 2006年
- 3月 京都における商業施設の証券化案件を受託
- 9月 資本金2億3,195万円に増資
- 12月「都市綜研不動産基金4号」組成
- 不動産証券化事業第4号案件実施
- 2007年
- 2月 1株を5株にする株式分割の実施
- 3月 愛知県海部郡蟹江町に商業施設用地を取得
- 7月 不動産特定共同事業法に基づく東京都知事許可(許可番号76号)を取得
- 9月 みんなで大家さん1号 運用開始
- 12月 みんなで大家さん2号 運用開始
- 2008年
- 10月 みんなで大家さん3号 運用開始
- 2009年
- 3月 資本金4億4,195万円に増資
- 4月 本店所在地を東京都千代田区麹町1丁目7番地に移転する
- 2010年
- 3月 資本金1億円に減資
- 6月 みんなで大家さん4号 運用開始
- 9月 みんなで大家さん5号 運用開始
トラブル
2024年
大都市の不動産やテーマパーク(ともいきの国 伊勢忍者キングダム)、「GATEWAY NARITA(ゲートウェイ成田)[6]」と呼ばれる成田国際空港近隣の開発などへの投資[7]が行なわれてきたが、2024年6月17日、東京都庁は不動産特定共同事業法違反があったとして、みんなで大家さん販売に対して不動産特定共同事業に係る業務の一部停止30日間及び指示[8]。また、同日、大阪府庁も同様の違反があったとして都市綜研インベストファンドに対して不動産特定共同事業に係る業務の一部停止30日間及び指示する行政処分を課した[9]。
みんなで大家さん販売は、投資家に説明を行う[10]とともに業務停止処分の取消しを求め、東京都を相手に訴訟を東京地方裁判所に提起。同時に業務停止処分の効力を一時的に停止する「執行停止」を求めた。都市綜研インベストファンドも大阪地方裁判所に同様の提起を行った。
両社は一時的な執行停止を勝ち取ったものの、東京都と大阪府側は即時抗告で対抗。同年6月28日には東京高等裁判所が、そして7月4日に大阪高等裁判所が地方裁判所の執行停止決定を取り消した。
2025年
2025年9月16日、「みんなで大家さんシリーズ成田」への出資者5人が、都市綜研インベストファンドに対し契約の解除と出資金計約6千万円の返還を求めて大阪地方裁判所に提訴した[11]。さらに同年11月には、出資者1191人が約114億円の出資金返還などを求めて大阪地方裁判所に提訴した[12]。
同年11月26日には「ゲートウェイ成田」建設用地のうち4割の土地を所有する成田国際空港株式会社(NAA)が11月末で期限が切れる賃貸借契約を終了させる方針を固めたと報じられ[13][14]、翌27日に成田空港会社は「造成工事の遅延」と「工事継続に必要な資金力が確認できない」ことを理由に賃貸借契約を終了させる方針を正式に発表した[15]。
同年12月、福岡県水巻町は、みんなで大家さんの運営会社が町内に持つ不動産の固定資産税約2200万円を滞納したとして、同社の別の不動産を差し押さえた。同社は水巻町と北九州市にまたがるショッピングモール「グランモール」跡にバナナ苗の生産拠点を設置、みんなで大家さんシリーズに組み込んでいた[16][17]。
2026年
2026年2月10日までに、都市綜研インベストファンドは、前年9月、11月に起きた集団訴訟の原告に対して、契約が終了した物件の出資金を分割で返還するなどの和解案を申し出たが原告側は拒否[18]。 新たに同年2月18日には、出資者1346人が契約解除と出資金計117億6600万円の返還を求める集団提訴を起こした。この時点で原告数は約2500人、返還を求める総額は約230億円となった[19]。 同年3月26日、出資者3人が出資金計約1700万円の返還を求めていた訴訟の判決が大阪地方裁判所であり、裁判官は「当事者間に争いがない」として都市綜研インベストファンドに全額の返還を命じた。一連の集団訴訟における初の判決となった[20]。
同年2月26日、毎日放送がみんなで大家さんの「資金流用疑惑」に関する報道を行ったが、都市綜研インベストファンドは事実無根であるとして否定。報道により社会的な信用の失墜を招いたとして抗議を行った[21]。
同年6月5日、商業施設の開発用地への出資を募る不動産投資商品「みんなで大家さん」の分配金支払いが遅延しているとして、25都道府県の84の出資者が運営会社に出資金計4億5500万円の返還を求めた訴訟の判決で、大阪地裁は全額返金を命じた。同商品を巡っては、他の出資者も大阪地裁に集団提訴している。裁判長は判決理由で、出資者には契約終了による出資金返還請求権があり、運営会社は支払い義務を負うとした[22]。
同年8月5日付で公表された都市綜研インベストファンドの決算公告により、同年3月末の時点で約2881億円の債務超過となっていることが判明した。収益性の低下を理由に、保有する土地の評価額を約2681億円減損して約257億円、建物の評価額を約104億円減らして約137億円にそれぞれ切り下げるなどした結果、不動産や賃貸事業による売り上げが約225億円あったものの、経常損失は約195億円、純損失は約2983億円に達した[23]。
同年9月1日、大阪府は多額の債務超過に陥っていることなどを問題視し、不動産特定共同事業法に基づき都市綜研インベストファンドに事業許可を取り消す処分を出した[24]。同日、東京都も「みんなで大家さん販売」の事業許可を取り消した[25][26]。
脚注
- ↑ “みんなで大家さん、2000億円投資マネーの行方”. 日経不動産マーケット情報 (2024年8月21日). 2025年10月2日閲覧。
- 1 2 “弊社代表の執筆書籍「成田空港の隣に世界一の街を造る男」が発売されました”. みんなで大家さん販売株式会社 (2021年7月1日). 2026年9月24日閲覧。
- ↑ “成田空港”. 株式会社白秋社. 2026年9月24日閲覧。
- 1 2 “「みんなで大家さん」、成田「5000億円」鑑定 専門家も驚愕の値付け”. 日経ビジネス (2025年8月7日). 2026年9月24日閲覧。
- ↑ “2000億円超集めた「みんなで大家さん」事業許可取り消し”. 読売新聞オンライン (2026年9月2日). 2026年9月24日閲覧。
- ↑ “GATEWAY NARITA”. 共生バンク. 2026年3月19日閲覧。
- ↑ “商品一覧”. みんなで大家さん販売. 2025年10月2日閲覧。
- ↑ “不動産特定共同事業者に対する行政処分について”. 東京都住宅政策本部民間住宅部不動産業課 (2024年6月17日). 2025年10月2日閲覧。
- ↑ “不動産特定共同事業者に対する処分について”. 都市整備部 住宅建築局建築指導室建築振興課 宅建業指導グループ (2025年6月17日). 2025年10月2日閲覧。
- ↑ “今回の行政処分に関する当社グループからのお詫びとご説明”. みんなで大家さん販売 (2024年7月5日). 2025年10月2日閲覧。
- ↑ “不動産投資商品「みんなで大家さん」運営会社を提訴 出資金返還請求”. 日本経済新聞 (2025年9月19日). 2025年11月16日閲覧。
- ↑ “「みんなで大家さん」集団提訴 1100人超、114億円返還求め―大阪地裁”. 時事通信 (2025年11月6日). 2025年11月16日閲覧。
- ↑ “「みんなで大家さん」投資トラブル 成田国際空港会社が“土地の貸付”終了する方針【news23】”. TBS NEWS DIG. 2025年11月27日. 2025年11月27日時点のオリジナルよりアーカイブ. 2025年11月27日閲覧.
- ↑ “成田空港会社 「みんなで大家さん」開発用地の貸し付け終了へ”. NHKニュース. 2025年11月26日. 2025年11月27日閲覧.
- ↑ “成田空港会社、契約打ち切り表明 「大家さん」開発の土地4割所有”. 共同通信. 2025年11月27日. 2025年11月27日時点のオリジナルよりアーカイブ. 2025年11月27日閲覧.
- ↑ “福岡・水巻町が「みんなで大家さん」の不動産差し押さえ モール跡の固定資産税2200万円滞納”. 西日本新聞 (2026年2月18日). 2026年2月18日閲覧。
- ↑ “福岡での「バナナ栽培事業」農水省は生産・出荷状況の把握なし”. MBS (2025年10月23日). 2026年2月18日閲覧。
- ↑ “みんなで大家さん側が和解申し出 「出資金、分割で全額返還」―集団訴訟、原告側は拒否・大阪地裁”. 時事通信 (2026年2月11日). 2026年4月30日閲覧。
- ↑ “「みんなで大家さん」出資の1346人追加提訴 117億円返還求め”. 毎日新聞 (2026年2月27日). 2026年4月30日閲覧。
- ↑ “「みんなで大家さん」側に出資金返還命令 大阪地裁、集団訴訟で初”. 日本経済新聞 (2026年3月26日). 2026年4月30日閲覧。
- ↑ “【重要】2月26日放送の毎日放送(MBS)による報道内容に対する抗議等について”. 都市綜研インベストファンド (2026年2月27日). 2026年4月30日閲覧。
- ↑ 「みんなで大家さん、返金命令判決 84出資者、4億5千万円超」『共同通信』2026年6月5日。
- ↑ 「「みんなで大家さん」運営会社、損失3千億円 債務超過「法に抵触」」『朝日新聞(Web版)』2026年8月7日。2026年9月7日閲覧。
- ↑ 大阪府都市整備部住宅建築局建築指導室建築振興課宅建業指導グループ (2026年9月1日). “不動産特定共同事業者に対する処分について”. 大阪府. 2026年9月21日閲覧。
- ↑ 東京都住宅政策本部民間住宅部不動産業課 (2026年9月1日). “不動産特定共同事業者に対する行政処分について”. 東京都. 2026年9月21日閲覧。
- ↑ 「「みんなで大家さん」 大阪府が運営会社の事業許可を取り消し」『毎日新聞』2026年9月1日。2026年9月1日閲覧。