グラン・サッソ国立研究所

ウィキペディアから、無料の百科事典
グラン・サッソ国立研究所
Laboratori Nazionali del Gran Sasso
LNGSの地上施設の外観
設立1985年
研究種類素粒子物理学、原子核物理学
理事Ezio Previtali (2020年10月から)
所在地イタリア、アブルッツォ州、ラクイラ
北緯42度25分16秒 東経13度30分59秒 / 北緯42.42111度 東経13.51639度 / 42.42111; 13.51639座標: 北緯42度25分16秒 東経13度30分59秒 / 北緯42.42111度 東経13.51639度 / 42.42111; 13.51639
運営機関
INFN(英語版)
ウェブサイトwww.lngs.infn.it

グラン・サッソ国立研究所(Laboratori Nazionali del Gran Sasso; LNGS)は、世界最大の地下研究所である。イタリアのグラン・サッソ山の下にあり、INFN(英語版)による素粒子物理学の研究でよく知られている。地上施設に加えて、山の下には広大な地下施設がある。最寄りの町はラクイラとテーラモである。 ローマからは約120kmの距離にある。

研究所の主な使命は、低バックグラウンド環境を実現可能なその特性と設備を生かして、素粒子天体物理学や原子核天体物理学及びその他の分野の実験の場を提供することである。LNGSは、他の3つのヨーロッパの地下素粒子天体物理学研究所(モダーヌ地下研究所(英語版、フランス語版)、カンフランク地下研究所(英語版、スペイン語版)、およびボールビー地下研究所(英語版))と同じく共同グループILIASの一員である。

歴史

グラン・サッソ国立研究所は1979年に当時のイタリア国立核物理学研究所の所長であったアントニーノ・ジキッキ(英語版)教授によって考案され[1]、グランサッソ山の下で既に進行中だった高速道路トンネルの建設のための掘削を利用した[2]。ジキッキはすぐに公共事業委員会を設置するように、当時の元老院議長であったアミントレ・ファンファーニ(キリスト教民主党)を説得した[3]。

事業は1982年に開始し1985年に完了したが[4][5]、MACROと呼ばれる最初の実験と共に研究センターが完全に稼働したのは1987年だった[1][6]。

設備

この研究所は、グラン・サッソ・エ・モンティ・デッラ・ラガ国立公園(英語版)内にある地上施設と、全長10kmのグラン・サッソ・トンネル(英語版)に隣接する広大な地下施設で構成される。

LNGSにおける最初の大規模実験は1989年に行われた。その後、施設が拡張され、現在では世界最大の地下研究所となっている。[7]

主な実験室として筒型ヴォールト天井のホールが3つあり、それぞれおよそ幅20m、高さ18m、長さ100mである[7] 。これらを合わせると、床面積はおよそ3×20×100 = 6,000平方メートル (65,000 sq ft)、容積はおよそ3×20×(8+10×π/4)×100 = 95,100立方メートル (3,360,000 cu ft) である。より小さなスペースと様々な連絡トンネルを含めると、施設全体では17,800平方メートル (192,000 sq ft) 、180,000立方メートル (6,400,000 cu ft)である [8] [7]。

実験ホールは約1400mの岩で覆われていて、宇宙線から実験を保護している。約3400メートル水当量(英語版) (mwe) の遮蔽を提供して、これは最も深い地下実験室ではないが、鉱山エレベーターを使わずに操業できるという点で非常に評判が良い。

研究プロジェクト

ニュートリノ研究

2006年8月下旬以降、CERNのSPS加速器(英語版)からミューニュートリノのビーム(英語版)が730km離れたグラン・サッソ研究所に向けて照射され、OPERAとICARUS(英語版)検出器によって検出されている。このニュートリノ振動の研究はフェルミラボからMINOS(英語版)へ向けて照射する実験の結果を改善すると期待される。

2010年5月、グラン・サッソ研究所の理事Lucia Votanoは、「OPERA実験は最初の目標、すなわちジュネーブからグラン・サッソ研究所に到達するまでの間にミューニュートリノから変化することで得られるタウニュートリノの検出を達成した。」と報告した[9]。これはミューニュートリノビームで初めて観測されたタウニュートリノ候補イベントであり、ニュートリノが質量を持つことのさらなる証拠をもたらした[10](ニュートリノが質量を持つことは1998年にスーパーカミオカンデで初めて示された[11][12]。)。ニュートリノがこの変化を起こすためには質量を持たねばならず、これはニュートリノに質量がないと仮定する古典的な素粒子物理学の標準模型から逸脱している[12][13]。

CUORE(英語版) (Cryogenic Underground Observatory for Rare Events)と呼ばれる、ニュートリノがマヨラナ粒子かディラク粒子かを決定するための努力がこの研究所で行われている(2018年現在)。最近鋳造された鉛よりも古代の鉛の方が放射能が低いため、この検出器は古代ローマの難破船から回収された鉛で遮蔽されている。この遺物はカリャリの国立考古学博物館からCUOREに提供された[14]。

2011年9月、フランスリヨンの核物理の研究所の研究者であるDario Autieroは、CERNで生み出されたニュートリノが光速で移動するとした場合よりも約60ns早くOPERA検出器に到達したことを示す予備的な結果が得られたことを発表した[15]。この超光速ニュートリノ異常の原因はすぐには解明されなかった[16]。この結果はその後調査され、間違っていることが確認された。これはOPERA実験室の受信機における光ファイバーケーブルの接続不良によって引き起こされ[17]、ニュートリノ到着信号に比べてクロック信号の到着が遅れることによるものであった。OPERAによって公表された公式の声明はニュートリノの速度にいかなる異常もないことを宣言し[18]、したがってこの件は完全に解決済みであるが、この話の展開はコミュニティを立ち止まって考えさせることとなった。

2014年にBorexinoが初めて、太陽の主要な陽子-陽子核融合過程からのニュートリノを直接測定した。この結果はNatureに掲載されている。この測定値は、MSW理論で説明される太陽ニュートリノ振動の理論を加えたジョン・バーコールの標準太陽モデルから導き出される予測値と一致する。2020年にBorexinoは、巨星では一般的だが太陽では一般的ではない(太陽のエネルギー出力の1%にすぎない)CNOサイクルに由来する太陽ニュートリノも測定した[19] 。この結果によりBorexinoは太陽および多くの主系列星の原動力となる2つの過程を両方とも解明した。

実験

参考文献

  1. 1 2 “I Laboratori Nazionali del Gran Sasso”. Istituto aNzionale di Fisica Nucleare. 2018年1月15日閲覧。
  2. ↑ “così nacque il traforo a doppia canna più lungo d'Europa” (イタリア語). Autostrada A24 (Italy). 2018年1月15日閲覧。
  3. ↑ Elena Dusi (2026年2月9日). “L’idea geniale di scavare un laboratorio sotto al Gran Sasso: così Zichichi convinse la Dc” (イタリア語). la Repubblica. 2026年2月10日閲覧。
  4. ↑ “Trent'anni d'attività dei Laboratori Nazionali del Gran Sasso. Sergio Mattarella ad Assergi: "Orgoglio per l'Italia e gli italiani"” (2018年1月14日). 2018年1月15日閲覧。
  5. ↑ Alberto Orsini (2018年1月15日). “Mattarella ai laboratori del Gran Sasso, «Volevo venire da tempo, sono ricchezza»”. 2018年1月15日閲覧。
  6. ↑ Touring Club Italiano(英語版) (2005). L'Italia - Abruzzo e Molise. Milan: Touring Editore. p. 495
  7. 1 2 3 “INFN Laboratori Nazionali del Gran Sasso Annual Report 2011”. p. 4. 2015年8月16日閲覧。
  8. ↑ Miramonti, Lino (31 March 2005). “European underground laboratories: An overview”. AIP Conference Proceedings 785: 3–11. arXiv:hep-ex/0503054. Bibcode:2005AIPC..785....3M. doi:10.1063/1.2060447.
  9. ↑ Particle Chameleon Caught in the act of Changing, Press Release, CERN, 31 May 2010, accessed 22 November 2016.
  10. ↑ Agafonova, N.; Aleksandrov, Andrey; Altinok, Osman; Ambrosio, Michelangelo; Anokhina, Anna M.; Aoki, Shigeki et al. (2010). “Observation of a first ντ candidate event in the OPERA experiment in the CNGS beam”. Physics Letters B 691 (3): 138–145. arXiv:1006.1623. Bibcode:2010PhLB..691..138A. doi:10.1016/j.physletb.2010.06.022.
  11. ↑ Schechter, Joseph; Valle, José W.F. (1980). “Neutrino masses in SU(2) ⊗ U(1) theories”. Physical Review D 22 (9): 2227–2235. Bibcode:1980PhRvD..22.2227S. doi:10.1103/PhysRevD.22.2227.
  12. 1 2 New Experiment Aims to Crack Neutrino Mass Mystery, 4 November 2014, accessed 3 October 2021.
  13. ↑ Cottingham, W.N.; Greenwood, D.A. (2007). An Introduction to the Standard Model of Particle Physics (2nd ed.). Cambridge University Press. Bibcode:2007ismp.book.....C
  14. ↑ Nosengo, Nicola (2010). “Roman ingots to shield particle detector”. Nature. doi:10.1038/news.2010.186.
  15. ↑ Butler, Declan; Callaway, Ewen; Check Hayden, Erika; Cyranoski, David; Hand, Eric; Nosengo, Nicola; Samuel Reich, Eugenie; Tollefson, Jeff et al. (2011). “365 days: Nature's 10”. Nature 480 (7378): 437–445. Bibcode:2011Natur.480..437B. doi:10.1038/480437a. PMID 22193082.
  16. ↑ Brumfiel, Geoff (2011). “Particles break light-speed limit”. Nature. doi:10.1038/news.2011.554.
  17. ↑ Neutrinos sent from CERN to Gran Sasso respect the cosmic speed limit, 8 June 2012.
  18. ↑ Adam, T.; et al. (OPERA Collaboration) (2012). “Measurement of the neutrino velocity with the OPERA detector in the CNGS beam”. Journal of High Energy Physics 2012 (10): 93. arXiv:1109.4897. Bibcode:2012JHEP...10..093A. doi:10.1007/JHEP10(2012)093.
  19. ↑ First detection of solar neutrinos from the CNO cycle with Borexino, Indico-FNAL, 23 June 2020.

外部リンク