コーチビルダー

ウィキペディアから、無料の百科事典

コーチビルダー(coachbuilder)とは、馬車や自動車(バス・トラック等)の車体の製造や架装を行う専門業者を指す。イタリア語ではカロッツェリア(carrozzeria)、フランス語ではカロッセリー(carrosserie)と同義である。

語源

語源は馬車製造の発祥地であるハンガリーの都市「コチ(Kocs)」に由来する。イギリス英語の「coach」は大型馬車を起点とし、現代でもバスや列車の客車を指す言葉として用いられている。

表現

車台(シャシ)への架装工程やその工場自体をコーチワーク(coachwork)と呼び、製造された車体はイギリス英語で「coachbuilt body」、アメリカ英語で「custom body」と表現される。なお、ここでの「custom body」は、いわゆる「改造車」とは意味合いが異なる。

歴史

オースチン・セブン・スワロー・サルーン

かつては、木製および金属製の車体の製造に使用される技術は非常に特殊であったため、ほとんどの車両製造会社は既存のコーチビルダーとの間に架装する車体の製造契約を結んでいた。例えばフィッシャーボディ社は1910年代にキャデラックのクローズドボディ全てを製造し架装していた。イギリスの代表的な高級車ブランドであるジャガーも、かつてはコーチビルダーであった。オースチン・セブン・スワロー・サルーンはその代表作である。

やがて車両製造会社が車体製造技術を自社で手がけるようになると、オーダーメイドの車体架装の技量が富裕層の間で愛顧を受けるようになった。ブガッティ・タイプ57、キャデラック・V-16、フェラーリ・250、そして第二次世界大戦以前に製造された全てのロールス・ロイス製の車両などはシャシ状態で販売され、ボディを架装するという形態が常習化した。多くのコーチビルダーはピニンファリーナやジウジアーロのような著名なデザイナーと連携するようになった。

モノコック構造の出現でオーダーメイドの車体架装が困難になると、多くのコーチビルダーが自動車メーカーに吸収されるなどして消滅していった。現存のコーチビルダーは大手自動車メーカーと契約を交わして、自動車の組立や少量生産車種の製造を行っている。

日本

日本のバス産業には、富士重工業や北村製作所、西日本車体工業といったコーチビルダーが存在していた。しかし、最後まで事業を継続していた西日本車体工業が2010年に解散したことで、バス車体を専門に架装する独立系コーチビルダーは国内から姿を消した。岩戸工業や東京特殊車体、中京車体工業のように既成車体の二次架装(レトロバス等への改造)を手掛ける企業はあるものの、車体をゼロから新造しているわけではないため、これらをコーチビルダーと呼ぶことは少ない。

乗用車分野では、光岡自動車やトミーカイラ、オーテックジャパン、京成自動車工業などがコーチビルダーとしての役割を果たしてきた。ただし光岡自動車に関しては、自社ブランド車で型式認証を取得する「自動車メーカー」に成長したため、コーチビルダーの枠組みから外して扱うのが一般的である。

一方で、物流・特装分野においては日本フルハーフをはじめとする多数の車体メーカーが現在も活動している。なお、消防車やクレーン車といった特定の用途に特化した車両を製造する企業は、日本では「架装メーカー」あるいは「艤装メーカー」と呼称・区別されることが多い。

関連項目