スコットランドの本

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『スコットランドの本』のバナッハとウラムのメモの書かれた頁。

『スコットランドの本』[1][注 1](スコットランドのほん、波: Księga Szkocka, 英: Scottish Book)は、ポーランドのルヴフ学派(英語版)の数学者らが、未解決問題を書き留めたノートである。名称は、ノートが保管されていたスコティッシュ・カフェ(英語版)に因む。ステファン・バナッハとその妻 Łucja が提案したとされる[2][3]。

歴史

本が置かれていたスコティッシュ・カフェ(英語版)。
1972年、マズール(英語版)(左)は、問題153(英語版)の解決に対して約束した「生きたガチョウ」をPer Enflo(英語版)に授与した。

スコティッシュ・カフェは、1930, 1940年代にルヴフ(後のウクライナ領リヴィウ)に位置したカフェである。ルヴフ学者はこのカフェに集まって数学の問題、特に関数解析学と位相空間論に関する問題について議論していた。

スタニスワフ・ウラムによれば、カフェのテーブルの天板が大理石で作られていたため、議論の際にはテーブルに直接書き込むことができた。この書き込みを残すため、また天板に書き込まないようにするため、バナッハの妻 Łucja が一冊の大きなノートを提供した。このノートに問題や解答が書き込まれ、「スコットランドの本」となった。 解決済みの問題、未解決問題、おそらく解くことのできない問題まで収められており、カフェに訪れれば誰でも閲覧できた。問題を解けば賞品が与えられる。難解な問題には、(世界恐慌の最中、第二次世界大戦前夜であったけれども)高級ブランデーのボトルなど高価な賞品が用意されていた[4]。

後にバナッハの基底問題(英語版)との関連が発見された問題153に対し、スタニスワフ・マズール(英語版)は生きたガチョウを賞品に提示した。1972年にPer Enflo(英語版)が問題を解決し、ポーランド全土に放送された式典の中で Enflo にガチョウが贈られた[5]。

1939年後のソヴィエト連邦によるルヴフの占領(英語版)中、ロシア人数学者もこの本に参加した[3]。1941年、ドイツによってルヴフが占領された。この頃フーゴ・シュタインハウスによって本へ最後の書き込みがなされた[6][7]。戦時中、本は Łucja によって守り抜かれた[8]。

戦後、ウラムの英訳した書籍がロスアラモス国立研究所から出版された[9] 。現在、原本はドイツに住むバナッハの子孫が保有している[10]。

記載された問題

計193の問題がスコットランドの本に記録された[2]。そのうちの43問はマズールが提案したもので、24問は単独で、19問はバナッハと共同で作成された[11]。バナッハ自身は14の問題を残し、さらにウラムとマズールとともに11問を執筆した。ウラムは40の問題を作成し、15問を共同で執筆した[2]。

シュタインハウスが最後に書き込んだ問題は、連続喫煙(英語版)に着想を得て作られた、マッチ箱のマッチの確率分布に関する問題(英語版)であった[2]。

脚注

注釈

  1. ↑ スコティッシュ・ブックとも。

出典

  1. ↑ F.ル・リヨネ 著、滝沢清 訳『何だこの数は?』東京図書、1989年、90頁。ISBN 4489002998。
  2. 1 2 3 4 Raikhel, Yuri (2010年1月). “Scottish Book: Lviv's mathematical relic”. День. 2011年11月17日閲覧.
  3. 1 2 Visser, Jan; Visser, Muriel (2003). “Talking about the unknown”. TechTrends 47 (1): 5–8. doi:10.1007/BF02763324.
  4. ↑ Mauldin 1981.
  5. ↑ Mauldin 1981; Kałuża 1996.
  6. ↑ “Manuscript of Scottish book (PDF)”. 2018年4月28日時点のオリジナルよりアーカイブ。2016年10月12日閲覧。
  7. ↑ Ulam 1958, p. 88.
  8. ↑ Roman Duda (2014). “10. Życie towarzyskie (Kawiarnia szkocka, Księga szkocka)”. Lwowska szkoła matematyczna. 2. Wrocław: Wydawnictwo Uniwersytetu Wrocławskiego. pp.  70–78. ISBN 978-83-229-3211-7
  9. ↑ Ulam 1958, p. I-II.
  10. ↑ “Odsłonięcie tablicy upamiętniającej legendarną „Księgę Szkocką”. 2023年9月30日閲覧。
  11. ↑ O'Connor, John J.; Robertson, Edmund F., “Stanisław Meiczyslaw Mazur”, MacTutor History of Mathematics archive, University of St Andrews.

参考文献