セラミックコンデンサ

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一般的なリード付き(スルーホール用)のセラミックコンデンサ

セラミックコンデンサ(英: ceramic capacitor)は、セラミックスを誘電体として用いる固定容量のコンデンサである。セラミックスの層と、電極となる金属の層を2層以上交互に重ねた構造をもつ。セラミックス材料の組成によって電気的な特性が決まり、それによって用途も決まる。セラミックコンデンサは、次の2つの用途分類(クラス)に分けられる。

  • クラス1のセラミックコンデンサは、安定性が高く損失が小さいため、共振回路の用途に用いられる。
  • クラス2のセラミックコンデンサは、体積効率が高いため、緩衝(バッファ)、バイパス、カップリングの用途に用いられる。

セラミックコンデンサ、とくに積層セラミックコンデンサ(MLCC)は、電子機器で最も多く生産され使われているコンデンサであり、年間およそ1兆(1012)個が電子機器に組み込まれている[1]。

特殊な形状や構造のセラミックコンデンサは、RFI/EMIの抑制用コンデンサや貫通コンデンサとして使われ、大型のものは送信機の電力用コンデンサとして使われる。

歴史

さまざまなセラミックコンデンサ。左右はリード付きの円板形、中央は積層セラミックチップコンデンサ(MLCC)

電気の研究が始まった当初から、ガラス、磁器、紙、雲母(マイカ)などの電気を通さない材料が絶縁体として使われてきた。これらの材料は、数十年後には初期のコンデンサの誘電体としても適していることが分かった。

マルコーニの無線送信装置の初期にも、送信機の高電圧・高周波の用途には磁器のコンデンサが使われていた。受信機側では、共振回路に小型のマイカコンデンサが使われた。マイカを誘電体とするコンデンサは、1909年にウィリアム・デュビリエが発明した。第二次世界大戦前のアメリカでは、マイカがコンデンサの誘電体として最も一般的であった[1]。

マイカは天然の材料であり、無尽蔵に手に入るわけではない。そのため1920年代半ばのドイツでは、マイカの不足と、セラミックスの一種である磁器についての経験とから、セラミックスを誘電体とする最初のコンデンサが生まれ、セラミックコンデンサという新しい系統が始まった。最初のセラミック誘電体には、常誘電性の二酸化チタン(ルチル)が使われた。静電容量の温度依存性が直線的で、共振回路の温度補償に使えるうえ、マイカコンデンサを置き換えることができたためである。これらのセラミックコンデンサは1926年に少量生産され、1940年代に生産量が増えた。初期のセラミックコンデンサは、両面を金属化した円板に、スズめっきした線を接続した形状であった。この形状はトランジスタよりも古く、1930年ごろから1950年代にかけて、ラジオ受信機などの真空管機器で広く使われた。

しかし、この常誘電性の誘電体は誘電率が比較的低く、小さな静電容量しか実現できなかった。1930年代から1940年代にかけてラジオの市場が拡大すると、高周波のデカップリング用に、電解コンデンサよりは小さいものの、より大きな静電容量が求められるようになった。1921年に発見された強誘電性のセラミックス材料であるチタン酸バリウムは、誘電率が1,000程度と、二酸化チタンやマイカの約10倍であり、電子機器の用途ではるかに大きな役割を果たすようになった[1][2]。

誘電率が高いことで静電容量ははるかに大きくなったが、電気的なパラメータは比較的不安定であった。そのため、これらのセラミックコンデンサが、広く使われていたマイカコンデンサを置き換えられたのは、安定性がそれほど重要でない用途に限られた。マイカコンデンサに比べて寸法が小さいこと、製造コストが低いこと、マイカの供給に左右されないことから、普及が進んだ。

円筒形のセラミックコンデンサ。1950年代から1970年代のセラミックコンデンサの典型的な形状

第二次世界大戦後に放送産業が急速に成長したことで、結晶学、相転移、セラミックス材料の化学的・機械的な最適化についての理解が深まった。さまざまな基本材料を複雑に混合することで、セラミックコンデンサの電気的特性を精密に調整できるようになった。セラミックコンデンサの電気的特性を区別するため、標準化によっていくつかの用途分類(クラス1、クラス2、クラス3)が定められた。注目すべきことに、戦中と戦後にアメリカとヨーロッパの市場で別々に開発が進んだ結果、これらのクラスの定義は異なるものになった(EIAとIEC)。IECの規格への世界的な統一が進んだのは、2010年以降になってからである。

戦後の1950年代から1970年代にかけて、ラジオの用途で円板形と並んで典型的だったセラミックコンデンサ(当時の英語では「コンデンサー(condenser)」と呼ばれた)の形状は、内面と外面の両方をスズまたは銀で覆ったセラミックスの管であった。比較的長い端子をもち、抵抗器などの部品とともに、むき出しの配線が入り組んだ回路を形づくっていた。

成形しやすいセラミックス材料のおかげで、高電圧、高周波(RF)、電力の用途向けに、特殊な形状や大型のセラミックコンデンサが開発された。

マイクロプロセッサの周囲にデカップリングコンデンサとして配置されたMLCC

1950年代に半導体技術が発展すると、ドーピングした強誘電性セラミックスを用いて、バリア層コンデンサ(IECのクラス3、EIAのクラスIV)が開発された。このドーピングした材料は積層化に適さなかったため、数十年後にはクラス2のY5Vコンデンサに置き換えられた。

初期の円板形セラミックコンデンサは、1950年代から1970年代に一般的だった円筒形のセラミックコンデンサよりも安く生産できた。1961年に始まったアポロ計画のさなか、あるアメリカの企業が、複数の円板を積み重ねて一体のブロックにする方法を開発した。この「積層セラミックコンデンサ」(MLCC)は小型で、大きな静電容量をもっていた[3]。テープ成形と、セラミックスと電極を同時焼成する工程によってこのコンデンサを製造することは、製造上の大きな挑戦であった。MLCCによって、より小さな外形でより大きな静電容量を必要とする用途にまで、応用の範囲が広がった。これらのセラミックチップコンデンサは、1980年代に電子機器の実装方式がスルーホール実装から表面実装へと移行する原動力となった。有極性の電解コンデンサを無極性のセラミックコンデンサに置き換えられるようになり、実装も簡単になった。

1993年、TDKは、パラジウムを含む電極を、はるかに安価なニッケル電極に置き換えることに成功した。これにより製造コストが大幅に下がり、MLCCの大量生産が可能になった[4]。この技術改良によって、2000年にパラジウムの価格が上昇すると、価格を理由にパラジウムから置き換えることが可能になった[5]。これに、メーカーが市場から買わずに在庫を使ったことと、ドットコム・バブル期の電子機器の需要の落ち込みが重なり、2001年の電子機器向けのパラジウム需要は前年の3分の1(216万トロイオンスから70万トロイオンス)に落ち込んだ[6]。2025年時点で、需要は2000年以前の水準に戻っていない。

2012年時点で、MLCCは年間1012個以上製造されている[1]。セラミックチップコンデンサの形状と並んで、円板形のセラミックコンデンサは、電磁妨害の抑制用途で安全規格認定コンデンサとしてよく使われる。このほか、高電圧や高周波の送信機向けの大型の電力用セラミックコンデンサもある。

セラミックス材料では、反強誘電性セラミックスによる新しい開発も行われている。この材料は、反強誘電相と強誘電相の間で非線形の相転移を起こし、高い体積効率でより多くのエネルギーを蓄えられる。起爆装置などのエネルギー蓄積に使われる[7]。

用途分類と定義

セラミックコンデンサに使われるセラミックス材料(常誘電性または強誘電性のセラミックス)の違いは、コンデンサの電気的特性に影響する。二酸化チタンを主成分とする常誘電性物質の混合物を使うと、定められた温度範囲で静電容量がきわめて安定かつ直線的に変化し、高周波での損失も小さい。しかし、これらの混合物は誘電率が比較的低いため、コンデンサの静電容量は比較的小さい。

チタン酸バリウムなどの強誘電性材料に特定の酸化物を加えた混合物を使うと、より大きな静電容量が得られる。これらの誘電体材料は誘電率がはるかに高いが、静電容量は温度範囲にわたって多かれ少なかれ非線形に変化し、高周波での損失もはるかに大きい。こうした電気的特性の違いから、セラミックコンデンサは「用途分類」(クラス)に分けられている。用途分類の定義は標準化によるものである。2013年時点で、国際電気標準会議(IEC)の規格と、現在は解散した電子工業会(EIA)の規格の2種類が使われていた。

2つの規格による用途分類の定義は異なる。次の表に、セラミックコンデンサの用途分類の定義の違いを示す。

セラミックコンデンサの用途分類の定義の違い
IEC/EN 60384-1
およびIEC/EN 60384-8/9/21/22 による定義
EIA RS-198 による定義
クラス1のセラミックコンデンサ
安定性が高く損失が小さい。共振回路の用途向け
クラスI(クラス1とも書く)のセラミックコンデンサ
安定性が高く損失が小さい。共振回路の用途向け
クラス2のセラミックコンデンサ
体積効率が高い。
平滑、バイパス、カップリング、デカップリングの用途向け
クラスII(クラス2とも書く)のセラミックコンデンサ
体積効率が高く、静電容量の変化が−15%から+15%以内で、温度範囲が−55 °Cから+125 °Cより広い。
平滑、バイパス、カップリング、デカップリングの用途向け
クラス3のセラミックコンデンサ
バリア層コンデンサ。現在は標準化されていない
クラスIII(クラス3とも書く)のセラミックコンデンサ
EIAのクラスIIより体積効率が高い。より狭い10 °Cから55 °Cの温度範囲で、静電容量の変化は典型的に−22%から+56%。
EIAのクラス2のY5U/Y5VまたはZ5U/Z5Vのコンデンサで代替できる
–クラスIV(クラス4とも書く)のセラミックコンデンサ
バリア層コンデンサ。現在は標準化されていない

メーカー、とくにアメリカのメーカーは、電子工業会(EIA)の規格を好んで使った。EIA RS-198は、多くの部分でIECの規格とよく似ており、セラミックコンデンサの用途分類を4つ定めている[8]。

2つの規格でクラスの番号が異なることは、多くのメーカーのデータシートにあるクラスの記述を読む際に、多くの誤解を生む原因となっている[9][10]。EIAは2011年2月11日に活動を終えたが、その旧部門は引き続き国際的な標準化団体の活動に携わっている。

以下では、IECの規格の定義を優先し、重要な場合にはEIAの規格の定義と比較する。

クラス1のセラミックコンデンサ

クラス1のセラミックコンデンサは、精度の高い温度補償用のコンデンサである。電圧、温度、そしてある程度は周波数に対しても、最も安定している。損失が最も小さいため、安定性が不可欠な共振回路や、回路の温度による影響を補償する場合など、温度係数を精密に定める必要がある用途にとくに適している。クラス1のセラミックコンデンサの基本材料は、二酸化チタン(TiO2)などの常誘電性材料を細かく粉砕した粒子の混合物で、亜鉛、ジルコニウム、ニオブ、マグネシウム、タンタル、コバルト、ストロンチウムの添加物で改質されている。これらの添加物は、コンデンサに求められる直線的な特性を得るために必要である[11][12]。

クラス1のコンデンサの静電容量の温度特性は、TiO2などの基本となる常誘電性材料によって大まかに決まる。化学組成への添加物は、求める温度特性を精密に調整するために使われる。

クラス1のセラミックコンデンサは、セラミックコンデンサの中で体積効率が最も低い。これは、常誘電性材料の誘電率が比較的低い(6から200)ためである。そのため、クラス1のコンデンサの静電容量は小さい範囲にとどまる。

クラス1のセラミックコンデンサのセラミックス材料[要出典]
化学式比誘電率
ε
温度係数 α
/ppm·K−1
MgNb2O6 21 −70
ZnNb2O6 25 −56
MgTa2O6 28 18
ZnTa2O6 38 9
(ZnMg)TiO3 32 5
(ZrSn)TiO4 37 0
Ba2Ti9O20 40 2

クラス1のコンデンサの温度係数は、典型的には温度に対してほぼ直線的である。これらのコンデンサの電気的な損失はきわめて小さく、誘電正接は約0.15%である。目立ったエージング(経時変化)はなく、静電容量は印加電圧にほとんど左右されない。こうした特性から、高いQ値が必要なフィルタ、共振回路、発振器(位相同期回路など)に使われる。

EIA RS-198規格では、クラス1のセラミックコンデンサを、温度係数を表す3文字の記号で表す。1文字目は、温度に対する静電容量の変化(温度係数α)の有効数字をppm/Kで表す。2文字目は温度係数の乗数を表す。3文字目は、その値からの最大許容差をppm/Kで表す。いずれも25 °Cから85 °Cの範囲での値である。

EIA RS-198による
クラス1のセラミックコンデンサの温度係数の英数字記号
温度係数 α
/ppm·K−1
文字記号
乗数

数字記号
許容差
/ppm·K−1
文字記号
C: 0.00: −1G: ±30
B: 0.31: −10H: ±60
L: 0.82: −100J: ±120
A: 0.93: −1000K: ±250
M: 1.05: +1L: ±500
P: 1.56: +10M: ±1000
R: 2.27: +100N: ±2500
S: 3.38: +1000
T: 4.7
V: 5.6
U: 7.5

クラス1のセラミックコンデンサの静電容量の温度係数は、EIAの記号のほか、「NP0」「N220」などのセラミックスの名称で表すことも一般的である。これらの名称には温度係数(α)が含まれている。IEC/EN 60384-8/21規格では、温度係数と許容差を2文字の文字記号で表し(表を参照)、対応するEIAの記号を併記している。

IEC/EN 60384-8/21とEIA RS-198による
クラス1のセラミックコンデンサの
セラミックスの名称、温度係数、許容差、英数字記号
セラミックスの
名称
温度係数 α
/ppm·K−1
許容差

/ppm·K−1
サブクラス IEC/EN
文字記号
EIA
英数字記号
P100100±301BAGM7G
NP00±301BCGC0G
N33−33±301BHGH2G
N75−75±301BLGL2G
N150−150±601BPHP2H
N220−220±601BRHR2H
N330−330±601BSHS2H
N470−470±601BTHT2H
N750−750±1201BUJU2J
N1000−1000±2501FQKQ3K
N1500−1500±2501FVKP3K

たとえば、EIA記号が「C0G」の「NP0」コンデンサは、温度係数が0で許容差が±30 ppm/Kであり、記号が「P3K」の「N1500」は、温度係数が−1500 ppm/Kで最大許容差が±250 ppm/Kである。なお、IECとEIAのコンデンサの記号は業界のコンデンサの記号であり、軍用のコンデンサの記号とは異なる。

クラス1のコンデンサには、さまざまな温度係数αのものがある。とくに、αが±0×10−6/K、αの許容差が30 ppmのNP0/CG/C0Gのコンデンサは、技術的にきわめて重要である。これらのコンデンサの静電容量の変化dC/Cは、−55 °Cから+125 °Cの温度範囲で±0.54%である。これにより、広い温度範囲で正確な周波数特性が得られる(共振回路など)。特有の温度特性をもつほかの材料は、発振回路のコイルなど、並列に接続された部品の逆向きの温度変化を補償するために使われる。クラス1のコンデンサは、定格静電容量の許容差もきわめて小さい。

クラス2のセラミックコンデンサ

クラス2のセラミックコンデンサと、温度による静電容量の典型的な許容範囲(色付きの範囲)

クラス2のセラミックコンデンサは、誘電率の高い誘電体をもつため、クラス1のコンデンサより体積効率が高いが、精度と安定性は低い。セラミック誘電体は、温度範囲にわたって静電容量が非線形に変化するのが特徴である。静電容量は印加電圧にも左右される。損失の小ささや静電容量の安定性がそれほど重要でない、バイパス、カップリング、デカップリングの用途や、周波数弁別回路に適している。典型的にはマイクロフォニック効果を示す。

クラス2のコンデンサは、チタン酸バリウム(BaTiO3)などの強誘電性材料[13]に、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、酸化アルミニウムなどの適切な添加物を加えて作られる[14]。これらのセラミックスは誘電率がきわめて高く(200から14,000)、非常に強い電界、ひいては大きな静電容量を比較的小さなパッケージに収められる。クラス2のコンデンサは、同等のクラス1のコンデンサよりかなり小さい。しかし、誘電率は電界強度に対して非線形であり、端子間の電圧が上がると静電容量が大きく変化する。クラス2のコンデンサは温度安定性も低く、時間とともにエージングする[11]。

こうした性質から、クラス2のコンデンサは、電源の入出力の緩衝・フィルタリングや電気信号のカップリングなど、正確な値ではなく最低限の静電容量があればよい用途に一般に使われる。

クラス2のコンデンサは、温度範囲にわたる静電容量の変化によって表示される。最も広く使われている分類はEIA RS-198規格に基づくもので、3文字の記号を使う。1文字目のアルファベットは最も低い動作温度(英語版)、2文字目の数字は最も高い温度、3文字目のアルファベットは、定められた温度範囲全体で許される静電容量の最大変化を表す。

EIA RS-198によるクラス2のセラミックコンデンサの記号
温度範囲と、それに伴う静電容量の変化
低温側の
文字記号
高温側の
数字記号
温度範囲での
静電容量の変化の
文字記号
X = −55 °C4 = +65 °CP = ±10%
Y = −30 °C5 = +85 °CR = ±15%
Z = +10 °C6 = +105 °CL = ±15%、125 °C超では+15/−40%[15]
7 = +125 °CS = ±22%
8 = +150 °CT = +22/−33%
9 = +200 °CU = +22/−56%
V = +22/−82%

たとえば、Z5Uのコンデンサは+10 °Cから+85 °Cで動作し、静電容量の変化は最大で+22%から−56%である。X7Rのコンデンサは−55 °Cから+125 °Cで動作し、静電容量の変化は最大で±15%である。

よく使われるクラス2のセラミックコンデンサの材料を次に挙げる。

  • X8R(−55/+150 °C、ΔC/C0 = ±15%)
  • X7R(−55/+125 °C、ΔC/C0 = ±15%)
  • X6R(−55/+105 °C、ΔC/C0 = ±15%)
  • X5R(−55/+85 °C、ΔC/C0 = ±15%)
  • X7S(−55/+125 °C、ΔC/C0 = ±22%)
  • Z5U(+10/+85 °C、ΔC/C0 = +22/−56%)
  • Y5V(−30/+85 °C、ΔC/C0 = +22/−82%)

IEC/EN 60384-9/22規格では、別の2文字の記号を使う。

IEC/EN 60384-9/22による記号
温度範囲と、それに伴う静電容量の変化
静電容量の変化の記号U = 0での
最大静電容量変化
ΔC/C0
U = UNでの
最大静電容量変化
ΔC/C0
温度範囲の記号温度範囲
2B±10%+10/−15%1−55 - +125 °C
2C±20%+20/−30%2−55 - +85 °C
2D+20/−30%+20/−40%3−40 - +85 °C
2E+22/−56%+22/−70%4−25 - +85 °C
2F+30/−80%+30/−90%5(−10 - +70) °C
2R±15%−6+10 - +85 °C
2X±15%+15/−25%––

ほとんどの場合、EIAの記号をIEC/ENの記号に読み替えることができる。わずかな読み替えの誤差は生じるが、通常は許容できる範囲である。

  • X7Rは2X1に相当する
  • Z5Uは2E6に相当する
  • Y5Vは2F4に近い。ただしΔC/C0が+30/−82%ではなく+30/−80%である点が異なる
  • X7Sは2C1に近い。ただしΔC/C0が±22%ではなく±20%である点が異なる
  • X8Rに対応するIEC/ENの記号はない

クラス2のセラミックコンデンサは静電容量の精度と安定性が低いため、許容差は大きくなる。

軍用のクラス2の誘電体では、温度特性(TC)は定められているが、温度電圧特性(TVC)は定められていない。軍用のBX形は、X7Rと同様に温度による変化が15%を超えてはならず、さらに最大定格電圧で+15%/−25%以内でなければならない。BR形のTVCの限度は+15%/−40%である。

クラス3のセラミックコンデンサ

クラス3のセラミックコンデンサ(バリア層コンデンサ、半導体セラミックコンデンサ)は、誘電率が最大50,000ときわめて高く、クラス2のコンデンサより体積効率が高い。しかし、精度や安定性が低いなど、電気的特性は劣る。誘電体は、温度範囲にわたって静電容量がきわめて大きく非線形に変化するのが特徴である。静電容量はさらに印加電圧にも左右される。損失もきわめて大きく、時間とともにエージングする。

バリア層セラミックコンデンサは、チタン酸バリウム(BaTiO3)などのドーピングした強誘電性材料で作られる。このセラミックス技術が1980年代半ばに進歩すると、バリア層コンデンサは最大100 μFの静電容量のものが入手できるようになり、当時は小型の電解コンデンサに代わりうると考えられた。

バリア層コンデンサの構造と動作原理
バリア層コンデンサの構造と動作原理

この材料では積層コンデンサを作ることができないため、市場にはリード付きの単層形しかない[16][17]。

より小さなパッケージで優れた性能を実現する積層セラミックコンデンサの進歩により、バリア層コンデンサは技術として時代遅れとみなされ、IECでも標準化されなくなった。

構造と形状

セラミックコンデンサは、常誘電性または強誘電性の材料を細かく粉砕した粒子に、求める特性を得るためのほかの材料を適切に混ぜた混合物でできている。この粉末の混合物を高温で焼結してセラミックスにする。セラミックスは誘電体となり、金属電極の支持体にもなる。誘電体層の最小の厚さは、2013年時点で低電圧用コンデンサでは0.5マイクロメートル程度であり[3]、セラミックス粉末の粒径によって下限が決まる。より高い電圧用のコンデンサの誘電体の厚さは、求める絶縁耐力によって決まる。

コンデンサの電極は、金属化によってセラミックスの層の上に形成される。MLCCでは、金属化したセラミックスの層を交互に積み重ねる。素体の両側に突き出た電極の金属化部分は、接続端子とつながる。ラッカーやセラミックスの被覆が、湿気などの周囲の影響からコンデンサを守る。

セラミックコンデンサにはさまざまな形状がある。主なものを次に挙げる。

  • 積層セラミックチップコンデンサ(MLCC):直方体のブロック形で、表面実装用
  • 円板形セラミックコンデンサ:単層の円板を樹脂で被覆したもので、スルーホール実装用のリードをもつ
  • 貫通形セラミックコンデンサ:高周波回路のバイパス用に使われる。管状で、内側の金属化部分がリード線につながり、外側の金属化部分をはんだ付けする
  • 電力用セラミックコンデンサ:高電圧用途向けの、さまざまな形状の大型のセラミックス素体

積層セラミックコンデンサ(MLCC)

製造

MLCCは、単層のコンデンサを多数積み重ねて1つのパッケージにしたものと考えることができる。すべてのMLCCチップの出発原料は、常誘電性または強誘電性の原料を細かく粉砕した粒子の混合物で、正確に定めた添加物で改質されている[18][19]。混合物の組成と、10 nmほどの小さな粉末粒子の大きさに、メーカーの専門技術が表れる。

粉末を適切なバインダとともに懸濁させたものから、薄いセラミックスのシートを成形する。シートのロールを同じ大きさのシートに切り分け、電極となる金属ペーストの層をスクリーン印刷する。自動化された工程で、これらのシートを必要な層数だけ積み重ね、圧力をかけて固める。静電容量は、比誘電率のほか、層の大きさと層数によって決まる。電極は、隣の層からわずかにずらして交互に積み重ねられ、ずれた側(片方は左、もう片方は右)でそれぞれ後から接続できるようになっている。積層体を加圧したのち、個々の部品に切断する。たとえば「0201」サイズ(0.6 mm × 0.3 mm)で500層以上を積み重ねるには、高い機械的精度が必要である。

切断後、積層体からバインダを焼き飛ばす。続いて1200 °Cから1450 °Cの温度で焼結し、主に結晶質の最終的な構造にする。この焼成工程によって、求める誘電特性が生まれる。焼成の後は洗浄し、両端面を金属化する。この金属化によって、端部と内部の電極が並列に接続され、コンデンサの端子ができる。最後に、各コンデンサの電気的な検査を行って機能と性能を確かめ、テープリール包装にされる。

積層セラミックチップコンデンサの製造工程の概略
積層セラミックチップコンデンサの製造工程の概略

小型化

MLCCの静電容量Cは、平行平板コンデンサの式を層数で拡張した次の式で表される。

ここで、εは誘電体の誘電率、Aは電極の面積、nは層数、dは電極間の距離である。

1995年から2005年にかけてのMLCCチップコンデンサの小型化
1995年から2005年にかけてのMLCCチップコンデンサの小型化

誘電体を薄くするか電極の面積を大きくすると、静電容量は大きくなる。誘電率の高い誘電体材料を使っても同様である。

ここ数十年でデジタル電子機器の小型化が進むとともに、集積論理回路の周辺部品も小さくなってきた。MLCCを小さくするには、誘電体を薄くし、層数を増やす必要がある。どちらにも多大な努力と高度な専門技術が必要である。

1995年には、誘電体の最小の厚さは4 μmであった。2005年までに、層の厚さが1 μmのMLCCチップを生産するメーカーも現れた。2010年時点で、最小の厚さは約0.5 μmである[1]。誘電体の中の電界強度は35 V/μmにまで高まった[20]。

これらのコンデンサの小型化は、セラミックスの層を薄くするための前提として、粉末の粒径を小さくすることで実現された。さらに、製造工程がより精密に制御されるようになり、より多くの層を積み重ねられるようになった。

1995年から2005年にかけて、1206サイズのY5VのMLCCの静電容量は4.7 μFから100 μFに増えた[21]。その後(2013年時点)、多くのメーカーが、0805のチップサイズで静電容量100 μFのクラス2のMLCCを供給できるようになっている[22]。

MLCCのケースサイズ

MLCCにはリードがないため、リード付きの同等品より一般に小さい。基板に実装するためのスルーホールを必要とせず、人ではなく機械で扱うように設計されている。そのため、MLCCのような表面実装部品は一般に安価である。

MLCCは、同じように扱えるよう、標準化された形状と寸法で製造されている。初期の標準化はアメリカのEIAの規格が主導したため、MLCCチップの寸法はEIAによってインチ単位で標準化された。長さ0.06インチ、幅0.03インチの直方体のチップは「0603」と表される。この記号は国際的に通用し、広く使われている。JEDEC(IEC/EN)は、メートル法による2つ目の記号を考案した。一般的な積層セラミックチップコンデンサのサイズについて、EIAの記号、それに相当するメートル法の記号、ミリメートル単位の寸法を次の表に示す。表には高さ「H」がない。MLCCチップの高さは層数、ひいては静電容量によって変わるため、一般には記載されない。ただし通常、高さHは幅Wを超えない。

MLCCチップコンデンサの寸法記号と対応する寸法
図EIA
インチ記号
寸法
L × W
インチ × インチ
IEC/EN
メートル記号
寸法
L × W
mm × mm
EIA
インチ記号
寸法
L × W
インチ × インチ
IEC/EN
メートル記号
寸法
L × W
mm × mm
積層セラミックチップコンデンサの寸法 L×W×H
010050.016 × 0.007904020.4 × 0.218060.18 × 0.06345164.5 × 1.6
0150150.016 × 0.01604040.4 × 0.418080.18 × 0.07945204.5 × 2.0
02010.024 × 0.01206030.6 × 0.318120.18 × 0.1345324.5 × 3.2
02020.02 × 0.0205050.5 × 0.518250.18 × 0.2545644.5 × 6.4
03020.03 × 0.0208050.8 × 0.520100.20 × 0.09850255.0 × 2.5
03030.03 × 0.0308080.8 × 0.820200.20 × 0.2050505.08 × 5.08
05040.05 × 0.0413101.3 × 1.022200.225 × 0.19757505.7 × 5.0
04020.039 × 0.02010051.0 × 0.522250.225 × 0.255664/57645.7 × 6.4
06030.063 × 0.03116081.6 × 0.825120.25 × 0.1364326.4 × 3.2
08050.079 × 0.04920122.0 × 1.2525200.25 × 0.19764506.4 × 5.0
10080.098 × 0.07925202.5 × 2.029200.29 × 0.19774507.4 × 5.0
11110.11 × 0.1128282.8 × 2.833330.33 × 0.3384848.38 × 8.38
12060.126 × 0.06332163.2 × 1.636400.36 × 0.4092109.2 × 10.16
12100.126 × 0.1032253.2 × 2.540400.4 × 0.410010010.2 × 10.2
14100.14 × 0.1036253.6 × 2.555500.55 × 0.514012714.0 × 12.7
15150.15 × 0.1538383.81 × 3.8180600.8 × 0.620315320.3 × 15.3

NMEとBMEの金属化

もともとMLCCの電極は、銀やパラジウムなどの貴金属で作られていた。これらは1200 °Cから1400 °Cの高い焼結温度に耐え、容易には酸化しない。これらの「貴金属電極」(NME)のコンデンサは、とても優れた電気的特性をもっていた。

しかし、1990年代後半の貴金属の価格高騰で製造コストが大幅に上がった。この圧力から、銅やニッケルなどのより安価な金属を使うコンデンサが開発された[23]。これらの「卑金属電極」(BME)のコンデンサは電気的特性が劣り、高電圧で静電容量がより大きく減少し、損失係数も大きかった。

BMEの欠点は、主に電源など、精度をそれほど問わない低コストの用途に使われるクラス2のコンデンサでは許容できると判断された。仕様への適合が重要でコストがそれほど問題にならないクラス1のコンデンサでは、今もNMEが使われている。

MLCCの静電容量の範囲

2012サイズのMLCCチップで入手できる最大の静電容量(2017年4月時点)

MLCCチップの静電容量は、誘電体、サイズ、必要な電圧(定格電圧)によって決まる。静電容量は約1 pFからある。最大の静電容量は製造技術によって決まり、X7Rでは47 μF、Y5Vでは100 μFである。

右の図は、クラス1とクラス2の積層セラミックチップコンデンサの最大の静電容量を示している。次の2つの表は、NP0/C0GとX7Rのセラミックスそれぞれについて、一般的なケースサイズごとに、主要メーカー(村田製作所、TDK、KEMET、AVX)から入手できる最大の静電容量と定格電圧を示したものである(2017年4月時点)。

クラス1のNP0/C0GのMLCCチップの最大静電容量
定格
電圧
ケースサイズ(EIA記号)
0100502010402060308051206121018122220
寸法(mm)
0.4×0.20.6×0.31.0×0.51.6×0.82.0×1.253.2×1.63.2×2.54.5×3.25.7×5.0
最大静電容量
6.3 V220 pF––33 nF–––––
10 V220 pF–4.7 nF33 nF100 nF100 nF220 nF––
16 V220 pF–2.2 nF15 nF47 nF120 nF220 nF––
25 V220 pF1.0 nF2.2 nF47 nF47 nF120 nF220 nF––
50 V100 pF220 pF1.5 nF10 nF47 nF100 nF150 nF220 nF470 nF
100 V–100 pF1.0 nF4.7 nF22 nF100 nF100 nF150 nF330 nF
250 V––330 pF2.2 nF8.2 nF22 nF47 nF100 nF–
500 V––––820 pF4.7 nF10 nF22 nF47 nF
630 V––––1.2 nF4.7 nF15 nF22 nF47 nF
1000 V––––270 pF1.0 nF2.7 nF5.6 nF12 nF
2000 V–––––270 pF680 pF1.5 nF3.9 nF
3000 V–––––––390 pF1.0 nF
クラス2のX7RのMLCCチップの最大静電容量
定格
電圧
ケースサイズ(EIA記号)
0100502010402060308051206121018122220
寸法(mm)
0.4×0.20.6×0.31.0×0.51.6×0.82.0×1.253.2×1.63.2×2.54.5×3.25.7×5.0
最大静電容量
4 V––2.2 μF22 μF22 μF100 μF100 μF––
6.3 V–0.1 μF2.2 μF10 μF22 μF47 μF100 μF––
10 V1.0 nF0.1 μF2.2 μF10 μF22 μF22 μF47 μF––
16 V1.0 nF0.1 μF2.2 μF4.7 μF10 μF22 μF22 μF––
25 V–10 nF0.1 μF2.2 μF10 μF10 μF22 μF–22 μF
50 V–1.5 nF0.1 μF0.47 μF4.7 μF4.7 μF10 μF–10 μF
100 V––4.7 nF0.1 μF0.1 μF4.7 μF10 μF3.3 μF10 μF
200 V–––10 nF56 nF0.15 μF0.22 μF1.0 μF1.0 μF
250 V–––2.2 nF22 nF0.1 μF0.22 μF0.47 μF1.0 μF
500 V–––3.9 nF22 nF68 nF0.1 μF0.22 μF0.47 μF
630 V–––1.5 nF12 nF33 nF0.1 μF0.15 μF0.33 μF
1000 V–––1.0 nF4.7 nF22 nF68 nF0.1 μF0.12 μF
2000 V–––––2.2 nF6.8 nF10 nF22 nF
3000 V–––––––1.2 nF15 nF

低ESL形

コンデンサは、その共振周波数の付近で、ノイズや電磁妨害に対するデカップリングの性能が最も高くなる。コンデンサの共振周波数は、部品のインダクタンスによって決まる。コンデンサの誘導性の成分は、等価直列インダクタンス(ESL)としてまとめて表される(Lはインダクタンスを表す電気記号である)。インダクタンスが小さいほど、共振周波数は高くなる。

とくにデジタル信号処理では、スイッチング周波数が上がり続けているため、高周波のデカップリング用やフィルタ用のコンデンサの需要が高まっている。簡単な設計変更で、MLCCチップのESLを下げることができる。積み重ねた電極を、長辺側で接続端子とつなぐのである。これにより、電荷キャリアが電極を流れる距離が短くなり、部品のインダクタンスが下がる[24]。

たとえば、0805パッケージの0.1 μFのX7RのMLCCは16 MHzで共振する。同じコンデンサを長辺側に端子をもつ形(すなわち0508)にすると、共振周波数は22 MHzになる。

別の方法として、部品をコンデンサのアレイにすることもできる。共通の外装の中に複数のコンデンサを作り込み、それらを並列に接続することで、部品のESLとESRがいずれも下がる。

X2Yデカップリングコンデンサ

標準的な積層セラミックコンデンサは、内部に積み重ねた多数の対向する電極層を、2つの外部端子につないだものである。これに対しX2Yセラミックチップコンデンサは、4端子のチップ部品である。標準的な2端子のMLCCと同じくセラミックスの層を積み重ねて作られるが、チップ内に3組目のシールド電極が組み込まれている。このシールド電極は、コンデンサの積層体の中で既存の各電極を囲み、コンデンサの端子に対して直交する向きに追加された2つの側面端子に、低抵抗で接続されている。X2Yの構造では3つのノードをもつ容量性の回路ができ、線間と線・グランド間のフィルタリングを同時に行える[25][26][27]。

X2Yセラミックコンデンサは、従来の部品2個以上を置き換えることができ、デジタル回路の電源電圧の高周波フィルタリングやノイズ抑制に最適である。また、直流モーター、自動車、オーディオ、センサなどの用途で、厳しいEMCの要求を満たすうえで大いに役立つ[28][29]。

X2Yの実装パターンにより、実装時のインダクタンスが小さくなる[30]。これは、クロック周波数が数百MHz以上の高速デジタル回路での使用でとくに重要である。こうした回路では、電源ラインの寄生インダクタンスのために、基板上で個々の電源電圧のデカップリングを実現することが難しい。従来のセラミックコンデンサを使う標準的な解決法では、静電容量の異なる多数のMLCCチップを並列に使う必要がある。X2Yコンデンサは、基板上で同じサイズのセラミックコンデンサを最大5個置き換えることができる[31]。ただし、この種類のセラミックコンデンサは特許で保護されているため、比較的高価である。

X2Yコンデンサの代わりに、3端子コンデンサを使う方法もある[32]。

機械的な脆弱性

セラミックスはもろく、回路基板に表面実装ではんだ付けしたMLCCチップは、熱膨張や基板分割などの機械的な応力によって割れやすい。その程度はリード付きのスルーホール実装部品よりも大きい。 割れは、自動組立ラインや、回路の大電流によって生じることがある。 回路基板にかかる振動や衝撃の力は、ほぼ減衰されずにMLCCとそのはんだ接合部に伝わり、力が大きすぎるとコンデンサが割れる(たわみクラック)。はんだ接合部のはんだが多すぎると、コンデンサにかかる力を増幅するおそれがあり、望ましくない[33][34]。

MLCCチップが機械的な応力に耐える能力は、いわゆる基板曲げ試験で調べる。この試験では、MLCCをはんだ付けした基板を、押し棒で1 mmから3 mm曲げる。MLCCが短絡するか、静電容量が大きく変化すれば故障とみなす。

MLCCチップの曲げ強度は、セラミックス材料、チップのサイズ、コンデンサの物理的な構造によって異なる。特別な対策をしない場合、クラス1のNP0/C0GのセラミックスのMLCCチップの曲げ強度は典型的に2 mmに達するが、より大きなクラス2のX7RやY5Vのセラミックスのチップでは約1 mmにとどまった。0402サイズのような小さなチップは、どの種類のセラミックスでも、より大きな曲げ強度の値に達した。

とくに電極と端子に特別な設計上の工夫をすることで、曲げ強度を高められる。たとえば、端子付近でセラミックスが割れると、極性の異なる2つの電極が接触して内部で短絡が起こる。これは、電極が重なり合う面積を小さくすることで防げる。これは、たとえば「オープンモード設計」(OMD)によって実現される。この設計では、端子付近で割れても静電容量がわずかに下がるだけである(AVX、KEMET)。

「フローティング電極設計」(FED)または「積層直列コンデンサ」(MLSC)と呼ばれる似た構造でも、コンデンサの素体の一部が割れた場合は静電容量が下がるだけである。この構造では、端子と導電的につながっていないフローティング電極を使う。割れても短絡にはならず、静電容量が下がるだけである。 ただし、どちらの構造も、同じ静電容量の標準的なMLCCに比べて大きくなる。

電極と端子の間に導電性高分子の柔軟な中間層を入れることで、標準的なMLCCと同じ体積を実現できる。これは「フレキシブル端子」(FT-Cap)または「ソフト端子」と呼ばれる。この構造では、硬い金属のはんだ接合部が柔軟な高分子層に対して動くことで曲げの力を吸収でき、セラミックスが割れない[36]。 自動車用のコンデンサには、AEC-Q200やVW 80808に適合することが求められるものがある。

Xコンデンサ・YコンデンサによるRFI/EMIの抑制

ノイズ抑制用のコンデンサは、周波数が高くなるほど電気的なインピーダンスが下がるため、効果的なノイズ低減部品である。高い周波数では、線間や線とグランドの間の高周波の電気的ノイズや過渡現象に対して短絡のようにふるまう。そのため、モーター、インバータ、電子安定器のほか、ソリッドステートリレーのスナバや火花消去器を含む機器や機械が、線間(Xコンデンサ)および線・グランド間(Yコンデンサ)の接続で、電磁妨害や無線周波数妨害、過渡現象を出したり受けたりするのを防ぐ。Xコンデンサは、対称形、平衡形、またはディファレンシャルモードのノイズを効果的に吸収する。Yコンデンサは、線のいずれかの相と電位0の点との間にバイパスとして接続され、非対称形、不平衡形、またはコモンモードのノイズを吸収する[37][38][39]。

EMI/RFI抑制用のコンデンサは、残ったノイズや電気的な雑音がEMC指令EN 50081の限度を超えないように設計されている[40]。ノイズ抑制用の部品は10年から20年以上にわたって商用電源の電圧に直接つながるため、損傷のおそれがある過電圧や過渡現象にさらされる。そのため、ノイズ抑制用のコンデンサは、次のような国際的な安全規格の安全性と難燃性の要求を満たさなければならない。

  • ヨーロッパ:EN 60384-14
  • アメリカ:UL 1414、UL 1283
  • カナダ:CSA C22.2, No.1、CSA C22.2, No.8
  • 中国:CQC(GB/T 14472-1998)

定められた要求をすべて満たすRFI用コンデンサには、各国の安全規格機関の認証マークが表示される。電源ラインの用途では、被覆や、コンデンサの素体に含浸または被覆するエポキシ樹脂の難燃性に特別な要求がある。安全規格の認定を受けるため、電源ライン用のXコンデンサとYコンデンサは、故障するまで破壊試験(英語版)を受ける。大きな過電圧サージにさらされても、これらの安全規格品のコンデンサは、人や財産を危険にさらさないフェイルセーフな形で故障しなければならない。

2012年時点では、EMI/RFI抑制用のセラミックコンデンサの多くは、基板にスルーホール実装するリード付きのものであった[41][42]。一方で、表面実装の重要性はますます高まっている。そのため、その後はさまざまなメーカーのEMI/RFI抑制用のMLCCチップの多くが認定を受け、該当する規格の要求をすべて満たしている[41][43][44][45][46]。

電力用セラミックコンデンサ

大型の電力用セラミックコンデンサに使われる材料は、ほとんどが小型のものに使われる材料とよく似ている。しかし、電力系統、送信機、電気設備の用途向けの、大電力・高電圧から超大電力・超高電圧の定格をもつセラミックコンデンサは、歴史的な理由から別に分類されることが多い。小電力用のセラミックコンデンサの標準化は、電子機器に使う部品としての電気的・機械的なパラメータを中心にしている。これに対して電力用コンデンサの標準化は、各地の規制当局が定める、人と機器の保護に強く重点を置いている。

無線周波数の送信所に設置された電力用セラミックコンデンサ

現代の電子機器が、かつては「電力」部品だけが扱っていた電力の水準を扱えるようになるにつれ、「電子」と「電力」の定格の区別はあいまいになっている。かつてはこの2つの系統の境界はおおむね無効電力200ボルトアンペアであったが、現代のパワーエレクトロニクスはさらに大きな電力を扱えるようになっている。

電力用セラミックコンデンサは、ほとんどが200ボルトアンペアをはるかに超える仕様である。セラミックスの原料の高い可塑性とセラミックスの高い絶縁耐力によって、多くの用途に対応でき、電力用セラミックコンデンサにはきわめて多様な形状がある。これらの電力用コンデンサは数十年前から市販されている。要求に応じて、安定性が高く損失が小さいクラス1の電力用セラミックコンデンサ、または体積効率が高いクラス2の電力用セラミックコンデンサとして生産される。

クラス1の電力用セラミックコンデンサは、送信所の共振回路の用途に使われる。クラス2の電力用セラミックコンデンサは、遮断器、配電線、レーザー用の高電圧電源、誘導炉(英語版)、倍電圧回路に使われる。電力用セラミックコンデンサは、2 kVから100 kVの範囲の高い定格電圧のものを供給できる[47]。

これらの電力用セラミックコンデンサの寸法はきわめて大きくなることがある。大電力の用途では、コンデンサの損失によって多くの熱が発生することがある。そのため、電力用セラミックコンデンサの特殊な形状のものには、水冷用のパイプを備えたものがある。

電気的特性

直列等価回路

セラミックコンデンサの直列等価回路モデル

セラミックコンデンサの電気的特性はすべて、理想的な静電容量と、コンデンサのあらゆる損失と誘導性のパラメータを表す追加の電気部品とからなる直列等価回路によって定義し、規定することができる。この直列等価回路では、コンデンサの電気的特性は次のもので定義される。

  • C:コンデンサの静電容量
  • Rinsul:誘電体の絶縁抵抗。外装の絶縁とは別のものである
  • RESR:等価直列抵抗(英語版)。コンデンサのすべての抵抗損失をまとめたもので、通常「ESR」と略される
  • LESL:等価直列インダクタンス(英語版)。コンデンサの実効的な自己インダクタンスで、通常「ESL」と略される

並列等価回路ではなく直列等価回路を使うことは、IEC/EN 60384-1で定められている。

静電容量の標準値と許容差

「定格静電容量」CRまたは「公称静電容量」CNは、コンデンサが設計された静電容量の値である。実際の静電容量は、測定周波数と周囲温度によって変わる。標準化された測定条件は、温度20 °Cにおいて、次の周波数の低電圧の交流で測定するものである。

  • クラス1のセラミックコンデンサ
    • CR ≤ 100 pF:1 MHz、測定電圧5 V
    • CR > 100 pF:1 kHz、測定電圧5 V
  • クラス2のセラミックコンデンサ
    • CR ≤ 100 pF:1 MHz、測定電圧1 V
    • 100 pF < CR ≤ 10 μF:1 kHz、測定電圧1 V
    • CR > 10 μF:100/120 Hz、測定電圧0.5 V

コンデンサには、IEC/EN 60063に定められたE系列の規格に従い、等比級数的に増える標準値のものがある。1桁あたりの値の数によって、E3、E6、E12、E24などの系列と呼ばれる。コンデンサの値の単位には、ピコファラド(pF)、ナノファラド(nF)、マイクロファラド(μF)、ファラド(F)が使われる。

定格値からの静電容量の許容されるずれの割合を、静電容量の許容差という。実際の静電容量は許容差の範囲内になければならず、範囲外であれば仕様外となる。狭い場所での略記用に、IEC/EN 60062で許容差ごとの文字記号が定められている。

コンデンサの許容差とその文字記号
E系列 許容差
CR > 10 pF 文字記号 CR < 10 pF 文字記号
E961%F0.1 pFB
E482%G0.25 pFC
E245%J0.5 pFD
E1210%K1 pFF
E620%M2 pFG
E3−20/+50%S--
−20/+80%Z--

必要な静電容量の許容差は、用途によって決まる。E24からE96の狭い許容差は、高精度の発振器やタイマーなどの回路に使う高品質のクラス1のコンデンサに用いられる。精度を問わないフィルタやカップリングの回路などの用途では、クラス2のコンデンサにはE12からE3の許容差の系列で十分である。

静電容量の温度依存性

セラミックコンデンサの静電容量は温度によって変化する。多くの種類のコンデンサの誘電体は、温度依存性に大きな違いがある。温度係数は、クラス1のセラミックコンデンサでは摂氏1度あたりのppmで、クラス2のコンデンサでは温度範囲全体での百分率(%)で表される。

よく使われるコンデンサの温度係数
コンデンサの種類、
誘電体材料
温度係数
C/C0
使用
温度範囲
クラス1のセラミックコンデンサ、
常誘電性のNP0
±30 ppm/K(±0.5%)−55 - +125 °C
クラス2のセラミックコンデンサ、
強誘電性のX7R
±15%−55 - +125 °C
クラス2のセラミックコンデンサ、
強誘電性のY5V
+22% / −82%−30 - +85 °C

静電容量の周波数依存性

クラス2のX7RとY5Vのセラミックコンデンサの静電容量の周波数依存性(比較のためクラス1のNP0の曲線も示す)

ディスクリートのコンデンサの多くは、周波数が高くなるにつれて静電容量が多かれ少なかれ変化する。クラス2のセラミックスやプラスチックフィルムの誘電率は、周波数が上がると低下する。そのため、周波数が高くなるにつれて静電容量は減少する。この現象は誘電緩和に関係しており、電気双極子の時定数が誘電率の周波数依存性の原因となっている。右の図は、クラス2とクラス1のコンデンサの典型的な周波数特性を示している。

静電容量の電圧依存性

強誘電性セラミックス材料の直流バイアス特性

セラミックコンデンサの静電容量は、印加電圧によっても変化することがある。この効果はクラス2のセラミックコンデンサでより顕著である。強誘電性材料の性質は印加電圧によって変わる[48][49]。印加電圧が高いほど誘電率は低くなる。高い電圧で測定または使用したときの静電容量は、標準の測定電圧(0.5 Vまたは1.0 V)で測定した値より最大で80%低い値まで下がることがある。この性質は、低ひずみのフィルタなどのアナログ用途で、わずかな非線形性の原因となる。オーディオ用途では、高調波ひずみの原因になることがある。

上の2つの図に示した静電容量の電圧依存性は、NMEの金属化を施したセラミックコンデンサの曲線である。BMEの金属化を施したコンデンサでは、静電容量の電圧依存性はかなり大きくなった[50][51][52][53]。

耐電圧

ほとんどのコンデンサでは、誘電体の材料と厚さごとに、物理的に決まる絶縁耐力や破壊電圧を通常は規定できる。セラミックコンデンサではこれができない。セラミック誘電体層の破壊電圧は、電極の材料とセラミックスの焼結条件によって、最大で10倍も変わることがある。今日のきわめて薄いセラミックスの層では、電気的特性のばらつきを定められた範囲内に収めるために、工程パラメータの高い精度と管理が必要である。

セラミックコンデンサの耐電圧は、定格電圧(UR)として規定される。これは、上限温度までコンデンサに連続して加えてよい最大の直流電圧である。この保証された耐電圧は、隣の表に示す電圧で試験される。

さらに、定期的な寿命試験(耐久試験)では、構造の安全性を確かめるために、高めた試験電圧(URの120%から150%)でセラミックコンデンサの耐電圧を試験する。

構造の安全性を確かめるための
IEC 60384-8/21/9/22による試験電圧
形状 定格電圧 試験電圧
積層
セラミック
チップ
コンデンサ
(MLCC)
UR ≤ 100 V2.5 UR
100 V < UR ≤ 200 V1.5 UR + 100 V
200 V < UR ≤ 500 V1.3 UR + 100 V
500 V < UR1.3 UR
単層
セラミック
コンデンサ
UR ≤ 500 V2.5 UR
UR > 500 V1.5 UR + 500 V

インピーダンス

高い周波数でのコンデンサの簡略化した直列等価回路(上)と、リアクタンスXESLとXC、抵抗ESR、および説明のためのインピーダンスZと誘電正接tan δのベクトル図

コンデンサの周波数に依存する交流抵抗をインピーダンス という。これは交流回路における電圧と電流の複素数の比である。インピーダンスはオームの法則の概念を交流回路に拡張したもので、大きさしかもたない抵抗とは異なり、特定の周波数で大きさと位相の両方をもつ。

インピーダンスは、コンデンサが交流を通す能力の尺度である。この意味で、インピーダンスはオームの法則と同じように

として、電流または電圧の波高値や実効値の計算に使うことができる。

コンデンサの直列等価回路に示したように、実際の部品には理想的なコンデンサ 、インダクタンス 、抵抗 が含まれる。

インピーダンス を計算するには、抵抗と2つのリアクタンスを幾何学的に足し合わせる。

ここで、容量性リアクタンス(静電容量)は

誘導性リアクタンス(インダクタンス)は

である。 2つのリアクタンスが同じ値になる()共振の特別な場合には、インピーダンスは だけで決まる。

X7RとNP0のMLCCチップのインピーダンスの典型的な曲線

セラミックコンデンサのデータシートには、インピーダンスの大きさ だけが記載される。典型的なインピーダンスの曲線を見ると、周波数が高くなるにつれてインピーダンスは最小値まで下がる。インピーダンスが低いほど、交流はコンデンサを通りやすい。曲線の最小点、つまりXCとXLが同じ値になる共振点で、コンデンサのインピーダンスは最も低くなる。ここでは抵抗成分のESRだけがインピーダンスを決める。共振より高い周波数では、ESLのためにインピーダンスは再び上がる。

ESR、誘電正接、Q値

セラミックコンデンサの損失の合計は、抵抗による交流損失である。直流損失は「漏れ電流」または「絶縁抵抗」として規定され、交流の仕様では無視できる。これらの交流損失は非線形で、周波数、温度、経過時間、一部の特殊な種類では湿度に左右されることがある。損失は2つの物理的な要因から生じる。

  • 内部の配線抵抗、電極の接触抵抗、電極の配線抵抗による配線損失
  • 誘電分極による誘電損失

大きなコンデンサでは、これらの損失のうち最も大きな割合を占めるのは、通常、周波数に依存する誘電損失である。IEC 60384-1規格では、コンデンサの抵抗損失は、静電容量の測定と同じ周波数で測定する。その周波数は次のとおりである。

  • CR ≤ 1 nFのセラミックコンデンサ:100 kHz、1 MHz(推奨)、または10 MHz
  • 1 nF < CR ≤ 10 μFのセラミックコンデンサ:1 kHzまたは10 kHz
  • CR > 10 μFのセラミックコンデンサ:50/60 Hzまたは100/120 Hz

コンデンサの抵抗損失をまとめた結果は、用途の要求に応じて、等価直列抵抗(英語版)(ESR)、誘電正接(DF、tan δ)、Q値(Q)のいずれかで規定される。

クラス2のコンデンサは、多くの場合、誘電正接tan δで規定される。誘電正接は、リアクタンス とESRとの比(正接)で決まり、前述のベクトル図で虚軸とインピーダンスの軸のなす角δとして示すことができる(「インピーダンス」の節を参照)。

インダクタンス が小さい場合、誘電正接は次のように近似できる。

損失がきわめて小さいクラス1のコンデンサは、誘電正接で規定され、多くの場合Q値(Q)でも規定される。Q値は誘電正接の逆数として定義される。

Q値は電気抵抗の影響を表し、共振器の中心周波数(共振周波数) に対する帯域幅 を特徴づける。Q値が高いことは、共振回路の共振の質が高いことを示す。

IEC 60384-8/-21/-9/-22によると、セラミックコンデンサの誘電正接は次の値を超えてはならない。

CR ≥ 50 pFの
クラス1のセラミックコンデンサの
誘電正接tan δ
セラミックスの
温度係数
最大
誘電正接
100 ≥ α > −750tan δ ≤ 15×10−4
−750 ≥ α > −1500tan δ ≤ 20×10−4
−1500 ≥ α > −3300tan δ ≤ 30×10−4
−3300 ≥ α > −5600tan δ ≤ 40×10−4
≤ −5600tan δ ≤ 50×10−4
静電容量が50 pF未満の場合は
誘電正接がこれより大きくてもよい
CR ≥ 50 pFの
クラス2のセラミックコンデンサの
誘電正接tan δ
コンデンサの
定格電圧
最大
誘電正接
≥ 10 Vtan δ ≤ 350×10−4
静電容量が50 pF未満の場合は
誘電正接がこれより大きくてもよい

セラミックコンデンサの抵抗損失は、周波数、温度、電圧に依存する。さらに、クラス2のコンデンサの測定値はエージングによって変化する。セラミックス材料によって、温度範囲や動作周波数に対する損失は異なる。クラス1のコンデンサの変化は1桁のパーセントの範囲にとどまるが、クラス2のコンデンサの変化ははるかに大きい。

高周波での使用、インダクタンス(ESL)、自己共振周波数

セラミックコンデンサでは、コンデンサのインピーダンスとアドミタンスの虚数部が打ち消し合う特定の共振周波数で、電気的共振が起こる。 XCとXLが等しくなるこの周波数を自己共振周波数といい、次の式で計算できる。

ここで、ω = 2πfであり、fはヘルツ単位の共振周波数、Lはヘンリー単位のインダクタンス、Cはファラド単位の静電容量である。

静電容量CとインダクタンスLが小さいほど、共振周波数は高くなる。 自己共振周波数は、インピーダンスが最小値を通る最も低い周波数である。交流の用途では、自己共振周波数は、コンデンサを容量性の部品として使える最も高い周波数である。共振より高い周波数では、ESLのためにインピーダンスが再び上がる。コンデンサは、ESLに等しいインダクタンスと、その周波数でのESRに等しい抵抗をもつインダクタとしてふるまう。

市販のコンデンサのESLは、主に、電極を外部とつなぐリードと内部の接続によって生じる。大きなコンデンサは、電極までの距離が長く、1ミリメートルごとにインダクタンスが増えるため、小さなものよりESLが大きくなる傾向がある。

セラミックコンデンサにはきわめて小さな静電容量(pF台以上)のものがあり、静電容量が小さいことから、それだけで数百MHzまでの高い周波数に適している(上の式を参照)。 MLCCチップはリードがなく、電極が近いため、たとえばリード付きのものに比べて寄生インダクタンスがかなり小さく、より高い周波数の用途に適している。チップの短辺側ではなく長辺側で電極に接続することで、寄生インダクタンスはさらに小さくなる。

NP0/C0GとX7Rのセラミックコンデンサの、ある製品群の自己共振周波数の例を次に示す[54]。

10 pF 100 pF 1 nF 10 nF 100 nF 1 μF
C0G(クラス1) 1550 MHz 460 MHz 160 MHz 55 MHz
X7R(クラス2) 190 MHz 56 MHz 22 MHz 10 MHz

X7RはC0Gより周波数特性が良いことに注意されたい。ただしこれは、クラス2のコンデンサはクラス1よりはるかに小さく、寄生インダクタンスも小さくなるはずであることから、理にかなっている。

エージング

さまざまなクラス2のセラミックコンデンサのエージングと、クラス1のNP0のセラミックコンデンサとの比較

強誘電性のクラス2のセラミックコンデンサでは、静電容量が時間とともに減少する。この性質を「エージング」という。エージングは、誘電体の分極ドメインが全体の分極に寄与する強誘電性の誘電体で起こる。誘電体の中の分極ドメインが劣化すると、誘電率が時間とともに低下し、部品の経年とともにクラス2のセラミックコンデンサの静電容量が減少する[55][56]。

エージングは対数法則に従う。この法則は、定められた温度で、はんだ付け後の回復時間を経た後の時間の1桁(ディケード)あたりの静電容量の減少を百分率で表す。たとえば20 °Cで1時間から10時間までの期間である。法則が対数的であるため、静電容量の減少率は、1時間から100時間までで2倍、1時間から1000時間までで3倍というようになる。そのため、エージングは初期に最も速く進み、静電容量の値は時間とともに実質的に安定する。

クラス2のコンデンサのエージングの速さは、主に使われる材料によって決まる。経験則では、セラミックスの温度依存性が大きいほど、エージングの割合も大きい。X7Rのセラミックコンデンサの典型的なエージングは、1ディケードあたり約2.5%である[57]。Z5Uのセラミックコンデンサのエージングの速さはかなり大きく、1ディケードあたり最大7%に達することがある。

クラス2のコンデンサのエージングは、部品をキュリー点より高い温度に加熱することで元に戻すことができる[2]。

クラス1のコンデンサは、クラス2のような強誘電性のエージングを起こさない。しかし、高温、高湿度、機械的な応力などの環境の影響によって、長い期間のうちに静電容量がわずかに不可逆的に低下することがあり、これもエージングと呼ばれることがある。P100とN470のクラス1のコンデンサの静電容量の変化は1%未満、N750からN1500のセラミックスのコンデンサでは2%以下である。

絶縁抵抗と自己放電時定数

誘電体の抵抗は決して無限大ではなく、ある程度の直流の「漏れ電流」が生じ、これが自己放電の原因となる。セラミックコンデンサでは、コンデンサの直列等価回路でコンデンサと並列に置かれるこの抵抗を「絶縁抵抗Rins」という。この絶縁抵抗を、周囲に対する外装の絶縁と混同してはならない。

コンデンサの電圧が下がっていく自己放電の速さは、次の式に従う。

ここで、 は蓄えられた直流電圧、自己放電時定数は

である。 すなわち、時間 が経過すると、コンデンサの電圧は初期値 の37%まで下がる。

MΩ(106オーム)単位で表される絶縁抵抗と、秒単位の自己放電時定数は、誘電体の絶縁の品質を示す重要なパラメータである。これらの時間の値は、たとえばコンデンサをリレーのタイミング部品として使う場合や、サンプル・アンド・ホールド回路(英語版)やオペアンプのように電圧の値を保持する場合に重要である。

該当する規格によると、クラス1のセラミックコンデンサは、CR ≤ 10 nFでRins ≥ 10,000 MΩ、CR > 10 nFでτs ≥ 100 sである。クラス2のセラミックコンデンサは、CR ≤ 25 nFでRins ≥ 4,000 MΩ、CR > 25 nFでτs ≥ 100 sである。

絶縁抵抗、ひいては自己放電の速さは温度に依存し、温度が上がると60 °Cあたり約1 MΩ低下する。

誘電吸収

誘電吸収とは、長時間充電されたコンデンサが、放電しても完全には放電しきらない効果をいう。理想的なコンデンサは放電後に0ボルトのままであるが、実際のコンデンサでは、時間遅れの双極子の放電によって小さな電圧が生じる。この現象は誘電緩和、「ソーケージ」、「バッテリー作用」とも呼ばれる。

よく使われるコンデンサの誘電吸収の値
コンデンサの種類 誘電吸収
クラス1のセラミックコンデンサ、NP00.3%から0.6%
クラス2のセラミックコンデンサ、X7R2.0%から2.5%

コンデンサの多くの用途では誘電吸収は問題にならない。しかし、時定数の長い積分器、サンプル・アンド・ホールド回路(英語版)、スイッチトキャパシタ方式のA/D変換器、きわめて低ひずみのフィルタなどの用途では、完全に放電した後にコンデンサが残留電荷を回復しないことが重要であり、誘電吸収の小さいコンデンサが指定される。誘電吸収によって端子間に生じる電圧は、場合によっては電子回路の動作に問題を起こしたり、人にとって安全上の危険となったりすることがある。感電を防ぐため、電力用コンデンサのようなきわめて大きなコンデンサの多くは、端子を短絡する線を付けて出荷され、使用前に外される[58]。

マイクロフォニック効果

強誘電性セラミックスを使うクラス2のセラミックコンデンサはすべて圧電性を示し、マイクロフォニックス(英語版)(マイクロフォニー、マイクロフォニック効果)、オーディオ用途では「鳴き」と呼ばれる圧電効果をもつ[59]。マイクロフォニック効果とは、電子部品が機械的な振動を電気信号に変える現象であり、多くの場合、望ましくないノイズとなる[60]。感度の高い電子プリアンプでは、この効果を避けるため、一般にクラス1のセラミックコンデンサやフィルムコンデンサが使われる[60]。

逆マイクロフォニック効果では、コンデンサの電極間で変化する電界が物理的な力を及ぼし、電極をスピーカーのように動かす[60]。大電流のパルス負荷や大きなリップル電流によって、コンデンサから耳に聞こえる音が出ることがあるが、これはコンデンサを放電させ、誘電体に負担をかける[61][62][63]。

はんだ付け

セラミックコンデンサは、はんだ付けによる負荷で電気的パラメータが変化することがある。はんだ槽の熱によって、とくに表面実装形では、端子と電極の間の接触抵抗が変化することがある。強誘電性のクラス2のセラミックコンデンサでは、はんだ付けの温度がキュリー点を超える。誘電体の分極ドメインが元に戻り、クラス2のセラミックコンデンサのエージングの過程が再び始まる[2]。

そのため、はんだ付けの後には約24時間の回復時間が必要である。回復後、静電容量、ESR、漏れ電流などの一部の電気的パラメータは不可逆的に変化する。その変化は、コンデンサの形状によって数パーセント程度の範囲である。

その他

標準化

すべての電気・電子部品とその関連技術の標準化は、非営利の非政府の国際的な標準化団体である国際電気標準会議(IEC)が定める規則に従っている[64][65][66]。

電子機器に使うコンデンサの特性の定義と試験方法の手順は、次の共通仕様に定められている。

  • IEC 60384-1, Fixed capacitors for use in electronic equipment – Part 1: Generic specification

電子機器に使うセラミックコンデンサが標準品として認定されるために満たすべき試験と要求事項は、次の品種別仕様に定められている。

  • IEC 60384-8, Fixed capacitors of ceramic dielectric, Class 1
  • IEC 60384-9, Fixed capacitors of ceramic dielectric, Class 2
  • IEC 60384-21, Fixed surface mount multilayer capacitors of ceramic dielectric, Class 1
  • IEC 60384-22, Fixed surface mount multilayer capacitors of ceramic dielectric, Class 2

タンタルコンデンサの代替

積層セラミックコンデンサは、コスト、信頼性、サイズで競争力をもつようになったため、バイパスや高周波のスイッチング電源などの用途で、タンタルコンデンサ(英語版)や小容量のアルミニウム電解コンデンサの代わりに使われることが増えている。多くの用途では、ESRが低いことから、より小さな公称静電容量のものを使うことができる[67][68][69][70][71]。

セラミックコンデンサの特徴と欠点

セラミックコンデンサの特徴と欠点については、コンデンサの種類(英語版)の「種類の比較」の節を参照。

表示

円板形セラミックコンデンサの静電容量の表示

印字による表示

セラミックコンデンサは、ほかの多くの電子部品と同様に、スペースが許せば、メーカー、型式、電気的・熱的特性、製造年月日を示す表示が印字される。理想的には、十分な大きさがあれば、コンデンサには次の事項が表示される。

  • メーカー名または商標
  • メーカーの型式名
  • 定格静電容量
  • 定格静電容量の許容差
  • 定格電圧と電源の種類(交流または直流)
  • 気候カテゴリまたは定格温度
  • 製造年と月(または週)
  • 安全規格の認証マーク(安全規格品のEMI/RFI抑制用コンデンサの場合)

小さなコンデンサでは、限られたスペースに必要な情報をすべて表示するため、省略表記を使う。最もよく使われる形式は「XYZ J/K/M VOLTS V」であり、XYZは静電容量(XY × 10Z pFとして計算する)、J、K、Mの文字は許容差(それぞれ±5%、±10%、±20%)、VOLTS Vは使用電圧を表す。

例

  • 本体に「105K 330V」と表示されたコンデンサは、静電容量が10 × 105 pF = 1 μF(K = ±10%)で、使用電圧は330 Vである。
  • 「473M 100V」と表示されたコンデンサは、静電容量が47 × 103 pF = 47 nF(M = ±20%)で、使用電圧は100 Vである。

静電容量、許容差、製造年月日は、IEC/EN 60062に従う短い記号で表すことができる。定格静電容量(マイクロファラド)の短い表示の例を次に示す。

  • μ47 = 0.47 μF
  • 4μ7 = 4.7 μF
  • 47μ = 47 μF

製造年月日は、国際規格に従って印字されることが多い。

  • 方式1:年と週の数字による記号。「1208」は「2012年、第8週」である。
  • 方式2:年の記号と月の記号による。

年の記号:「R」= 2003年、「S」= 2004年、「T」= 2005年、「U」= 2006年、「V」= 2007年、「W」= 2008年、「X」= 2009年、「A」= 2010年、「B」= 2011年、「C」= 2012年、「D」= 2013年など。

月の記号:「1」から「9」= 1月から9月、「O」= 10月、「N」= 11月、「D」= 12月。

「X5」は「2009年5月」となる。

MLCCチップのようなきわめて小さなコンデンサには表示ができない。この場合、型式を特定するにはメーカーのトレーサビリティに頼るしかない。

色による表示

現代のコンデンサには、詳細な色による表示(カラーコード(英語版))はない。

関連項目

脚注

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外部リンク