タランドゥスオオツヤクワガタ
| タランドゥスオオツヤクワガタ | |||||||||||||||||||||||||||||||||
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タランドゥスオオツヤクワガタ Mesotopus tarandus | |||||||||||||||||||||||||||||||||
| 分類 | |||||||||||||||||||||||||||||||||
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| 学名 | |||||||||||||||||||||||||||||||||
| Mesotopus tarandus Swederus, 1787 | |||||||||||||||||||||||||||||||||
| 和名 | |||||||||||||||||||||||||||||||||
| タランドゥスオオツヤクワガタ クロツヤオオツノクワガタ |
タランドゥスオオツヤクワガタ Mesotopus tarandus は、昆虫綱甲虫目クワガタムシ科オオツヤクワガタ属 Mesotopus に分類される昆虫の種[1]。タランドスオオツヤクワガタ[2]とも呼称される。
タランドゥスオオツヤクワガタはアフリカ西部から中部にかけて分布する種である[1]。アフリカ大陸における大型の甲虫類が生息できる環境は、ハナムグリ類が優占種となっているため、アフリカ大陸に分布する大型もしくは中型種のクワガタムシはタランドゥスオオツヤクワガタ、メンガタクワガタ属 Homoderus、数種類のノコギリクワガタ属 Prosopocoilus、そして南端の地域に分布するマルガタクワガタ属 Colophon に限られており、それ以外のクワガタムシは小型種ばかりである[3]。タランドゥスオオツヤクワガタはアフリカでは最大のクワガタムシで、オス成虫の体長は最大で91.5 mm(2005年時点)に達する[1]。
タランドゥスオオツヤクワガタは1種のみでオオツヤクワガタ属を形成する(単型属)[1]。学名の属名 Mesotopus はギリシャ語で「中央の」を意味する mesos と「場所」を意味する topus からの造語と推察される[4]。また種小名の tarandus はラテン語におけるトナカイの古名である tarandrus に由来する[5][6]。基準産地はシエラレオネ[1]。
形態
馬場勝によれば成虫の体長は、オスで45.5-91.5 mm、メスで39.0 - 56.0 mmである[1]。一方でMr.セーブバレイは「レギウス型」(後述)の最大個体は体長93 mmであり、その標本が日本国内にあることを確認していると述べている[7]。成虫は雌雄ともに全身が黒色で、エナメル状の光沢があるが、稀に赤みを帯びる個体もいる[1]。また、体は幅広くて厚みがあり、全体的に重厚感がある[8]。タランドゥスオオツヤクワガタの成虫は、その特徴的な体色と光沢から、同定は容易である[1]。また、メスの形態はオウゴンオニクワガタ属 Allotopus の種のメスのそれにやや似ており、飼育下ではオウゴンオニクワガタのオスとタランドゥスオオツヤクワガタのメスが交尾して産卵したこともあるが、孵化はしなかったという話がある[8]。大型のオス成虫の大顎は、中央で強くC字状に湾曲する型 tarandus と、あまり湾曲しない型 regius が知られている[8]。大顎は上から見る場合と横から見る場合で印象が異なり、大型のオス成虫の中でも大顎が強く湾曲する型の場合、大顎の基部から山なり状になり、鋭く先端へ抜けていく形になるという[9]。大顎は先端が三叉状に分岐している[8]。また大顎の間(頭楯前縁部中央)には、先端が二又になった幅広いY字状の隆起があり、その左右にも先端が丸くなった2つの小さな隆起がある[8]。大顎の挟む力は大型のヒラタクワガタ以上の力を持つと言われる。その名前と体色から、東南アジアに生息するツヤクワガタ属の一種とも間違われる事もあるが、ツヤクワガタ類とは異なる種類となる。
オスは大顎の間の頭循部分が二叉に太く盛り上がっており、他のクワガタムシ(一部ミヤマクワガタ属(ヘルマンミヤマクワガタ等)や、ルニフェルホソアカクワガタ。)が、そうした頭循が下向きになるのに対し、本種は上向きになっていて、これが和名の由来(クロツヤオオツノクワガタ(黒艶大角鍬形虫))ともなっている。
前脚から後ろ脚にかけて全てに2-4本の鋭い棘が生えており、こうした全ての脚に棘を持つ脚部形状は、ミヤマクワガタやチリクワガタ等とも共通している。また,挟む力がオスメス共にとても強く,飼育する際には注意が必要である。
生態
タランドゥスオオツヤクワガタはアフリカ西部から中部にかけて分布し[7]、標高1000 m以上の森林に生息する[10]。コンゴ共和国やカメルーンでは標高1500 m程度に生息する[11]。一方でアフリカ中部からコンゴ盆地周辺にかけては標高300 - 800 mに分布するとする文献もある[12]。コンゴ共和国の生息域の場合、2002年から2004年の3年間の平均最高気温は年間を通じて25 - 26℃、平均最低気温は同じく年間を通じて12 - 15℃、2000年から2004年の5年間の平均雨量は最多が4月と10月の15 cm、最少が7月の2 cmであった[11]。このようにアフリカの生息域は雨季と乾季が分かれており、昆虫は雨季に発生するため、タランドゥスオオツヤクワガタの成虫は雨季とその後の少しの間しか発生できないという[11]。成虫は基本的に夜行性であるが、日本に分布するオオクワガタほどではないという[11]。日中、オスは木の葉の裏に隠れるなどしており、またメスは交尾直後に産卵活動に入るためか、樹液でも灯火採集でもほとんど採集できないという[11]。また、樹上にいる成虫は人間の気配などを感じるとすぐに足を縮めて樹から落下するが、木の根元は草が生い茂っているため、一度落下した成虫を見るけることは困難になる[11]。タランドゥスオオツヤクワガタの成虫は樹液に集まるが、その樹液を出す気を見つけるためには、ハナムグリの存在が目印になる[13]。ムチ等の樹液を吸う。同種間だけでは無く、他のクワガタムシや、ケンタウルスオオカブトとも闘争を行うが、アフリカ最大種という事もあって、体躯や力で劣る他のクワガタムシを圧倒するケースが殆どである。原産国は治安が悪いところも多く、またコンゴ民主共和国では森林破壊が深刻である[14]。
オスの成虫は頭部の背面側の付け根と胸部の前縁の内側を擦り合わせ[15]、「ギュー、ギュー」という低い威嚇音を出したり[16]、手で触られると体全体を携帯電話のバイブレーションモード時のように小刻みに震わせたりする習性がある[8]。このように発音する時、頭部を上下に振動させている[15]。このように成虫が発音するクワガタムシは非常に珍しく、タランドゥスオオツヤクワガタ以外にヒョウタンクワガタ Nigidionus parryi (Bates, 1866) が知られているが[16]、ヒョウタンクワガタのそれはタランドゥスオオツヤクワガタの威嚇音とは違い、通信手段である可能性が指摘されている[2]。筋肉量の関係からか、このような発音は大型のオス成虫ほど大きく聞こえるという[15]。またメス成虫はこのような人間に聞こえるような音を出すことはないが、興奮するとオス成虫と同様に頭を振動させる[15]。ヒラタクワガタやフタマタクワガタのような好戦的な種類ではないが、決して大人しい性格という訳では無く、いざ戦いとなると、強力な大顎を振りかざしたり、挟み込んだりして激しく闘争し、一歩も退かない面も見せる。日本における飼育下では、タランドゥスオオツヤクワガタの成虫の寿命は1年から1年半程度とみられている[17]。
日本における飼育下では、成虫は昆虫ゼリーやバナナを食べる[18]。飼育下では、メス成虫は一般的に販売されている霊芝やシイタケなどの廃ホダ木(キノコの原木栽培で収穫を終えた朽ち木)ではなく、菌に活力のある朽ち木、すなわち活きたキノコの菌が活動している朽ち木に好んで産卵する傾向が強く、そのために「人工カワラ材」「生カワラ材」というカワラタケの菌を人工的に植えた朽ち木が市販されている[19]。卵は産卵された直後は小豆色だが、産卵翌日には緑色に変化し、23 - 26℃で管理した場合、産卵からおよそ1か月程度で孵化すると思われる[20]。ノコギリクワガタ属などの幼虫育成に適した発酵マットや、ヒラタケの菌糸ビンをタランドゥスオオツヤクワガタの幼虫の餌として与えた場合、幼虫の死亡率が高かったり、無事に羽化しても小型の成虫にしかならなかったが、カワラタケの菌糸ビンでは安定して大型の成虫を育成することができたとする報告がある[21]。日本にタランドゥスオオツヤクワガタの生きた個体が輸入され始めた当時、カワラタケを用いた菌糸ビンはヒラタケの菌糸ビンに比べ、温度管理のしやすさや日持ちの良さなどで劣るため、ほとんど見られなかったが、2005年時点ではタランドゥスオオツヤクワガタやオウゴンオニクワガタ属 Allotopus の幼虫飼育にはそれぞれカワラタケの菌糸ビンを利用することが効果的であると判明したことから、徐々にカワラタケの菌糸ビンを扱う店も増えていたという[22]。またタランドゥスオオツヤクワガタの幼虫には耐寒性もあるようで、8月にメス成虫を投入した産卵用の飼育ケースを12月頭まで屋外に放置していたが、最低気温が5℃程度になっていたにもかかわらず、体重20 g程度に生育した3齢幼虫が生存状態で5頭出てきたという記録がある[23]。また比較的高温にも強く、夏に気温30℃を超える部屋で飼育した場合でも何度も幼虫を得ることができたという[24]。ただし、幼虫飼育に用いられるカワラタケの菌糸ビンは25℃を超える環境に置かれると劣化が早くなる[23]。1齢幼虫後期から2齢幼虫の段階で産卵木から取り出した幼虫は、菌糸ビンに投入してから約2か月で3齢幼虫に変態する{Sfn|吉田直人|2005|p=30}}。
分類
タランドゥスオオツヤクワガタは1787年、アフリカ西部のシエラレオネで得られたオス成虫の標本に基づき、ミヤマクワガタ属 Lucanus の一種 Lucanus tarandus Swederus, 1787 として新種記載された[1]。その後、タランドゥスオオツヤクワガタは1845年、Hope と Westwood により、新属 Mesotopus の基準種として Mesotopus に再分類された[1]。またアフリカ西部のギニアから得られたオス成虫の標本に基づき、Mesotopus regius Möllenkamp, 1896 が記載されており[1]、この種をレギウスオオツヤクワガタという和名で呼称する場合もある[8]。しかし、この regius は後に tarandus と同一個体群のオスの大型個体であることが判明し、regius は tarandus のシノニム、もしくは大型個体のうち大顎の湾曲が弱くなる型 form. regius と位置づけられるようになった[1]。
form. regius (レギウス型)はシエラレオネやギニアなど、分布の西限域からカメルーンにかけてのアフリカ西部に分布する個体群の大型個体のことであり、tarandus に比べると、体型がやや細く、大顎も湾曲が弱いという特徴があるが、小型のオス成虫やメス成虫には大きな変異はない[1]。一方でコンゴ民主共和国周辺の[8]アフリカ中部に分布する個体群は大型のオスでも、通常はレギウス型にはならず、体型が太く、大顎の湾曲が強いが、アフリカ中部のデータが付された標本でもレギウス型の特徴が見られる標本も確認されており[1]、tarandus と regius の分布境界線は不明である[25]。
人間との関わり
タランドゥスオオツヤクワガタは2008年時点で日本に輸入され、愛好家によってペットとして飼育されている[26]。2006年時点では、タランドゥスオオツヤクワガタはクワガタムシの愛好家の間で大人気の種であると評されていた[27]。日本への輸入が開始された当時は飼育方法が解明されておらず、飼育が困難なクワガタムシであると評されていたが、愛好家の努力によって飼育方法が確立され[26]、オウゴンオニクワガタ属 Allotopus の種のそれと同様、メス成虫は人工霊芝材に産卵し[28]、幼虫はカワラタケの菌糸ビンで生育する[29]ことが判明した。
参考文献
- 小出石晶「メソトプス・タランドス、レギウスの飼育法」『KUWATA』第6巻第1号、ワイルドプライド、2004年3月5日、54-59頁、ISBN 978-4901376129。 - 通巻:第18号(2004年3月号)。
- 馬場勝「馬場勝のタランドゥス&オウゴンオニ大図鑑」『BE・KUWA』第14号、むし社、2005年3月22日、8-17頁。 - 『月刊むし』2005年3月増刊号(2005年冬号)。
- Mr.セーブバレイ「タランドゥスオオツヤクワガタに関する情報」『BE・KUWA』第14号、むし社、2005年3月22日、18-20頁。 - 『月刊むし』2005年3月増刊号(2005年冬号)。
- 吉田直人「81.0mmギネスブリーダーによるタランドゥス完全飼育法?」『BE・KUWA』第14号、むし社、2005年3月22日、24-30頁。 - 『月刊むし』2005年3月増刊号(2005年冬号)。
- 大西正之「野外♀が45頭以上産卵!! タランドゥス産卵法 タランドゥスの卵は小豆色?!」『BE・KUWA』第14号、むし社、2005年3月22日、32-37頁。 - 『月刊むし』2005年3月増刊号(2005年冬号)。
- 鈴木知之『外国産クワガタ・カブトムシ飼育大図鑑』(初版第1刷)世界文化社、2005年6月20日。ISBN 978-4418059027。 NCID BA72871092。国立国会図書館書誌ID:000007815149・全国書誌番号:20837299。
- 土屋利行 著、藤田宏 編『初めて飼うクワガタムシ』むし社、2006年7月27日。 - 『月刊むし』2006年8月増刊号。
- 平嶋義宏「クワガタムシの学名解説」『月刊むし』第438号、むし社、2007年8月1日、30-38頁。 - 「クワガタ特集号・19」。
- 土屋利行 著、藤田宏 編『初めて飼うクワガタムシ』むし社、2008年7月24日。国立国会図書館書誌ID:026977789・全国書誌番号:22663954。 - 『月刊むし』2008年8月増刊号。
- 藤田宏 著「Genus Mesotopus Hope et Westwood, 1845 オオツヤクワガタ属」、(監修者)水沼哲郎・永井信二・鈴村勝彦 編『世界のクワガタムシ大図鑑』 6巻、むし社〈月刊むし・昆虫大図鑑シリーズ〉、2010年12月20日、171頁。ISBN 978-4943955061。 NCID BB04284986。国立国会図書館書誌ID:026998699・全国書誌番号:22674089。
- 全国昆虫施設連絡協議会、田村隼人(東京都多摩動物公園昆虫円飼育展示係)「1章 みんなの“推し虫” > タランドゥスオオツヤクワガタ」『昆虫館スタッフの内緒話 昆虫館はスゴイ!』(第1刷発行)repicbook、2021年8月24日、48-51頁。ISBN 978-4908154317。 NCID BC08655872。国立国会図書館書誌ID:031550306・全国書誌番号:23567342。
外部リンク
- 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 馬場勝 2005, p. 8.
- 1 2 鈴木知之 2005, p. 200.
- ↑ 全国昆虫施設連絡協議会 & 田村隼人 2021, pp. 49–50.
- ↑ 平嶋義宏 2007, p. 34.
- ↑ 平嶋義宏 2007, p. 35.
- ↑ 平嶋義宏『生物学名辞典』東京大学出版会、2007年7月20日初版。41頁「第1章 古典語の変化語尾 > 第1節 主格の語尾 1-030-13」。
- 1 2 Mr.セーブバレイ 2005, p. 18.
- 1 2 3 4 5 6 7 8 藤田宏 2010, p. 171.
- ↑ 全国昆虫施設連絡協議会 & 田村隼人 2021, p. 50.
- ↑ Mr.セーブバレイ 2005, pp. 18–19.
- 1 2 3 4 5 6 Mr.セーブバレイ 2005, p. 20.
- ↑ 小出石晶 2004, p. 56.
- ↑ Mr.セーブバレイ 2005, pp. 19–20.
- ↑ Mr.セーブバレイ 2005, p. 19.
- 1 2 3 4 全国昆虫施設連絡協議会 & 田村隼人 2021, p. 51.
- 1 2 鈴木知之 2005, p. 108.
- ↑ 大西正之 2005, p. 36.
- ↑ 吉田直人 2005, p. 25.
- ↑ 吉田直人 2005, pp. 26–27.
- ↑ 大西正之 2005, p. 34.
- ↑ 吉田直人 2005, pp. 28–29.
- ↑ 吉田直人 2005, p. 29.
- 1 2 吉田直人 2005, p. 30.
- ↑ 吉田直人 2005, p. 28.
- ↑ 全国昆虫施設連絡協議会 & 田村隼人 2021, p. 49.
- 1 2 土屋利行 2008, p. 78.
- ↑ 土屋利行 2006, p. 32.
- ↑ 土屋利行 2008, p. 80.
- ↑ 土屋利行 2008, p. 81.