フッ化水素酸

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フッ化水素酸
物質名
識別情報
3D model (JSmol)
ChEBI
ChemSpider
EC番号
  • 231-634-8
RTECS number
  • MW7875000
UNII
性質
HF (aq)
外観 無色の液体
密度 1.15 g/mL (for 48% soln.)
酸解離定数 pKa 3.17[2]
危険性[3]
GHS表示:
CorrosiveAcute Toxicity
Danger
H280, H300+H310+H330, H314
P260, P262, P264, P270, P271, P280, P284, P301+P310, P301+P330+P331, P302+P350, P303+P361+P353, P304+P340, P305+P351+P338, P310, P320, P321, P322, P330, P361, P363, P403+P233, P405, P410+P403, P501
NFPA 704(ファイア・ダイアモンド)
特記無き場合、データは標準状態 (25 °C [77 °F], 100 kPa) におけるものである。
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フッ化水素酸(フッかすいそさん、英語: hydrofluoric acid)は、フッ化水素の水溶液である。俗にフッ酸(フッさん)と呼ばれ、工業的に重要であるが、触れると激しく体を腐食する危険な毒物としても知られる。

概要

フッ化水素酸はフッ化水素と共に、フッ素を含む多くの薬品、重合体(例:テフロン)および合成繊維の前駆体である。

濃フッ化水素酸は一般にガラス (SiO2) と反応して溶かすことがよく知られている。

ガラスを腐食する性質のため、フッ化水素酸はポリエチレンまたはテフロン容器に入れて保存される。また、フッ化水素酸は多くの金属も腐食する。特に硝酸との混合酸は酸に対し耐食性の高いタンタルなども溶解する。

通常は47〜48% (d=1.15 g cm−3, 27.6 mol dm−3) 程度の水溶液として市販され、毒物及び劇物取締法の医薬用外毒物に指定されている。

製法

フッ化カルシウムを含む蛍石に濃硫酸を加えて加熱すると、反応してフッ化水素を生じるので、これを水に溶解する。

濃縮ウランである六フッ化ウランを加水分解して、ウラン燃料としての酸化ウラン(IV)とする工程では多量のフッ化水素酸が副生する[4]。

酸性

フッ化水素酸は水溶液中では他の酸と同じように解離する。他のハロゲン化水素酸とは異なり希薄水溶液中では弱酸となる。

その電離平衡に対する熱力学的諸量は以下の通りである[5]。

−12.55 kJ mol−1 18.03 kJ mol−1 −102.5 J mol−1K−1

HF分子が接近したとき酸性度は次の平衡のため劇的に増加する。このためフッ化水素酸は通常の弱酸とは異なり、0.1 mol dm−3程度以上の濃度になると高濃度となっても電離度があまり減少しない。

アニオンは、水素−フッ素間の強力な水素結合によって安定化される。このイオンは純液体フッ化水素のみならず、水溶液中でも高濃度であれば生成する。

用途

フッ化水素酸の鉄道輸送コンテナ

危険性

骨や血液中のカルシウムイオンと容易に結合することにより、骨を侵し低カルシウム血症の原因ともなる。応急処置には、接触部位の流水洗浄ののちグルコン酸カルシウムが使用される。

主な事故・事件

  • 2013年1月と5月、韓国のサムスン電子華城事業場でフッ酸の漏出事故が相次いで発生し、合わせて1人が死亡、7人が負傷した[9]。
  • 2013年3月、静岡県でフッ酸を塗られた靴を履いた女性が、足の壊疽を起こし、5本の指すべてを切断する重傷を負う事件が起きた[10]。これは故意に塗られたもので、犯人は殺人未遂容疑で逮捕された[10]。その後、検察の判断で傷害罪に切り替えて起訴され[11]、同罪で有罪判決を受けた。
  • 2015年8月、神戸市東灘区の民間の産業廃棄物処理施設で、山口組総本部からごみとして出されていたポリタンクに入っていたフッ化水素酸の液体から気化したガスを吸って、作業員ら14人が軽症を負う事故が発生した[12]。
  • 2020年6月、東京都千代田区神田須田町2丁目の路上でフッ化水素酸と思われる液体250mLが路上にこぼれていた。そのため、周囲約100mを通行止めにし、化学防護服を着用した東京消防庁の化学機動中隊員らが2時間以上かけて処理した。けが人はいなかった[13]。
  • 2026年8月27日、北海道札幌市の北海道大学理学部の研究室で[注 1]、大学院生3人のうち1人がフッ化水素酸を頭から浴びて死亡、救助にあたった2人が軽傷を負った。事故があった理学部の研究棟は一時閉鎖され、除染作業が行われた[15]。

脚注

注釈

  1. ↑ 当初の新聞発表では実験中であったとされたが、後に修正されている[14]。

出典

  1. ↑ Favre, Henri A.; Powell, Warren H., eds (2014). Nomenclature of Organic Chemistry: IUPAC Recommendations and Preferred Names 2013. Cambridge: The Royal Society of Chemistry. p. 131. ISBN 9781849733069
  2. ↑ Harris, Daniel C. (2010). Quantitative Chemical Analysis (8th international ed.). New York: W. H. Freeman. pp. AP14. ISBN 978-1429263092
  3. ↑ “Hydrofluoric Acid”. PubChem. National Institute of Health. 2017年10月12日閲覧。
  4. ↑ 村田徳治『新訂・廃棄物のやさしい化学 第3巻 廃酸・廃アルカリ・汚泥の巻』日報出版、2004年、83-91頁。ISBN 978-4-89086-235-1。
  5. ↑ D.D. Wagman, W.H. Evans, V.B. Parker, R.H. Schumm, I. Halow, S.M. Bailey, K.L. Churney, R.I. Nuttal, K.L. Churney and R.I. Nuttal, The NBS tables of chemical thermodynamics properties, J. Phys. Chem. Ref. Data 11 Suppl. 2 (1982)
  6. ↑ 「レブライト 白木のシミ抜き」 ミヤキ産業株式会社
  7. ↑ 『毎日新聞』1982年4月22日・24日付(縮刷版)
  8. ↑ 「昭和57年(1982年)4月22日(水曜日) 読売新聞」。2026年2月5日閲覧。初出:『読売新聞』1982年(昭和57年)4月22日(水曜日)
  9. ↑ 「三星(サムスン) 再びフッ酸事故…3ヶ月ぶり‘同じ場所・同じ原因’」『ハンギョレ』2013年5月2日。2026年2月5日閲覧。
  10. 1 2 “靴に毒、同僚女性が足の指切断。殺人未遂容疑で男逮捕”. 朝日新聞. 朝日新聞社. 2013年3月28日. 2013年3月28日時点のオリジナルよりアーカイブ. 2013年3月29日閲覧.
  11. ↑ “「女性の靴に毒」で同僚男を起訴 地検沼津支部、傷害罪で”. 日経新聞. 日本経済新聞社. 2013年5月8日. 2026年2月5日閲覧.
  12. ↑ “山口組のごみから猛毒のフッ化水素検出、14人軽症-山口組総本部家宅捜索へ”. 産経新聞. 産経新聞社. 2015年8月25日. 2015年8月25日時点のオリジナルよりアーカイブ. 2015年8月25日閲覧.
  13. ↑ “猛毒「フッ化水素酸」か、こぼれ異臭 東京・秋葉原の路上、けが人なし”. 毎日新聞. 毎日新聞社. 2020年6月4日. 2026年2月5日閲覧.
  14. ↑ “北大で実験中に薬品浴びて大学院生死亡 猛毒の「フッ化水素酸」”. 毎日新聞. 毎日新聞社 (2026年8月27日). 2026年8月27日時点のオリジナルよりアーカイブ。2026年8月28日閲覧。
  15. ↑ 「【最新】「事故を厳粛に受け止め、原因究明と安全確保に取り組む」北海道大学で“フッ化水素酸”を浴び院生1人死亡・2人軽傷…北大理学部がコメントを発表〈札幌市〉」『北海道ニュースUHB』北海道文化放送、2026年8月28日。2026年8月28日閲覧。

関連項目