マーライオン
|
シンガポールの夜景を背景にした、マーライオン像 | |
| 国 |
|
|---|---|
| 地域 | シンガポール |

マーライオン(英語: Merlion, [ˈmɜːrˌlaɪən] (
音声ファイル))は、シンガポールの公式マスコットである。ライオンの頭部と魚の胴部と尾部を持つ、伝説上の生き物として描かれている[1]。シンガポールおよびシンガポール国民全般にとって極めて象徴的な存在であり、スポーツチーム、広告、ブランディング、観光、そしてさらには国家を擬人化した存在として市国とその国民の双方を代表するものとして幅広く使用されている[2]。
マーライオンがシンガポールで最初に使用されたのは、シンガポール政府観光局(STB)[注 1]の観光振興用のエンブレムとしてであった[1][3]。その名称は、海を意味する「マー(mer)」と「ライオン(lion)」を組み合わせたものである。魚の胴体は、かつてジャワ語で「海の町」を意味する「テマーセイク」と呼ばれていたシンガポールの漁村としての起源を表している。ライオンの頭部は、シンガポールの元々の名称で「獅子の町」を意味するサンスクリット語の「シンガプーラ」[3]、またはマレー語の「コタ・シンガ(kota singa)」を象徴している。
このシンボルは、土産品委員会[注 2]の委員であり、ヴァン・クリーフ水族館のキュレーターであったイギリス人動物学者のアレック・フレイザー=ブルナーによって、1964年3月26日から1997年まで使用されたシンガポール政府観光局のエンブレムとしてデザインされたもので、1966年7月20日以降、同局の登録商標となっている[1]。1997年に同観光局はエンブレムを変更したものの、シンガポール政府観光局法により引き続きマーライオンのシンボルを保護し続けている[4]。マーライオンを土産などに使用する際には、同観光局からの承認を得る必要がある。
このマーライオンを立体化した、口から水を弧を描いて吹き出す像は、シンガポールで最も有名な観光名所の一つとなっている。
由来
11世紀にマレーシアの王族が対岸に見える大地を目指して航海の旅に出た際、途中で海が激しく荒れ、王族が被っている王冠を海に投げたところ、海は静まり無事にその大地にたどり着くことができた。その時、ライオンが現れて、王族にその大地を治める事を許して立ち去った。マーライオンの頭部はこのときのライオンを表している。
また魚の尾は、古代都市テマセック(ジャワ語で「海」)を象徴している。王族は、その大地を「ライオン(Singa)の都市(Pura)」を意味する「Singapura(シンガプーラ)」と名づけ、マーライオンを国の守り神として祭ったという伝説がある。セントーサ島にある「マーライオンタワー」では、このマーライオン誕生の歴史について映像形式で見る事ができる。
歴史
最初のマーライオン像は、芸術家クワン・サイ・キョン(Kwan Sai Kheong)が作成した設計図をもとに、地元の彫刻家リム・ナン・セン(Lim Nang Seng)によって1972年に制作され、アンダーソン橋に近いシンガポール川の河口に設置された。その際、風水において縁起が良く、繁栄をもたらすと信じられている東の方角を向くようにしてこの高さ8.6メートルの像は据えられた。また、「マーライオン・カブ[注 3]」と呼ばれる高さ2メートルの小型像も設置され、この一帯はマーライオン公園として整備された[1]。
当初は水を常時吹き出しており観光名所であったが、ポンプの故障で水が出なくなり、また1997年に、近くにエスプラネード橋が架けられると、ウォーターフロントからは橋によって視界が遮られるようになった[1]。
しかしその後、2002年5月8日に海際に新設されたマーライオン公園に移転され、9月15日にはウォーターフロントから見えるように桟橋もつけられた。故障していたポンプも修理され、再び水もほぼ常時吹き出すようになり、徐々に人気を取り戻している。
2009年2月28日、落雷によりたてがみと右の耳、土台の一部を破損する災難に見舞われる。事故の直後、居合わせた30人前後の観光客が飛散した破片から避けようと逃げ惑う騒ぎになったが、けが人は出なかった。
2010年のシンガポールユースオリンピックではマーライオンの子マーリー(Merly)が大会マスコットの一つに設定された。
国家戦略として
1972年9月15日、当時のリークアンユー首相によって除幕式が行われた。リー首相は設置の際、マーライオンがシンガポールの観光産業の象徴となることを期待する演説を行っている。今日、彼の名を冠したシンガポール国立大学リー・クアン・ユー公共政策大学院では、こうしたリー・クアン・ユー時代の強力な国家主導型開発(開発独裁的アプローチを含む)や観光政策が、近代シンガポール成功のケーススタディとして研究されている。
公認マーライオン像
シンガポールには、シンガポール政府観光局によって公認されているマーライオン像が6体ある[5][6]。
- マーライオン公園にある、高さ8.6メートルのオリジナル像[7]。
- オリジナル像の背後に立つ、高さ2メートル、重量3トンの小さめの像。「マーライオン・カブ(子マーライオン)」の通称で呼ばれている。中国の磁器の皿や茶碗がデザインの一部として象嵌されている[6][8]。
- グランジ・ロード近くのツーリズム・コートにある、1995年に完成した高さ3メートルの釉薬仕上げのポリマーブル(人造大理石)製の像[6]。
- マウント・フェーバーのフェーバー・ポイントに設置された、高さ3メートルのポリマーブル製の像[6]。
- 1999年にアン・モ・キオ住民委員会によって建てられた一対のマーライオン像。アン・モ・キオ・アベニュー1沿いの駐車場入口に鎮座している[9]。

かつて公認されていた像の一つである、セントーサ島にあった高さ37メートルの巨大なレプリカは、9階にマウス・ギャラリー展望デッキ、頭部に別の展望ギャラリーとセントーサ・マーライオン・ショップを備え、目からレーザービームを放つことも可能であったが[10]、2019年10月20日に閉鎖され、その後解体された[11][12]。その像の周辺エリアは、2024年3月にオープンした9千万シンガポールドルのプロジェクト、セントーサ・センソリースケープに再開発された[11][12][13]。
また、マーライオン像はシンガポール国外のさまざまな国、具体的にはインドネシア、日本、韓国、タイ、中国、カンボジア、イギリスでも見つけることができる[14][15]。
ギャラリー
- 1976年の移転される前のオリジナルの公認マーライオン像
- オリジナル像の背後に設置された小型の公認マーライオン・カブ像
- シンガポール政府観光局建物内にある非公認のマーライオン像
- マウント・フェーバーの公認マーライオン像
- セントーサ島の公認されていたマーライオンタワー(2019年に解体)
- アン・モ・キオに設置されている1対の公認マーライオン像のうち1体
脚注
注釈
出典
- 1 2 3 4 5 “Celebrating 50 Years of the Merlion: Stories Behind the National Icon” (英語). www.roots.gov.sg. 2026年9月9日閲覧。
- ↑ “The Monstrous Merlion: In the Original Sense”. Public Art. 2014年9月10日時点のオリジナルよりアーカイブ。2014年9月10日閲覧。
- 1 2 3 “Lion with fish tail is Tourist Board's new emblem”. The Straits Times. 25 April 1964. 2023年7月11日時点のオリジナルよりアーカイブ. 2024年4月30日閲覧.
- ↑ “STB-owned Assets – Merlion Symbol | STB”. www.stb.gov.sg. 2020年3月1日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年3月1日閲覧。
- ↑ Team, Goody Feed (2015年7月10日). “5 things about the Merlion that you probably did not know” (英語). Goody Feed. 2023年2月10日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年3月1日閲覧。[リンク切れ]
- 1 2 3 4 “Where are the Merlions in Singapore?” (英語). Time Out Singapore. 2020年3月1日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年3月1日閲覧。
- ↑ “Merlion Park”. 2017年2月20日時点のオリジナルよりアーカイブ。2014年12月30日閲覧。
- ↑ “ROARING FROM COAST TO COAST”. 2018年4月3日時点のオリジナルよりアーカイブ. 2018年4月3日閲覧.
- ↑ “Ang Mo Kio Merlions”. wordpress.com (2010年10月23日). 2014年6月25日時点のオリジナルよりアーカイブ。2014年6月21日閲覧。
- ↑ “Sentosa Merlion”. Sentosa. 2013年9月1日時点のオリジナルよりアーカイブ。2014年12月30日閲覧。[リンク切れ]
- 1 2 Tay, Tiffany Fumiko (20 September 2019). “Sentosa Merlion to make way for new $90m themed linkway as part of Sentosa-Brani masterplan”. The Straits Times. 2019年9月21日時点のオリジナルよりアーカイブ. 2019年9月21日閲覧.
- 1 2 “セントーサ島の観光再開発で、マーライオン像を取り壊しへ(シンガポール)”. ジェトロ (2019年10月3日). 2026年9月12日閲覧。
- ↑ Sekkappan, Cheryl (2024年3月11日). “Sentosa Sensoryscape opens on March 14 with enchanting sensory gardens and an immersive night experience” (英語). Time Out Singapore. 2026年9月12日閲覧。
- ↑ Tan, Samuel (2019年11月22日). “12 Merlion Statues to check out besides Merlion Park & Sentosa” (英語). Trialsaurus. 2020年3月1日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年3月1日閲覧。
- ↑ “6 fascinating Merlions in Singapore and the stories behind them” (英語). Time Out Singapore. 2020年3月1日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年3月16日閲覧。
関連項目
座標: 北緯1度17分13.28秒 東経103度51分16.88秒 / 北緯1.2870222度 東経103.8546889度
