ラスクンブレス天文台

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ラスクンブレス天文台
チリのセロ・トロロ汎米天文台にあるLCOの望遠鏡
設立 2005年9月
設立者 ウェイン・ロジング
種類 非営利団体(501(c)(3))
所在地
座標 北緯34度25分58秒 西経119度51分47秒 / 北緯34.4327度 西経119.8630度 / 34.4327; -119.8630座標: 北緯34度25分58秒 西経119度51分47秒 / 北緯34.4327度 西経119.8630度 / 34.4327; -119.8630
重要人物 リサ・ストーリー・ロンバルディ(代表と天文台長)、ラース・ビルドステン(英語版)、ドロシー・ラーゲイ、マイケル・スクルートスキー(取締役員)
ウェブサイト www.lco.global
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ラスクンブレス天文台(ラスクンブレスてんもんだい、英語: Las Cumbres Observatory、LCO)またはラスカンブレス天文台は、アップル社やマイクロソフトなどに勤めていたエンジニアのウェイン・ロジング(英語版)が設立した非営利団体および天文台ネットワークである[1]。

LCOは大小様々な多数の望遠鏡を、地球上の南北半球の様々な経度帯に分布させて所有・運用しており、監視を要する天体については望遠鏡をリレーさせながら24時間以上連続して観測することが可能である。 2026年現在、世界7か所の天文台に2台の口径2m望遠鏡、13台の1m望遠鏡、12台の0.4m(現在は0.35m)望遠鏡を保有している[2]。 このネットワークは、各望遠鏡の観測対象と観測スケジュールを最適に組み上げるソフトウェアによって、単一の1つの望遠鏡ネットワークとして動作する。

歴史

マクドナルド天文台で試験運用されるLCOの望遠鏡

ロジングは1993年に、大学や天文台、個人における望遠鏡や光学装置、観測装置の利用や改良の支援を目的としてLCOのオリジナルとなる組織を設立した。そして組織の目標を、グローバルな望遠鏡システムを構築することと定めた。そして2005年に、グローバル望遠鏡ネットワークとしてのLCOを設立した[3]。

LCOは最初に2台の2m望遠鏡を有しており、ハワイのマウイ島にあるハレアカラ天文台でフォークス北望遠鏡(FTN)、オーストラリア東部のサイディングスプリング天文台(SSO)でフォークス南望遠鏡(FTS)を運用していた。LCOはフォークス望遠鏡を建設したリバプールテレスコープテクノロジー社が経営困難にあると知り1ポンドで買収し、世界各地にロボット運用できる2m望遠鏡を追加する計画を立てた[4]。しかしその後数年間で、ロジングとLCOスタッフはそれよりもさらに多くの中小規模の望遠鏡を数多く世界各地に配置したほうが観測能力が高いことに気づいた。そしてLCOでは独自に1m望遠鏡を設計し、選定した観測地にこれらを設置する準備を進めてきた[5]。 同時に、より小さな0.4m望遠鏡を教育目的を主として設置する準備を進めた。

2012年から2013年にかけて、9台の1m望遠鏡が製作された[6]。これらは2012年4月にテキサス州のマクドナルド天文台に1台が[7]、2012年10月にチリのセロ・トロロ汎米天文台(CTIO)に3台が[8]、2013年2月に南アフリカのサザーランド(英語版)近郊の南アフリカ天文台(SAAO)に2台が[9]、その直後にはサイディングスプリング天文台に2台が設置された[10]。 サイディングスプリング天文台への設置中、2013年1月には天文台周辺が山火事の被害にあったが、建設中のドーム設備は無事だった[11]。

これらの導入が完了したあと、LCOはグローバル望遠鏡ネットワークとしての本格運用へ移行した。2013年には理事会が設立され代表者が選出された。本格的な科学運用は2014年5月1日に始まり、2台の2m望遠鏡と9台の1m望遠鏡からなるネットワークが単一の天文台として観測を始めた。0.4m望遠鏡の準備も進められた。

2015年から2016年にかけて、7台の0.4m望遠鏡が準備され、2015年5月に2台がカナリア諸島テネリフェ島のテイデ天文台に設置されたほか[12]、CTIO、SSO、ハレアカラ天文台にも順次設置された。

2016年時点でのLCOの望遠鏡配置

アメリカ国立科学財団(NSF)は2016年にLCOを中規模イノベーションプログラムを通じて支援し、アメリカの全ての機関に所属する天文学者がLCOネットワークを利用できるようにした。このプログラムの目標は、現在や将来の時間領域天文学サーベイで発見された天体を効率的に追跡研究できるように準備することである。この時点では、LCOは拠出規模を縮小していたため未使用の1m望遠鏡と0.4m望遠鏡が5台ずつ、LCO本部の倉庫に格納されたままになっていた[4]。

2017年にはハイジング・サイモンズ財団(英語版)から100万ドルの支援を受け[13]、この資金で2019年にマクドナルド天文台に1m望遠鏡が1台追加された[14]。さらにイスラエルのワイズ天文台にあった40年前の1m望遠鏡をLCOのネットワークに対応させ、NRES分光器を搭載した[4]。

2018年にはゴードン・アンド・ベティ・ムーア財団から488万ドルの支援を受け[15]、この資金で2021年にテイデ天文台に1m望遠鏡が2台追加された[16]。

なお2013年時点では、最終的に世界7か所に2台の2m望遠鏡、17台の1m望遠鏡、23台の0.4m望遠鏡を設置する計画を予定していたが、資金調達先の変化や経済情勢、観測地の変更などで現体制となっている[17]。

望遠鏡ネットワーク

観測地

セジウィックにある80cm望遠鏡ドーム

LCOネットワークは現在7地点で運用されており、そのそれぞれが研究用の天文台の敷地内に設置されている。

南半球では

北半球では

さらに中国のチベット西部にあるガリ地区のガリ天文台が追加され[18]、2台の1m望遠鏡が準備されている[19]。

なおLCOは技術テストのため、ゴリータの本部にも1m望遠鏡を設置しているほか、カリフォルニア州サンタイネス(英語版)のセジウィック自然保護区内にあるバーン天文台の80cm望遠鏡を使用しており[20]、様々な技術開発や試験運用を行っている[21]。

望遠鏡

フォークス北望遠鏡

2m望遠鏡はf/10の経緯台式架台に搭載されたリッチー・クレチアン式望遠鏡である[22]。

CTIOにある1m望遠鏡

1m望遠鏡はCリング式の赤道儀式架台に搭載されたf/7.95リッチー・クレチアン式望遠鏡であり、直径50分角の視野を有している[23]。

CTIOにある2基の旧0.4m望遠鏡(各建物画像下側)。画像上側にある4本の望遠鏡が同架されたユニットは全天自動超新星サーベイ(ASAS-SN)の装置。

0.4m望遠鏡として、かつてはミード社の16インチRCX望遠鏡として市販されている望遠鏡の鏡筒とSBIG製STL6303冷却CCDカメラを、1m望遠鏡の架台をスケールダウンさせた架台に積んで使用していた[24]。 しかしミードの望遠鏡のピントが合いにくく観測を何度もやり直すことがあったり、SBIGのカメラのサポートが終了したことから、Planewave社のDelta-Rho0.35m望遠鏡とQHY社のQHY600 CMOSカメラにすべて置き換えられた[25]。

観測装置

2m望遠鏡には光学撮像用のカメラと、低分解能光学分光器のFLOYDSが搭載されている[26]。

1m望遠鏡には26分角四方の画角を持つシニストロ光学撮像装置が搭載されているほか、2017年からは太陽系外惑星の観測を目的とする高分解能(R = 50,000)分光装置NRESが1m望遠鏡を有していた4地点の観測所に導入され、1m望遠鏡から光ファイバーで接続された[27]。

その他外部の研究機関の機器も受け入れており、東京科学大学のアストロバイオロジーセンターが開発した多色同時撮像装置MuSCATのうち3号機と4号機は南北のフォークス望遠鏡に搭載されている[28][29]。

運用

グローバル望遠鏡ネットワークは単一の天文台として運用されており、ユーザーは望遠鏡の口径と装置だけを選択することでスケジューラーソフトが自動で、いつどの望遠鏡で観測するかを設定する[30]。スケジューラーは突発天体の出現時などにはすべてのスケジュールを再調整し、更新は15分以内に完了する。さらに急を要する追跡観測のリクエストが生じた際はスケジュール内に割り込みを行うことで、リクエストから数分以内に観測を行うことができる[31]。 それぞれの望遠鏡は毎晩数回、自動でキャリブレーションを実行しピントや指向精度を調整する[32]。

望遠鏡や搭載装置は特殊な装置を除きすべて統一されているので、複数の望遠鏡や観測地のデータを統合することが容易となっている。取得したデータはLCO本部に送られた後、機器由来のノイズなどが除去処理されアーカイブされる。観測をリクエストしたユーザーはすぐにアーカイブにアクセスでき、1年後には観測データはすべて公開される[33]。

利用方法

CTIO 1m望遠鏡建物の入り口

このネットワークはLCO科学コラボレーションに所属している組織のメンバーである研究者が使用できる。LCOの望遠鏡をホストしている観測地を運用している組織の他、ネットワーク構築に貢献したいくつかの組織もコラボレーションに加わっている。2016年にNSFが中規模イノベーションプログラムに選定したためアメリカの天文学組織は全てLCOネットワークを利用できるようになった。このプログラムを通じてのLCOの利用は、アメリカ国立光学天文台によって何人かの査読で観測提案を審査することを通じて行われる。その他にもいくつかの研究者チームや個人がLCOの利用時間を購入してネットワークを使用しており、2m望遠鏡を除く望遠鏡が購入に対応している[34]。

研究

テイデ天文台の1m望遠鏡

LCOグローバル望遠鏡ネットワークの設計運用は、時間領域天文学に要求される独自の機能を提供できる。LCOネットワークは特定の天体や事象を継続的に監視したり、突発現象の発見アナウンスを受け取るとともに迅速に追跡観測に移る能力を有する。

LCOネットワークは超新星やその他の爆発を伴う突発現象、トランジットや重力マイクロレンズを通じた太陽系外惑星の観測、小惑星観測や活動銀河核の変動といった研究に用いられてきた。2017年にはLCOは天文学上の大きな発見において重要な役割を果たした。1つは重力波の光学対応天体の初めての発見で、LCO望遠鏡も捜索に加わった[35][36]。もう1つは連続爆発を起こす新型の超新星iPTF14hls(英語版)の追跡観測である[37][38]。

教育

LCOの1m望遠鏡のメンテナンス作業

LCOの発足当初から教育現場でネットワーク望遠鏡を活用させることは主要目的の1つだった。2017年にLCOはグローバルスカイパートナーと名付けた教育パートナーの募集を始めた[39]。 参加できるのは、ロボット望遠鏡を通じて多様な人々へ教育アウトリーチプロジェクトを行う団体である。2019年には学生や教師、一般市民を対象とするアメリカやヨーロッパ、サハラ以南のアフリカ、中東、オーストラリアに拠点を置くか、完全にオンラインで活動している20の団体がパートナーになった[40]。2019年の報告では、主に学校の教師や生徒であるのべ13000人がLCOの0.4m望遠鏡を用いたプログラムに直接参加した[41]。

LCOの教育チームは、LCOネットワークのデータを活用したり観測を始めようとする社内教育プログラムも行っている[42]。こうしたプログラムは誰もが天文学やロボット望遠鏡を用いた宇宙探検への興味を持てるようにデザインされている。 近年成功したプログラムの例として、アステロイドトラッカー[43]、太陽系外惑星エージェント[44]、セロルの宇宙探検などがある[45]。

ギャラリー

関連項目

出典

  1. ↑ “ラス・クンブレス天文台”. 天文学辞典. 日本天文学会. 2026年10月26日閲覧。
  2. ↑ “Sites”. Las Cumbres Observatory. 2026年10月26日閲覧。
  3. ↑ “About Us”. Las Cumbres Observatory. 2026年10月26日閲覧。
  4. 1 2 3 “Fast and curious”. Science. American Association for the Advancement of Science (2017年). 2026年10月26日閲覧。
  5. ↑ Brown, Timothy M.; Burleson, Ben; Crellin, M.; Vera, Johan (2009). Las Cumbres Observatory Global Telescope 1-meter Telescope Project: Design, Deployment Plans, Status.
  6. ↑ Foust, Jeff (2013年9月17日). “Las Cumbres achieves first light for 1-meter telescopes in Chile”. SpaceNews. 2026年10月26日閲覧。
  7. ↑ “First 1-meter installed at McDonald Observatory”. Las Cumbres Observatory. 2026年10月26日閲覧。
  8. ↑ “Our Telescope Network Expands: Cerro Tololo”. Las Cumbres Observatory. 2026年10月26日閲覧。
  9. ↑ “All Sutherland Telescopes See First Light”. Las Cumbres Observatory. 2026年10月26日閲覧。
  10. ↑ “Siding Spring Observatory”. Las Cumbres Observatory. 2026年10月26日閲覧。
  11. ↑ “Siding Spring Observatory Narrowly Escapes Major Damage During Wildfire”. Las Cumbres Observatory. 2026年10月26日閲覧。
  12. ↑ “Teide Observatory”. Las Cumbres Observatory. 2026年10月26日閲覧。
  13. ↑ “Las Cumbres Observatory Receives $1,000,000 Grant from the Heising-Simons Foundation to Build a New Telescope”. Las Cumbres Observatory. 2026年10月26日閲覧。
  14. ↑ “New Telescope Dedicated at McDonald Observatory”. McDonald Observatory (2019年10月). 2026年10月26日閲覧。
  15. ↑ “Las Cumbres Observatory Receives a $4,880,000 Grant from the Gordon and Betty Moore Foundation to Build Two New Telescopes”. Las Cumbres Observatory (2018年7月9日). 2026年10月26日閲覧。
  16. ↑ “Two New Telescopes See First Light in Tenerife”. Las Cumbres Observatory. 2026年10月26日閲覧。
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  18. ↑ “Xinhua”. Xinhua. 2026年10月26日閲覧。
  19. ↑ “Ali Observatory”. Las Cumbres Observatory. 2026年10月26日閲覧。
  20. ↑ “Sedgwick Observatory”. Las Cumbres Observatory. 2026年10月26日閲覧。
  21. ↑ “Site Development at Sedgwick and the Back Parking Lot”. Las Cumbres Observatory. 2026年10月26日閲覧。
  22. ↑ “2-meter Telescopes”. Las Cumbres Observatory. 2026年10月26日閲覧。
  23. ↑ “1-meter Telescopes”. Las Cumbres Observatory. 2026年10月26日閲覧。
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  32. ↑ Volgenau, Nikolaus; Boroson, Todd (2016). Peck, Alison B; Seaman, Robert L; Benn, Chris R. eds. “Two years of LCOGT operations: the challenges of a global observatory”. Proc. SPIE. Observatory Operations: Strategies, Processes, and Systems VI 9910: 99101C. Bibcode:2016SPIE.9910E..1CV. doi:10.1117/12.2233830.
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  41. ↑ “GSP-brochure-2019.PDF”. 2026年10月27日閲覧。
  42. ↑ Hayden, Tyler (1 September 2016). “Las Cumbres Observatory Connects Us to the Cosmos”. Santa Barbara Independent.
  43. ↑ “Asteroid Tracker powered by LCO”. www.asteroidtracker.lco.global. 2024年6月13日閲覧。
  44. ↑ “Agent Exoplanet | Las Cumbres Observatory”. agentexoplanet.lco.global. 2024年6月13日閲覧。
  45. ↑ “Serol's Cosmic Adventures | powered by Las Cumbres Observatory”. serol.lco.global. 2024年6月13日閲覧。

外部リンク