上側ヘテロダインの場合の図。発振周波数fOと受信電波の周波数fLの差が中間周波数。

中間周波数(ちゅうかんしゅうはすう、Intermediate Frequency:IF)とは、送信機や受信機の中間段階で送信信号あるいは受信信号の周波数を変換した周波数である。

スーパーヘテロダイン受信機

スーパーヘテロダイン受信機

スーパーヘテロダイン受信機では、局部発振器(ローカルオシレータ)と目的の信号を混合器で混合し、それぞれの周波数の差[注釈 1]を、濾波・増幅等の処理を施して使用する周波数を中間周波数という。中間周波数をミキサによりさらに別の中間周波数に変換する場合があり、その場合、第1中間周波数(1st IF)、第2中間周波数(2nd IF)、…と区別して呼ばれる。

従来の技術常識よりも低いIFを使ったシステムの場合、ローIFと呼ばれることがある。ダイレクトコンバージョン受信機の場合は、ゼロIFと呼ばれることがある。

一般的な周波数

中間周波数は設計の最初の段階で決定される。送信機や受信機の性能やコストに大きく影響するため、メーカにとっては戦略的要素をもつ。また、選定を誤ると後々スプリアス輻射や外来波との混信、局部発信機周波・中間周波の漏出などにより受信障害の原因になったり、他の機器に電波障害を及ぼしてしまうため、十分に検討して決定される。下記の古くから使われている一般的な周波数だが、これ以外にも設計者の意図[注釈 2]によって様々な周波数がある。最近は上述の戦略的要素も関係して、中間周波数の種類は増える傾向にある。

テレビ

AMラジオ

FMラジオ

MCA無線機(800MHz帯)

アマチュア無線機

衛星放送・通信衛星

減衰を防ぐため、アームの先に受信部とLNBダウンコンバータを一体化したものが設置されている

日本の衛星放送(BS)や通信衛星(CS)では、主にKuバンドの12 - Kバンドの20GHz帯が使われている。マイクロ波は減衰しやすい性質を持っており、またBS・CSの周波数は一般的な同軸ケーブルの周波数特性の限界をはるかに越えていることもあり、パラボラアンテナで受信したBS・CSの電波をそのまま同軸ケーブルに流すと実用にならないレベルの減衰が発生し、放送・通信が受信できなくなってしまう。そこで受信アンテナにLNB(Low Noise Block)ダウンコンバータ(BSコンバータ・CSコンバータとも言う)を設置して1.0 - 2.6GHzの低い周波数に変換することで、電波の減衰を抑える工夫がなされている。この周波数変換された電波のことをBS-IF(BS中間周波)、CS-IF(CS中間周波)と呼ぶ。日本で用いられている局部発振周波数は、BSでは偶数トランスポンダ番号の右旋円偏波では10.678GHz、奇数トランスポンダ番号の左旋円偏波では9.505GHzが用いられる。

電波障害

配線・端子の施工不良やLNB・ブースターの不具合により局部発信機周波・中間周波が外部に漏出すると、その機器や他の無線機器に電波障害を与えてしまうことがある(局部発信周波妨害・中間周波妨害)[7][8]。特に衛星放送の中間周波が外部に漏出して同じ周波数を使う携帯電話(XGP方式のソフトバンクULTRA SPEED)の通信速度低下の原因となったり[9]、WiMAX・衛星電話ワイドスター・無線LAN・気象レーダーなどに悪影響を及ぼすことが懸念されている[7][10]。また逆に外来波のアマチュア無線・携帯電話の電波や電子レンジのマイクロ波を拾ってしまい、これらと混信することによる受信障害(いわゆるTVI)[11][12]が起きた例も報告されている。

BS・110゜CSの中間周波数と、同帯域を使う無線システム。

歴史

アメリカでは1930年代からスーパーヘテロダイン受信機が普及し始めたが、中間周波数は標準化されていなかった。日本では戦前はスーパーヘテロダイン受信機は非常に高価であったが実用化されていた。初期の中間周波数は175kHzや250kHzであり、その後463 - 465kHzが採用されていた。

戦後、1947年にアトランティックシティで開催された国際電気通信連合会議で、中波の放送周波数が535 - 1605kHzに割り当てられた。同年、日本政府はGHQの勧告により再生検波受信機の製造販売を禁止したため、メーカーはスーパーヘテロダイン方式のラジオを製造しなければならなくなった。また、日本は1949年に国際電気通信連合に加盟したため、国際電気通信連合の定めた中波の放送周波数で中波放送を行わなければならなくなった。この一連の動きの中で1950年7月28日、JISで、AM放送受信機の中間周波数は455kHz、FM放送受信機の中間周波数は10.7MHzと規定された(JIS C 6004『放送聴取用受信機中間周波数』)。このJISが制定されると、各メーカーは中間周波数に455kHzを採用するようになった。

スーパーヘテロダイン方式の原理として中間周波数が高い方がイメージ比をよくするのに有利だが、当時の真空管の技術では、高い周波数では十分な増幅率や周波数安定度を実現するのは難しかった。

以下に、中波ラジオの中間周波数の変遷を示す。真空管回路の技術の向上などにより、年を追うごとにより高い中間周波数が実装されるようになったようすがうかがえる。

発売年メーカー名型番中間周波数[kHz]
1927Silver Marchall?112
1928RCARadiola 60180
1929Remler29130
1933Atwater Kent82Q170
Crosley158191.5
RCA140455
1934Crosley6V2181.5
Atwater Kent387264
1935ImperialCase 601262.5
1936Detrola7ZM370
Croseley516450
RCA7T1460
1937Kadette120448
Grunow572465
1938Philco38-655B470
1941Midwest181465
この節の以上の参考文献

脚注

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注釈

  1. ↑ AMラジオなどの低い周波数で使用する場合は、それぞれの周波数の和を使用することもある。
  2. ↑ 安価な真空管・コイル・半導体などの利用、局部発信機周波・中間周波の漏出による電波障害の軽減、電波の減衰対策など。

出典

  1. 1 2 鈴木一雄「TV受信機中間周波数の選定」『テレビジョン』第15巻第6号、映像情報メディア学会、1961年、358-361頁、doi:10.3169/itej1954.15.358、ISSN 03743470、NAID 110003677072。
  2. ↑ JIS C 6006-1960
  3. ↑ JIS C 6006-1974(2016年3月廃止)
  4. ↑ 成田昭「受信技術」『テレビジョン』第24巻第7号、映像情報メディア学会、1970年、543-553頁、doi:10.3169/itej1954.24.543、ISSN 03743470、NAID 110003695190。
  5. 1 2 JIS C 6004-1974(2019年3月廃止)
  6. ↑ “HFトランシーバー TS-950SDX”. JVC KENWOOD. 2014年11月27日閲覧。
  7. 1 2 情報通信審議会 情報通信技術分科会放送システム委員会「衛星放送用受信設備に関する技術的条件」の検討状況について」『総務省』 総務省、2017年5月19日
  8. ↑ 「よくある質問と答え BS・110度CS放送と他の無線サービス等との周波数共用」『共同受信施設についてのデジタル放送受信相談室』 日本CATV技術協会、2018年
  9. ↑ 「お知らせ BSデジタル追加チャンネルの放送によるモバイルデータ通信(ULTRA SPEED等)への影響について」『ソフトバンク』 ソフトバンクモバイル、2012年2月22日
  10. ↑ 国立研究開発法人情報通信研究機構「衛星放送受信設備との共用検討の状況」 (PDF) 『総務省 情報通信審議会情報通信技術分科会陸上無線通信委員会 気象レーダー作業班X帯サブ・ワーキング・グループ(第8回)』 総務省、2019年4月9日
  11. ↑ 「衛星放送に与える電波障害の原因と対策(1200MHz帯)」『日本アマチュア無線連盟』 日本アマチュア無線連盟、2011年
  12. ↑ 「700MHz帯の周波数再編と地デジテレビブースター対策について」『総務省の情報通信政策に関するポータルサイト』 総務省

関連項目

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