コンテンツにスキップ

共同体

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

共同体(きょうどうたい)とは、複数の人々が一定の関係や結合によって形成する社会集団・社会関係を指す概念である。日常語では、地域住民による地域社会など、相互の結び付きが比較的強い集団を指すことがある。一方、社会学では、特定の地域に限定されず、親族、近隣、友情、宗教、職業その他の関係によって形成される集団や社会関係を指す場合がある。

社会学においては、フェルディナント・テンニースが1887年の著書『ゲマインシャフトとゲゼルシャフト』(Gemeinschaft und Gesellschaft)で示した「ゲマインシャフト」(Gemeinschaft)と「ゲゼルシャフト」(Gesellschaft)の対概念が、共同体を考察する代表的な枠組みの一つとなっている。テンニースは、ゲマインシャフトを人々の相互の結合・肯定に基づく社会関係として、ゲゼルシャフトを目的や利益などを媒介とする社会関係として理論化した。テンニース自身は両者を純粋な概念として構成しており、現実の社会においては両者が混在し得るものとして扱っている。[1]

ゲマインシャフトとゲゼルシャフト

[編集]

ゲマインシャフト

[編集]

テンニースは、社会的な結合を構成する意思の形式として「本質意志」(Wesenwille)を論じ、これに対応する社会関係を「ゲマインシャフト」とした。ゲマインシャフトの典型として、血縁に基づく関係、近隣関係、友情などが挙げられ、これらでは成員相互の直接的な結び付きや共同生活が重視される。[1]

テンニースはゲマインシャフトについて、親族関係、近隣関係、友情をそれぞれ「血の共同体」「場所の共同体」「精神の共同体」として論じた。したがって、ゲマインシャフトは地域社会だけを意味するものではなく、地域的な結合以外も含む概念である。[1]

ゲゼルシャフト

[編集]

これに対してテンニースは、目的に応じて手段を選択する「選択意志」(Kürwille)に対応する社会関係を「ゲゼルシャフト」とした。ゲゼルシャフトでは、個人が他者や社会的結合を自己の目的を達成するための手段として捉える関係が重視され、交換、契約、市場などの関係がその典型として論じられる。[1]

テンニースは、ゲゼルシャフトを近代の都市、市場、資本主義的経済関係などと関連付けて論じている。したがって、ゲゼルシャフトは単に「利益を追求する組織」を意味するものではなく、目的・手段の関係を基礎とする社会的結合を分析する概念である。[1]

両概念の関係

[編集]

「ゲマインシャフト」と「ゲゼルシャフト」は、テンニースの純粋社会学における理論上の概念であり、現実の社会集団を完全に二分する分類ではない。テンニースの概念では両者は対照的な社会関係として構成されるが、現実の社会には両者の性格を併せ持つ関係や組織が存在し得る。[1]

テンニースは『ゲマインシャフトとゲゼルシャフト』において、共同生活、家族、村落、都市、経済、市場、法、政治などを取り上げ、ゲマインシャフトとゲゼルシャフトの概念を用いて社会関係の構造を分析した。[1]

地域共同体

[編集]

「共同体」は地域社会を指す場合がある。村落、近隣、地域住民の集団などは、地理的な近接性を基礎とする社会的結合という点で地域共同体として論じられることがある。

ただし、地域共同体とゲマインシャフトは同義ではない。ゲマインシャフトには親族や友情など地域以外の関係も含まれる一方、地域社会には行政制度、契約、経済活動などゲゼルシャフト的な関係も含まれ得る。このため、「地域共同体」は社会集団・地域社会を示す概念であり、「ゲマインシャフト」は社会関係を分析するための理論概念として区別することができる。

現代の用法

[編集]

現代では、英語の community の訳語として「共同体」または「コミュニティ」が用いられる。地域住民の集まりだけでなく、宗教、職業、文化、言語、趣味、オンライン上の交流など、共通の関係や属性を基礎とする集団を指す場合がある。

このため、共同体は必ずしも一定の地理的範囲を必要とする概念ではない。また、成員間の関係の強さや目的、制度化の程度も共同体によって異なる。

参考文献

[編集]
  • Ferdinand Tönnies, Gemeinschaft und Gesellschaft: Abhandlung des Communismus und des Socialismus als empirischer Culturformen, Fues, Leipzig, 1887.[1]
  • Ferdinand Tönnies, Community and Society: Gemeinschaft und Gesellschaft, translated and edited by Charles P. Loomis, Michigan State University Press, 1957.[2]

脚注

[編集]
  1. 1 2 3 4 5 6 7 8 Ferdinand Tönnies (1887) (ドイツ語), Gemeinschaft und Gesellschaft: Abhandlung des Communismus und des Socialismus als empirischer Culturformen, Fues
  2. ↑ Ferdinand Tönnies Charles Price Loomis訳 (1957) (英語), Community & Society, Michigan State University Press

関連項目

[編集]
⌬ Phoenix Mesh CID: 未登録 IPFS未登録 📡 0ピア N=1 CRITICAL PQS B69