存在のない子供たち

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存在のない子供たち
کفرناحوم
監督 ナディーン・ラバキー
脚本
  • ナディーン・ラバキー
  • ジハード・ホジェイリ
  • ミシェル・ケサルワニ
  • ジョルジュ・カッバス (共同)
  • ハーレド・ムザンナル (共同)
製作
製作総指揮
音楽 ハーレド・ムザンナル
撮影 クリストファー・アウン
編集 コンスタンティン・ボック
製作会社 Mooz Films
配給 アメリカ合衆国の旗 ソニー・ピクチャーズ クラシックス[1]
日本の旗 キノフィルムズ
公開 フランスの旗 2018年5月17日 (CIFF)
レバノンの旗 2018年9月20日
日本の旗 2019年7月20日
上映時間 126分[2]
製作国 レバノンの旗 レバノン
言語
製作費 US$4,000,000[3]
興行収入 世界の旗 US$65,233,793[3]
日本の旗 1億円[4]
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『存在のない子供たち』(そんざいのないこどもたち、アラビア語: کفرناحوم‎)は、2018年のレバノンのドラマ映画。監督はナディーン・ラバキー、脚本はラバキー、ジハード・ホジェイリ、ミシェル・ケサルワニ、ジョルジュ・カッバス、ハーレド・ムザンナル。実際にシリア難民(英語版)であった子役のゼイン・アル・ラフィーア(英語版)がベイルートのスラム街に住む主人公の12歳の少年ゼインを演じており、エチオピア移民の若い女性ラヒルとその幼い息子ヨナスとの出会いを含むゼインの人生に焦点を当てた回想形式で語られ、子供達が直面する様々な問題が描かれる。

2018年5月17日に第71回カンヌ国際映画祭のコンペティション部門でプレミア上映された後に15分のスタンディング・オベーションを受け[5][6][7]、審査員賞を獲得した[8][9]。北米及び中南米での配給権のラバキーの前作『私たちはどこに行くの?』と同じくソニー・ピクチャーズ クラシックス、国際配給権はワイルド・バンチが獲得した[10]。

この映画のラバキーの演出、アル・ラフィーアの演技、「ドキュメンタリーのようなリアリズム」は批評家に絶賛され[11]、『ニューヨーク・タイムズ』とマノーラ・ダルジス(英語版)とA・O・スコットは2018年の最高の映画の1つとして挙げた[12]。また第91回アカデミー賞外国語映画賞にノミネートされた[13]。

『存在のない子供たち』はアラブ映画及び中東映画としては史上最高額を売り上げており、製作費400万ドルに対して全世界の興業収入は6500万ドル以上に達した。最も売れた市場は中国であり、5400万ドル以上に達した。

アラビア語原題の کفرناحوم および英題の Capernaum は「カペナウム」のことである。

ストーリー

レバノンの首都ベイルートのスラム街で暮らす12歳の少年ゼインは、故郷シリアの内戦を逃れて来た難民の両親を持ち、貧しい子沢山家庭のために学校には行けず、路上で物を売ったり、アパートの家主であるアサードの店を手伝ったりしている。特に1歳下の妹のサハルを可愛がり彼女を心の拠り所にしているが、アサードが狙っているので警戒している。 ゼインがサハルを連れて家出しようとした矢先、両親はサハルをアサードと結婚させることを決め、引き渡してしまう。絶望したゼインは一人バスに乗り家出した。 ゼインが行く当てもなく仕事を求めてさまよううち、エチオピア難民の黒人女性ラヒルに声をかけられ、幼い男児ヨナスの世話を条件に家に置いてもらうことになる。しかしラヒルが不法就労の疑いで警察に拘束されて家に戻れなくなって、ヨナスを抱えたゼインはあれこれ手を尽くして必死に生きる。ところが、ラヒルのアパートの大家から閉め出され、いよいよ行き詰ったゼインは、養子に出せば無事に育つという言葉を信じて、あっせん業者にヨナスを預ける。 今度こそ外国に渡ると決意したゼインが身分証を求めて実家に帰ると、サハルが妊娠したあげくに、無理な出産がたたって亡くなったと聞かされる。激高したゼインは怒りに任せてアサードを包丁で刺して、少年刑務所に収監されてしまう。 法廷で証言台に立ったラヒルはゼインを許すと述べ、その言葉がゼインの救いとなる。また、社会問題化した人身売買の実態にメスが入り、無事保護されたヨナスはラヒルと再会することができた。 法廷で原告席に座る少年ゼインは両親を訴える理由について「僕を生んだ罪で」と答え、「大人は世話ができないなら生むな」と訴える。 今、新たな身分証作成でカメラの前に立つゼインの表情には、わずかな希望の光が差している。

キャスト

第71回カンヌ国際映画祭のキャストと監督
  • ゼイン・アル・ハッジ: ゼイン・アル・ラフィーア(英語版) - 貧民街で暮らす12歳の少年。
  • ラヒル・シファラ(ティゲスト・アイロ): ヨルダノス・シフェラウ - エチオピア移民の女性。遊園地の掃除婦。
  • ヨナス: ボルワティフ・トレジャー・バンコレ - ラヒルの息子。
  • スアド・アル・ハッジ: カウサル・アル・ハッダード - ゼインの母。
  • セリム・アル・ハッジ: ファーディー・カーメル・ユーセフ - ゼインの父。
  • サハル・アル・ハッジ: シドラ・イザーム - ゼインの妹。11歳で結婚させられる。
  • アサード: ヌール・アル・フセイニ - 食料品店の店主。サハルを娶る。
  • アスプロ: アラーア・シュシュニーヤ - 身分証の偽造屋。左目が碧眼。
  • ナディーヌ・アル・アラム: ナディーン・ラバキー - ゼインの弁護士。

製作

脚本・監督のナディーン・ラバキーは映画の構想について次のように述べている:

結局のところ、...子供たちは私たちによる紛争、戦争、システム、愚かな決断、そして政府に本当に高い代償を払っている。私は問題について語る必要性を感じ、そしてこの子供たちが話すことができれば、表現することができれば、彼らは何を言うだろうかと考えた。彼らは自分たちを無視する社会について、私たちになにを言うだろうか?[14]

映画の製作費は400万ドルである[15]。プロデューサーのハーレド・ムザンナル(英語版)は予算を増やすために自宅の住宅ローンを借りた[16]。

ベイルートのスラム街に8年住むシリア難民のゼイン・アル・ラフィーア(英語版)は撮影中は12歳であった[17][18]。アル・ラフィーアが演じるゼインは彼にちなんで名付けられた[14]。出演者の多くは新人であり、ラバキーは「大画面でのリアルな闘争のために必要だった」と説明した[16]。アル・ラフィーアはスラム住みの難民としての自身の経験を映画の台詞作りに反映した[19]。

女優でもあるラバキー自身も出演しているが小さな役割(主人公の弁護士役)に留まり、新人俳優たちを中心とすることを望んだ[20]。撮影は6ヶ月に及んで12時間のカットとなり、そこから2年以上にわたって編集作業が行われた[17]。

評価

批評家の反応

Rotten Tomatoesでは174件の批評家レビューで支持率は90%、平均点は10点満点で7.9点であり、批評家の一致した見解は「『存在のない子供たち』は激しい衝撃を与えるが、観る者にとっては賢く、思いやりがあり、そして最終的にはバランスの取れた人生を描いた感動的な映画である。」となった[11]。またMetacriticでは33件の批評家レビューのうち、高評価は27件、賛否混在は5件、低評価は1件で、加重平均値は75/100となった[21]。

『ニューヨーク・タイムズ』のA・O・スコットは2018年最高の映画で9位に選び、「ベイルートのスラム街や貧民街での迷子の冒険を描いたこの悲惨で多忙な物語でナチュラリズムとメロドラマが出会う。(中略)ラバキーは最大の絶望の瞬間でさえ人々が持つ活気、闘志、ユーモアが失われないことを示している」と評した[12]。『バラエティ』のジェイ・ワイスバーグは『存在のない子供たち』が、「知性と心」をその争点にもたらすラバキーの演出を大幅に改善したと評した[22]。『ハリウッド・リポーター』のレスリー・フェルペリンは映画を効果的なメロドラマであると評した[23]。Vulture.com(英語版)のエミリー・ヨシダはアル・ラフィーアを「驚くべき、忘れられない存在」と評し、また中絶について言及されていないが「私が今まで見た中で最も強力なプロチョイス映画の1つ」と解釈した[24]。

一方で否定的な反応も一部にあり、『The A.V. Club(英語版)』のA・A・ダウドは「ドラマのためにノンストップで苦難が押し寄せ、あらゆる瞬間で涙を乞われる悲劇の山盛り」と評した[25]。『IndieWire(英語版)』のデヴィッド・エールリヒは「深刻な誤算の羅列によって希薄化(そして最終的に失敗)したソーシャル・リアリズム(英語版)の驚くべき作品」と評した[26]。

興行収入

2021年1月24日時点で製作費400万ドルに対し全世界で6523万3793ドルを売り上げた[3][15]。これはアラブ映画(英語版)及び中東映画(英語版)としては歴代最高の成績であり[27]、またラバキーの前作『私たちはどこに行くの?』(2011年)の2100万ドルを大きく上回るものであった[28][29]。

アメリカ合衆国及びカナダでは2018年12月14日に限定公開された[30]。アメリカ合衆国及びカナダでは166万1096ドル[31]、それ以外の国々で約6692万5000ドルを売り上げた[3]。

中国では2019年4月29日に公開され[32]、『アベンジャーズ/エンドゲーム』に次いで初登場2位となった[33]。『存在のない子供たち』は中国のソーシャルメディア(Douban(英語版)やTikTokなどのプラットフォームを含む)での口コミもあってスリーパーヒットとなった[34]。2019年5月5日までに中国では2522万ドルを売り上げ[35]、海外作品としては『アベンジャーズ/エンドゲーム』に次いで2位の週末興行収入を記録した[36][37]。2019年5月16日までに中国では3億元(4400万ドル)を売り上げ[34]、中国興業でのサプライズヒットに発展した[38]。2019年6月29日までの中国での興行収入は5431万5148ドルに達している[3]。

受賞とノミネート

第91回アカデミー賞外国語映画賞にはレバノン代表作として出品された[39][40]。2018年12月に最終選考9作品に残ったことが発表され[41]、さらに2019年1月に本戦ノミネートが確定した[13]。

賞 式典 部門 候補 結果 参照
アカデミー賞 2019年2月24日 外国語映画賞 『存在のない子供たち』 ノミネート [42]
EDA賞 2019年1月10日 非英語作品賞 ナディーン・ラバキー ノミネート [43]
女性監督賞 ノミネート
アジア太平洋映画賞 2018年11月29日(英語版) 監督賞 受賞 [44][45]
主演男優賞 ゼイン・アル・ラフィーア(英語版) ノミネート
英国アカデミー賞 2019年2月19日 非英語作品賞 ナディーン・ラバキー、ハーレド・ムザンナル ノミネート [46]
英国インディペンデント映画賞 2018年12月2日(英語版) 国際インディペンデント映画賞 ナディーン・ラバキー、ジハード・ホジェイリ、ミシェル・ケサルワニ、ハーレド・ムザンナル、ミヒェル・メルクト ノミネート [47]
カルガリー国際映画祭(英語版) 2018年9月19日-30日 オーディエンス・フェイバリット賞 (米国/国際ナレーティブ作品) ナディーン・ラバキー 受賞 [48]
ファン・フェイバリット賞 受賞
カンヌ国際映画祭 2018年5月8日-19日 パルム・ドール ナディーン・ラバキー ノミネート [6]
審査員賞 受賞 [8]
エキュメニカル審査員賞 受賞
セザール賞 2019年2月22日(英語版) 外国映画賞 『存在のない子供たち』 ノミネート [49]
シカゴ映画批評家協会 2018年12月8日(英語版) 外国語映画賞 『存在のない子供たち』 ノミネート [50]
平和のための映画財団(英語版) 2019年2月11日 作品賞 ナディーン・ラバキー、ハーレド・ムザンナル、ミヒェル・メルクト 受賞 [51]
クリティクス・チョイス・アワード 2019年1月13日 外国語映画賞 『存在のない子供たち』 ノミネート [52]
FICFA(英語版) 2018年11月15日-23日 外国映画賞 ナディーン・ラバキー 受賞 [53]
観客賞 受賞
ゲント映画祭(英語版) 2018年10月8日-18日 北海観客賞 受賞 [54]
グローブ・ドゥ・クリスタル賞(英語版) 2019年2月4日 外国映画賞 ノミネート [55]
ゴールデングローブ賞 2019年1月6日 外国語映画賞 『存在のない子供たち』 ノミネート [56]
国際アンタルヤ映画祭(英語版) 2018年9月29日-10月5日 男優賞 ゼイン・アル・ラフィーア 受賞 [57][58]
若手審査員賞 ナディーン・ラバキー 受賞
ロッテルダム国際映画祭 2019年1月23日-2月3日 IFFR観客賞 受賞 [59]
リーズ国際映画祭(英語版) 2018年11月1日-15日 観客賞 (フィクション作品) 受賞 [60]
メルボルン国際映画祭(英語版) 2018年8月2日-19日 観客賞 受賞 [61]
マイアミ国際映画祭 2018年10月14日-18日 ジジ・ゲルモント観客賞 受賞 [62]
ミルバレー映画祭(英語版) 2018年10月3日-13日 観客賞 (世界映画) - 金賞 受賞 [63]
ノルウェー国際映画祭(英語版) 2018年8月 観客賞 受賞 [64]
サンディエゴ映画批評家協会 2018年12月10日(英語版) 外国語映画賞 『存在のない子供たち』 次点 [65]
サン・セバスティアン国際映画祭 2018年9月21日-29日 観客賞 ナディーン・ラバキー 2位 [66]
サンパウロ国際映画祭 2018年10月18日-31日 観客賞 受賞 [67]
サラエヴォ映画祭 2018年8月10日-17日 観客賞 受賞 [68]
セントルイス映画批評家協会 2018年12月16日 外国語映画賞 『存在のない子供たち』 ノミネート [69]
セントルイス国際映画祭(英語版) 2018年11月1日-11日 国際映画賞 ナディーン・ラバキー 受賞 [70]
ストックホルム国際映画祭 2018年11月7日-18日 脚本賞 ナディーン・ラバキー、ジハード・ホジェイリ、ミシェル・ケサルワニ、ジョルジュ・カッバス、ハーレド・ムザンナル 受賞 [71]
観客賞 ナディーン・ラバキー 受賞 [72]
ヴィリニュス国際映画祭(英語版) 2019年4月6日 観客賞 『存在のない子供たち』 受賞 [73]
ワシントンD.C.映画批評家協会 2018年12月3日(英語版) 外国語映画賞 『存在のない子供たち』 ノミネート [74]

出典

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関連項目

外部リンク