心理物理量
概要
物理量はヒトに依存せず客観的に測定し数値化した量であり、心理量はヒトの主観的な感覚の大きさを聞き取り数値化した量である。心理物理量はこの中間にあり、心理量に関する知見をもとに物理量を変換・補正して定義された量である[1][2](⇒ #定義)。心理物理量は測定された物理量から算出でき、これは特定条件下の心理量を推定するために利用できる[3](⇒ #特性)。様々な分野で様々な心理物理量が定義されている(⇒ #例)。
定義
JIS Z8103:2019 は心理物理量を次のように定義している[4]:
特定の条件の下で,感覚と1対1に対応して心理的に意味があり,かつ,物理的に定義・測定できる量。 — JIS Z8103:2019
特性
物理量からの算出
心理物理量は計測された物理量から算出できる。
心理物理量は定義式に沿って物理量を変換したものつまり物理量の派生であるため、物理量が測定されれば計算により心理物理量を得られる。例えば光に関して、物理量である分光放射強度が測定できれば対応する心理物理量である光度が算出できる。
心理量の推定
心理物理量は物理量が心理量にできるだけ対応するよう定義されている。そのため心理物理量は心理量と一般に一致しないが、ある程度の類似をもつと期待される。そのため計測された物理量を心理物理量へ変換することで心理量を主観的計測実験無しに推定できる[3]。
心理物理量の定義は「特定の条件の下で」心理量と対応するよう設計されている[1]。そのため別の条件下では心理物理量と心理量があまり一致しなくなりうることに注意が必要である。例えば音の大きさの心理物理量は「定常純音を聞く」という条件下で設計されており、複合音ではマスキング効果などによりこの心理物理量が心理量とズレる。
例
様々な分野で心理物理量が定義されている。以下はその一例である:
| 分野 | 名称 | 単位 | 派生元 | 補正 | 意味 |
|---|---|---|---|---|---|
| 光学[5] | 光度 | カンデラ | 放射強度 | 視感効果度 | 点光源の明るさ |
| 輝度 | カンデラ毎平方メートル | 放射輝度 | 面光源の明るさ | ||
| 照度 | ルクス | 放射照度 | 照らされた面の明るさ |
脚注
注釈
出典
- 1 2 3
心理物理量 特定の条件の下で,感覚と1対1に対応して心理的に意味があり,かつ,物理的に定義・測定できる量。... psychophysical quantity
JIS Z 8103:2019(日本産業標準調査会、経済産業省)、12頁 - 1 2
人間の目の心理的,生理的特性を考慮して測定するような物理量を心理物理量といい
p.298 より引用。成定, 康平 (1983). "明るさ感…ある複雑な感じ". 照明学会誌. 67 (7): 297–299. - 1 2 3
主観評価実験は時間・費用がかかるため全ての要件について主観評価実験を行うのは実用的ではない.そこで ... 容易に求めることができる物理量や心理物理量で ... 研究が行われ
p.246 より引用。金澤, 勝 (2013). "大画面表示における画質評価と心理物理量". 電子情報通信学会 基礎・境界ソサイエティ Fundamentals Review. 7 (3): 242–248. - ↑ JIS Z 8103:2019(日本産業標準調査会、経済産業省)、12頁
- ↑
光度およびその関連量は、対象となる光に対して、人間の視覚情報に基づく重み付けを伴う測定量であることから、純粋な物理量ではなく心理物理量に区分される。
p.67 より引用。産業技術総合研究所計量標準総合センター『国際単位系(SI)基本単位の定義改定と計量標準』国立研究開発法人産業技術総合研究所 計量標準総合センター、2020年。
参考文献
- JIS Z8103:2019 - 計測用語