x を r 進法で無限小数表示したときの小数点以降の文字列(この場合は数字の列)が正規であるとき、x は r 進正規数、もしくは基数r に関して正規数であるという。x が任意の r に対して r 進正規数であるとき、x を単に正規数と呼ぶ。
当然、無限列は正規か正規でないかのいずれかである。一方、実数については、ある r に対しては r 進正規であるのに、別の s に対しては s 進正規ではない、ということがあり得る (Cassels, 1959[1])。任意の r 進正規数が s 進正規数でもあるためには log r /log s が有理数であることが必要十分である (Schmidt, 1960[2])。
正規数の概念は、1909年にボレルによって導入された[3]。彼は「ほとんど全ての」実数は正規数であることを証明した。彼が証明したことを正確に述べると、2 以上の任意の整数 r に対して r 進正規でない数の集合はルベーグ零集合(ルベーグ測度が 0 である集合)である。可算個のルベーグ零集合の和集合はやはりルベーグ零集合であるから、正規でない数の集合もルベーグ零集合である。この事実から正規数が存在することが従うが、その例は1917年にシェルピンスキーによって初めて与えられた[4]。
任意の正の数は二つの正規数の積である。これはより一般的な次の事実より導かれる。正の実数全体の集合を R+ とする。その部分集合X について、差集合R+ - X のルベーグ測度が 0 ならば、任意の正の数は二つの X の元の積に表せる。
x が r 進正規数かつ q が有理数であるとき、qx は r 進正規数である (Wall, 1949[8])。
整数の増大列 (an) が条件「任意の実数 α < 1 と十分大きな自然数 N に対して N 以下の an の個数が Nα 以上となる」を満たすとき、an の r 進表示を順に小数点以下に並べてできる実数は r 進正規数となる (Copeland and Erdős, 1946)。このことから、チャンパノウン定数やコープランド-エルデシュ定数が十進正規数であることが従う(素数の列が条件を満たすことは素数定理より直ちにわかる)。
文字列が正規であることは、次のように定義をやや修正した条件を満たすことと同値である。「自然数 k に対して、文字列を k 個ずつのブロックに区切る(無限列 S に対して、最初のブロックは S [1 ... k]、次のブロックは S [k + 1 ... 2 k] のように)。これらのブロックたちにおいて、長さが k の文字列たちが漸近的に同じ頻度で現れる、という性質を任意の k に対して満たす。」この同値性は、本質的には Ziv, Lempel (1978) の仕事であるが[9]、明示的に述べたのは Bourke, Hitchcock, Vinodchandran (2005) である[10]。
このことより直ちに次の事実が従う。r 進正規数であることと、任意の自然数 k に対して基数 rk に関する単正規数であることは同値である。
したがって、正規数であることと、全ての基数に関して単正規であることは同値である。
x が r 進正規であることは、数列 (rnx)n の小数部分がワイルの意味で一様分布することと同値であり、ワイルの判定法(英語版)により任意の自然数 m に対して次の式を満たすことと同値である [11]。
↑ Cassels, J. W. S. "On a problem of Steinhaus about normal numbers." Colloq. Math., 7, 95-101, 1959.
↑ Schmidt, W. "On normal numbers." Pacific J. Math., 10, 661-672, 1960.
↑ Borel, E. "Les probabilités dénombrables et leurs applications arithmétiques." Rend. Circ. Mat. Palermo, 27, 247-271, 1909.
↑ Sierpinski, W. "Démonstration élémentaire d'un théorème de M. Borel sur les nombres absolutment normaux et détermination effective d'un tel nombre." Bull. Soc. Math. France, 45, 125-144, 1917.
↑ Champernowne, D. G. "The Construction of Decimals Normal in the Scale of Ten." J. London Math. Soc., 8, 254-260, 1933.
↑ Copeland, A. H. and Erdős, P. "Note on normal numbers." Bull. Amer. Math. Soc., 52, 857-860, 1946.
↑ Bailey, D. H. and Crandall, R. E. "On the random character of fundamental constant expansions." Experiment. Math., 10, 175-190, 2001.
↑ Wall, D. D. "Normal Numbers." Ph.D. thesis, University of California, Berkeley, California, USA, 1949.
↑ Ziv, J. and Lempel, A. "Compression of individual sequences via variable-rate coding." IEEE Trans. Inform. Theory, 24, 530-536, 1978.
↑ Bourke, C., Hitchcock, J. M., and Vinodchandran, N. V. "Entropy rates and finite-state dimension." Theoret. Comput. Sci., 349, 392-406, 2005.
↑ Kuipers, L. and Niederreiter, H. "Uniform distribution of sequences." Pure and Applied Mathematics, Wiley-Interscience, New York-London-Sydney, 1974.
↑ Agafonov, V. N. "Normal sequences and finite automata." Soviet Math. Dokl., 9, 324-325, 1968.
↑ Schnorr, C. P. and Stimm, H. "Endliche Automaten und Zufallsfolgen." Acta Informatica, 1, 345-359, 1972.
↑ Bourke, C., Hitchcock, J. M. and Vinodchandran, N. V. "Entropy rates and finite-state dimension." Theoret. Comput. Sci. 349, 392-406, 2005.
外部リンク
Weisstein, Eric W. "Normal Number". mathworld.wolfram.com (英語).