沈下修正工法

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沈下修正工法(ちんかしゅうせいこうほう)は、不同沈下などによって傾いたり沈下したりした既設の建物や構造物を、元の高さや姿勢に戻すための工法の総称である[1]。構造物を持ち上げる力の与え方によって、大きくジャッキ系工法と注入系工法に分けられる[1]。

分類

沈下修正工法の分類

液状化で傾いた戸建住宅を対象とする自治体の住民向け資料でも、建物や基礎の傾き・沈下をジャッキなどで直接直す工法(ポイントジャッキ工法、耐圧版工法、アンダーピニング工法)と、地盤を固めて沈下をある程度回復させる工法(注入工法)に分けて紹介されている[2]。

ジャッキ系工法

油圧ジャッキで構造物を持ち上げる工法である。構造物の周囲や基礎の下を掘削して反力をとるための構造(反力工)を設け、ジャッキで構造物を持ち上げたあと、生じたすき間を充填する[1]。従来の沈下修正の多くはこの方法で行われてきたが、掘削や反力工の構築を伴うため、工期と費用がかさむ[1]。

小規模建築物では、ジャッキで持ち上げる位置によって、基礎の下から持ち上げる工法と、基礎の上(土台)から上部構造だけを持ち上げる工法に分けられる[3]。

基礎の下から持ち上げる工法

アンダーピニング工法
基礎の下を掘削し、建物の重さを反力にして鋼管杭を継ぎ足しながら地中に圧入する。杭が建物を支えられる深さまで達したら、今度は杭を反力にして建物をジャッキアップする。布基礎・ベタ基礎のいずれにも用いられ、沈下量が大きい場合にも対応できるが、建物の下に入るための掘削や床の解体を伴い、地下水位が高い場合は施工が難しくなる[3]。
サイドピニング工法
基礎の外周に鋼管杭を圧入または回転貫入し、これを反力にジャッキアップする。掘削は最小限で済むが、基礎の剛性が特に高い場合を除いて単独では使われず、建物中央部を注入で持ち上げる工法などと併用される[3]。
耐圧版工法
基礎の下を順に掘削してコンクリートを打設し、耐圧版を造って、これを反力にジャッキアップする。主に支持層が浅い場合や、沈下が収まっている場合に用いられる[3]。

基礎の上から持ち上げる工法

ポイントジャッキ工法
基礎の一部を削って土台の下に爪付きのジャッキを差し込み、上部構造だけを持ち上げる。基礎は傾いたまま使い、土台との間のすき間には無収縮モルタルを充填する。掘削や注入を伴わないため費用は比較的安いが、修正できる沈下量は10 cm程度までとされる[3]。
ねがらみ工法
土台の下に鋼材などを入れて建物を基礎から切り離し、建物だけをジャッキアップしたあと、基礎の造り直しや地盤改良を行ってから建物を下ろして基礎に緊結する[3]。
曳家工法
建物を基礎から切り離して水平に移動させ、基礎の造り直しや地盤改良を行ってから元の位置に戻す。建物の周囲に施工スペースと移動経路が必要になる[3]。

注入系工法

基礎の下の地盤にグラウト(注入材)を圧入し、そのときに生じる地盤の隆起を利用して構造物を持ち上げる工法である[1]。一般の地盤注入工事では、注入による地盤の隆起は周辺に悪影響を与えるため抑えるべきものとされるが、注入系の沈下修正工法では、この隆起を制御して構造物の修復に利用する[1]。

注入系工法は、持ち上げる力の源によって、注入材の注入圧を利用するものと、注入材の膨張圧を利用するものに分けられる。いずれも通常はベタ基礎の建物に限って用いられ、注入材が地盤中に広がるため、隣接する建物への影響に注意が必要とされる[3]。

注入圧を利用する工法

静的圧入締固め工法(CPG工法)
基礎の下にモルタルを圧入して地盤を締め固め、その注入圧で基礎を持ち上げる。修正できる沈下量は20 cm程度が限界とされる[3]。
地盤改良型注入工法
建物の外周や基礎の直下からセメント系・水ガラス系の薬液を注入して地盤を固めたうえで、固めた地盤と基礎の間に薬液を注入して建物を持ち上げる[3]。
リフトアップ型注入工法
基礎スラブに2 m程度の間隔で小さな穴を開け、瞬結性のセメント系・水ガラス系の薬液を多数の箇所から少しずつ何回かに分けて注入し、持ち上がり方を管理しながら建物を持ち上げる。床下での作業となるため、床を撤去する必要がない[3]。セメント系グラウトを多数の注入管から順に繰り返し注入し、構造物を少しずつ持ち上げる工法の例としてJOG工法がある[1]。

膨張圧を利用する工法

発泡ウレタン工法
基礎スラブに開けた小さな穴から発泡性のウレタンなどを注入し、その膨張圧で建物を持ち上げる。樹脂は非常に軽いため、注入による地盤への負担の増加が小さい[3]。

併用工法

地盤の反力が足りない場合や沈下量が大きい場合には、複数の工法を組み合わせることがある。セメント系の薬液で基礎下の地盤を固めて反力を確保したうえでジャッキアップする方法や、建物の外周をジャッキアップ工法で持ち上げながら、建物中央部の基礎下に薬液を注入して持ち上げる方法がある[3]。

工法の選定

工法の選定にあたっては、修復の効果、施工条件、隣接する土地への影響などを考慮する必要がある[2]。また、選定や設計の前提として地盤調査が必要であり、既存基礎の形式(布基礎かベタ基礎か)とその剛性も確認する必要がある[3]。床下がコンクリートで覆われていても、ベタ基礎ではなく、布基礎の内側に防湿用のコンクリートを打っただけの場合があるため注意が必要とされる[3]。

脚注

  1. 1 2 3 4 5 6 7 建山和由・有馬重治「注入による傾斜構造物の修復技術」(PDF)『土木学会誌』第88巻第8号、土木学会、2003年、51-53頁。
  2. 1 2 “地震で液状化が発生して家が傾いた場合の修復方法”. 大田区 (2015年1月5日). 2026年10月13日閲覧。
  3. 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 “小規模建築物を対象とした沈下傾斜修復工法の分類・整理” (PDF). 浦安市 (2012年). 2026年10月13日閲覧。

関連項目