脊椎分離症
| 脊椎分離症 | |
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| 第5腰椎の椎弓関節突起間部にみられる骨欠損(矢印)。腰椎側面X線像 | |
| 概要 | |
| 診療科 | 整形外科学 |
| 分類および外部参照情報 | |
| ICD-10 | M43.0 |
| ICD-9-CM | 738.4 |
| DiseasesDB | 12322 |
脊椎分離症(せきついぶんりしょう、英語: spondylolysis)は、椎弓の上関節突起と下関節突起の間にある関節突起間部(英語: pars interarticularis)に骨欠損や疲労骨折が生じた状態である。腰椎分離症(ようついぶんりしょう)とも呼ばれ、特に第5腰椎(L5)に多いが、他の腰椎や頸椎に生じる場合もある。[1][2]
脊椎分離症は無症状のことも多いが、腰痛の原因となることがあり、特に成長期のスポーツ選手で問題となる。椎骨が前方へずれる脊椎すべり症を伴う場合があるが、両者は同一の病態ではない。[3][4]
症状
無症状のまま経過し、他の目的で行った画像検査で偶然発見されることがある。症状がある場合には、主に腰部の痛みがみられる。痛みは片側に生じることがあり、臀部や下肢に広がる場合もある。運動後や腰を後方に反らす動作(腰椎伸展)によって悪化することがあり、日常生活やスポーツ活動に支障を来す場合がある。[3][1]
診察では、腰椎の過度な前弯や局所的な圧痛がみられることがある。片脚立位で腰を反らす検査が用いられる場合もあるが、この所見のみで診断を確定することはできない。[5]
原因と危険因子
脊椎分離症の発生には、椎弓関節突起間部への反復的な負荷による疲労骨折が関与すると考えられている。特に腰椎を繰り返し反らす動作や、伸展と回旋を組み合わせる動作は、同部位に負担をかける。成長期には骨の成熟が完了していないため、スポーツによる反復負荷が発症に関係する場合がある。[6]
野球、テニス、体操、飛び込み、バレエ、重量挙げ、ラグビーなど、腰部の伸展・回旋や強い負荷を伴う競技との関連が指摘されている。また、家族内でみられる例もあり、遺伝的な素因が関与する可能性がある。原因を一つに特定できない例もある。[3][6]
病態
椎骨は椎体、椎弓、棘突起、横突起、関節突起などから構成される。関節突起間部は上関節突起と下関節突起の間に位置する骨性部分であり、脊椎分離症ではこの部位に骨折や骨欠損が生じる。[7]
第5腰椎と仙骨の境界付近は力学的な負荷がかかりやすく、脊椎分離症が多くみられる部位である。分離部に不安定性が生じた場合には、椎骨の前方へのずれを伴う分離すべり症へ進行することがある。[4]
診断
診断には症状、身体診察、画像検査を組み合わせる。画像検査にはX線撮影、コンピュータ断層撮影(CT)、核磁気共鳴画像法(MRI)などが用いられる。[5][1]
X線検査
X線撮影では、関節突起間部の骨欠損が確認されることがある。腰椎の斜位像では椎弓の輪郭が犬の形に見える「スコッチ・テリア徴候」(英語: Scotty dog sign)が知られ、分離部が犬の首輪のように描出されることがある。ただし、この徴候だけで診断することは難しく、他の画像検査を要する場合がある。[8]
CT検査
CTは骨の構造を詳細に描出でき、関節突起間部の骨折線や骨欠損を確認するために用いられる。一方、X線撮影に比べて放射線被曝が増えるため、検査の必要性を考慮する。[5]
MRI検査
MRIは放射線被曝を伴わず、骨髄浮腫などの変化を評価できる。成長期のスポーツ選手などでは、骨折線が明瞭になる前の早期病変の評価にも利用される。[5][9]
骨シンチグラフィ
骨シンチグラフィは、骨代謝が活発な部位を評価する核医学検査である。脊椎分離症が疑われる部位の活動性を調べるために用いられることがある。[5]
治療
治療は症状、病変の進行度、年齢、スポーツ活動の状況などを考慮して決定される。多くの場合、最初に運動負荷の調整、装具療法、理学療法などの保存的治療が行われる。[10]
活動制限と理学療法
症状を悪化させる腰椎の過伸展、強い回旋、重量物の持ち上げなどを一時的に制限することがある。疼痛の改善に応じて、体幹の安定性や柔軟性の改善を目的とした理学療法を行い、段階的に日常生活や競技への復帰を目指す。[11]
腹横筋や腰部多裂筋など、脊椎の安定性に関与する筋群の協調的な活動を促す運動療法が研究されている。[12]
装具療法
成長期の患者や急性期の病変では、腰椎の動きを制限するために腰仙椎装具を用いることがある。装具の適応や使用期間は病状によって異なる。[11][10]
手術療法
保存的治療で症状が改善しない場合や、脊椎の不安定性、進行したすべり症などを伴う場合には、手術が検討される。手術方法には、分離部を直接修復する方法や、椎骨間を固定する脊椎固定術などがある。[13][14]
分離部の直接修復術は、椎間板の変性やすべりが少ない比較的若い患者などで選択肢となる。病変部をスクリューなどで固定し、必要に応じて骨移植を併用する。[13]
スポーツ復帰とリハビリテーション
スポーツ選手では、腰痛の改善や骨癒合の評価に加え、筋力、可動域、競技動作などを考慮して復帰時期を判断する。長期の活動制限は競技生活や心理面にも影響するため、リハビリテーションの過程では本人への説明や周囲からの支援も重要となる。[11][10]
関連項目
出典
- 1 2 3 “Spondylolysis” (英語). Johns Hopkins Medicine. 2026年10月24日閲覧。
- ↑ Dubousset, J. (1997). “Treatment of Spondylolysis and Spondylolisthesis in Children and Adolescents”. Clinical Orthopaedics and Related Research 337: 77–85.
- 1 2 3 McTimoney, M.; Micheli, L. J. (2003). “Current Evaluation and Management of Spondylolysis and Spondylolisthesis”. Current Sports Medicine Reports 2: 41–46.
- 1 2 Syrmou, E. et al. (2010). “Spondylolysis: A Review and Reappraisal”. Hellenic Journal of Surgery 14 (1): 17–21.
- 1 2 3 4 5 Masci, L. et al. (2006). “Use of the one-legged hyperextension test and magnetic resonance imaging in the diagnosis of active spondylolysis”. British Journal of Sports Medicine 40: 940–946.
- 1 2 McCleary, M. D.; Congeni, J. A. (2007). “Current concepts in the diagnosis and treatment of spondylolysis in young athletes”. Current Sports Medicine Reports 6 (1): 62–66.
- ↑ Standaert, C. J.; Herring, S. A.; Cole, A. J.; Stratton, S. A. (2003). “The Lumbar Spine and Sports”. Low Back Pain Handbook. pp. 385–404
- ↑ Morimoto, Masatoshi et al. (2018). “Is the Scotty Dog Sign Adequate for Diagnosis of Fractures in Pediatric Patients with Lumbar Spondylolysis?”. Spine Surgery and Related Research 3 (1): 49–53. doi:10.22603/ssrr.2017-0099.
- ↑ Yam, Mitchell; Ng, Eugene; Reeve, Ashton; Linklater, James M. (2025). “Lumbar Stress Fractures Imaging”. Cricket Sports Medicine. Springer Nature. pp. 281–298. doi:10.1007/978-981-96-6321-7_28
- 1 2 3 Pizzutillo, P. D.; Hummer, C. D. (1989). “Nonoperative Treatment for Painful Adolescent Spondylolysis or Spondylolisthesis”. Journal of Pediatric Orthopaedics 9 (5): 538–540.
- 1 2 3 Iwamoto, J. (2010). “Return to sports activity by athletes after treatment of spondylolysis”. World Journal of Orthopedics 1 (1): 26.
- ↑ O'Sullivan, P. B. et al. (1997). “Evaluation of Specific Stabilizing Exercise in the Treatment of Chronic Low Back Pain with Radiologic Diagnosis of Spondylolysis or Spondylolisthesis”. Spine 22 (24): 2959–2967.
- 1 2 Minor, Adrienne et al. (2024). “Pars Interarticularis Fractures Treated with Minimally Invasive Surgery: A Literature Review”. Journal of Clinical Medicine 13 (2): 581. doi:10.3390/jcm13020581.
- ↑ Schouten, Rowan; Shackel, Dayle (2025). “Lumbar Stress Fractures Surgery”. Cricket Sports Medicine. Springer Nature. pp. 311–320. doi:10.1007/978-981-96-6321-7_30
外部リンク
- Spondylolysis - Johns Hopkins Medicine(英語)