萌え擬人化

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ウィキペディアを萌え擬人化したウィキペたん。
ルイス・ウェイン画。本来の擬人化。猫が猫の姿のままで人間のようにゴルフをしている。

萌え擬人化(もえぎじんか)は、現代の日本の漫画・アニメ・ゲームなどにおいて人間以外の生物や無生物を人間(の姿)に見立てて萌えと結びつける概念、及びそうした創作物のこと。

概要

生物・無生物を人間に近い姿に擬したイラストを描く際に、“萌え属性”を追加したもの。一般的に美少女(幼女含む)・美女化が多く見られるが、漫画『Axis powers ヘタリア』の様にイケメン化している作品も存在する。「擬人化」自体は古来から存在するが、「萌え擬人化」が「ムーブメント」として確立したのは2003年と考えられている。

本来の擬人化はもとのものに人間の特徴(会話機能など)を加える事だが、日本のサブカルチャーにおける擬人化の場合バニーガールや人魚などの様な“該当する事物のイメージを反映した人間”として描かれる事も多い。もとの事物の特徴を殆ど外見に反映していないものも存在するが、その場合はキャラクターの性格や人間関係などにモチーフの特徴が反映される[1]。

ただし服を着ているキャラがもとの場合は、それと同じ服を着用(コスプレ)した人間として描かれる事が多い。

GIGABYTE社の「ギガバイ子」(2003年)や、Windows7の「窓辺ななみ」(2009年)など、萌え擬人化なのか、イメージキャラクターなのか曖昧な例も多い。

歴史

2003年、ゲーム会社「アルケミスト」のホームページに掲載された漫画『びんちょうタン』が人気を集め、翌2004年には日本オタク大賞において大賞を受賞。京都国際マンガミュージアム研究員の伊藤遊は、この作品を「新たな擬人化」(萌え擬人化)ブームの発端としている[1]。このムーブメントにおける擬人化は、「これまでは動物や物の原形を残したが、最近は形をとどめず人そのもの」「モデルとしている物の形を残さず、完全に人間化しているのが特徴」という。

2005年には、国家を擬人化したちまきingのweb漫画『あふがにすタン』の単行本が発売され、また同年には『エヴァンゲリオン』の使徒を擬人化した『使徒XX』発売されるなど、『びんちょうタン』のヒット以後、萌え擬人化作品が市場に多数現れることになる。

また、硬派なシリーズを萌え擬人化した派生作品も製作された。2005年、OVA『戦闘妖精雪風』(2003年)に登場した戦闘機を萌え擬人化した『戦闘妖精少女 たすけて! メイヴちゃん』が発売、2007年、大戦略シリーズの派生として兵器を萌え擬人化したパソコンゲーム『萌え萌え2次大戦(略)』が発売。

2013年、軍艦を萌え擬人化したブラウザゲーム『艦隊これくしょん -艦これ-』が運営開始され話題に。2017年には同じく「艦隊萌え擬人化ゲーム」である『アズールレーン』が運営開始している。

2015年、日本の名刀をイケメン擬人化したブラウザゲーム『刀剣乱舞-ONLINE-』が運営開始され、人気に。

2017年、哺乳類・鳥類・爬虫類などを萌え擬人化したアニメ『けものフレンズ』が放送され社会現象となった。

2021年、競走馬を萌え擬人化したスマートフォンゲーム『ウマ娘 プリティーダービー』が運営開始され、ヒットを記録している。

ネットコミュニティとのかかわり

インターネットにおいては、まだ「萌え」と言う概念の確立しないCGコミュニティの草創期から擬人化ジャンルが存在しており、その題材は猫などの動物、花などの植物、またはコンピュータなどの無生物が中心であった。やはり猫を擬人化したネコミミが多く、当時の主だった作品としては『CGネットワーカーズ自選作品集Ⅸ 鳥獣戯画』(ソフトバンク、1998年11月)などにまとめられている。当時の流行を取り入れたものとしては、ネットのCGクリエーターがiMac(1998年発売、1999年より複数のカラーバリエーションを展開)を萌え擬人化した例がある[2]。

2001年11月、2ちゃんねる掲示板のスレッド「IEの中止マークがしいたけに見えて困る」にInternet Explorerの中止ボタンを擬人化したキャラ「しいたけちゃん」が発表された。このキャラがインターネット上で人気を集めて以降、2ちゃんねる掲示板(半角二次元板)やふたば☆ちゃんねる(二次元裏@ふたば)などの匿名掲示板において、あらゆる物や概念に対する「萌え擬人化」が流行した。個人的な思い付きだけでスレッドを立てて、誰にも注目されずにそのまま消えて行ったものがほとんどだが、スレッドにアスキーアートが書ける人が参加すれば、アスキーアートが製作されることもあり、あるいは絵が描ける人が参加すれば、イラストとして発表されることもあった。

2002年3月には2ちゃんねる掲示板の「ケンタッキーのビスケットってうめぇよ」スレッドにおいて、ケンタッキーのビスケットを萌え擬人化した「ビスケたん」が発表された。2003年8月には「ふたば☆ちゃんねる」にて「Windows Me」の萌え擬人化(OSたん)が発表された。また、2003年より半角二次元板の「陸海空兵器少女造兵廠」スレッドにおいて多数の「兵器萌え擬人化」が発表された。「朝まで起きてたのに・・・」スレッドで生まれた「コンビーフたん」など、萌え擬人化なのか、何かの擬人化ではない独立したキャラなのか、曖昧なキャラも登場した(いちおう公式設定では、「コンビーフを配る女の子」であり、「コンビーフの萌え擬人化」ではないとされている)。とにかく、当時のインターネットコミュニティでは、何かの話題にかこつけて「萌え絵」を描きたい人が集まる風潮があった。

イラストの形態で匿名掲示板に発表された萌え擬人化キャラは、プロによる作品や、後にプロとして商業デビューすることになる者による作品もあった。例えば、半角二次元板の「陸海空兵器少女造兵廠」スレッドにおいて「兵器萌え擬人化」を発表したうちの一人が島田フミカネで、彼の作品は2004年夏のワンダーフェスティバルで立体化されて好評で、これにより島田は「気鋭のクリエーター」として名を挙げた。作者が公開されない作品だったとしても、その特徴的な絵柄や、同人イベント「ふたば学園祭」「にじけっと」への参加によって、作者が事実上公になる場合もあった。しかし、そのような場合でも、匿名掲示板においては原作者の存在はあくまで「公然の秘密」に留まり、建前としてはあくまで「匿名」の者による作品(すなわち「コミュニティ」による作品)として扱われ、匿名のコミュニティ参加者によって多くの二次作品が発表された。

掲示板のスレッド自体は数日で削除されてしまうが、「保管庫」と呼ばれる個人によるまとめサイトがネタをまとめ、あるいは個人によるニュースサイトが紹介し、それをネットメディアや商業誌が吸い上げた。特にビスケたんは商業誌で広く紹介されたことで有名になり、2002年から2005年にかけてはビスケたん中心擬人化キャラONLYの同人イベント「びすけっと」まで開催された。

萌え擬人化ブームとなった2004年以降は、ネットコミュニティ発のムーブメントに企業が追随する、商業展開が加速した。当時はミニフィギュアブームということもあり、2005年からコナミが島田フミカネの「メカ娘」シリーズを立体化したトレーディングフィギュアを展開するなど、フィギュア化されたものも多い。

2006年1月8日、カスガ (作家)が「ふたば☆ちゃんねる」にWikipediaの萌え擬人化「ウィキペたん」を投稿。カスガはウィキペディアンであるから、その意味でこのWikipediaも当時「萌え擬人化」を生み出したネットコミュニティの一つである。

基本的に、「2ちゃんねる」および「ふたば☆ちゃんねる」などのコミュニティにおいては、企業の制作物をネットコミュニティが勝手に萌え擬人化し、あまつさえそれを「名無しさん」/「としあき」が同人や商業で展開してお金を儲ることには好意的で、もしくは自分の属さないコミュニティの著作物を企業が勝手に使ってお金を儲けることに対しては好意的だったものの、自分の属するコミュニティの著作物を企業が勝手に使い、あまつさえ企業がそれでお金を儲けることに対しては反感が大きかった。そのため、ネットコミュニティに断りなくコミュニティの著作物を使った『ネットランナー』誌は非常に批判された。また、2005年頃より個人ではなく企業が「まとめサイト」の運営を始め、あらゆるネットコミュニティの「著作物」を吸い上げ、アフィリエイトで大々的にお金を儲け始めたのは、ネットにおけるムーブメントの拡散という意味では大きな役割を果たしたものの、一方で本来の著作権者たるネットコミュニティからは批判された(この傾向を、「2ちゃんねる」創設者の西村博之が「嫌儲」と命名した)。

2007年10月、イラストSNSのpixiv開設。やがてネットのコミュニティの中心は「2ちゃんねる」や「ふたば☆ちゃんねる」などの匿名掲示板からpixivやtwitter(現・X)などのSNSに移って行き、製作者も「匿名の不特定多数」から「特定の作者」へと移り変わっていく。また、草創期にはネットコミュニティ発のムーブメントとして盛り上がった「萌え擬人化」(アングラなネット掲示板発であるから、かなりのアングラな雰囲気があった)は一般化し、ネットのクリエーターが大手企業に許諾を得て商業化した時代を経て、2009年には東映アニメーションが自社のロボットを萌え擬人化した東映ロボットガールズを展開、2013年にはセガが自社のゲーム機を萌え擬人化したセガ・ハード・ガールズを展開するなど、やがて大手企業が自社製品を自ら「萌え擬人化」する事例は珍しくもなくなり、企業発のムーブメントにネットコミュニティが追随する例も増えた。

同時に、「萌え擬人化」など何らかの斬新なテーマを「神輿」として、かつてはプロのクリエーターから素人までこぞって匿名で参加するほどの魅力があった、ネットの「祭り」の中心としての役割を、匿名掲示板は失った。匿名掲示板は政治的に過激化して行き、中国における日本人の蔑称を2ちゃんねるユーザーが萌え擬人化した「日本鬼子」(2010年)など、匿名掲示板発の「萌え擬人化」もそれを反映したものとなっていく。

萌え擬人化と『ネットランナー』誌

2003年頃から2005年にかけて、ネットの「萌え擬人化」ムーブメントを積極的に取り上げた商業誌が『ネットランナー』(ソフトバンク・パブリッシング)である。

「萌え擬人化」は、実際は「個人による著作物」、ネットコミュニティおける建前としても「コミュニティの著作物」であるにもかかわらず、『ネットランナー』誌は、「萌え擬人化」をネットで生まれた様々なキャラと同様に、二次創作がやり放題の事実上の著作権フリーキャラとして利用したことから、基本的に当該ネットコミュニティの反応はよくなかった。もっとも、『ネットランナー』誌が取り上げたことにより、ネットのムーブメントが紙のデータとして後世まで記録された側面がある。半角二次元板で生まれた硬貨の擬人化「硬貨たん」など、匿名作家による「萌え擬人化」キャラはネット掲示板で一時的に流行して、流行の終了とともに最初からこの世に存在しなかったかのように消えてしまったものも多い。

2003年11月にはビスケたんとファイル共有ソフトのWinnyをテーマにした『もっと激しくぶっこぬき Winny娘。featuring ビスケたん』(ソフトバンク・パブリッシング)が発売された。ネットコミュニティによる「萌え擬人化」が商用出版物で取り上げられた最初の例だが、それを喜ぶ「ビスケたん」コミュニティの参加者は少数で、何の脈略もなくビスケたんをWinnyの本に使ったことから、半角二次元板のビスケたんスレッドは荒れた。

2004年2月、「ネトラン厨はお帰り下さい」というコミュニティの意思を擬人化したキャラ「オコトワリたん」がふたば☆ちゃんねる(二次元裏@ふたば)に登場した。『ネットランナー』誌は、「ビスケたん」の簒奪に加え、ふたば☆ちゃんねるから画像のみをダウンロード(「ぶっこぬき」)するソフト「Berry」を配布し、その負荷によりふたば☆ちゃんねるのサーバーがダウンしたため、それに反発してのものであった。にもかかわらず、『ネットランナー』2004年5月号において「Meたん」が無断利用されたため、「Meたん」の作者およびコミュニティは激怒した[3]。このような経緯から、2005年7月に刊行された、「ふたば☆ちゃんねる」の25名以上の匿名作家(としあき)らの協力のもと製作されたOSたんのファンブック『とらぶる・うぃんどうず OSたんファンブック』(宙出版)では、表紙に「ネットランナー厨房お断り」の但し書きが付いている。当時はミニフィギュアブーム期であるから、本書のふろくとして「OSたんフィギュア」が3体ついている。

2004年8月号より『ネットランナー』は「リカヴィネ」を模した「ネトヴィネ」として毎号萌えミニフィギュアを1体付録に付けていたが、第2弾(2004年9月号)の「ビスケたん」、第3弾(2004年10月号)の「ハバネロたん」(東ハトの菓子『暴君ハバネロ』の擬人化)が「萌え擬人化フィギュア」であった(製作:アオシマ)。ちなみに、第1弾(2004年8月号)のフィギュアは「バーチャルネットアイドル ちゆ12歳」であり、これらのネット発のキャラクターは「萌え擬人化」であろうがなかろうが、著作権者が明確であろうがなかろうが、著作権者(個人あるいはコミュニティ)の協力を得てようが得ていまいが、「萌えフィギュア」として特に区別なく消費された。

これらのキャラは「2ちゃんねる」および「ふたば☆ちゃんねる」で生み出されたキャラにもかかわらず、商品化がこれらのコミュニティに断りなく行われていたため、「2ちゃんねる」および「ふたば☆ちゃんねる」の当該コミュニティの反感を買った。一方で、『ネットランナー』2005年9月号付録フィギュア「ふぉくす子」(Firefoxの萌え擬人化)の製作者はふたばではなくもえじら組であり、付属のフィギュアはもえじら組プロジェクトのトップのPiroも「このためだけにでも買って損はない」とオススメしている[4]。このように、ネットコミュニティの著作物を勝手に使う『ネットランナー』誌に対して、コミュニティごとに反応はまちまちであった。

ネットコミュニティからの反応はともかくとして、『ネットランナー』誌による「萌え擬人化キャラ」の付録フィギュアは一般のネットユーザーに非常に好評で、2004年から2005年にかけて秋葉原で行われていた雑誌の発売イベントでは、1000個近くの付録フィギュアが店頭に山積みになった[5]。『ネットランナー』誌は、ネットの「悪用厳禁」のアングラツールを公然と紹介しており、またネットコミュニティの創作物を簒奪してお金を儲けるという点で反発する人もいたものの、それはそれとして、雑誌として売れており、2002年の全盛期には20万部を発行し、2005年時点でも相当売れていた。

「萌え擬人化」をはじめとする、ネットの「アングラ」な情報を発信し続ける『ネットランナー』は、 2006年に携帯電話事業に参入したりして巨大化するソフトバンクグループと次第に方向性が乖離し、2007年10月号を持って休刊。休刊時点で8万部売れていた。別会社において独立新創刊されるも、経営が厳しくなり、2010年1月号を持って休刊した。既に「萌え」あるいは「萌え擬人化」がネットのアングラカルチャーであった時代は終わっていた。

派生ジャンル

美少女漫画の成立当初から兵器と美少女の親和性は高く、1982年頃からは『機動戦士ガンダム』と美少女を組み合わせた「MS少女」と呼ばれるジャンルが流行した。ただし、当時はモビルスーツの擬人化というよりも、「美少女がモビルスーツのコスプレをしたもの」として扱われていた。

「萌え擬人化」というジャンルが定着した2003年頃には、インターネットコミュニティを中心に多数の作品が展開され、2005年頃から商業化が進んだ。2006年には兵器萌え擬人化に特化した雑誌『MC☆あくしず』が創刊されている。

さらに派生ジャンルとして「艦船萌え擬人化」が存在する。

脚注

  1. 1 2 “漫画・アニメに擬人化ブーム 物の形残さず、性格で表現”. asahi.com. 朝日新聞社. 2010年10月3日. 2010年10月6日時点のオリジナルよりアーカイブ. 2010年10月3日閲覧.
  2. ↑ “MACHINERY BABES”. www.toyboxarts.com. 2024年8月19日閲覧。
  3. ↑ Meのお部屋(2010年5月5日時点のアーカイブ)というMeあきのホームページでその旨が記載されている
  4. ↑ ネトランフィギュア リタッチ講座 - もえじら組 萌えるふぉくす子さんだば子本制作プロジェクト
  5. ↑ mixiたんフィギュア付きネットランナー8月発売イベントでアキバではmixiたんコスプレ アキバBlog

参考文献

関連項目

外部リンク