閏時
閏時(うるうじ、英: leap hour)は、現行の協定世界時 (UTC) において、世界時のUT1との差を調整するために追加もしくは削除される時である。2026年10月の第28回国際度量衡総会 (CGPM) の決議により閏秒に替わるものとして導入された[1][2][3][4]。
用字
「閏」の漢字は、常用漢字ではなく人名用漢字である。このため、「閏時」ではなく「うるう時」と表記されることがある。さらに、「閏時間」(または「うるう時間」)と呼称される場合もある。
経緯
1972年に始まった閏秒の制度では、|UT1-UTC| が0.9秒を越えるときに1秒を追加または削除することとされていた。しかしこの方式では、21世紀になってからはコンピュータソフトウェア上の問題が懸念されるため、1秒を追加または削除するのではなく、3600秒( = 1時間)を追加または削除することが2026年10月に決議され決定された。この決定は、2027年5月20日(世界計量記念日)から適用される。
第28回国際度量衡総会(2026年10月)の決定
さまざまな議論を経て、2026年10月13日〜15日開催の第28回国際度量衡総会 (CGPM) において、次のようにDUT1 ( = |UT1-UTC|)を3600秒( = 1時間)とする以下の決議が採択・決定された[4][3]。これが「閏時 (leap hour)」である。ただし決議そのものにおいては、leap hour の語は用いていない。
- 連続したUTCは、2027年5月20日(世界計量記念日)に発効する。
- |UT1-UTC| の最大値を3600秒(1時間)とすることにより、UTCが数世紀にわたる長期連続性を保つようにする。
実施の時期
これまでのUT1の変動がこの50年間の実績のままに推移すると仮定すると、|UT1-UTC| が3600秒に達するのは、数千年以上の将来と見込まれている。したがって実質的には UT1 と UTC との調整を廃止することとなる。最初の実施時期についての様々な見積もりは以下の通りである。
- 数世紀後とするもの。上記の決議案で言及。
- 千年単位とするもの。産総研計量標準調査室長の鍜島麻理子による。
- 1000年以上とするもの。情報通信研究機構 (NICT) 時空標準研究室長の井戸哲也による[5]。
- 4000年までとするもの。アメリカ海軍調査研究所 (NRL) のマイケル・J・コールマンによる。
- 5900年。これは、過去45.5年間(1972年7月1日 - 2017年1月1日)に実施した閏秒調整で生じたズレは27秒であり[6]、このペースが将来も継続すると仮定した場合の単純計算である。
地球の自転の長期的な変化率の予測は困難であるため、上記のような大きな幅のあるものとならざるを得ない。
閏秒の廃止の理由
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閏秒が廃止された理由は以下である。
- 20世紀末から21世紀にかけて、様々な機器がデジタル化されたためにわずか1秒の閏秒の挿入であっても、コンピュータシステムその他のシステムに多大の影響を及ぼすことが多くなり、閏秒挿入のたびに問題が大きくなっていく危険性がある。
- 1970年ごろから2020年ごろまでは地球の自転が遅くなることが多く、これまではすべて閏秒が挿入されてきた。しかし2020年ごろからは地球の自転が速くなることがしばしばあり、このままでは2030年までに閏秒の削除(負の閏秒)が必要になる確率が30 % であると見込まれている。閏秒の削除はこれまで例がなく、実施されると閏秒挿入とは比べ物にならないほどの悪影響があると予想されている。
- 閏秒挿入・削除は、GNSSシステムに大きな影響がある。米国のGPSでは閏秒が入れずに国際原子時 (TAI) から19秒遅れた連続時刻系(GPS時刻)を採用し、中国の北斗衛星導航系統ではTAIから33秒遅れた連続時刻系(北斗時刻)を採用している。このため閏秒の制度が継続すると、協定世界時 (UTC) が社会における時刻のデファクトスタンダード(事実上の標準)としての地位を維持できなくなるおそれがある。
- 閏時の挿入・削除、すなわち1時間の挿入・削除は、世界のいくつもの国で運用されている夏時間と同じものであり、そのような国では受容されやすい。実際、閏時の提案が2025年末からなされたときに、これまでの閏分などの提案に比べて、理解が早かったとの報告がある[要出典]。
脚注
注釈
出典
- ↑ うるう秒を27年に廃止、速まる地球の自転に対応 システム障害回避 日本経済新聞、2026年10月15日
- ↑ Scientists just voted to redefine how the world keeps time, Scientific American, By Emma Gometz edited by Clara Moskowitz, 2026-10-15
- 1 2 BIPM, Draft Resolutions on the General Conference on Weights and measures (28th meeting), 13-15 october 2026, p.23, Draft Resolution C, On the technical actions needed to ensure the continuity of UTC, Version 3, 30 March 2026
- 1 2 「はかる」No.160 pp.10-11「実質的廃止に向かううるう秒」、国立研究開発法人情報通信研究機構電磁波研究所 電磁波先進・基盤研究センター 時空標準研究室室長 井戸哲也、一般社団法人日本計量機器工業連合会 2026年5月20日発行
- ↑ 「うるう時間」 2027年にも導入 時刻ずれ調整を実質廃止、IT障害防ぐ 日本経済新聞 2026年6月5日付より、『情報通信研究機構(NICT)時空標準研究室の井戸哲也室長は「1000年以上は調整しなくてすむだろう」と話す。』
- ↑ “うるう秒実施日一覧”. 国立研究開発法人 情報通信研究機構 (NICT) 電磁波研究所 電磁波先進・基盤研究センター 時空標準研究室 日本標準時グループ. 2026年10月17日閲覧。