雑面
雑面(ぞうめん、蔵面・造面とも)は、雅楽・舞楽で用いられる仮面の一種である。白い長方形の布または紙を基材とし、その表面に眉・目・鼻・口などを墨で図案化して描いたもので、木製の舞楽面とは異なる特殊な面として知られる。主として安摩・蘇利古・古鳥蘇などに用いられる[1][2]。
概要
雑面は雅楽面の一つに数えられるが、一般的な舞楽面のように立体的に彫り出された木製面ではなく、布や紙に顔貌を描いた簡略かつ抽象的な形式を特色とする。舞楽の「蘇利古」「安摩」などに用いる長方形の白い厚紙の表面に、目・鼻・口などを墨で象徴的に描き、目を三角形に切り抜いたものとされる[1]。
また、白い長方形の布または紙の一面に墨で図案化した面貌を描いたものともされ、雑面の表記のほか蔵面・造面とも書かれる[2]。
舞楽面の中での位置づけ
舞楽に用いられる仮面の多くは木製であり、曲目ごとに固有の面が用いられる。その中で雑面は例外的な存在であり、左舞の安摩と右舞の蘇利古には紙製の蔵面、すなわち雑面が用いられるとされる[3]。
国立劇場文化デジタルライブラリーでも、舞楽の面は大面・中面・小面に分けられ、その多くが木製である一方、特殊なものとして「絹を貼った厚紙に人間の眉や目、鼻や口を象形的に描いた雑面」が挙げられている。また、和紙に薄い絹を貼り墨で人の顔を描いた雑面は、大面・中面・小面の分類には含まれないとされる[4][5]。
形態・材質
雑面は、白い布または紙を基材とし、その上に人の顔を強く意匠化して描く。目・鼻・口などは写実的ではなく、象徴的・図案的に処理される。長方形の白い厚紙の表面に目・鼻・口などを墨で象徴的に描き、目を三角形に切り抜いたものとされる[1]。
東京国立博物館所蔵の「舞楽面 案摩」の解説でも、布または紙製の面は蔵(ぞう)(造)面とされ、舞楽では案摩と蘇利古に用いられ、いずれも人の顔とは見えないほど造作が図様化されているという。また、案摩の舞いの終盤に片袖で顔を覆うしぐさは、眠りを暗示するとも考えられている[6]。
使用曲目
雑面は、舞楽の安摩・蘇利古・古鳥蘇などに用いられる。安摩・蘇利古が主な使用曲目として挙げられ、古鳥蘇もこれに含まれる[1][2]。
安摩では、番舞が蘇利古であり、左方襲装束に巻纓・緌の冠、雑面をつけ、右手に笏を持って舞うとされる。また、特徴的なのは雑面であり、長方形の白絹に耳・目・鼻・口が象徴的に描かれているという。安摩は単独で舞われることが少なく、二ノ舞と続けて舞われることが多い[7]。
歴史
雑面は、古代の仮面文化との比較のなかでも位置づけられている。奈良時代の布作面の写実的表現が伎楽面に通じるのに対し、蔵面のきわめて象徴的に図化した表現は舞楽面の意匠化に通ずるとされる。また、材質の関係で、中世までさかのぼることのできる遺品は現在知られていないという[2]。
さらに、安摩・蘇利古に用いられる蔵面は、奈良時代の布作面や平安時代の神幸の際に神人がつけた白布面の類例とあわせて理解されている[3]。
遺品と伝来
雑面は布・紙を主材とするため保存に弱く、中世までさかのぼることのできる遺品は現在知られていないとされる。一方で、近世のものは輪王寺や春日大社などに残るという[2]。
東京国立博物館所蔵の「舞楽面 案摩」も江戸時代、18〜19世紀の紙製作品であり、雑面の現存例として参照できる[6]。