4割打者(よんわりだしゃ)とは、野球において1シーズンの打率が4割(.400)を超えたことがある打者のこと(規定打席未満の場合は除外)。

概要

リトルリーグや高校野球、大学野球などでは4割を超える打率を残す選手は珍しくない。しかし、プロ野球で4割打者になることは極めて難しい。1試合で回って来る打数は一般に3.63回ほどであるため[1]、4割を達成するには1試合あたり、平均1.452本の安打を打たねばならないことになる。プロでは一般的に3割を維持すれば十分に一流とみなされる。

メジャーリーグでは長年、1941年に23歳1か月で4割打者になったテッド・ウィリアムズが最後の4割打者で最年少の達成者とされていた。しかし2020年12月17日にメジャーリーグ機構がニグロリーグの通算記録もメジャー通算記録に、さらにこの時代にリーグでプレーしていたおよそ3400人のプレイヤーをメジャーリーガーにそれぞれ認定、2024年5月29日にニグロリーグもMLBの公式大会として正式に組み込まれると同時にニグロリーグでの記録もMLBとしての記録に統合するとしたため直近の達成者は1948年のアーティ・ウィルソン(英語版)とウィラード・ブラウン、最年少の達成者は1934年に20歳で4割打者になったレイ・ダンドリッジに変更された。これ以降で4割打者に迫った記録としては、1977年にロッド・カルーが達成した.388、1980年にジョージ・ブレットが達成した.390、1994年にトニー・グウィンが達成した.394が挙げられる。もっとも迫った例として2000年にトッド・ヘルトンが規定打席に達して4割を超えていたが試合に出場を続け打率を下げてしまっている。また、1894年に.418を記録したタック・ターナーのみが4割打者の中では唯一のスイッチヒッター(左投げ両打ち)とされたが、こちらもニグロリーグの記録統合に伴い1923年に.423を記録したビズ・マッキーが2人目の達成者に加えられた。ただしターナーは19世紀、マッキーは20世紀においては唯一のスイッチヒッターの達成者である。

NPBに於いてはランディ・バースが1986年に達成した.389が打率のシーズン最高記録[2]であり、いまだに4割を超えた打者は存在しない(詳しくは打率を参照のこと)。1989年にウォーレン・クロマティは規定打席に達した時点で4割を超えていたが、チームが優勝争いをしていたために試合に出続けた結果、打率を下げてしまい4割達成はならなかった。また、2017年には近藤健介がNPB史上初の100打席以上立って、打率4割のままでシーズンを終えたが、規定未達に終わった。

NPBの二軍のイースタン・リーグでは上条皇裕(大毎)が1961年に.424[3]、鈴木健(西武)が1991年に.401の記録を残している。また、国民野球連盟1947年夏季リーグで宇高レッドソックスの茅野秀三が.403を記録している。他、NPB以外の国内独立リーグではベースボール・チャレンジ・リーグの野原祐也(富山、後に阪神)が2007年に.412の記録を残し、関西独立リーグ (2代目)(当時・BASEBALL FIRST LEAGUE)の田中耀飛(兵庫、後に楽天)が2017年に.422の記録を残した[4][5]。さらに、2020年シーズンの関西独立リーグでは、試合数の激減の影響を強く受け、大橋諒介、小山一樹、花岡洋平の3人が新たに4割打者となった。

分析

テッド・ウィリアムズ以降、メジャーリーグで現在も続いているアメリカン・リーグとナショナル・リーグ、及び日本プロ野球に4割打者が生まれていない理由として、古生物学者であるスティーヴン・ジェイ・グールド博士は、進化論の観点から以下のような仮説を立てている[6]。グールドは、打率が投手と打者の勝負の結果で決まる相対的な指標であることに注目し、以下のような仮説を立てた。

この仮説によると、4割打者が消滅したのは、打者の能力が低下したためではなく、打者の能力が全体的に向上して野球というスポーツが成熟したことの証拠である。

それ以外にも交通手段が飛行機及び新幹線ではなく電車しか使えなかったことで球団によっては長時間の移動を強いられ体力面でハンデがあったこと、ドラフト会議導入前は強い選手が人気球団に集中したことで格差が生じたことも1つの理由として挙げられる。

また4割打者に限らず、出塁率5割、投手の場合は防御率0点台も同じ理由で時代が経つにつれ記録するのが困難になっている。近年では現役中にドーピングで体力増強したバリー・ボンズが2004年に出塁率6割を達成しているが、それ以外ではあと1歩で達成できずに終わっているケースが多くなっている。

歴代4割打者

順位は打率上位順

日本プロ野球

北海道フロンティアリーグ
順位名前所属打席打率達成年
1大橋諒介KAMIKAWA・士別サムライブレイズ左.4572023年
2川上智也石狩レッドフェニックス左.4122023年
関西独立リーグ (2代目)
順位名前所属打席打率達成年
1小山一樹兵庫ブルーサンダーズ右.4362020年
2田中耀飛兵庫ブルーサンダーズ右.4222017年
3今田勇大大阪ゼロロクブルズ左.4202023年
4花岡洋平06BULLS左.4042020年
5浅成翔天堺シュライクス左.4002024年

ほか、規定不足であるが大橋諒介(堺シュライクス)が2020年に.490を打った。不足分の打数を足した際の打率は.463となる。

九州アジアリーグ
順位名前所属打席打率達成年
1中田航大北九州下関フェニックス右.4362024年
ベースボール・チャレンジ・リーグ
順位名前所属打席打率達成年
1野原祐也富山サンダーバーズ左.4122007年
2佐藤優悟福島レッドホープス右.4012024年
国民野球連盟
順位名前所属打席打率達成年
1茅野秀三宇高レッドソックス左.4031947年夏
日本女子プロ野球機構
順位名前所属打席打率達成年達成回数
1三浦伊織ウエスト・フローラ左.5002014年2回目
2岩谷美里埼玉アストライア右.4412017年
3川端友紀イースト・アストライア左.4312013年2回目
4大山唯兵庫ディオーネ左.40742015年1回目
4大山唯兵庫ディオーネ左.40742016年2回目
6三浦伊織ウエスト・フローラ左.40712013年1回目
7川端友紀京都アストドリームス左.4062011年1回目

メジャーリーグ

1900年以降の近代野球が対象[7]
順位名前所属打席打率達成年達成回数
1テテーロ・バルガス(英語版)ニューヨーク・キューバンズ(英語版)右.4721943年
2ジョシュ・ギブソンホームステッド・グレイズ(英語版)右.4661943年2回目
3チノ・スミス(英語版)ニューヨーク・リンカーンジャイアンツ(英語版)左.4511929年
4バディ・バーベッジ(英語版)ニューアーク・ドジャース(英語版)左.4381934年
5オスカー・チャールストンセントルイス・ジャイアンツ(英語版)左.4341921年1回目
6アーティ・ウィルソン(英語版)バーミングハム・ブラックバロンズ(英語版)左.4331948年
7チャーリー・ブラックウェル(英語版)セントルイス・ジャイアンツ左.4321921年
8オスカー・チャールストンハリスバーグ・ジャイアンツ(英語版)左.4271925年3回目
9ナップ・ラジョイフィラデルフィア・アスレチックス右.4261901年
10ミュール・サトルスセントルイス・スターズ(英語版)右.4251926年
11ロジャース・ホーンスビーセントルイス・カージナルス右.4241924年2回目
12ビズ・マッキーヒルデール・クラブ(英語版)両.4231923年
13レッド・パーネル(英語版)バーミングハム・ブラックバロンズ右.42221927年
14ジャッド・ウィルソンボルチモア・ブラックソックス(英語版)→
ニューヨーク・リンカーンジャイアンツ
左.42171927年1回目
15レイ・ダンドリッジニューアーク・ドジャース(英語版)右.42151934年
16バック・レナードホームステッド・グレイズ左.42001934年
17ジョージ・シスラーセントルイス・ブラウンズ左.41971922年2回目
18タイ・カッブデトロイト・タイガース左.41961911年1回目
19ジョシュ・ギブソンホームステッド・グレイズ右.4171937年1回目
20ラップ・ディクソン(英語版)ボルチモア・ブラックソックス右.4151929年2回目
21ウィリー・ウェルズセントルイス・スターズ右.4131930年
22タイ・カッブデトロイト・タイガース左.4091912年2回目
23ジョー・ジャクソンクリーブランド・ナップス左.40811911年
24ウィラード・ブラウンカンザスシティ・モナークス(英語版)左.40801948年
25ビル・ホスキンス(英語版)ボルチモア・エリートジャイアンツ(英語版)左.40771930年
26ジョージ・シスラーセントルイス・ブラウンズ左.40731920年1回目
27スピード・ワトリー(英語版)クリーブランド・ベアーズ(英語版)→
ホームステッド・グレイズ
左.40711939年
28オスカー・ジョンソン(英語版)カンザスシティ・モナークス右.40641923年
29テッド・ウィリアムズボストン・レッドソックス左.40571941年
30オスカー・チャールストンハリスバーグ・ジャイアンツ(英語版)左.40491924年2回目
31ジョン・ベックウィズ(英語版)ボルチモア・ブラックソックス右.40441925年
32ジャッド・ウィルソンボルチモア・ブラックソックス左.40361929年
33エドガー・ウェスリー(英語版)デトロイト・スターズ(英語版)左.40351925年
34ロジャース・ホーンスビーセントルイス・カージナルス右.40281925年3回目
35ハリー・ハイルマンデトロイト・タイガース右.40271923年
36ロジャース・ホーンスビーセントルイス・カージナルス右.401281922年1回目
37ビル・テリーニューヨーク・ジャイアンツ左.401261930年
38タイ・カッブデトロイト・タイガース左.40111922年3回目
39ラップ・ディクソンボルチモア・ブラックソックス右.40091928年1回目
40ジョゼフ・ストロング(英語版)ホームステッド・グレイズ左.40001932年

アメリカメジャーリーグにおいて1900年以降、打率4割が達成されたのは40回、29人の選手によって達成されている。長年アメリカン・リーグとナショナル・リーグで記録された13回、わずか8人の選手によって達成された記録のみとされていたが2020年12月17日にMLB機構がニグロリーグの通算記録もメジャー通算記録に、さらにこの時代にリーグでプレーしていたおよそ3400人のプレイヤーをメジャーリーガーにそれぞれ認定、2024年5月29日にニグロリーグもMLBの公式大会として正式に組み込まれると同時にニグロリーグでの記録もMLBとしての記録に統合するとしたため、過去にニグロリーグで21人の選手によって達成された27回の記録も加えられた。また、19世紀の記録も含めた場合でも合計55回であり、19世紀には12人の選手によって15回記録されている。

19世紀、近代野球前の記録
順位名前所属打席打率達成年達成回数
1ヒュー・ダフィーボストン・ビーンイーターズ右.4401894年
2ティップ・オニールセントルイス・ブラウンズ右.4351887年
3ロス・バーンズシカゴ・ホワイトストッキングス右.4291876年*4回目
4ウィリー・キーラーボルチモア・オリオールズ左.4241897年
5タック・ターナーフィラデルフィア・フィリーズ両.4181894年
6*フレッド・ダンラップセントルイス・マルーンズ右.4121884年
7エド・デラハンティフィラデルフィア・フィリーズ右.40961899年3回目
8ジェシー・バーケットクリーブランド・スパイダーズ左.40951896年2回目
9サム・トンプソンフィラデルフィア・フィリーズ左.4071894年
10ジェシー・バーケットクリーブランド・スパイダーズ左.4051895年1回目
11エド・デラハンティフィラデルフィア・フィリーズ右.40411895年 2回目
12エド・デラハンティフィラデルフィア・フィリーズ右.40401894年 1回目
13ビリー・ハミルトンフィラデルフィア・フィリーズ左.4031894年
14ピート・ブラウニングルイビル・カーネルズ右.4021887年
15ヒューイー・ジェニングスボルチモア・オリオールズ右.4011896年

フレッド・ダンラップは、ユニオン・アソシエーションでの記録。ロス・バーンズはナショナル・アソシエーションも含めた場合の達成回数

ナショナル・アソシエーション(NA)の記録
順位名前所属打席打率達成年達成回数
1リーヴァイ・メイエールフィラデルフィア・アスレチックス右.4921871年
2カル・マクヴィーボストン・レッドストッキングス右.43131871年
3ロス・バーンズボストン・レッドストッキングス右.43121873年3回目
4ロス・バーンズボストン・レッドストッキングス右.4301872年2回目
5デイヴイ・フォースボルチモア・カナリーズ右.4181872年
6キャップ・アンソンフィラデルフィア・アスレチックス右.4151872年
7ロス・バーンズボストン・レッドストッキングス右.4011871年1回目

ナショナル・アソシエーションの記録は特殊な扱いを受けているため、詳しくはNAPBBPはメジャーリーグかを参照。

各種記録 (*)は近代野球前の記録

(NAの記録も含む場合はロス・バーンズの4回が最多)

(NAの記録も含む場合はロス・バーンズの3年連続が最高)

韓国プロ野球

順位名前所属打席打率達成年
1白仁天MBC青龍右.4121982年

台湾プロ野球

順位名前所属打席打率達成年達成回数
1王柏融Lamigoモンキーズ左.4142016年
2王柏融Lamigoモンキーズ左.4072017年2回目
3蔣智賢中信兄弟エレファンツ左.4022016年
4林泓育Lamigoモンキーズ右.4002016年

かつて、台湾プロ野球界は2015年から2020年まで「打高投低」リーグだった[8]。2016年に台湾プロ野球界は4割打者を次々と生み出し、シーズンのリーグ平均OPSは.850であった[9]。極端な「打高投低」を是正するため、2021年シーズンから、台湾のプロ野球界は、通常のボールよりも反発係数が高く、飛びやすかったボールの反発係数を以前の反発係数に戻した[10]。

キューバリーグ(木製バット導入以降)

順位名前所属打席打率達成シーズン達成回数
1オスマニー・ウルティアレニャドレス・デ・ラス・トゥーナス右.4692003-044回目
2ホセ・アブレイユエレファンテス・デ・シエンフエーゴス右.4532010-11
3ミチェル・エンリケストロンヘロス・デ・イスラ・デ・ラ・フベントゥ右.4472005-06
4オスマニー・ウルティアレニャドレス・デ・ラス・トゥーナス右.4312000-011回目
5オスマニー・ウルティアレニャドレス・デ・ラス・トゥーナス右.4252005-065回目
6オスマニー・ウルティアレニャドレス・デ・ラス・トゥーナス右.4212002-033回目
7オスマニー・ウルティアレニャドレス・デ・ラス・トゥーナス右.4082001-022回目
8アルフレド・デスパイネアラサネス・デ・グランマ右.4042009-10
9ノルリス・コンセプシオンレニャドレス・デ・ラス・トゥーナス右.4022001-02
10ミチェル・エンリケストロンヘロス・デ・イスラ・デ・ラ・フベントゥ右.4012008-091回目
11ミチェル・エンリケストロンヘロス・デ・イスラ・デ・ラ・フベントゥ右.4012010-112回目

脚注

[脚注の使い方]

注釈

    出典

    1. ↑ タカシ, カネシゲ、規央, 鳥越『プロ野球 令和の最新データで読み解く「この選手がすごい! 」ランキング』辰巳出版、2020年8月。ISBN 978-4-7778-2647-6。
    2. ↑ “打率【シーズン記録】”. NPB. 2022年2月4日閲覧。
    3. ↑ 森岡浩 『プロ野球人名事典 1995』(紀伊國屋書店、1995年)122頁。
    4. ↑ 選手成績 (PDF) - BASEBALL FIRST LEAGUE
    5. ↑ “<ドラフト>楽天5位・田中耀飛外野手(兵庫ブルーサンダーズ)飛距離が持ち味”. 河北新報. (2017年10月27日) 2017年10月28日閲覧。
    6. ↑ スティーヴン・ジェイ・グールド 『フルハウス 生命の全容―四割打者の絶滅と進化の逆説』 早川書房
    7. ↑ シーズン記録 (MLB) - MLB.com
    8. ↑ “2015 Batting Stats”. my.cpblstats.com. 2021年3月31日閲覧。
    9. ↑ “2016 Batting Stats”. my.cpblstats.com. 2021年3月31日閲覧。
    10. ↑ Rob (2020年9月25日). “CPBL To Lower COR Value of Baseball in 2021 Season” (英語). CPBL STATS. 2021年3月31日閲覧。

    関連項目

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