ESO3.6m望遠鏡

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ESO 3.6 m Telescope
運用組織 ヨーロッパ南天天文台 ウィキデータを編集
座標 南緯29度15分39秒 西経70度43分54秒 / 南緯29.26097度 西経70.73169度 / -29.26097; -70.73169座標: 南緯29度15分39秒 西経70度43分54秒 / 南緯29.26097度 西経70.73169度 / -29.26097; -70.73169
標高 2,400 m (7,900 ft)
観測開始年 1977年 ウィキデータを編集
形式 反射望遠鏡, 赤外線望遠鏡 ウィキデータを編集
口径 3.566 m (11 ft 8.4 in)
分解能 0.2 秒 ウィキデータを編集
開口面積 8.8564 m2 (95.329 sq ft)
ウェブサイト www.eso.org/sci/facilities/lasilla/telescopes/3p6.html
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ESO3.6m望遠鏡(イーエスオー3.6メートルぼうえんきょう、英語: ESO 3.6 m Telescope)は1977年からヨーロッパ南天天文台(ESO)がチリのラ・シヤ天文台で運用している光学反射望遠鏡である。主鏡直径は3.6メートル (140 in)で、その集光面積は8.6 m2 (93 sq ft)である。

この望遠鏡には2002年から高精度視線速度系外惑星探査装置(High Accuracy Radial Velocity Planet Searcher:HARPS)と呼ばれる極めて高精度な分光器が設置され、その後10年足らずの間だけで150個を超える太陽系外惑星を視線速度法によって発見している[1]。2012年にはHARPSによって、現在太陽系に最も近い4.4光年の距離にある恒星系を構成する恒星の1つ、ケンタウルス座アルファ星が惑星ケンタウルス座アルファ星Bbを持つことの発見が報告されたが、現在はその存在は否定的に見られている[2]。

ESOは望遠鏡の建設を欧州原子核研究機構(CERN)と共同で行った[3][4]。 1976年にファーストライトを迎え、翌1977年に本格運用を開始した[5]。完成時には世界最大級の望遠鏡の1つであった。その後1999年に一度オーバーホールを受け、2004年には新たな副鏡が備え付けられた。 太陽系外惑星以外にも多くの科学的成果を支えており、特に1980年代には、天文学において初めて実用化された補償光学装置であるADONISが導入された。

観測装置

ADONISによる補償光学の有無による分解能の差

2022年以降、ESO3.6 m望遠鏡はHARPSと、近赤外惑星捜索装置(Near Infra Red Planet Searcher:NIRPS)の2台の観測装置を搭載している。HARPSは光ファイバー式の高分解能エシェル分光器で、視線速度法による太陽系外惑星の捜索を目的としており、2022年にファーストライトを迎えたNIRPSはその近赤外バージョンとして赤色矮星での惑星捜索を行う[6]。 なおその他の観測装置は運用が終了しているが、過去には以下の観測装置が搭載されて運用されていた[7]。特にEFOSC2は最初1989年5月11日にESOの新技術望遠鏡(NTT)に搭載された後、すぐにNTTに新たな観測装置EMMIが導入されると取って代わられ1990年にMPG/ESO望遠鏡に移転され、その後1997年からEFOSCの後継として3.6m望遠鏡に移った後、2008年にEMMIの運用終了とともに再びNTTに移された[8]。

  • CES: クーデエシェル分光器(Coude Echelle Spectrometer,CASPECとも)、構想から完成まで10年を要した、346–1028 nmの波長域で従来型の10倍にも相当する最大235000もの波長分解能を有した高分解能分光器で、1983年の運用開始以降ESOの有する分光器で最大の分解能を誇っていた。一時期HARPSと同時に運用され、観測者はどちらを使用するかを切り替えることができた[9][10]。
  • EFOSC1: ESO微光天体分光撮像装置1(ESO Faint Object Spectrograph and Camera)、1980年代後半から約10年間運用された、撮像や偏光観測、3種の分光観測など5つのモードで使用できた装置であり、撮像では25等級、低分散分光では22等級の天体を観測できた[11]。
  • EFOSC2: ESO微光天体分光撮像装置2(ESO Faint Object Spectrograph and Camera 2)、EFOSC1の後継機で撮像と低解像度の分光や偏光観測など8つのモードでの観測の使い分けが可能で、非常に汎用性の高い装置として、現在もNTTで現役で運用されている[8]。
  • IRSPEC: 赤外分光器(Infra Red Spectrograph)、1985年から運用されていた、近赤外波長の中分散分光が可能な分光器である[12]。
  • OPTOPUS: 多天体同時分光器、IRSPECと同時期に運用が始まった、タコ足配線のような48本の光ファイバーによって一度に複数の天体を分光する装置である[13]。
  • TIMMI-2: 熱赤外マルチモード観測装置(Thermal Infrared MultiMode Instrument)、2006年まで運用されていた波長3–25 ミクロンの近赤外、中間赤外線を観測できた装置である[14]。
  • ADONIS: 補償光学近赤外システム(Adaptive Optics Near Infrared System)、天文学コミュニティによる第2世代の補償光学装置で[15]、40以上の査読論文の成果がこの装置による観測データに基づいて出版された[16]。ADONISはCome-onやCome-on +と呼ばれていた様々な補償光学装置のプロトタイプの最終バージョンだった。運用開始後も改良が重ねられ、1996年にESOの公式機器としてのASONISの最終バージョンが利用可能になり[17]、2001年に運用を終了した。大規模な天文学者のコミュニティーが共同利用できる補償光学装置としてはADONISが最初の例だった。

科学成果の例

ESO3.6mの追跡観測で褐色矮星と確認されたKelu-1(英語版)、EFOSC1で撮影
EFOSC1の分光モードで取得されたKelu-1のスペクトル

ESO3.6 m望遠鏡はファーストライト以降いくつもの科学的発見を成し遂げたが、最近の科学成果は他の同種の装置の中でも長い間最高性能を誇ったHARPSによるものだった。発見した惑星の中には、地球質量の2倍と発見当時最も低質量の惑星だったグリーゼ581eや[18]、太陽型星の周りを当時既知の惑星系で最多だった7個の惑星が公転しているHD 10180系が含まれる[19]。2009年までにESO3.6 m望遠鏡は75個の太陽系外惑星を発見し[20]、2011年にはさらに50個の太陽系外惑星の発見が公表された[21]。

特に2007年4月24日には、スイスのジュネーブ大学のステファン・ウドリー(英語版)率いるチームが、初めてのハビタブルゾーン内の惑星例であるグリーゼ581cの発見を発表した[22]。このチームもHARPSを使用して、視線速度法によってこの惑星が主星のグリーゼ581に与える影響を調べていた[22][23]。

太陽系外惑星の発見の他、ESO3.6 m望遠鏡による観測でケフェイド変光星の質量について数十年間未解決だった問題も解消された。天文学者らによってHARPSを用いて、大マゼラン雲中に発見されていたOGLE-LMC-CEP0227と呼ばれるケフェイド変光星が、実際は脈動するケフェイド変光星の前を伴星が通過する連星系であることが発見され、主星であるケフェイド変光星の質量を正確に測定することができた。 その結果、恒星の脈動理論から推定される質量と一致する一方で、恒星進化理論から計算される推定質量とは異なることが分かった[24]。

同時代に運用されていた望遠鏡

1976年当時の世界最大級の望遠鏡一覧
順位 名前
(天文台)
画像 主鏡直径 集光面積 設置高度 ファースト
ライト
1. BTA-6
(ロシア科学アカデミー特別天体物理学観測所(英語版))
238 inch
605 cm
26 m2 2,070 m (6,790 ft) 1975年
2. ヘール望遠鏡
(パロマー天文台)
200 inch
508 cm
20 m2 1,713 m (5,620 ft) 1949年
3. ニコラス・U・マイヨール望遠鏡
(キットピーク国立天文台)
158 inch
401 cm
10 m2 2,120 m (6,960 ft) 1973年
4. ビクター・M・ブランコ望遠鏡
(セロ・トロロ汎米天文台)
158 inch
401 cm
10 m2 2,200 m (7,200 ft) 1976年
5. アングロ・オーストラリアン望遠鏡
(サイディング・スプリング天文台)
153 inch
389 cm
12 m2 1,742 m (5,715 ft) 1974年
6. ESO3.6 m望遠鏡
(ラ・シヤ天文台)
140 inch
357 cm
8.8 m2 2,400 m (7,900 ft) 1976年
7. C・ドナルド・シェーン望遠鏡
(リック天文台)
120 inch
305 cm
~7 m2 1,283 m (4,209 ft) 1959年

ギャラリー

望遠鏡と観測所

撮影した画像

関連項目

脚注

出典

  1. ↑ Ray Sanders (2011年9月13日). “HARPS Hauls in Over Fifty New Exoplanets”. 2026年7月17日閲覧。
  2. ↑ Bruce Betts (2012年10月18日). “B. Betts - First Planet Discovered in Alpha Centauri System - TPS”. 2026年7月17日閲覧。
  3. ↑ Madsen, Claus (2012). The jewel on the mountaintop : fifty years of the European Southern Observatory. Weinheim: Wiley-VCH. ISBN 978-3-527-41203-7. OCLC 818323656
  4. ↑ Reiz, Anders (1974) (英語). ESO/SRC/CERN Conference on Research Programmes for the New Large Telescopes, Geneva, 27-31 May 1974: Proceedings. Organizing Committee of the Conference
  5. ↑ “Telescopes and Instrumentation, the ESO 3.6-metre Telescope”. 2011年5月2日閲覧。
  6. ↑ “First Light of NIRPS” (2022年7月7日). 2026年7月17日閲覧。
  7. ↑ “The ESO 3.6m Telescope”. 2011年5月26日閲覧。
  8. 1 2 “ESO Faint Object Spectrograph and Camera 2”. 2026年7月17日閲覧。
  9. ↑ “The CES - truly high resolution!”. 2026年7月17日閲覧。
  10. ↑ 家正則 (1984年2月). “ESO便り アンデスの20夜とビールの町”. 日本天文学会. 2026年7月17日閲覧。
  11. ↑ “世界の望遠鏡めぐり(3)ESO3.6m望遠鏡”. 日本天文学会 (1988年2月20日). 2026年7月17日閲覧。
  12. ↑ “messenger-no42-25-25”. 2026年7月17日閲覧。
  13. ↑ “messenger-no41-25-28”. 2026年7月17日閲覧。
  14. ↑ “TIMMI2 : Thermal Infrared Multimode Instrument”. 2026年7月17日閲覧。
  15. ↑ Jack B. Zirker (2005). An acre of glass: a history and forecast of the telescope. ジョンズ・ホプキンズ大学出版局. pp. 204. ISBN 978-0-8018-8234-0
  16. ↑ ADS query results for "ADONIS"
  17. ↑ Gérard Rousset and Jean-Luc Beuzit (1999). “The COME-ON/ADONIS systems”. In François Roddier. Adaptive optics in astronomy. Cambridge University Press. pp. 171 et seq. ISBN 978-0-521-55375-9
  18. ↑ “Lightest exoplanet yet discovered”. ESO. 2009年4月21日. 2011年5月26日閲覧.
  19. ↑ “Richest Planetary System Discovered”. ESO. 2010年8月24日. 2011年5月26日閲覧.
  20. ↑ “32 planets discovered outside solar system - CNN.com”. CNN. 2009年10月19日. 2010年5月4日閲覧.
  21. ↑ “50 new exoplanets discovered by HARPS”. 2026年7月17日閲覧。
  22. 1 2 Than, Ker (2007年4月24日). “Major Discovery: New Planet Could Harbor Water and Life”. space.com. 2007年4月29日閲覧.
  23. ↑ Than, Ker (2007年2月24日). “Planet Hunters Edge Closer to Their Holy Grail”. space.com. 2007年4月29日閲覧.
  24. ↑ “Pulsating Star Mystery Solved”. ESO. 2010年11月24日. 2011年5月26日閲覧.
  25. ↑ “Three Very Different Telescopes at La Silla”. ESO Picture of the Week. 2012年5月8日閲覧.

外部リンク