アルタニ
アルタニ(モンゴル語: Альтани、? - ?)は、モンゴル帝国の将軍で「四駿」と讃えられたボロクルの妻。『元朝秘史』での漢字表記は阿勒塔尼。
概要
アルタニについては、チンギス・カンの末子であるトルイの命を救った逸話が広く知られている。
『元朝秘史』によると、モンゴル部の長年の宿敵で、チンギス・カンに滅ぼされたタタル部出身のカルギル・シラという者がおり、タタル部滅亡後には盗人として生き延びていた[1]。ある時、カルギル・シラが押し入った天幕がチンギス・カンの母后ホエルンのもので、たまたま天幕を訪れた子供がチンギス・カンの末子トルイであると気づくと、これをさらって逃げた[1]。
これにいち早く気づいたのが東隣りの天幕に住んでいたボロクルの妻のアルタニで、アルタニはカルギル・シラに追いつくとその髻を掴み、刀を持った手を引っ張って刀を手放させた[2]。さらに近くで黒牛を解体していたジェデイとジェルメも事件に気づき、二人は手近にあった斧でカルギル・シラを殺してトルイを取り返すことに成功した[2]。
しかし、後にこの事件で最も功績があった者は誰かが問題となり、まずジェデイとジェルメは「我らが追いつかなければ、女性一人では如何程の事ができたでしょうか。皇子の御命に危害が及んだかもしれません」と述べて自らの功績を強調した[3]。一方、アルタニはそもそも自身が声を上げなければ、カルギル・シラに追いついて刀を手放させなければ、ジェデイとジェルメが追いつく前に皇子は殺されていたかもしれないと語った[3]。両方の訴えを聞いたチンギス・カンはアルタニの主張を認め、『元朝秘史』はアルタニが「ボロクルにとっては第2の轅となり、トルイの生命にとっては殊勲となった」と評している[4]。
なお、トルイ救出の物語はペルシア語史書の『集史』にも記されているが、『元朝秘史』とは異なり、救出者はアルタニではなくシギ・クトクとされている。
脚注
参考文献
- 村上正二(訳注)『モンゴル秘史 チンギス・カン物語』 3巻、平凡社〈東洋文庫294〉、1976年8月。ISBN 978-4582802948。