この地球の平面から球状への変化は、トールキンの「アトランティス伝説」の中核でもある。ヌーメノール人は傲慢になり、不死を得たいと考えてヴァリノールに到ろうとしたが、イルーヴァタールはヌーメノールの島を滅ぼし、人間がヴァリノールにたどり着くのを永遠に防ぐために世界を作り変えた。トールキンの未完の草稿The Lost Roadでは、第一紀のエルフの神話から古典的なアトランティス神話、ゲルマン民族の大移動、アングロ=サクソン人イングランド、そして現代に到るまでを結びつける歴史的継続性のアイデアの草案を示唆し、プラトンのアトランティス伝説や他の洪水伝承をヌーメノールの物語の「混乱した」説明として提案している。世界の破壊的な再形成は、人類の文化的記憶や集合的無意識、個人の遺伝子記憶にまで刷り込まれただろう。トールキンの伝説体系の「アトランティス」の部分は、物理的な世界が変容したためにもはや追憶か神話のなかにしか存在しない西方へと向かう「まっすぐの道」の記憶というテーマを探求している[T 7][2]。「アカルラベース」では、災厄を生き延びたヌーメノーレアンが遠祖の地を求めて極西へと航海したものの、ただ世界を回ってもとの出発の地に戻って来るだけに終わったと記されている[T 8]。
トールキンはQenya Lexicon(クウェンヤ語彙集)と呼ばれる名称と意味のリストを作成した。クリストファ・トールキンはこの中から特定の星、惑星、星座についての言及を抄出してThe Book of Lost Talesの付録につけた[7][8]。太陽はアノールもしくはUrと呼ばれた[T 9][T 10]。月はイシルもしくはSilmoと呼ばれた[T 11][T 12]。「エアレンディルの星」は天空をわたって飛ぶエアレンディルの船ヴィンギロトにとりつけられた宝玉シルマリルの光をしめし、金星のことである。イングランドの古英語詩Christ Iでは「エアレンデル(earendel)」という単語が現れるが、19世紀の文献学者はこの言葉がある種の輝く星を意味することを発見し、1914年以来トールキンはこれを明けの明星とみなし、晩年の1967年になっても同様に考えていた[T 13]。詩にあるéala éarendel engla beorhtast すなわち「おお、最も輝かしき天使エアレンデルよ」という下りが、トールキンのインスピレーションとなった[4]。
トールキンは太陽系の他の惑星のためにシンダリンの名詞を作り、Molgoth's Ringに収録されているが、それらは他の箇所ではほとんど用いられなかった。そうした名前としては、木星にあたるシリンド、火星にあたるカルニル、水星にあたるエレンミーレ、天王星にあたるかもしれないルイニル、土星にあたるルンバール、そして海王星にあたる可能性のあるネーナルがある[T 14]。The Book of Lost Talesでは、木星にあたる名前としてモルウェンの語がリストに示されている[T 15]。
↑ Tolkien 1977, ch. 13 "Of the Return of the Noldor"(『シルマリルの物語』「クウェンタ・シルマリッリオン」第十三章「ノルドール族の中つ国帰還のこと」)
1 2 3 Tolkien 1977, ch. 3 "Of the Coming of the Elves and the Captivity of Melkor"(『シルマリルの物語』「クウェンタ・シルマリッリオン」第三章「エルフたちの到来と虜囚となったメルコールのこと」)
1 2 Tolkien 1977, ch. 1 "Of the Beginning of Days"(『シルマリルの物語』「クウェンタ・シルマリッリオン」第一章「世の始まりのこと」)
1 2 3 Tolkien 1977, ch. 11 "Of the Sun and Moon and the Hiding of Valinor"(『シルマリルの物語』「クウェンタ・シルマリッリオン」第十一章「太陽と月とヴァリノール隠しのこと」)
1 2 "Actually in the imagination of this story we are now living on a physically round Earth. But the whole 'legendarium' contains a transition from a flat world... to a globe ...." Carpenter 2023, #154 to Naomi Mitchison, 25 September 1954
↑ Larsen,Kristine(2008).Sarah Wells.ed.“A Little Earth of His Own: Tolkien's Lunar Creation Myths”.The Ring Goes Ever on: Proceedings of the Tolkien 2005 Conference(The Tolkien Society)2: 394–403.
↑ Larsen,Kristine(2011).“Sea Birds and Morning Stars: Ceyx, Alcyone, and the Many Metamorphoses of Eärendil and Elwing”.InFisher, Jason.Tolkien and the Study of His Sources: Critical Essays.McFarland Publishing.pp.69–83 The index entries are Gong, Ingil, Mornië, Morwinyon, Nielluin, Silindrin, and Telimektar.
↑ Larsen,Kristine(2005).“A Definitive Identification of Tolkien's 'Borgil': An Astronomical and Literary Approach”.Tolkien Studies2: 161–170.doi:10.1353/tks.2005.0023.