ゲオスミン
| 物質名 | |
|---|---|
(4S,4aS,8aR)-4,8a-Dimethyloctahydronaphthalen-4a(2H)-ol | |
別名 (4S,4aS,8aR)-4,8a-Dimethyl-1,2,3,4,5,6,7,8-octahydronaphthalen-4a-ol; 4,8a-Dimethyl-decahydronaphthalen-4a-ol; Octahydro-4,8a-dimethyl-4a(2H)-naphthalenol | |
| 識別情報 | |
3D model (JSmol) |
|
| ChEBI | |
| ChemSpider | |
| ECHA InfoCard | 100.039.294 |
PubChem CID |
|
日化辞番号 |
|
| UNII | |
CompTox Dashboard (EPA) |
|
| |
| |
| 性質 | |
| C12H22O | |
| モル質量 | 182.307 g·mol−1 |
| 融点 | 78 - 82 °C (172 - 180 °F; 351 - 355 K) |
| 沸点 | 270 - 271 °C (518 - 520 °F; 543 - 544 K) |
| 危険性 | |
| 引火点 | 104 °C (219 °F; 377 K) |
ゲオスミン (geosmin) は降雨のあとの地面のにおいを持つ有機化合物の一種で、デカリン誘導体のアルコール。ジェオスミンとも呼ばれる。光学異性体が存在し、天然のものは (−) 体である。IUPAC名は (4S,4aS,8aR)-4,8a-ジメチル-1,2,3,4,5,6,7,8-オクタヒドロナフタレン-4a-オール (4S,4aS,8aR)-4,8a-dimethyl-1,2,3,4,5,6,7,8-octahydronaphthalen-4a-ol である。
語は「大地の臭い」を意味し、テーブルビートのもつ土のような味や下水道から発生するカビ臭の原因物質でもある。ヒトの鼻はゲオスミンに対して敏感であり、5ppt程度の濃度でもそのにおいを感じることができる。
1965年に放線菌の代謝産物として単離された[1]。その後、1968年に全立体異性体の全合成によって立体配置が決定された[2]。両鏡像異性体の合成は1989年に達成されている[3]。
藍藻や放線菌、特にストレプトマイセス属などの微生物によって産生され、それらが死んだときに放出される。ゲオスミンはセスキテルペンの前駆体であるファルネシル二リン酸から生合成される[4]。
ゲオスミンは雨によって土中から大気中に拡散し、独特の雨上がりのにおいのもとになる。水の供給を表流水に頼っている地域では、ゲオスミンを作り出す微生物が土中から水源に放出されることで水がまずくなる、という現象が定期的におこる。 また、日本では湖の植物プランクトン由来のゲオスミンが、湖を水源とする水道水にカビ臭をつけることで知られており、ゲオスミンの濃度が高くなる時期には活性炭を使用して脱臭が行われることがある[5][6]。
淡水魚の泥臭さと水質改善
淡水魚の泥臭さは、主に一部の藍藻(シアノバクテリア)や放線菌が生成するジェオスミンや2-メチルイソボルネオール(2-MIB)などの臭気物質に由来する。[7]これらは水中から魚の体内に取り込まれ、筋肉や脂肪組織に蓄積することがある。[8][9]
泥臭さを軽減するには、生活排水や農業排水に由来する窒素・リンの流入を抑制し、富栄養化を防ぐことが重要とされる。[10][11]水質改善には、ヨシやガマ類などを利用した植生浄化法や人工湿地[12]、水の循環や溶存酸素の改善[13]、底泥の適切な管理などが用いられる。また、活性炭やオゾンによる処理は、水中の臭気物質を直接除去する方法として利用される。[7][14]
すでに臭気物質を蓄積した魚については、養殖業などで、清浄な水中に一定期間保持して臭気物質の排出を促す浄化(depuration、purging)が行われる。[15][9]必要な期間は魚種、水温、脂肪含有量、臭気物質の濃度などによって異なる。[16][9]
泥臭さの低減は、必ずしも食用としての安全性を意味しない。水銀、ポリ塩化ビフェニル(PCB)、PFASなどの汚染物質については、別途評価が必要となる。[17][18]
参考文献
- ↑ Gerber, N. N.; Lechvalier, H. A. (1965). “Geosmin, an Earthy-Smelling Substance Isolated from Actinomycetes”. Appl. Environ. Microbiol. 13 (6): 935-938.
- ↑ Marshall, J. A.; Hochstetler, A. R. (1968). “The Synthesis of (±)-Geosmin and the Other 1,10-Dimethyl-9-decalol Isomers”. J. Org. Chem. 33 (6): 2593-2595.
- ↑ Revial, G. (1989). “Asymmetric Michael-type Alkylation of Chiral Imines. Enantioselective Syntheses of (−)-Geosmin and Two Other Related Natural Terpenes, as well as enant-(+)-Geosmin”. Tetrahedron Lett. 30 (31): 4121–4124.
- ↑ Jiang, J.; He, X.; Cane, D. E. (2006). “Geosmin Biosynthesis. Streptomyces coelicolor Germacradienol/Germacrene D Synthase Converts Farnesyl Diphosphate to Geosmin”. J. Am. Chem. Soc. 128 (25): 8128-8129.
- ↑ “京都市の水道水にカビ臭、消臭追いつかず 琵琶湖でプランクトン急増”. 朝日新聞DIGITAL (2024年8月29日). 2024年11月1日閲覧。
- ↑ “脱臭処理のための粉末活性炭注入のお知らせ”. 京都市水道局 (2023年7月21日). 2024年11月1日閲覧。
- 1 2 “異臭味対応情報 麓山浄水場におけるかび臭原因物質検出及び対応状況”. 宮城県. 2026年10月16日閲覧。
- ↑ “Off-flavors in aquaculture products, Part 1” (英語). Global Seafood Alliance. 2026年10月16日閲覧。
- 1 2 3 “Smell, taste and texture of fish greatly influence consumer behavior” (英語). Global Seafood Alliance. 2026年10月16日閲覧。
- ↑ “湖沼・貯水池におけるかび臭等の発生予測と抑制に関する研究”. 環境省. 2026年10月16日閲覧。
- ↑ “Taketoshi Shimizu 学位論文審査報告”. 北海道大学. 2026年10月16日閲覧。
- ↑ “The management of undesirable cyanobacteria blooms in channel catfish ponds using a constructed wetland: Contribution to the control of off-flavor occurrences” (英語). CORE. 2026年10月16日閲覧。
- ↑ “第40回日本水環境学会年会 講演会報告 水環境・湖沼(4)”. 日本水環境学会. 2026年10月16日閲覧。
- ↑ “低水温期に発生したかび臭物質の浄水処理性と水道水への影響”. 大阪市水道局. 2026年10月16日閲覧。
- ↑ “Final Report Summary - SPACETASTE (Towards off flavour free finfish aquaculture)” (英語). CORDIS(欧州委員会). 2026年10月16日閲覧。
- ↑ “Depuration of geosmin- and 2-methylisoborneol-induced off-flavors in recirculating aquaculture system (RAS) farmed European whitefish Coregonus lavaretus” (英語). Springer. 2026年10月16日閲覧。
- ↑ “New Jersey updates fish consumption advisories for lower Delaware River watershed, expands testing to include PFAS” (英語). ニュージャージー州環境保護局. 2026年10月16日閲覧。
- ↑ “DOEE Provides Fish Consumption Advisory Update” (英語). ワシントンD.C.エネルギー・環境局 (2024年12月18日). 2026年10月16日閲覧。
