ソトラシブ
| 臨床データ | |
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| 販売名 | ルマケラス(Lumakras) |
| 識別子 | |
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| DrugBank | |
| 化学的および物理的データ | |
| 化学式 | C30H30F2N6O3 |
| 分子量 | 560.606 g·mol−1 |
| 3D model (JSmol) | |
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ソトラシブ(英語:Sotorasib、製品名:ルマケラス)は米国Amgen社により開発されたRas阻害剤である。KRASタンパクの12番目にあるアミノ酸がグリシン(G)からシステイン(C)に変異したKRAS G12Cタンパク(以下「KRAS G12C」)に選択的に結合することで、KRASの活性型への構造変化を不可逆的に阻害する。また、経口投与が可能な低分子化合物である。[1]
米国では2021年5月にKRAS G12C変異検査で陽性の局所進行性又は転移を有する非小細胞肺がん(NSCLC)に対してアメリカ食品医薬品局(FDA)より迅速承認を取得した。また、2025年2月にKRAS G12C変異検査で陽性で遠隔転移を有する結腸・直腸がんに対してパニツムマブとの併用療法にて承認された[1]。なお、2021年にソトラシブはCDER(FDA’s Center for Drug Evaluation and Research)によりファースト・イン・クラスに指定されている[2]。
日本においては022年1月に「がん化学療法後に増悪したKRAS G12C変異陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌」に対する治療薬として承認された。また、2025年9月には「がん化学療法後に増悪したKRAS G12C変異陽性の治癒切除不能な進行・再発の結腸・直腸癌」に対し、パニツムマブとの併用療法にて承認された。[3]
承認状況
日本
日本でソトラシブが承認されている「効能又は効果」「用法及び用量」は以下のとおりである。[4]
効能又は効果
- がん化学療法後に増悪したKRAS G12C変異陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌
- がん化学療法後に増悪したKRAS G12C変異陽性の治癒切除不能な進行・再発の結腸・直腸癌
用法及び用量
〈がん化学療法後に増悪したKRAS G12C変異陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌〉
- 通常、成人にはソトラシブとして960mgを1日1回経口投与する。なお、患者の状態により適宜減量する。
〈がん化学療法後に増悪したKRAS G12C変異陽性の治癒切除不能な進行・再発の結腸・直腸癌〉
- パニツムマブ(遺伝子組換え)との併用において、通常、成人にはソトラシブとして960mgを1日1回経口投与する。なお、患者の状態により適宜減量する。
米国
- KRAS G12C変異陽性の局所進行又は転移性非小細胞肺癌(NSCLC)
ソトラシブ単独療法は、FDA承認の検査法により検出されたKRAS G12C変異を有し、少なくとも1種類の全身療法治療歴を有する、成人の局所進行又は転移性非小細胞肺癌(NSCLC)患者の治療を適応とする。
本適応症は、客観的奏効率(ORR)及び奏効期間(DOR)に基づく迅速承認により承認されている。検証的試験において証明される臨床的ベネフィットにより、本適応の承認の継続が見込まれる。[5]
- KRAS G12C変異陽性の転移性結腸・直腸癌(mCRC)
ソトラシブは、FDA承認の検査法により検出されたKRAS G12C変異を有し、フッ化ピリミジン系、オキサリプラチン及びイリノテカンベースの化学療法の前治療歴がある成人の転移性結腸・直腸癌(mCRC)患者に対するパニツムマブとの併用を適応とする。[5]
作用機序
低分子量 GTP 結合タンパクである KRAS は、 EGFR 等の受容体の下流のグアニンヌクレオチド交換因子によって GTP と結合することで活性型となり、MAPK 経路等の下流のシグナル伝達経路を活性化することにより、細胞の増殖に関与することが報告されている[6][7]。KRAS変異は、多くの癌において腫瘍形成に関与する発癌ドライバーとして特定されている[8]。その中でKRASG12C変異は12番目のアミノ酸がグリシンからシステインに変換されており、このタンパクの構造変化によりKRAS G12Cが活性型に安定化し、下流のシグナル伝達が亢進することで腫瘍細胞の増殖及び生存を引き起こすと考えられる[9]。
ソトラシブは、KRAS G12Cの変異した12番目のシステイン(C12)に隣接するSwitchⅡポケットにおいてシステイン残基と共有結合するとともに、95番目のヒスチジン(H95)により形成される特有の溝構造とも相互作用する選択的KRAS G12C阻害剤である[10]。ソトラシブが結合することで、KRAS G12Cタンパクが不活性状態に維持され、KRASとRAFプロトオンコジーン セリン・スレオニンキナーゼなどのエフェクターとの相互作用を阻害する。この阻害作用により、細胞外シグナル制御キナーゼ(ERK)のリン酸化を含む、下流のシグナル伝達を抑制すると考えられている。
臨床試験
肺がん
国際共同第Ⅰ/Ⅱ相試験(20170543試験、CodeBreaK100試験)
がん化学療法後に増悪したKRAS G12C変異陽性の切除不能な進行・再発の固形癌患者を対象とした国際共同第Ⅰ/Ⅱ相試験の第Ⅱ相パートにおいて、非小細胞肺癌患者126例にソトラシブ960mgを1日1回経口投与した。
主要評価項目である独立中央画像判定機関による奏効(OR)は、有効性解析対象124例のうち46例37.1%(95%信頼区間:28.6, 46.2)であった。奏効期間(DOR)の中央値は11.1 ヶ月(95%信頼区間(CI):6.9, NE)、無増悪生存期間(PFS)の中央値は6.8ヶ月 (95%CI: 5.1, 8.2)、全生存期間(OS)の中央値は12.5ヶ月 (95%CI:10.0, NE)であった。
安全性解析対象126例のうち88例(69.8%)が治験中に有害事象が認められ、グレード3の有害事象は25例(19.8%)で、グレード4の有害事象は1例(0.8%)であった。主な有害事象は(発現率5%以上)は、下痢(31.7%)、悪心(19.0%)、ALT増加、AST増加(各15.2%)、疲労(11.1%)、嘔吐(7.9%)、血中アルカリホスファターゼ増加(7.1%)及び斑状丘疹状皮疹(5.6%)であった。[11]
国際共同第Ⅲ相試験(CodeBreaK200試験)
KRAS G12C変異陽性の進行非小細胞肺癌(NSCLC)患者を対象に、ソトラシブと標準的な二次治療以降の薬剤であるドセタキセルの有効性および安全性を比較した、無作為化非盲検第Ⅲ相試験である。
プラチナ製剤を含む化学療法およびPD-1またはPD-L1阻害薬による治療後に病勢進行が認められた患者345人をソトラシブ960 mg 1日1回経口投与群171例と、ドセタキセル75 mg/m²を3週間ごとに静脈内投与する群174例に無作為に割り付けられた。主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)である追跡期間中央値17.7か月の時点で、PFS中央値はソトラシブ群5.6ヶ月、ドセタキセル群4.5ヶ月であり、ソトラシブ群で統計学的に有意な延長が認められた(HR 0.66、95%CI 0.51~0.86、p=0.0017)。全生存期間(OS)は両群間では差は認められなかった。[12]
安全性については、グレード3以上の有害事象の発生率はソトラシブ群33%、ドセタキセル群40%であり、重篤な治療関連有害事象もそれぞれ11%、23%と、ソトラシブ群で少なかった。ソトラシブの主なグレード3以上の有害事象は下痢、肝酵素(ALT、AST)上昇であり、ドセタキセルでは好中球減少症、倦怠感、発熱性好中球減少症であった。[12]
CodeBreaK200試験に対するFDAの評価
CodeBreaK200試験はソトラシブの肺がんに対する検証試験として実施し、この試験結果をもとに迅速承認から通常承認への移行を求める申請を行なった。FDAは抗がん剤諮問委員会(Oncologic Drugs Advisory Committee:ODAC)を開催し、CodeBreaK200試験の結果について審議を行なった。ODACは、試験の実施手順や評価における信頼性に疑義があること、PFSのソトラシブ群とドセタキセル群との間で統計学的に有意な差を認めたものの、その差はわずかであり臨床的意義は不明確であること、副次的評価項目ではあるがOSに差が認められなかったことなどから、ソトラシブがドセタキセルより優れていると確実に判断できないとの評価を採択した[13]。この審議結果を受けて、FDAはアムジェン社にComplete Response Letter(CRL)を発行した。そこでは、CodeBreaK200試験の結果をもとに迅速承認から通常承認への移行は承認できないとした。また、通常承認を得るためには追加の検証試験が必要とした[14]。
直腸・結腸
国際共同第Ⅲ相試験(20190172試験、CodeBreaK 300試験)
化学療法歴のあるKRAS G12C変異陽性の治癒切除不能な進行・再発の結腸・直腸癌患者160例を無作為に、ソトラシブ960mg 1日1回経口投与とパニツムマブ併用投与群53例(ソトラシブ960mg群)、ソトラシブ240mg 1日1回経口投与とパニツムマブ併用投与群53例(ソトラシブ240mg群)、トリフルリジン・チピラシル塩酸塩又はレゴラフェニブ投与群54例(対照群)に割付け比較検討した。
無増悪生存期間(PFS)の中央値は ソトラシブ960mg群5.6ヶ月(95%CI:4.2, 6.3)、ソトラシブ240mg群3.9ヶ月(95%CI:3.6, 5.7)、対照群2.0ヶ月(95%CI:1.9, 3.9)であった。対照群に対するハザード比はソトラシブ960mg群5.6(95%CI:0.3, 0.78)、ソトラシブ240mg群0.59(95%CI:0.37, 0.95)で、対照群に対していずれの群で統計学的に有意な延長が認められた。奏効(OR)は、ソトラシブ960mg群26.4(95%CI:15.3, 40.3)、ソトラシブ240mg群5.7%(95%CI:1.2, 15.7)、対照群0.0%(95%CI:0.0, 6.6)であった。
有害事象はソトラシブ960mg群50/53例(94.3%)、ソトラシブ240mg群51/53例(96.2%)、対照群42/51例(82.4%)であり、重篤な有害事象はソトラシブ960mg群3例(5.7%)、ソトラシブ240mg群0例(0%)、対照群4例(7.8%)であった。グレード3以上の有害事象はソトラシブ960mg群35.8%、ソトラシブ240mg群 30.2%、対照群43.1%で、主な有害事象(5%以上)はソトラシブ960mg群は、ざ瘡様皮膚炎 11.3%、低マグネシウム血症 5.7%、発疹 5.7%で、ソトラシブ240mg群は低マグネシウム血症(7.5%)、下痢(5.7%)で、対照群は好中球減少症(23.5%)、貧血(5.9%)、高血圧(5.9%)であった。[15]
出典
- 1 2 “https://www.info.pmda.go.jp/go/interview/1/112292_4291076F1022_1_003_7F.pdf 医薬品インタビューフォーム ルマケラス錠120mg”. PMDA (2026年7月). 2026年11月7日閲覧。
- ↑ “NEW DRUG THERAPY APPROVALS 2021”. FDA (2022年1月). 2026年11月7日閲覧。
- ↑ “ソトラシブ”. www.pmda.go.jp. 2026年11月7日閲覧。
- ↑ “ルマケラス錠120mg 添付文書”. www.pmda.go.jp (2026年7月1日). 2026年11月7日閲覧。
- 1 2 “Full prescribing information for LUMAKRAS.”. FDA (2025年1月16日). 2026年11月7日閲覧。
- ↑ Cully, Megan; Downward, Julian (2008-06). “SnapShot: Ras Signaling” (英語). Cell 133 (7): 1292–1292.e1. doi:10.1016/j.cell.2008.06.020.
- ↑ Scheffzek, Klaus; Ahmadian, Mohammad Reza; Kabsch, Wolfgang; Wiesmüller, Lisa; Lautwein, Alfred; Schmitz, Frank; Wittinghofer, Alfred (1997-07-18). “The Ras-RasGAP Complex: Structural Basis for GTPase Activation and Its Loss in Oncogenic Ras Mutants” (英語). Science 277 (5324): 333–339. doi:10.1126/science.277.5324.333. ISSN 0036-8075.
- ↑ Simanshu, Dhirendra K.; Nissley, Dwight V.; McCormick, Frank (2017-06). “RAS Proteins and Their Regulators in Human Disease” (英語). Cell 170 (1): 17–33. doi:10.1016/j.cell.2017.06.009. PMC 5555610. PMID 28666118.
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- ↑ Canon, Jude; Rex, Karen; Saiki, Anne Y.; Mohr, Christopher; Cooke, Keegan; Bagal, Dhanashri; Gaida, Kevin; Holt, Tyler et al. (2019-11-07). “The clinical KRAS(G12C) inhibitor AMG 510 drives anti-tumour immunity” (英語). Nature 575 (7781): 217–223. doi:10.1038/s41586-019-1694-1. ISSN 0028-0836.
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- 1 2 de Langen, Adrianus Johannes; Johnson, Melissa L; Mazieres, Julien; Dingemans, Anne-Marie C; Mountzios, Giannis; Pless, Miklos; Wolf, Jürgen; Schuler, Martin et al. (2023-03). “Sotorasib versus docetaxel for previously treated non-small-cell lung cancer with KRASG12C mutation: a randomised, open-label, phase 3 trial” (英語). The Lancet 401 (10378): 733–746. doi:10.1016/S0140-6736(23)00221-0.
- ↑ “[https://www.fda.gov/media/172696/download?utm_source=chatgpt.com FDA Briefing Document Oncologic Drugs Advisory Committee Meeting October 5, 2023 NDA 214665 s005 Sotorasib Amgen, Inc.]”. FDA (2023年10月5日). 2026年11月7日閲覧。
- ↑ “AMGEN PROVIDES REGULATORY UPDATE ON STATUS OF LUMAKRAS® (SOTORASIB)”. Amgen (2023年12月26日). 2026年11月7日閲覧。
- ↑ Fakih, Marwan G.; Salvatore, Lisa; Esaki, Taito; Modest, Dominik P.; Lopez-Bravo, David P.; Taieb, Julien; Karamouzis, Michalis V.; Ruiz-Garcia, Erika et al. (2023-12-07). “Sotorasib plus Panitumumab in Refractory Colorectal Cancer with Mutated KRAS G12C” (英語). New England Journal of Medicine 389 (23): 2125–2139. doi:10.1056/NEJMoa2308795. ISSN 0028-4793.