バル・ミツワー

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バル・ミツワーと
バト・ミツワーBar and bat mitzvah
バル・ミツワーの儀式を受ける少年。装束2つを身につけてトーラーを読んでいる。
現地名 Bar mītsvā: בַּר מִצְוָה
Bat mītsvā: בַּת מִצְוָה
時刻
種別成人儀礼
テーマ「バル・ミツワー」や「バト・ミツワー」はユダヤ人社会で特定の年齢に達して大人の仲間入りをすること。

バル・ミツワー(男性名詞、ヘブライ語: בר מצוה 英語: bar Mitzvah)、バト・ミツワー(女性名詞、ヘブライ語: מצווה בר 英語: bat mitzvah)とは、ユダヤ法を守る宗教的・社会的な責任を持った成人のことである。バル・ミツヴァー、バト・ミツヴァーとも。

また、子供がこの責任を持てる年齢に達したことを記念して行われるユダヤ教徒の成人式のことも指す[1][4]。ユダヤ教のハラーハーの決まりでは、特定の年齢未満の児童は両親がその行動の責任を負う。そして児童がその年齢に達すると「べナイ・ミツワー」b'nai mitzvah とみなされ、自身の言動に責任を負わされる。伝統儀礼ではバル・ミツワーやバト・ミツワーを迎えた子どもの父親は、我が子の罪(英語版)の責任をもはや問われないと神に感謝を捧げる。

用語

嘆きの壁でバル・ミツワーを祝う人々(1978年)

ユダヤ教徒の正統派コミュニティでは、子供は男児が13歳になるとバル・ミツワーと[1]、女児は12歳になるとバト・ミツワー(בת מצווה/בת מצוה, Bat Mitzvah)と呼ばれる[2]。その点、ユダヤ教徒でも男女ともに13歳として年齢差を設けないコミュニティは 改革派と再建派、保守派の人々である[5]。意味はともに「戒律の子」である。集団が男性のみ、あるいは男女が混じる場合はベネー・ミツワー(B'nei Mitzvah)と呼ぶ。女性のみの集団はベノト・ミツワー(B'not Mitzvah)[注釈 1]。

  • 男性名詞の接頭辞はアラム語のBar(בַּר)が語源と考えられる。中期アラム語(英語版)に採用され、「息子」(בֵּן)を意味する。
    • ヘブライ語のben に相当。
  • 女性名詞の接頭辞 bat(בַּת)はヘブライ語で「娘」の意味。

成人の仲間入りをした子どもはユダヤ教の儀式法や伝統(英語版)、倫理(英語版)をきちんと理解し実践する責任を負って、ユダヤ人コミュニティの大人と同じようにあらゆる活動に参加を認められる。男女の役割が特定の面で異なるユダヤ人コミュニティもあり、例えば正統派ユダヤ教徒の男子は13歳になると、定足数(ミニヤン=Minyan)を満たすかどうか祈りの場の人数に加算が認められるし、家庭やコミュニティで催す祈りその他の宗教的儀式の主導も許される[6]。

バル・ミツワーという用語を示した資料はミシュナー[7]に加えてタルムードがある。古代の資料に、子どもが初めて律法に従うべき年齢を男女で分けて示し、両性がミツワーを迎えるベナイ・ミツワー(b'nai mitzvah )は大まかに思春期の始まりと重なる[8]。いずれにしても、その祝いの儀式の日取りは対象年齢に達した誕生日以降の、最初のシャバットとされる。

英語の用語

英語では、特定の性別に限定されないノンバイナリーを含めたジェンダー中立な若者に、単数形の b'nai mitzvah(ベナイ・ミツワー)という語をあてる場合があり[9][10]、その類語には「ミツワーの祝賀」を意味するsimchat、「ミツワーの受容」を意味するkabbalat、あるいはb'mitzvah もあり、いずれも意味は〈ミツワーに「属する」もしくはその「対象」〉[11]、あるいはミツワーのブリト(の契約)brit [12][9]を指す。

歴史

ユダヤ教徒が21世紀の現在のように子供が成人に達したことを祝う習慣は聖書の時代には存在しなかった[13]。この儀式はキリスト教徒のなかで多くのユダヤ教徒が暮らすようになった中世以降に、キリスト教の堅信の影響を受けて発達したと考えられている。

作法

男児は13歳に達した後の安息日に、トーラー (ユダヤの聖書)、ハフターラーの一部を朗読したり、朝の礼拝を執り行ったりと様々な作法があるが、特にユダヤ法で決まっているわけではないので、宗派によって異なる[14]。たとえこのような儀式を経ずとも、成人になった(13歳になり、陰毛の生えた)男児はユダヤ法に従う宗教的・社会的な責任があるとみなされるのである[15]。

バト・ミツワー

女児が成人に達したことを祝う習慣はイタリアの正統派ユダヤ教徒の間に存在した。これが後に再建派ユダヤ教を設立したラビ、モルデカイ・カプラン(英語版、ヘブライ語版)(מרדכי קפלן)によって、ニューヨークのユダヤ教神学院から合衆国中に広まった。公共の場で行われた最初のバト・ミツワーの儀式は、1922年3月18日のカプランの娘ジュディスのものである。

現在、バト・ミツワーを祝う儀式は正統派以外の再建派の全てと、保守派の大部分のユダヤ教徒の間で行われている。女児は普通は12歳が成人だが、一方に男児と同様に13歳で成人を祝う家庭がある。他方、正統派ユダヤ教ではバト・ミツワーを祝う習慣は強く否定されている。

参考文献

本文の脚注に使用したもの。

脚注

注釈

  1. ↑ 単数形の接頭辞はそれぞれ、bar は「息子」、bat は「娘」を意味する。語幹の mitzvah はミツワーもしくはミツヴァーと読み、「司令者」commandment もしくは「律法」law を指す。
    • 複数の男性、あるいは男女を合わせた集団を共通して指す用語は、イディッシュ語発音でベネー・ミツワー。
    • 女性を指す バト・ミツワー(בַּת מִצְוָה)の複数形は女性の集団を指し(בְּנוֹת מִצְוָה)、同じくイディッシュ語ではベノス・ミツワー(b'nos mitzvah)と発音する。

出典

  1. 1 2 “「ユダヤ教」『世界大百科事典』の解説 barmitzvahとは? 意味や使い方”. コトバンク. 2026年10月8日閲覧。 “株式会社平凡社『世界大百科事典』(旧版)【ユダヤ教】より”
  2. 1 2 “『プログレッシブ英和中辞典』(第5版)の解説 bat mitz・vah(英語)の日本語訳、読み方は”. コトバンク. 2026年10月8日閲覧。 “《ユダヤ教》バトミツバ(◇12–13歳までの少女の成人式;その儀式にあずかる少女;⇒bar mitzvah)小学館『プログレッシブ英和中辞典』(第5版)。”
  3. ↑ “『プログレッシブ英和中辞典』(第5版)の解説 basmitzvah(英語)の日本語訳、読み方は”. コトバンク. 2026年10月8日閲覧。 “コトバンク 英和辞典 - 小学館『プログレッシブ英和中辞典』(第5版)”
  4. ↑ 「bas mitz・vah」[/bάːs mítsvə, bǽs-/]=bat mitzvahbat mitzvah[2][3]。
  5. ↑ (英語) Origins of the Bar/Bat Mitzvah, (2012-10-19), "Today in almost all non-Orthodox congregations, all children mark symbolic entry into Jewish adulthood through b'nai mitzvah (bar or bat mitzvah) at age 13." [今日、正統派を除く会衆のほぼすべては、どの子も13歳で成人儀礼を行い、ユダヤ教徒の大人になる象徴的な一歩を踏み出す。(呼称は複数「ブナイ・ミツワー」、単数なら男子「バル・ミツワー」/女子「バト・ミツワー」)。]
  6. ↑ Genesis Rabbah(創世記ラッバー)63章10節(『Genesis』(創世記)25章27節の注解、ウィキソースよりבראשית רבה סג י(ヘブライ語)
  7. ↑ ピルケイ・アヴォート5章21節(ウィキソース)
  8. ↑ Niddah 45b
  9. 1 2 Perleberg, Ellen; Dy, Grace Elizabeth C. (2022-05-25). “Growing Up on the Wrong Side of the Mechitza: A Case Study of Contemporary Queer Jewish Language [「メヒッツァー」(Mechitza)の「間違った側」で育つとは—現代のクィア・ユダヤ人の用語に関する事例研究]” (英語). Journal of Jewish Languages 10 (1): 120–139. doi:10.1163/22134638-bja10019.
  10. ↑ Dolsten, Josefin (2018年3月1日). “This teen had a gender neutral b'nei mitzvah” [十代のこの若者は、性別にとらわれないバル・ミツワーを受けた]. en:Jewish Telegraphic Agency. 2023年5月5日閲覧.
  11. ↑ Krueger, Alyson (2019年3月27日). “Bar or Bat Mitzvah? Hey, What About a Both Mitzvah?” [バル・ミツワーか、それともバット・ミツツワー? いっそのこと(B で始まる)「ボース・ミツワー」にしたらどうか?]. The New York Times (アメリカ英語). ISSN 0362-4331. 2024年5月18日閲覧.
  12. ↑ “Celebrating the Age of Mitzvah: A Guide for all Genders [ミツワーの年齢を祝う:あらゆるジェンダー対象のガイド]” (英語). Keshet. 2023年5月5日閲覧。
  13. ↑ Hayyim Schauss, "History of Bar Mitzvah", My Jewish Learning.
  14. ↑ Reform Judaism, "History of the Bar/Bat Mitzvah".
  15. ↑ Marcus Jastrow and Kaufmann Kohler, "Bar Miẓwah", The Jewish Encyclopedia.

関連資料

脚注に未使用。

関連項目

日本の習俗