三浦道子 (工学者)

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三浦 道子
みうら みちこ
三浦道子の肖像写真
令和7年の文化功労者選出に際して
文部科学省が公表した肖像写真
生誕 (1949-09-07) 1949年9月7日(77歳)
日本の旗 日本・広島県
別名 Mitiko Miura-Mattausch
国籍 日本の旗 日本
研究分野
研究機関
出身校 広島大学
主な業績 トランジスタの高精度シミュレーションモデル(HiSIM)の研究開発と国際標準化
主な受賞歴
プロジェクト:人物伝
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三浦 道子(みうら みちこ、1949年9月7日 - )は、日本の工学者。広島大学名誉教授[1]。専門は半導体デバイス工学、デバイス物理。英語の学術論文などではMitiko Miura-Mattauschの名義を用いる。

トランジスタの高精度シミュレーションモデル「HiSIM」の研究開発および国際標準化に貢献した[2][1]。2007年にIEEEフェローに選出され、2012年に紫綬褒章を受章。2025年には文化功労者に選出された[2][1]。

経歴

広島県出身。1972年に広島大学理学部化学科を卒業し、1980年3月8日に同大学大学院理学研究科化学専攻博士課程を修了、理学博士の学位を取得した[2][3]。

大学院では結晶の研究に取り組み、1981年9月にドイツのマックス・プランク固体物理学研究所に客員研究員として着任した。1983年9月には同研究所の研究員となった[3][4]。

1984年4月、ドイツのシーメンス中央研究所に客員研究員として移り、1985年2月に研究員、1986年1月に主任研究員、1993年1月に主管研究員となった。同研究所では研究対象を結晶からトランジスタへと移し、半導体デバイスの研究に従事した[3][4]。

1996年10月、広島大学工学部教授に就任。2001年4月には同大学大学院先端物質科学研究科教授となり、半導体デバイスの物理モデルや回路シミュレーションに関する研究を進めた[3][2]。

2005年7月、広島大学HiSIM研究センター長に就任。半導体理工学研究センター(STARC)などとの共同研究を通じ、トランジスタの高精度なコンパクトモデルの開発と国際標準化に取り組んだ[3][5]。

その後、広島大学HiSIM研究センター特任教授を務めた[6]。

2008年には科学技術政策研究所の「ナイスステップな研究者」に選定され、2009年には文部科学大臣表彰科学技術賞(研究部門)を受賞した[2][7]。2012年には紫綬褒章を受章し、2025年には半導体デバイス工学への貢献により文化功労者に選出された[8][1]。

研究

主な研究分野は、半導体デバイスの物理モデルおよび回路シミュレーションである。特に、MOSFETなどのトランジスタの電気的特性を物理法則に基づいて数式化するコンパクトモデルの研究開発に取り組んできた[5]。

HiSIMの開発

1990年代後半から、広島大学と半導体理工学研究センター(STARC)の共同研究により、トランジスタのコンパクトモデル「HiSIM(Hiroshima-university STARC IGFET Model)」の開発を進めた[5][2]。

HiSIMは、MOSFETの電気的特性を半導体内部の物理現象に基づいて記述するモデルである。トランジスタ内部の表面ポテンシャルを基礎として電流などの特性を計算することを特徴とする。半導体集積回路の設計において、実際の回路を製造する前にその動作を予測するために用いられる[5][9]。

2004年には、産業技術総合研究所との共同研究により、遺伝的アルゴリズムを応用したHiSIMのモデルパラメータ自動調整技術を開発した。これにより、トランジスタの測定データにモデルを適合させるための作業時間が短縮され、半導体製造プロセスの開発効率向上につながった[10]。

国際標準化

HiSIMの研究は、高耐圧トランジスタやSOI構造のトランジスタなど、さまざまな半導体デバイスへの応用が進められた。

2007年には、高耐圧トランジスタの一種であるLDMOS(横方向拡散MOSFET)に対応するHiSIM-LDMOSを開発した。このモデルを発展させたHiSIM-HVは、同年12月に国際標準モデルとして選定され、2008年12月に半導体コンパクトモデルの国際標準化組織であるCompact Model Coalition(CMC)の標準モデルとなった[2][9]。

その後もHiSIMのモデル群の開発と国際標準化が進められ、HiSIM2が2011年、HiSIM-SOIが2012年、HiSIM-SOTBが2014年にCMCの標準モデルとなった[9][11]。

パワーデバイスへの応用

2010年には、広島大学がトヨタ自動車や豊田中央研究所などとの共同研究により、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)の回路シミュレーション用モデル「HiSIM-IGBT」を開発・公開した[12]。

HiSIM-IGBTは、MOSFETとバイポーラトランジスタの動作を組み合わせてIGBT全体の特性を表現するモデルであり、自動車などに用いられる電力制御回路のシミュレーションへの応用を目的として開発された[12]。

主な著作

  • Mitiko Miura-Mattausch, Hans Jürgen Mattausch, Tatsuya Ezaki (2008). The Physics and Modeling of MOSFETs: Surface-Potential Model HiSIM. World Scientific. ISBN 978-981-256-864-9.
  • 三浦道子「回路設計用先端MOSFETモデルの進化-Meyerモデルから表面ポテンシャルモデルへの推移-」『電子情報通信学会 基礎・境界ソサイエティ Fundamentals Review』第3巻第1号、2009年、1_57–1_65頁。doi:10.1587/essfr.3.1_57
  • Mitiko Miura-Mattausch, Hans Jürgen Mattausch (2026). "Compact FET-Based Device Modeling for Circuit Simulation". In Cary Y. Yang, Cor Claeys, Arokia Nathan, Bin Zhao (eds.). The FET Centennial: Celebrating the Field-Effect Transistor. Wiley-IEEE Press, pp. 543–596. ISBN 978-1-394-40651-7.[13]

主な受賞歴

脚注

  1. 1 2 3 4 5 6 “本学の三浦道子名誉教授が文部科学省から令和7年度の文化功労者に選ばれました”. 広島大学 (2025年10月18日). 2026年10月25日閲覧。
  2. 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 “科学技術への顕著な貢献 2008(ナイスステップな研究者)” (PDF). 日本数学会(公開資料). 科学技術政策研究所. pp. 7-8 (2008年12月25日). 2026年10月25日閲覧。
  3. 1 2 3 4 5 6 “三浦道子(教授)/ Prof. Mitiko Miura-Mattausch”. 広島大学. 2026年10月25日閲覧。
  4. 1 2 “興味を持ち続ける”. 広島大学. 2026年10月25日閲覧。
  5. 1 2 3 4 “第2回 三浦 道子 教授(大学院先端物質科学研究科)”. 広島大学 (2008年3月10日). 2026年10月25日閲覧。
  6. ↑ “博士課程教育リーディングプログラム プログラム概要(平成30年度)” (PDF). 日本学術振興会. p. 3 (2018年). 2026年10月25日閲覧。
  7. 1 2 3 4 “受賞者一覧(平成21年度~25年度)”. 広島大学. 2026年10月25日閲覧。
  8. 1 2 “先端物質科学研究科三浦道子教授が紫綬褒章を受章しました”. 広島大学 (2012年11月3日). 2026年10月25日閲覧。
  9. 1 2 3 “HiSIM Research Center”. Hiroshima University. 2026年10月25日閲覧。
  10. ↑ “次世代トランジスタモデルHiSIMの高精度自動合わせ込み技術を開発”. 産業技術総合研究所 (2004年11月25日). 2026年10月25日閲覧。
  11. ↑ “広島大学が産・官の協力を経て開発したトランジスタモデル「HiSIM-SOTB」が日本で4つめの国際標準に選定-迅速な開発シナリオの実現”. 広島大学 (2014年12月24日). 2026年10月25日閲覧。
  12. 1 2 “「世界初の実用モデルHiSIM-IGBTが誕生」についての記者会見を行いました”. 広島大学 (2010年5月11日). 2026年10月25日閲覧。
  13. ↑ “The FET Centennial: Celebrating the Field-Effect Transistor”. Wiley Online Library (2026年9月). 2026年10月25日閲覧。
  14. 1 2 “Best Paper - ASP-DAC Award Archive”. ASP-DAC. 2026年10月25日閲覧。
  15. 1 2 “「報公賞」受賞者一覧”. 服部報公会. 2026年10月25日閲覧。
  16. ↑ “第7回(平成20年度)学長表彰”. 広島大学. 2026年10月25日閲覧。
  17. ↑ “広島大学・三浦道子教授に、服部報公会「報公賞」が贈呈されました。”. 広島大学 (2008年10月14日). 2026年10月25日閲覧。
  18. ↑ “エイボン女性年度賞 - 2009年受賞者一覧”. エイボン・プロダクツ. 2010年12月3日時点のオリジナルよりアーカイブ。2026年10月25日閲覧。

外部リンク