丼鉢(どんぶりばち)は、米飯や汁物、麺料理などを盛り付ける厚手で深さのある食器。単に丼 (どんぶり)とも呼ばれる。

丼シリーズ (1987) 森正洋デザイン

概要

陶磁器が基本であるが、現在は他の素材でも作られる。プラスチック(メラミン樹脂)製のものが多く出回っているほか、保温性を考慮した金属製のものも製造されている。本来は椀と呼ぶべき漆器やそれを模したものも、形状や使用目的によっては「丼」と呼ばれることがある。

形状や用途によって丸丼、平丼、玉丼、高台丼、切立丼、麺丼、飯丼、多用丼などいくつかの種類に分類される。

和風の丼物、特に出前の際には蓋付きのものが用いられる。

ラーメンに使われる丼は「ラーメン鉢」と呼ばれる。雷紋や双喜紋、鳳凰や龍など中華風の意匠で彩られることが多い。雷紋が描かれたラーメン鉢は浅草の陶器専門店で最初に作られた、との説がある[1][2]。

語源

「どんぶり」という名称の語源ははっきりせず[3]、また「丼」という漢字(本来は「井」の篆書体[3]・異体字[4])が当てられる理由もはっきりしない[3]。

有力説とされているのが、江戸時代の江戸で一杯盛り切りの食事を提供する「慳貪屋(けんどんや)」と呼ばれる業態の店に由来するというものである[3]。慳貪屋で使用される鉢を「慳貪振り鉢(けんどんぶりばち)」と呼び、これが「どんぶり鉢」に転じたという[5][3][注釈 1]。

堀井令以知偏『語源大辞典』では、先に「けんどん振りの鉢」から「どんぶり」の名が生まれ、井戸に小石を落とした時に「どんぶり」と音がする連想から漢字の「丼」が結びついたと説明している[4](『集韻』によれば「丼」には「井戸に物を投げいれた音」の意がある[6])。

平凡社編『新版 日本史モノ事典』では、江戸時代の大型の財布(布や皮でできた大型の袋)「だんぶくろ」をどんぶりの語源としている[7]。

異説

補足

歴史

容器をしめす「丼」という語の初出は、元禄年間(1688年 - 1703年)の男性向け実用教養書『男重宝記』である[3]。初期には蕎麦(かけ[10]や種物[10])などを入れる容器として用いられたようである。

天明年間(1781年 - 1789年)には東岡舎羅文(曲亭馬琴の兄)が「近世丼という器出て、あまねくもてはやされる」と記しており、この「丼」は底が細くて口が広く、饅頭や鰹の三杯酢などさまざまなものを盛る器として重宝されたという[3]。天明元年(1781年)に旗本布施胤致(山手白人の名を持つ狂歌人)が江戸洲崎の料亭亭主升屋宗助を自邸に招いた際の献立書には、平鉢・大鉢などのほかに「南京染付どんぶり」が記されている[10]。

丼に飯を盛り具を乗せた「丼物」[11]が登場したのは、文化(1804年 - 1817年)[3]・文政(1818年 - 1830年)[11]年間で、はじまりは鰻丼であったという[3][11]。

脚注

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注釈

  1. ↑ なお「慳貪屋」は出前の運搬用具「けんどん箱」(岡持ちの一種)や「けんどんそば」(外食に供される蕎麦切の初期形態)とも関連があるとされるが、江戸時代後期にはすでに「慳貪屋」が廃れて由来不明となっており、考証家の山崎美成と曲亭馬琴が「けんどん」の語源について論争を行っている。「けんどん争い」と呼ばれるこの論争は、江戸時代の食文化に関する貴重な記録となっている(倹飩参照)。
  2. ↑ 通人が用いた、懐に入れる大きな物入れとする説もある[8]。

出典

  1. ↑ “日本のラーメン模様のどんぶり、実は中国には存在しなかった!(中島恵) - エキスパート”. Yahoo!ニュース. 2024年2月24日閲覧。
  2. ↑ 「意外と知らないラーメンどんぶり、箸、レンゲについての豆知識 ~道具にこだわるとラーメンがもっと楽しくなる!~ - Myojo USA」『Myojo USA - Japanese noodle manufacturing company, proudly producing freshly crafted authentic Japanese ramen, yakisoba, and udon for restaurants and supermarkets since 1991』2023年12月21日。2024年2月24日閲覧。「時は1909年、石川県出身の本清太郎が故郷の名産である九谷焼を東京で販売するために、浅草にほど近い合羽橋(本物そっくりな食品サンプル販売を含む厨房用品の卸売街として有名)に店を構えたことに端を発します。ところが装飾品としての用途が主である九谷焼は思うように売れず、いろいろと方向性を模索しているうちに浅草の飲食店向けに食器を販売することにしたようです。そうした浅草の飲食店の中には、1910年に創業し人気を博した来々軒や他のラーメン店も含まれており、そのようなラーメン店向けに専用のどんぶりを作ろうということで、その模様に中国由来の縁起の良い「雷紋」が採用されたそうです。」
  3. 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 “料理本のソムリエ vol.7 ジャパン・クール"DONBURI"”. 柴田書店 (2010年8月10日). 2022-20閲覧。
  4. 1 2 福井県立図書館(回答) (2015年6月23日). “「丼」という漢字がいつごろからどんぶりの意味を表す「丼」として使われるようになったか。もともとは「井」の異体字として使われていたものらしい。”. レファレンス協同データベース. 2022年2月20日閲覧。
  5. ↑ 言語由来辞典
  6. ↑ “丼”. 精選版 日本国語大辞典. 2022年2月20日閲覧。
  7. ↑ 平凡社編『新版 日本史モノ事典』平凡社、2017年6月21日、84頁。ISBN 9784582124293。
  8. 1 2 滋賀県立図書館(回答) (2015年6月23日). “丼勘定(どんぶりかんじょう)という言葉があるが、この「丼」とは、職人の腹掛けを指していると聞いたが本当だろうか。”. レファレンス協同データベース. 2022年2月20日閲覧。
  9. ↑ どんぶりの由来は猫どんぶりにあった?奇抜な語源
  10. 1 2 3 “丼”. 世界大百科事典 第2版. 2022年2月20日閲覧。
  11. 1 2 3 “丼物”. 日本大百科全書(ニッポニカ). 2022年2月20日閲覧。

関連項目

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