M1915時限式弾頭信管、イギリスで開発された2.95インチ山砲用にアメリカで設計されたもので、内蔵された伝火薬の経路を調節することで、最長21秒までの延期時間を設定できる
信管(しんかん、英: fuseあるいはartillery fuze)とは、弾薬を構成する部品の一つであり、弾薬の種類と用途に応じて所望の時期と場所で弾薬を作動させるための装置である。
現在、以下の4つの機能を持っていて、以下の機能が一つに結合された装置を信管と呼んでいる。
- 起爆時期を感知する機能
- 所望の時期以外では起爆させないための安全装置
- 安全装置の解除機構
- 弾薬の起爆装置
銃や砲の発射薬に点火する装置は単独では「起爆時期を感知する機能」を持たないため雷管と呼ぶ。
概要
着発式弾頭信管の概要図
図は信管の概要図で「弾頭」に装着する「着発式」で「遠心力式の安全装置」を持ち、「瞬発」と「延期」の切替え装置を持っている。
用途としては野砲などの榴弾で使用されるものである。
起爆は鋭敏な点火薬が撃発されることで起こり、起爆薬から添装填薬へと伝わり、砲弾の炸薬が起爆される。
- 撃針ブロック
- 砲弾が発射されると遠心力によって2.が解除され、太いばね(番号なし)の作用で先端が9.を押し退けて3.から露出する。目標に当たると衝撃で引っ込み、撃針部が4.を突いて発火させる。
- 遠心力式安全装置
- 砲弾が発射されるとライフリングによる回転で遠心力が生じ、1.を固定していたこれが細いばね(番号なし)に逆らって外側に押し付けられて外れることで解除される。
- 構造体
- 点火薬
- 目標に当たった衝撃で引き戻ってきた1.に突かれて発火する。
- 遅延火薬
- 瞬発と延期の切替え装置
- 信管の側面に露出した小さなマイナスネジのような部分を90度回すことで切り替えられる。この部分の穴が開通していると、4.の火は直接7.に達するので瞬発する。逆に穴がふさがれていると、4.の火は5.を経由するので伝達がわずかに遅れ、0.1秒程度の遅延動作をする。
- 起爆薬
- 添装填薬
- 弾頭キャップ
- 砲弾が発射されると、2.が作動して1.が3.先端から突き出ることで外れる。
動作
衝撃、水圧、電気刺激、化学反応などにより作動するが、意図せぬタイミングでは作動することが決して無く、かつ望むときには確実に作動する信頼性が要求される。
基本的に、信管の動作は、二つに分けられる。前半が安全装置解除で、それを行わないうちは叩いても作動することはない。後半が起爆で、これが確実に行われることによって意図する破壊を実現できる。
たとえば手榴弾は安全ピンなどの安全装置を外して、安全レバーを外す・撃鉄に打撃を加えるなど信管を作動させない限りは、落下させたり蹴飛ばしたりしても爆発することはない。無論そういった扱いを意図的にするべきではないし、火の中に投入したなどの場合には望まないタイミングで爆発させるおそれがある。
安全装置
信管には安全装置が必須であり、二種類以上の安全装置が組み込まれている場合も多い。
- 安全ピン
- 最も一般的で安全装置として分かりやすいものである。撃針の付いているブロックを機械的に固定して点火薬に触れないようにすることで作動を防ぐ方式である。初期から現代まで砲弾の先端に取り付けられた信管に刺してある安全ピンを発射前に抜くのが一般的に見られる。この方式の最大の欠点は解除を忘れたまま発射してしまう可能性があること(このミスを防ぐために、「装填したら抜け」と大書された赤や黄色のタグが付けられていることもある)。また、信管が加熱されたりして点火薬が発火した場合の暴発を防げないという欠点もある。
- 遠心力式
- 砲弾が回転する遠心力で安全装置を解除する方式である。古くは日本の伊集院信管などがこのタイプに当たる。
- 人間が信管の解除を行う必要が無いというメリットがある。
- この方式は砲弾の回転力を利用しているため、砲弾が回転しない滑腔砲では使用できない。
- 導爆路閉鎖式
- 点火薬から添装填薬へ爆轟が伝わる経路を閉鎖することで起爆を防ぐ方式である。
- 信管が加熱されたりして点火薬が発火した場合でも添装填薬が爆発しなければ爆弾自体の誘爆は防げるので最も安全性が高い。
信管設計の安全基準
信管は味方においては絶対に安全であり、敵に対しては必ず動作しなければならないという両極端な条件を要求される。
アメリカでは信管設計の安全基準についてMIL規格:MIL-STD-1316で具体的な基準を定めている。
- 安全と安全解除
- 安全装置の解除は発射の衝撃、砲弾の遠心力、気流などの環境による力によって行わなければならない。人為的な操作や電源やばねなどの内部エネルギーによる解除は禁止
- 安全確保の冗長性
- 信管は二つの独立した安全装置を備えていなければならない。
- 安全距離の確保
- 安全装置が解除されるタイミングは発射からの経過時間ではなく、一定の安全距離が確保された後でなければならない。つまり初速に関係なく動作する必要があり、極端な場合には火薬の不完全発火や障害物に当たって跳ね返ったりして砲弾が目の前に落ちた場合などに解除されてはならないことを示している。
- 信頼水準と信頼度
- 信管がどれだけ確実に作動するかは設定された信頼水準を元に算出された信頼度を持って表される。
不発弾と信管
信管が所定の目的(起爆)を果たせなかった場合は不発弾になる。ただし故障ではなく、柔らかい土中に落ちた為に作動しなかったなどの場合には、ちょっとした衝撃で起爆するおそれがある。
そのため処理においては、まず識別が行われ、この際砲弾や爆弾本体よりも、信管の種類や状態が重視される。時限信管や近接信管は、衝撃を与えなくても起爆するおそれがあり、むやみに接近してはならない。やむを得ず信管を取り除く必要がある場合、これが最も危険である。除去作業は通常、爆発物処理技術資格を持つ者しか実施しない。
第二次世界大戦後、少年たちの間で不発弾の信管を用いた危険な遊びが一部で流行し、それは強烈な爆竹ともいうべき存在であったが、その表現で片付けるにはあまりに危険すぎる代物で、死傷者を出したという。
参考文献
- 防衛技術ジャーナル編集部 編『火器弾薬技術のすべて』 防衛技術協会、2008年
関連項目
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