(打消しの言葉や否定的な表現を用いて)まったく。まるで。少しも。まるっきり。
「全然~ない」の形で全否定を表す。
主に明治時代の文学作品など明治時代から戦前までの近代語に見られ、否定表現を伴わず「すっかり、ことごとく、完全に、全面的に」。 日本に入ってきた当初の用法はこちらであった。 国語辞典によってはこの用法を記載しなかったり、記載した上でかつて使われた用法とするものもある。
否定的な表現を伴わない。「非常に、断然に」という強調を表現する場合もある。
「全然」という言葉が中国から入ってきた江戸時代には、既に肯定で使用されることがあった。ただし、広まったのは明治時代である。
戦後、昭和中期には肯定用法の使用が減り、「全然」を否定表現で使うことの方が多くなっていった。1955年の国立国語研究所の調査(「語形確定のための基礎調査」)の結果でも、「全然すばらしい」という肯定表現を適切とする人はごく少数で、1960年の指導要領には「全然は否定語を伴う」と明記されているが、その後若者を中心に肯定用法が自然に広まっていったといわれている。
文化庁「国語に関する世論調査(平成15年度/2003年)」において、「とても明るい」ということを,「全然明るい」という言い方をすることがあるかどうかという質問に対し、「言うことがある」と回答したのが20.7%、78.6%が「言わない」と回答している。「暗い?」という問いに対する「全然暗くない」も「全然明るい」も同義である。
文部省教育が定着する以前は否定を伴わない用法も珍しくはなかった。戦後長らく否定用法が正しいとされたが、否定を伴わない用法が再度増えている。
明治時代には夏目漱石も「全然」を「全面的に」「完全に」の意味で否定を伴わず使っていた[2]。 夏目漱石のほかに石川啄木[3]、森鷗外[4]、芥川龍之介[5]らも「全然」を否定を伴わず使っている。
戦前から昭和30年代にかけて活躍したギャグマンガ家「杉浦茂」が昭和31年、32年ごろ書いた『少年西遊記』にこんな場面が登場する。
これは「全面的に」「完全に」の意味ではなく「非常に」の意味である。
教科書や小学生向け辞書などでは『(口頭語で肯定表現に)非常に。』の用法を好ましくないとするのが妥当という見解(教育出版)、「あとに打ち消しのことばがくる」などの注意書き、それ以外については俗語であるという参考記述、補足記述がされ、ほとんどが文科省の推奨する否定用法だけを記載している。
「日本語検定 公式○×速解問題集(日本語検定委員会 著)」においては全然の用法についての語彙問題で『「全然おいしい」「全然平気だ」などの言い方も耳にしますが、これらは広く認められた言い方とは言えません』との解説があり、不適切な使い方とみなされ、×が正解となっている。
その他、秘書技能検定、ビジネス実務マナー技能検定、ビジネス文書技能検定、日本語文章能力検定などの参考書、問題集においても、肯定表現に用いることを適切とするものは皆無である。
また入試問題、入学模試などにおいても同様に肯定表現で用いることは不適切または誤用との扱いがされている。
元小学館辞典編集部編集長の神永曉は、「全然」は否定の言い方でなければならないという根拠は歴史的にみると存在しないため、肯定で用いても「全然大丈夫」と評している。ただし「とても」という意味での用法は新しいものであるという[6]。
文化庁国語課の国語調査官・武田康宏によると、「全然+肯定」の表現は「許されやすかった時期」と「許されにくかった時期」が繰り返されてきており、誤用とはいえないとしている[1]。
NHKの「ことばおじさん」梅津正樹は「年配の方は、「全然」という言葉には否定の意味が続くという認識があります。しかし、若い人は肯定の意味で使います。調べると、戦前は肯定の方が多かった時期もあるんです。「全然」は「まったくしかり」と書きます。どこにも否定の意味はないんですね。戦後の学校教育で全然の後には否定がくると教えるようになったんです。」と語っている[7]。
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