数学 の分野における定数関数 (ていすうかんすう、英 : constant function ; 定値写像 )とは、それがとりうる値が変数の変動によって変わらない定数 値の関数 (写像 )のことを言う[1] 。例えば、関数 f (x ) = 4 はすべての値を 4 へと写すため、定数関数である。
定義
やや異なる二つの定義ができる(両者の間には、大まかに言えば空写像 の扱いで差がある)。
集合 A, B および B の元 c が与えられた とき、関数 f : A → B が値 c を持つ 定数関数 であるとは、f (x ) = c (∀x ∈ A ) を満たすときに言う。
集合 A, B が与えられたとき、関数 f : A → B が定数関数 であるとは f (x ) = f (y ) (∀x , y ∈ A ) が成立することを言う
1. の意味で定数ならば 2. の意味でも定数となるのは明らかであるが、逆はやや込み入てくる。まず、A が元 を持つならばどうということはない。
A が空であるときに、一意に定まる空写像は空虚な意味で (2. の意味での)定数関数と考えることができるが、B が空ならばそれは値を持たない(つまり 1. の意味で定数でない)[注釈 1] 。A が空で B が元を持つ場合に関しては、排中律 を必要とするので、前提とする論理によってはそれも問題になる。
実定数函数の概観
Constant function y =4
実函数 (実変数実数値の函数)としての定数函数は、一般に実数 c を用いて f (x ) = c あるいは簡単に y = c がその一般形となる。定数函数 y = c のグラフ は、xy -平面 上の水平線 で点 (0, c ) を通る[5] 。
一変数 x の多項式函数 の文脈では非零定数函数 と恒等的に零な函数 は区別を受ける。つまり、「次数 0 の多項式 」は一般形が f (x ) = c (c ≠ 0) となる函数を定め、この函数は x -軸との交点(函数の根 )を持たない。他方、零多項式 f (x ) = 0 は(自明な)定数函数(零函数 )を定め、この場合は任意の x が根となり、グラフは xy -平面の x -軸に一致する[6] 。
定数函数は偶函数 である。つまり定数函数のグラフは y -軸に関して対称である。奇函数 となる定数函数は零函数に限られるから、その意味でも値が零か非零かでは違いがある。
函数の微分 はそれが定義されている文脈において、函数の値の変化率を測るものである。したがって定義により定数函数は変化をしないのだからその微分は 0 である[7] 。それをしばしば (c )′ = 0 のように書く。逆もまた正しい。すなわち、y′ (x ) = 0 (∀x ) ならば y (x ) は定数函数である[8] 。
性質
定数関数は、合成関数 に関して、二つの方法で特徴づけられる。
次の条件はすべて同値である:
f : A → B は定数関数である。
すべての関数 g , h : C → A に対して、f ∘ g = f ∘ h が成り立つ(ここで "∘" は関数の合成 を表す)。
f と他の任意の関数との合成は、定数関数である。
上述の定数関数についての初めの特徴づけは、圏論 の分野におけるより一般的な定数射 の概念の性質を定義する上での動機となるものである。
前順序集合 の間の定値写像は、順序を保存し かつ順序を逆にする写像である。逆に、f が順序を保存し、かつ逆にする写像であり、さらに f の定義域 が束 であるなら、f は必ず定値写像である。
定値写像の性質には、他に次のようなものがある:
連結集合 上の関数が局所定数関数 であるための必要十分条件は、それが定数関数であることである。
注
注釈
↑ 斎藤 (2009 , pp. 24–25) は、写像 f : X → Y が定値写像であることを、c ∈ Y として、すべての元 x ∈ X を c ∈ Y にうつす写像と定義した後、空集合の恒等写像も定値写像とよぶ、としており、Bourbaki による定義と一致する。一方、松坂 (1968) の定義では空集合への空写像は定値とならない(松坂 (1968 , あとがき 6)) にあるように、本文ではそもそも定義域や終域が空集合となる場合への言及を(実用上は枝葉末節であるという趣旨で)意図的に避けている)。
出典
↑ C.Clapham, J.Nicholson (2009年). “Oxford Concise Dictionary of Mathematics, Constant Function ”. Addison-Wesley. p. 175. January 12, 2014 閲覧。
↑ “College Algebra ”. Lamar University. p. 224 (2007年). January 12, 2014 閲覧。
↑ Carter, John A.; Cuevas, Gilbert J.; Holliday, Berchie; Marks, Daniel; McClure, Melissa S. (2005). “1”. Advanced Mathematical Concepts - Pre-calculus with Applications, Student Edition (1 ed.). Glencoe/McGraw-Hill School Pub Co. p. 22. ISBN 978-0078682278
↑ “Derivative Proofs ”. Lamar University (2007年). January 12, 2014 閲覧。
↑ “Zero Derivative implies Constant Function ”. January 12, 2014 閲覧。
参考文献
斎藤, 毅『集合と位相』東京大学出版会〈大学数学の入門8〉、2009年。ISBN 978-4-13-062958-4 。
松坂, 和夫『集合・位相入門』岩波書店、1968年。ISBN 4-00-005424-4 。
Bourbaki, N. (2006). Éléments de mathématique, Théorie des Ensembles . Springer. ISBN 978-3-540-34034-8
Herrlich, Horst and Strecker, George E., Category Theory , Allen and Bacon, Inc. Boston (1973)
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